田中イキり過ぎたな。パランポンを9RTKOに下すも、試合後に病院に直行。田口良一との統一戦は白紙?【結果・感想】

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2017年9月13日、大阪にあるエディオンアリーナ大阪で行われたWBO世界L・フライ級タイトルマッチ。
同級王者田中恒成がランキング13位の挑戦者パランポン・CPフレッシュマートと対戦。9R1分27秒TKOで勝利し、2度目の防衛を果たした試合である。
 
「田中恒成ええじゃないですか! バルドナドを9RTKOで下し、フライ級初戦を飾る。木村翔戦は…全然わからん」
 
立ち上がりから軽快なステップでパランポンを攻める田中。
だが、打ち終わりにサイドに回り込む瞬間をパランポンに狙われ、右ストレートを被弾。まさかのダウンを喫する。
 
その後も絶え間ない出入りを見せる田中に対し、パランポンは強烈なカウンターで応戦。得意のストレートがたびたび田中の顔面を捉えるなど、一進一退の攻防が続く。
 
「田口負ける? ミラン・メリンドとの統一戦で2017年大トリ。ヤバいな田口。パワーでどこまで圧倒できるか」
 
だが、ハンドスピードを活かした田中のボディ攻撃で徐々にパランポンが失速。中盤以降は田中ペースで試合が進む。それでも食い下がるパランポンだったが、8R終盤のラッシュでダウン寸前まで追い込まれてしまう。
 
そして9R。
田中が右ストレートでダウンを奪い、足元がおぼつかないパランポンを一気に攻めたてる。パランポンも何とか反撃を試みるが、田中の連打をカウンターで被弾。ロープ際で滅多打ちにされたところでレフェリーが試合をストップする。
9R1分27秒、田中恒成のTKO勝利である。
 
なお、勝利した田中は試合後に頭痛を訴え病院に直行。左の眼窩底骨折の疑いとのことで、2017年末に期待されていた田口良一との統一戦に暗雲が立ち込めている。
 
「田中恒成vs田口良一決定か。どうなるかがまったくわからん。今回はTBSで全国中継されるってさよかったな」
 

華麗に倒そうして空回りしたかな。統一戦に向けて弾みをつけるつもりだったんだろうけど

ん~、やっちまいましたな田中恒成。
手ごろな挑戦者をボコって年末の統一戦に弾みをつける予定だったはずが、まさかの大苦戦。
 
ダウンを奪われ、おまけに眼窩底骨折?
本人的にも「情けない試合」と言っていたし、確かにその通りなのかも。
 
というか、個人的には「イキり過ぎかな」と。
 
1R序盤の攻防で「パランポン、いい選手!! パンチがめっちゃ固そう!!」と思ったのだが、それ以上に田中が相手を舐めていた感が強い。
舐めていたというより、「華麗にカッコよく倒してやるぜ」的な意気込みが空回りしていたというのが正解か。
 
「覚醒した田中がフエンテスに圧勝!! “中京の怪物”が絶不調のフエンテスを5RKO。階級アップでパワーが増した田中」
 

ロマチェンコが好きなのはめちゃくちゃ伝わってきた。でも、ちょっとオーバー過ぎるんでないか?

とりあえず、開始直後に思ったのが「この人、ホントにロマチェンコが好きなんだな~」
 
何と言うか、動き過ぎである。
 
左を1発出して大きく距離をとり、左に回りながら踏み込みのタイミングを測る。
ボディストレートのフェイントを1発、パランポンの踏み込みに合わせてさっと離れる。
ジャブを出しながらサイドへ回り、上半身の動きと見切りでパランポンの連打をかわす。
 
確かに鮮やかで華麗なのだが、すべての動作がデカい。さすがにちょっとやり過ぎではないか。
 
以前にも申し上げたが、この選手は試合のペースを握るとイキり出すことが多い。
2016年末のフエンテス戦もそうだが、大げさなサイドステップでオーバーに動き回る。
「俺の超絶技巧を見せてやるぜ」というメンタルなのだろうが、意味があるようには思えない。
 
「ロマチェンコ攻略の糸口見っけ? マリアガボッコボコ。今日も対戦相手をオモチャにして遊ぶ」
 
そして、今回はまさかの試合開始直後からである。
 
試合前に「圧倒して勝つ。最低でもKO」とコメントしていたように、本人にとっては田口良一との統一戦へのステップアップでしかなかったはず。油断とは言わないが、力の差を見せつけてやろうという雑念は間違いなくあったのではないか。
 

実は被弾が多い田中。案外、近づいての打ち合いの方が向いてるような気がするんだよね

また、これも以前に言った記憶があるのだが、この選手は実は被弾が多い。
至近距離で相手のパンチをもらうシーンは割と多く、防御自体がそこまでいいわけではない。
 
シフトウェイトやカウンターで圧倒しつつ、持ち前の強靭なメンタルで攻撃を跳ね返す。どちらかと言えば、激闘型のスタイルに近いと思う。
 
「拳四朗は和製ロマチェンコを目指せ。ゲバラに消耗戦で勝利!! だけど、これじゃない感半端ない」
 
恐らく本人はロマチェンコのような多角的ハイテク連打を理想としているのだろうが、個人的にはあまり必要性を感じていない。
いくら動いても相手の正面を外せていないし、体力を消耗するだけじゃないの? という気がするのだが。
 
