UFC女子、僕のベストバウト3選。第1位は女子史上最高? の打ち合いが生まれたあの試合。日本人にも希望が持てる一戦だったよな
先日からの続きとなる「UFC女子、僕のベストバウト3選」だが、今回は待望の第1位の発表である。
とは言え、本来はここまで大々的なネタにする予定はなく。気楽にちゃっちゃと発表して終わらせるつもりだったのだが、予想以上に(僕の)思い入れが強くあれこれと語っているうちに止まらなくなり。何だかんだで3回に分けての発表となってしまった。
一応、過去2回の記事はこちら。
→UFC女子、僕のベストバウト3選。第3位は女子MMAを次のステージに押し上げたあの試合
→UFC女子、僕のベストバウト3選。第2位は最強女王対決がまさかの決着となったあの試合。アイツが負けるとは思わなかった
興味があれば併せてご覧いただければと思います。
というわけで、前置きが長くならないうちにさっそくスタートしてみる。
UFC女子、僕のベストバウト3選:第1位
○ジャン・ウェイリーvsヨアナ・イェンジェイチック×(UFC248)
2020年12月のUFC248で行われたUFC世界女子ストロー級タイトルマッチ。同級王者ジャン・ウェイリーにヨアナ・イェンジェイチックが挑戦し、5R判定(2-1)でジャン・ウェイリーが勝利した一戦である。
ついにきました。堂々の第1位はこの試合、ジャン・ウェイリーvsヨアナ・イェンジェイチック戦でございます。
はっきり言ってこの試合は僕の知る限り過去最高の試合。女子格闘技史上最高の一戦と言っても過言ではないほど、ハイレベルかつ熱量のある試合だったと思っている。
前後の小刻みなステップから鋭く踏み込み、スピーディな連打を打ち込むジャン・ウェイリーに対し、挑戦者ヨアナ・イェンジェイチックは長い手足を活かしたスイッチを多用しながら応戦。1Rから両者の激しいペース争い、打ち合いが展開される。
1発の的確さ、回転力ではウェイリー。
ペース配分や試合運びのうまさはヨアナ。
ヒット数にはそこまで差はないが、見栄えのいい打撃を当てているのはウェイリーの方かなぁという印象。
だが、2R中盤あたりから徐々に試合が動く。
巧みなポジショニングで芯を外すヨアナの動きにウェイリーのパンチが空を切るシーンが目立ち始め、会場の空気もだんだんとヨアナに傾く。
明らかに疲れが見えるウェイリーを尻目に3R終了時点で大きなガッツポーツを見せるヨアナ。ウェイリーのハイペースな攻めを凌いだヨアナが主導権を握る流れに。
そして4R。
開始直後からウェイリーが一気にペースを上げ、前に出て連打を打ち込んでいく。
ヨアナも落ち着いて対処するが、ここが勝負どころと見たウェイリーの圧力に後退を余儀なくされる。
ガードの間からウェイリーの左を顔面に被弾したヨアナが大きく弧を描くように距離を取る。
再三にわたってウェイリーのパンチを受けた額はすでにパンパンに腫れ上がった状態。
一方のウェイリーもヨアナの打撃で両目を腫らし、ローによるダメージで太ももは真っ赤。それでもひたすら前に出て腕を振り続ける。
連打の最中にカウンターをもらっても止まらず、最後まで打ち抜くウェイリーのファイトに場内からも自然と歓声が沸き起こる。
最終ラウンド残り10秒でヨアナのバックブローで右目尻から出血したウェイリーだが、それでも怯まずプレッシャーをかけ続けて試合終了。
一進一退の攻防を繰り広げた両者にスタンディングオベーションが送られる中で判定結果が読み上げられ、ジャン・ウェイリーの初防衛が決定した。
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女子MMAの急激なレベルアップに驚かされる。あの頃と比べると隔世の感がある
繰り返しになるが、この試合は僕が知る中では女子格闘技史上最高の一戦。
経験値の差を発揮して試合をコントロールしたヨアナはさすがだったし、3Rの失速から盛り返したウェイリーもすごかった。
勝利者インタビューで感極まって言葉に詰まるウェイリーの通訳も印象的だったし、とにかく両者ともにナイスファイト。うまい表現が見つからないほどの凄まじい試合だった。
と同時に、女子MMAの進化に改めて驚かされる試合でもあった。
