田中恒成vsヤンガ・シッキボ。田中は4階級制覇の準備完了かな。シッキボは“惜しい”選手だった。アムナットになれそうなポテンシャルなのに素直過ぎた【結果・感想】

田中恒成vsヤンガ・シッキボ。田中は4階級制覇の準備完了かな。シッキボは“惜しい”選手だった。アムナットになれそうなポテンシャルなのに素直過ぎた【結果・感想】

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2022年12月11日に名古屋・武田テバオーシャンアリーナで行われたS・フライ級10回戦。WBO世界同級3位の田中恒成が同級4位ヤンガ・シッキボと対戦し、3-0(97-93、97-93、98-92)の判定で 勝利した一戦である。


少々時間が経ってしまったが、先日の田中恒成vsヤンガ・シッキボ戦について。
この試合はリアルタイム視聴はできずに後日見逃し配信で視聴したのだが、もう一度観ようと思ったところすでに配信期間が終了していた。
 
なので、感想としては少々記憶が薄れたものだということをお伝えしておく笑
 
また記事によると田中は2023年中の4階級制覇を宣言したとのこと。
タイミング的にどうなるかはわからないが、とりあえずは「がんばってね」と思っている。
 
井上尚弥がポール・バトラーをKOして4団体統一。“持たざる凡人”が超人攻略を目指した。これをもっと高次元でできればと思わせるバトラーの動き
 

田中は相変わらずの田中。シッキボはいい選手だけど怖さが足りなかった…

試合の感想としては、田中恒成が相変わらず田中恒成だったのと、ヤンガ・シッキボが“惜しい”選手だったなぁと。
 
開始直後にリング上で対峙した両者を比べると、全体的に分厚く腕が短い田中に対してシッキボはすべてのパーツが“長い”。特にリーチは驚きの178.9cm(田中は161.2cm)。前日計量で並んだ写真以上に体格差があるように思えた。
 
リーチを活かしたジャブと左右への動きその他。序盤はシッキボの軽快さに田中も中に入るのに苦労させられていた印象である。
 
 
だが、この選手には絶望的に怖さが足りない。
ジャブの長さ、スパスパと顔面を揺らす的確さはあるものの、1発の威力はそこまでではなさそう。
また近場では自分のリーチを持て余す感じで、若干パンチがオープンになるような……。
 
戦績を振り返ると17勝のうちKOは5。
どちらかと言えばポイントアウト狙いののらりくらりタイプなのだと想像する。
 
田中も2Rの後半辺りでシッキボの長さに慣れたか、無遠慮に前に出るシーンが目につくように。
ちょっと危なそうだなと思わせるのは遠間から打ち下ろす右くらい。
正直、この時点で田中の負けはなさそうだなと思った次第である。
 
エスネス・ドミンゴが富岡浩介を1発KO。ドミンゴすげえな。前回の飯村戦も素晴らしかったし。富岡は完全に勝ち試合だったけどな。ちょっと富岡樹コースに乗った感が…
 

S・フライ級でのスタイルを確立した田中恒成。打たせずに打つの理想から打ち合い上等への割り切り

一方の田中恒成だが、こちらはこの1年でS・フライ級でのスタイルを確立した気がする。
 
2018年9月の木村翔戦くらいまでは足を使った出入り、打たせずに打つへのこだわりが強かった(ように見える)が、S・フライ級初戦で井岡一翔にKO負けを喫して以降はうまく切り替えができたというか。
 
恐らく本人的にはワシル・ロマチェンコのようなスマートさが理想なのだと思うが、ディフェンスのヌルさを考えるとそれは難しい。さらにS・フライ級では今回のシッキボや2021年12月の石田匠など長身選手も増える。
それならむしろ身体の強さを全面に出した打ち合いの方が勝率は上がるのではないか。
 
前回の橋詰将義戦も「序盤はサウスポーの橋詰を攻めあぐねる→徐々に圧を強めてインファイトに移行→5Rで仕留める」流れで見事なTKO勝ちを収めている。
 
田中恒成vs橋詰将義感想。田中が人気ある理由がよくわかる試合。相手に力を発揮させた上でスピード&パワーでゴリ押し→ストップ勝ち
 
今回の試合もまさにそんな感じで、早い段階でシッキボに怖さがないことを把握すると一気にペースアップ。その後は多少の被弾は気にせずグリグリ前進、近場の回転力でペースを引き寄せていった。
 
シッキボもジャブとフットワークで対抗したが、徐々に田中の圧力を抑えきれなくなり押し込まれる場面が増える。
このままではマズいと感じたか、単純に足が動かなくなったかは不明だが、7、8Rはリング中央での打ち合いに応じるもののまったく歯が立たず。
渾身の力で振り切ったワンツーをバックステップでかわされ、身体が流れたところにリターンをもらう悪循環。
 