サイドに回る瞬間、足が揃ったところを狙われてコテン。
あのパターンの既視感がハンパなかったのだが、やっと思い出した。2014年末の天笠vsリゴンドー戦だ。
 
むしろ向いているのは、前回のアンヘル・アコスタ戦のような近い間合いでの打ち合い。左右へのシフトウェイトで芯を外しながら、流れの中でカウンターを当てていくスタイルの方が合っているのではないか。
 
まあ、あの試合は相手の圧力が強くて余裕がなかったというのがファイナルアンサーだとは思うが。
 
ただ、ダウンを喫した局面からじっくりボディ中心で立て直したのはよかったし、TKOで終わらせたのはさすが田中恒成。5R以降のスタイルは普通にすばらしかった。若干正面に立ち過ぎな感じもしたが。
 
「田中恒成が激闘の末にアコスタを退ける!! すっげえ試合! アコスタも間違いなく最強の挑戦者だったし大満足だね」
 
ちなみにだが、「田中恒成に勝てる可能性のあるのは田口良一。でも、田中が万全の準備で臨めば田口は一歩及ばないかな?」という僕の意見は、この試合後も基本的には変わっていない。
 
田中の怪我で統一戦自体がポシャりそうなのがアレだが。
 

挑戦者パランポンはいい選手だった。スタンプ・キャット・二ワットと同格くらいの強さに思えるよ

挑戦者のパランポンについてだが、先ほども申し上げたようにめちゃくちゃいい選手だった。
 
特によかったのがパンチの固さ。
田中のボコボコの顔面を見れば一目瞭然で、貫通力と破壊力を兼ね備えた拳の持ち主だったと思う。
 
田中の連打に惑わされずにカウンターを狙うセンスもあり、タイという国の奥深さを改めて感じさせる選手だったのではないか。
 
「リゴンドーに勝てる選手見つけた。リゴンドーの倒し方、勝ち方考えた。無謀な挑戦を前向きな妄想に」
 
タイプが違うので何とも言えないが、恐らく2016年末に井岡一翔に挑戦したスタンプ・キャット・ニワットにも匹敵する。
直近のタイの選手で言えば、「ペッチバンボーン<<パランポン≒スタンプ・キャット・ニワット」というのが大まかなイメージである。
 
逆に井岡一翔なら、今回のパランポンも問題なく完封しそうに思える。階級も違うし、あまり意味のない比較なのだが。
 
聞くところによると、パランポンはムエタイとの兼業の選手で、そちらでは敵なしの強さを誇っているとか。
 
なるほど。
言われてみればわかる気がする。縦ノリの動きというか、そのままキックにつなげそうな雰囲気。
 
「アコスタがアレホにKO勝利で初王座。ナイスファイト。田中恒成のすごさが改めてわかる試合だったな」
 
ボクシングで言えば、相手をコーナーに追い詰めるフットワークがあればさらに強くなりそうなのだが、ムエタイとの掛け持ちではなかなか難しいのかもしれない。
 
しかも、現在32歳か。
伸び代という点では、スタンプ・キャット・ニワットの方が期待できるのかも。
 
「田口すごかった。メリンドに完勝するとはね。負けるとか言って申し訳ないww L・フライ級で規格外のフィジカルと戦術の幅」
 

シーサケットのおかげでタイのボクシングが盛り上がるかも。5年10年先が楽しみだね。今のタイにもいい選手はいっぱいいるけど

ここ最近「シーサケット効果でタイのボクシングが強くなる!!」という声が聞こえてくるが、確かにその通りかもしれない。
パッキャオの快進撃でフィリピンのボクシングが盛り上がったように、シーサケットの活躍を目にした若い選手が次々頭角を現すというのは大いに考えられる。
 
ただ、それはあくまで5年10年先の話。
ジェルウィン・アンカハスやランディ・ペタルコリン、マーロン・タパレス、アーサー・ビラヌエバなど。パッキャオに影響を受けたと思われるフィリピンの選手たちは、現在20代半ば~後半である。
 
「絶望の帝里木下。アンカハスに手も足も出ずにKO負け。全局面で完敗でしたね。ぐうの音も出ないほどの一方的な試合」
 
そう考えると、シーサケット二世的な選手が出てくるのは少なくともあと5年先。
今回のパランポンやスタンプ・キャット・ニワットなどは、シーサケットやワンヘン・ミナヨーティンに影響されたわけではなく、普通に強い選手といえる。
 
最近、かませのタイ人ボクサーが多いことが問題になっているらしいが、今回のパランポンのようにタイにも強い選手は当たり前に存在する。中には、日本人選手では手に負えないようなスケールを感じる選手もいるくらい。
 
ボクシング興行の客入りが悪いと嘆く声も聞こえてくるが、あえてタイから強い選手を呼んで、日本vsタイの対抗戦などを開催すれば盛り上がると思うのだが。
 
しかも、そういう対抗戦にこそWBOAP王座をダシに使えばいい。WBOのランキングが手に入るのなら、どの選手もさらにやる気が増すのではないか。
 
「WBOAP王座がしょーもないなんてことは絶対ないから。小原佳太がWBOアジア・パシフィック・ウェルター級王座決定戦に勝利」
 
まあ、言っても仕方ないけどね。現状を何とかする気もなさそうだし。
 
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