申し上げたように女子MMAの大きな転機となった(と僕が思っている)のは2015年11月のUFC193でのロンダ・ラウジーvsホリー・ホルム戦。
圧倒的な圧力と腕十字固めで連勝街道を驀進するロンダ・ラウジーがホリー・ホルムのフットワークとボクシング技術に手も足も出せずに敗れた一戦である。
あの試合をきっかけに女子のレベルはぐんぐん上がって今に至っていると思うのだが、改めてラウジーvsホルム戦と今回の試合を比べてみると隔世の感がある。
馬力と思い切りのよさで一本勝ちを量産したロンダ・ラウジーだが、今観ると全体的に動きが稚拙で「なるほど」と思わされる負け方でもある。
ロンダ・ラウジーだけでなくこの時期の女子の試合はどうしても男子に比べて見劣りする部分が多く、特に打撃は「まあ、そうだよな」と感じるシーンが多い。
だが、今回のウェイリーvsヨアナ戦に関してはまったくそんなことはなく。
最初から最後までほぼスタンドでの打撃勝負となったわけだが、的確さや駆け引き等、男子の試合と比べてもいっさい遜色ない(気がする)。
いや、すげえなマジで。
約5年でここまで競技レベルが進化するとは。
ロンダ・ラウジーとジャン・ウェイリーでは階級も違うしファイトスタイルも違う。一概に比較できないことが大前提ではあるが、レベル自体は間違いなく上がっているなと。
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とは言え、ロンダ・ラウジーの試合がつまらないなどと言うつもりはない。
初期のごちゃ混ぜ感の残るゴリ押しファイトもおもしろいし、男子にも匹敵するほどハイレベルな攻防もおもしろい。
また飛躍的にレベルが上がったからと言って、UFC女子の地位を押し上げたロンダ・ラウジーの功績が色あせるものでないのも当然の話である。
日本人選手にも希望が持てる試合だった。ここなら十分やれる可能性があるんでね?
ジャン・ウェイリーのUFCでの活躍は、日本人選手にも希望を持たせるものとなる気もする。
サイズは身長163cm、リーチ160cmとごく普通。
身長168cm、リーチ166cmのヨアナと向き合うと一回り小さいことがわかる。
腰の位置もヨアナよりもかなり低く、逆に下半身は全体的に太く大きい。
これが人種的な差なのか個人差なのか、その両方なのかは何とも言えないが、むしろこの体型は軽量級では有利になるのではないか。
今回の試合でもウェイリーはヨアナよりも腰が強く、倒される気配をまったく感じさせないまま得意のスタンドで勝負し続けた。
その上、前戦では体格的アドバンテージのあるジェシカ・アンドラージをスピード&バワーで圧倒し、一度もペースを渡さないまま秒殺KOで勝利している。
ジャン・ウェイリーがとんでもなく強いことは大前提だが、ここは日本人でも十分目指せる場所なのではないか。もともとジャン・ウェイリーはRIZINで村田夏南子との一戦が組まれていたというし、マジであり得るの話なのではないかと。
というか、ストロー級の日本人は村田夏南子以外に有力な選手がおらんのか……。
繰り返しになるが、軽量級女子なら日本人でもUFCで全然いけそうな気がする。
重量級になるとさすがに先天的なものや人種的な差が大きく、日本人が活躍することは難しい。
ライトヘビー級王者のジョン・ジョーンズやミドル級王者のイスラエル・アデサンヤ、元ミドル級王者アンデウソン・シウバ、ベラトールのマイケル・”ヴェノム”・ペイジなどなど。いわゆる“長くて動ける”タイプが最強というのがMMAにおける一つの答えなのだろうと。
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ああいう身体能力とセンスの塊のような超人に日本人選手が勝つのは困難を極めるとは思うが、軽量級は話が別。ジャン・ウェイリーのように腰が低く下半身の太い体型の方が逆に有利とも言えるわけで。
仮にUFCの舞台で村田夏南子がローズ・ナマユナスに勝ったら僕は卒倒しますけどねww
Invicta FCで王者になったし、スタイル的にジャン・ウェイリーも長く防衛できるタイプでもなさそうだし。将来的には可能性は十分ありそうな……。
今のところ若干差がある感じだけど。
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