田中マー君快投!! フライボール・レボリューションへの対抗策? 2シームを減らしてスライダーとカッター、カーブを増やす?【結果・感想】
2017年6月23日(日本時間24日)、MLBニューヨーク・ヤンキースの田中将大投手が本拠地で行われたテキサス・レンジャーズ戦に先発。8回を投げ、被安打3、9奪三振無失点の好投を見せ、チームの勝利に貢献した。
レンジャーズのダルビッシュとのMLB移籍後初めてのマッチアップとなった田中将大。
160km近い速球とスライダーを中心に7回10奪三振無失点の好投を見せたダルビッシュに対し、田中はスライダー、カッター、スプリットを駆使した投球で相手打者を翻弄する。
延長戦の末、最後はヤンキースが2-1でサヨナラ勝ちを収めたこの試合。
両先発投手がいずれも3安打以下無失点、9奪三振以上を記録したのは1968年以来で、この100年で2度目の快挙だったとのことである。
「松坂大輔さんの2017年成績予想【定例報告】オープン戦ラスト登板で広島を相手に7回無安打無失点」
快投の田中マー君!! ダルビッシュとの初対決は両雄譲らずの大熱戦
田中マー君が快投を披露した。
しかもマッチアップの相手はレンジャーズのエース、ダルビッシュ。
MLB移籍後初の投げ合いとなった両者だが、田中マー君は8回3安打9奪三振、ダルビッシュは7回2安打10奪三振でともに無失点。
MLBにおいて両先発投手が7回以上を投げて3安打以下無失点を記録したのは、この100年で2度目というおまけつきである。
今シーズン16試合101投球回を投げ、6勝5敗 防御率3.12と上々の活躍を見せるダルビッシュに対し、田中は15試合84回2/3を投げて5勝7敗 防御率5.74。
しかもこの前の登板までに21本塁打を喫し、自己ワーストの6連敗中という散々な状況。
その田中の快投に、ホッとしたファンも多かったのではないだろうか。
次回登板は現地時間28日と発表された田中が、今後もこの調子を維持できるかに注目である。
サイヤング賞候補にも名前が挙がった今シーズン。でも、ふたを開けてみれば結果は散々だった。その理由は?
散々な投球で現地メディアからも痛烈な批判を浴びていた田中が、ようやく本来の力を見せつけた。
8回100球3安打9奪三振無失点。
「ランナーを背負って被弾」という悪循環に陥っていた前回までとはうって変わった姿に、ニューヨークのファンも豪快な掌返しを見せている。
僕自身もシーズン当初から田中マー君をサイヤング賞候補に推しており、期待を裏切る投球内容には非常にガッカリしていたところである。
「もっと騒がれていい田中マー君のすごさ。今シーズンはマジでサイヤング賞推しメンです」
だが、開幕から田中マー君の投球を観る限り、昨年と比べてそこまで悪いとは思っていなかった。
普通に球速も出ていたし、変化球の動きもよかった。春先の出来だけなら、むしろ2016年よりもはるかにいい。概ねシーズン前に期待した通りの球を投げていたと思う。
調子は悪くない。
どこかが痛いわけでもない。
だけど打たれる。
防御率は絶望的で、被本塁打は過去最悪ペース。
なぜか。
理由は単純明快で、打者のレベルが上がったから。
そして、2016年よりもボールが飛ぶから。
「進化が止まらない!! ダラス・カイケルがヤンキース打線を7回無失点に抑えてアストロズ先勝。MLBのポストシーズン最高なんじゃw」
MLBのレベルアップが理解不能なほどに凄まじい。三振かホームランという究極の2択を追求した「フライボール・レボリューション」
今シーズン、盛んに言われていることだが、MLBの打者のレベルアップが本当に凄まじい。
ここ数年、MLBでは投手のレベルが著しく上がり、それに伴い全体の平均球速も大幅にアップしている。それによって、一昨年くらいまでは打者側がいいようにやり込められる状況が続いていた。
だが、昨シーズン後半あたりから打者のレベルがそれに追いつき、パワーバランスが拮抗し始めている感が強い。
「2017年マエケンがやばい? 不調? 開幕2戦目に負け投手。今シーズンは苦労するかも?」
僕もMLBの試合は日本人選手中心にちょくちょく観るのだが、正直、ハイレベル過ぎてついていけない部分は多い。
強化版バレンティンのような打者が1番から9番までズラッと並ぶ鬼畜打線。
低めに沈む高速のブレ球を躊躇ないアッパースイングですくい上げ、ホームランか三振かの2択という意味不明な力勝負に終始する。
「阪神ディエゴ・モレノ誕生。150km右腕が日本で活躍できるかを予想してみる。田中マー君とも同僚だったんだってさ」
つまり、ダウンスイングでゴロやライナーを打つより、最初からフライを狙って打った方がコスパがいいという考え。
いわゆる「フライボール・レボリューション」と呼ばれているらしいが、「軽打でヒットを重ねるより、ホームランを打った方が手っ取り早いでしょ」という発想からきているとのことである。
「大谷6回1/3、11奪三振103球で勝敗つかず。なるほどカーブを便利使いか。スライダーの高速化よりも手っ取り早い」
単純かつ効率的な進化を遂げた結果、天井知らずの化け物たちがしのぎを削る舞台のできあがりというわけである。
