ヤンキース田中将大、自己ワーストタイの3ホームランを許すも今季7勝目(3敗)【7回2/3を投げて3失点】
ヤンキース田中将大投手、3本のホームランを許すも7回2/3を投げて3失点で今季7勝目(3敗)。
アメリカ大リーグ、ニューヨーク・ヤンキースの田中将大投手が23日(日本時間24日)に本拠地で行われたボルチモア・オリオールズ戦に先発。7回2/3を投げて101球7奪三振5安打3失点で今シーズン7勝目(3敗)をマークした。
「ヤンキース田中将大後半戦好発進!! 7回3失点のQSで今季6勝目」
自己ワーストタイとなる3本のソロホームランを許すものの、味方の大量リードに守られての勝利。本塁打以外はツーベース2本とほぼ完ぺきな内容でチームの連勝に貢献した。
今日の田中マー君はいい。腕がよく振れている
初回。
先頭打者マチャドをレフトフライ、2番パレデスをスプリットで三振、3番ジョーンズをレフトフライに打ち取り、無難に3人で切り抜けた田中。
うん、今日なかなかいいのではないか。は立ち上がりからよく腕が振れている。
球にも勢いが感じられる。ベース板の上でグイッと打者を押しこむキレのよさがある。
しかも先頭打者の初球にフォーシームを投げるあたり、体調がいい証拠だろう。80マイル後半の高速スプリットにも鋭さがある。若干制球が不安定だが、まあここから上げてくるだろう。そんな期待感の持てる初回のピッチングだった。
ヤンキースが4点を先制して迎えた2回。
この回先頭は4番のクリス・デービス。強打の左打者だ。
初球。外角低めへのフォーシーム。すばらしい制球力で1ストライク。
2球目。内側からストライクになるツーシーム。
これが真ん中へ!! デービスが躊躇なく強振!!
打球はあっという間にライトスタンドへ突き刺さる。ソロホームランで得点4-1。
いや~、これは甘かった。やっぱり見逃してくれないですよね……。
ヌルい半速球が打ち頃のコースに。「どうぞ打ってください」という球だった。
続く5番ライモールドをスライダーでサードゴロ、6番ウィータースをツーシームでセカンドゴロ、7番スクープには初球のカットボールを引っかけさせてショートフライに打ち取る。この回を結局ホームランの1点のみで切り抜ける田中。変化球を駆使して芯を外す上々のピッチングだ。打たれはしたが、問題はないだろう。
田中将大絶好調。オリオールズ打線に付け入るすきを与えない
3回以降、順調にアウトを重ねる田中。
スプリットとスライダーを中心に安定感抜群のピッチングを披露する。ヤンキース打線も快調に得点を重ねてリードを広げる。相乗効果で田中のテンポもさらに上がる。
3回2アウトからの1番マチャドへの投球はかなりよかった。
伸びのあるフォーシームを内角、外角にそれぞれ投げ込んで追い込み、最後は内側からのスライダーでボテボテの内野ゴロ。打ち取られて悔しがるマチャド。狙い通りの投球ができたのか、軽くポンとグラブを叩く田中の姿が対照的だった。
フォーシームの走りを見るに、今日の田中は非常に腕が振れている。スプリットも加速するように鋭く落ちるし、スライダーも打者の近くでバットから逃げるように鋭く変化する。
特に今日は右打者の外側へのスライダーがいい。横滑りするようにストライクからボールになる軌道に右打者はのめるようにバットを振らされている。
どんなにいいコースに投げても、球に勢いがなければ打者は打つ。逆に、多少甘いコースに入っても球に威力があれば打者は打ち損じる。つまり今日くらいキレがあれば、打者は打ち損じてくれるのだ。
さら初球にいつもよりフォーシームを使う場面が観られる。カーブからの入りが多いのはいつも通りだが、フォーシームで初球のストライクをとるピッチングは今シーズンはあまり観られなかった組み立てだ。相手の目先を変える作戦なのだろうか。とにかく今日のフォーシームならそれもありだろう。
ただ、今日はツーシームがよくない。スピードがあまり出ていないし、変化にも鋭さがない。他の球がいいだけに気になるところではある。
4回2アウトから味方のまずい守備で許したツーベース。そして次のライモールドの飛球。どちらもレフトへ危ない角度で上がった打球だったが、いずれもツーシームを捉えられられてのものだった。
さらに6回の先頭打者ロウの放った強烈なピッチャーライナー。とっさにグラブを出してアウトにしたが、あれもツーシームを完璧に捉えられた打球だった。
キレッキレのスライダーで相手打線を手玉にとる。これぞ田中の真骨頂!!
もう一度言うが、今日の田中はスライダーが抜群だ。
5回の先頭打者ウェイターズへ投げたスライダー。左打者の外側からストライクになる球。通称フロントドアだが、この球をマスターしたことによって、左打者への投球の幅が相当広がっている。特に今日のようにスライダーがいい日には絶大な効果を発揮する球となっている。
前にも言ったが、この器用さと柔軟性こそがダルビッシュにはない田中の最大の持ち味なのだ。
6回2アウトからパレデスに許したツーベース。これが久しぶりに打たれたヒットだったが、実はこの打席での組み立てはなかなかよかったと思う。
初球、2球目とスプリットで空振りを奪いあっさり追い込む。高めのフォーシームを1球見せた後、内側のスライダーと外側のスプリットで勝負。結果的に甘く入った最後のスプリットを右中間へ持っていかれたが、そこまでの組み立てはすばらしかったのではないだろうか。特に左打者の膝もとへのスライダー。ここにこの球を投げられるのは相当強みになる。恐らくキャッチャーも今日の田中をリードしていて楽しいはずである。
ギア全開で三者三振!! 開いた口が塞がらない
9-1とヤンキースが大量リードで迎えた7回。
この回、田中がこの日最高のピッチングを見せる。
先頭打者のデービスはフルカウントから投じた膝もとへのスライダーで空振り三振。
続く5番ライモールドには内側、外側と大胆にスライダーを使って追い込み、最後は94マイルのフォーシームで空振り三振!! 飛び跳ねるように躍動する田中のフォームがエンジン全開ぶりを印象付ける。
6番ウィータースはスライダー、カットボールで追い込み、ツーシームでファールを誘った後の4球目。これまた左打者の膝もとへのスライダーで空振り三振!!