多少パンチに怖さがあれば田中も踏み込みを躊躇したのかもしれないが、あそこまで無遠慮に前進し続けたことを考えるとマジで「これは大丈夫だ」と思われたっぽい。
 
ここぞの爆発力、強引に流れをひっくり返すメンタルは田中の一番の持ち味と言えそうである。
 

4階級制覇の準備が完了した印象。(僕の)理想は中谷潤人とのWBO王座決定戦だけど…

前回の橋詰将義戦を観ると田中の圧力、爆発力を真正面から受け止めるのは国内やアジア圏の選手では難しい。
また足を使ってさばこうにも石田匠くらいのサイズと巧さがあってようやくギリギリ(その最上級が井岡一翔)。今回のヤンガ・シッキボではちょっと手に負えなかった。
 
諸々を加味すると、本人が言うように4階級制覇を狙う段階にきていることは確かなのだと思う。
 
現状、田中はWBC4位、WBA4位、IBF3位、WBO3位と4団体すべてで上位につけている。
この中で一番チャンスがありそうなのはやはりWBOだろうか。
 
 
ただ、WBOの現王者は井岡一翔。
以前にも申し上げたが、井岡は今年大晦日のWBA王者ジョシュア・フランコに勝利した場合はWBOを返上するのもアリだと思っている。
わざわざ指名挑戦者の中谷潤人とリスクの高い試合をするより(井岡との対戦希望を口にした)WBCのファン・フランシスコ・エストラーダ、IBFのフェルナンド・マルティネスとの統一戦を模索した方が……。
 
井上尚弥vsポール・バトラー、井岡一翔vsジョシュア・フランコ、武居由樹vsブルーノ・タリモ、堤駿斗vsペテ・アポリナル。年末の目ぼしい試合を予想してみる
 
またIBFは先日王者マルティネスとランキング1位のジェイド・ボルネアの指名戦を指示したとのこと。仮に田中がIBFを狙うとしてもだいぶ後になる。


なので、田中としてはやはり井岡が返上したあとのWBO王座を中谷潤人と争うのが手っ取り早いのではないか。
もちろん井岡がジョシュア・フランコに勝利→WBO王座返上までが大前提だが。
 

“惜しい”選手だったヤンガ・シッキボ。アフリカ系の選手にこういう感じの選手が多い気が…

そして敗れたヤンガ・シッキボについてだが、最初に申し上げたようになかなか“惜しい”選手だった。
 
リーチが長く足も動く。あれだけ攻められても最後まで立ち続けたことを考えるとパンチを吸収する柔軟性もありそう。
実際、能力自体はかなり高い選手だったのではないか。
 
ただあと一歩足りないというか、何かが変われば一気に突き抜けそうな、そうでもないような笑
何となくだが、こういう“ポテンシャルはありそうだけどちょっと物足りない”選手はアフリカ系に多い気がする。
 
指導の問題なのか、そもそもの競技レベルが未成熟なのか、もしくは別の要因があるのか。
素人の僕には何とも言えないが、とにかく“惜しい”。
 
たとえば150km超えのボールをバンバン投げるのにちっともホームベース上を通過しないピッチャーとか、そんな感じ。
いわゆる「未完の大器」「ロマン」と呼ばれて期待されたまま消えていった野球選手は過去何人もいたが、それとイメージが被る。
 
田中恒成vs石田匠。田中の勝ちか〜。石田が逃げ切った感じもしたけどな。両者の差は勝負どころでの凄みかな
 

ヤンガ・シッキボはアムナットになれるポテンシャルはありそうだけど、素直過ぎたかな。人のよさそうな顔面してるんだよ笑

ヤンガ・シッキボに関してはやや素直過ぎた印象。
パンチ力のなさやフィジカル面の物足りなさを狡猾さ、試合運びのうまさで補えれば……みたいな。
それこそ僕の大好きなアムナット・ルエンロエンになれるポテンシャルはありそうなのだが。
 
 
そもそも人のよさそうな顔面してるんだよなコイツ。
下記はたまたま流れてきた写真だが、計量直後にもかかわらずやっさし~い目をしてやがる笑


研ぎ澄まされてバッキバキの表情を浮かべる田中とはあまりに対照的である。
 
 
いや、何で端っこやねんお前笑


確かにシベナティ・ノンティンガは格上なんだろうけど。
今回は主役なんだから真ん中で堂々としとけって笑
 
そういうとこやぞマジで。
 
 
この辺は冗談抜きで僕のアムナットさんを見習うべき。
同じ計量直後でもこの表情ですからね。


顔面から性格の悪さが滲み出とるのがわかるでしょww
 
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