すげえ!!
7回を最高の形で切り抜けた田中。
絶好調のスライダーでカウントを稼ぎ、渾身のスプリット、スライダー、そしてフォーシームで勝負。最高だ。
8回に入って球威が落ちる田中。2本のホームランを許したところで降板
8回。
田中がこの回もマウンドに上がる。
前の回まで90球。最近ブルペンを酷使気味のヤンキースとしては、なるべく先発に長い回を投げてもらいたいところだ。今日のような大量リードの展開ならなおさらである。2安打1失点の内容なら、100球未満で交代する理由もない。
先頭の7番スクープを初球のカットボールであっさり内野フライに打ち取る田中。1球で1アウトをとれたのは大きい。
続いて8番ハーディが右打席に入る。
初球、2球目と外側へのフォーシームが外れてカウント2-0。ん? ちょっとキレが落ちてきてるか?
3球目。内側へのツーシーム。
あ、甘い!!
そう思った瞬間、スクープのバットが激しく回転する!!
打球はぐんぐん伸びて、左中間スタンドに突き刺さる。ソロホームランで得点9-2。
これまた完全な失投だった。あそこのコースに半速球を投げてしまえば、見逃してはくれないだろう。まあ大量リードの中でのソロホームランだ。そこまで深刻になる必要はなさそうである。
続く9番ロウには、本日絶好調のスライダーを膝もとに決めてショートフライ。
2アウトランナーなしで迎えた1番マチャド。
初球は外側へのカーブが外れてボール。あ、やっぱりキレがない。
2球目。外を狙ったスライダーが内側に抜ける。ストライクにはなったが、ちょっと危険信号だ。
マウンド上で上半身を動かし、身体の開きを確認する田中。
そして3球目。内側高めへのツーシーム。だがスピードがない!!
マチャドが思い切り引っ張る!! 打球は大きな放物線を描きレフトスタンドへ!! この回2本目のソロホームラン!! 得点は9-3。
う~わ、完全に読まれてた。狙いすましたような打ち方だったな。コースはよかったけど、スピードがなかった。これは疲れだな。
ここで球数が101球となり、監督のジラルディがベンチから出て交代を告げる。
7回2/3で101球7奪三振3失点。被安打5のうちソロホームラン3本。失点はすべてソロホームランという内容でマウンドを降りる田中。
チームはそのまま9-3で勝利し、田中に今シーズン7勝目(3敗)が記録された。
最後はやや疲れが見えたものの、全体的には文句なしの内容だったと思う。
とにかく腕が振れていて、すべての球にキレと勢いが感じられた。特にスライダーは今シーズン一番のできだったのではないだろうか。調子の悪いツーシームを捉えられてしまったが、いずれもソロホームランだったので傷口も深くはならなかった。この辺りも今日の調子のよさと無関係ではないだろう。
ホームランの多さ? 心配いりませんよ。全然大丈夫
今シーズンの田中は被本塁打の多さを指摘されるが、これはある程度仕方のないことだと思う。
もともとストライクゾーンの中で勝負するピッチングスタイルなので、コントロールミスが起きればジャストミートされることは十分考えられる。
さらに昨シーズンの夏前に失速した教訓があるのだろう。今季はより球数を減らすためにストライクゾーンの中で芯を外すスタイルにシフトチェンジしている。特に割合を増やしているツーシーム。この球はコントロールを誤れば一気にホームランボールに化けるもろ刃の剣だ。それを左打者のフロントドアや右打者の内角へ食い込ませたりと、あらゆる場面で投げている。コントロールのいい田中といえど、これだけ多彩な投げ方をすればミスが起こるのはある程度想定内だろう。
前にも言ったが、今シーズンの田中は省エネピッチングを模索している感がある。
昨シーズン前半や今日の7回のような全力投球を続ければ、間違いなく身体がもたない。肘に爆弾を抱えていることもあるのだろう。
「田中将大(ヤンキース)、復帰戦で7回1失点! 堂々の投球で敵地を震撼させる!!」
シーズン後半の勝負どころで力を発揮するためには、ある程度力を抜いたピッチングが必要なのだ。
かといって、力を抜きすぎてしまうと今シーズン最初のように打ち込まれてしまう。シーズン後半まで体力を持続しつつ、メジャーの強打者を抑えられるギリギリの見極めが必要要なのである。
そしてここ数試合のピッチングを見るに、その微調整は完了している。
もしかしたら田中には日本時代のような圧倒的なピッチングを期待している人が多いかもしれない。だが、はっきり言ってそれはあり得ないと思っている。実際には今日のようなピッチングが続くのではないだろうか。
相手を牛耳るような圧巻のピッチングを1度するよりも、6回、7回を2~3点でまとめる安定感。そちらの方がより貢献度が高いことを田中は知っているのだ。そして田中の性格上、迷わずそちらを選択することは明白である。
「マー君、乱調で4敗目。制球に苦しみレンジャーズ打線につかまり連勝ストップ」
一試合ごとに評価が乱高下する今シーズンの田中将大。今後はついに中四日の登板に突入するのだろうか。次回もまた楽しみである。
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