聞くところによると、ホームランになりやすい打球の角度なども研究されており、実際に打者がその角度で打ち上げる練習をしているとか。
あまりにすご過ぎて、もはや僕の無能な脳みそでは理解が及ばないww
「小久保が侍ジャパン史上最高の有能監督な件について。WBCで世界一を目指す日本野球にふさわしい采配の数々を語る」
それに加え、今シーズンのボールの飛び方。
公に発表しているわけではないが、昨シーズンと比べて飛距離が伸びているのは誰の目にも明らかである。どうやら、ステロイド全盛の90年代後半~2000年代を上回るペースでホームランが量産されているらしい。
おかげで田中マー君だけでなく、各チームのエース級も揃って被弾数が増えているとのこと。ドジャースのエースにして球界最高の左腕であるクレイトン・カーショウですら、2017年6月26日現在、自己ワーストの17本塁打を喫している。
「ダラス・カイケルとかいう88マイルのシンカーをひたすら投げ続けてフライボール・レボリューションに巻き込まれなかった人」
三振orホームラン? 打者のレベルが上がり過ぎて、2シームの軌道ではバットから逃げられない
打者が低めのブレ球に対応した結果、凄まじいインフレが起きているMLB。
その中で、投手側の講じた次の対処法は「スライダー、カーブの高速化」である。
これまでの主流はシンカーや2シームなど、いわゆるシュート系の球。左打者の外角にシュートしながら沈む球でボールの上っ面を打たせ、ゴロを量産する投球である。田中マー君もMLB移籍以降、組み立ての中心を4シームから2シームに変えている。
ところが打者の技術向上とボールの変更により、現在のMLBでは2シームで芯を外す投球が通用しなくなっている。
パワフルな打者が三振を恐れずに力いっぱいアッパースイングするため、多少芯がずれても関係なくスタンドインしてしまう。
奪三振数は増えるが、1~9番までズラッと並んだパワフルな打者が全員躊躇なくバットを振り回せば、必ずどこかでホームランは生まれてしまう。
田中マー君がどれだけいい球を投げても打たれていたのは、恐らくこのためである。
「田中マー君覚醒!! スライダーの高速化、スラッター化でレベルアップ。悪いなメジャー、もうマー君は打てないよ」
スライダーとカッター、カーブを増やして強打者に対抗する。より高速の球をより大きく変化させて空振りを奪う
そして、それを受けての先日の投球。
これまで投球の軸としていた2シームの割合を減らし、80マイル後半で変化量を増やした高速スライダー(スラッター)とカーブで打者を翻弄するスタイルである。
具体的な内容を見ると、
4シーム 12%
2シーム 13%
スライダー 36%
カーブ 11%
カッター 8%
スプリット 20%
となっている。
なお、4月は
4シーム 9.37%
2シーム 30.03%
スライダー 20.66%
カーブ 5.51%
カッター 9.37%
スプリット 25.07%
5月は
4シーム 5.99%
2シーム 20.51%
スライダー 29.72%
カーブ 6.22%
カッター 12.67%
スプリット 24.88%
となっており、明らかにこの日は2シームを減らしてスライダー、カッター、カーブ中心の投球に変えていることがわかると思う。
また、興味深いのが対左打者への2シームの割合。
4月の30.09%、5月の21.93%に対し、先日の登板では2.38%。わずか1球しか投げていないのである。
さらに左打者へのスライダーとスプリットの割合を見ると、4月はスライダーが13.64%、スプリットが30.68%、5月はスライダーが25.67%、スプリットが30.48%。
対して先日の登板ではスライダーが33.33%、スプリットが38.10%で、いずれも大幅に増加していることがわかる。
「大谷165kmキター!! 大谷のストレートの質が悪い? ファールされる160kmより空振りが取れる140kmの方が上?」
左打者の外側に2シームを沈ませてゴロを打たせる投球ではまともに抑えられない。打者の腕が伸びるコースに投げるとすくい上げられ、スタンドインされてしまう。
それより、スライダーやカッター、カーブを身体の近くに落としてスイングを窮屈にさせる。外側にはスプリットをきっちり落とす。
右打者には身体の近くの2シームを見せ球にしつつ、外側に変化の大きなスラッターやスプリットを落とす。
しかもこの日の登板では、4、5月時点と比べて全球種の球速が1~1.5マイル前後アップしている。特にカーブに関しては3マイル近く球速が上がっており、縦スラに近い軌道になっていた。
つまり、より鋭く高速で、なおかつ変化の大きな球を両サイドに投げ分けないと、打者のバットから逃げきれない。今のインフレしまくったMLBで、田中マー君のようなタイプが対抗するには今のところそれが最善策なのだろう。
田中マー君、この投球をずっと続けられるのかな? 相当負担が大きいと思うけど
確かに田中マー君の今回の投球はすばらしかった。
ダルビッシュとのマッチアップも相乗効果となって、気持ちも乗っていたのだろう。
だが、果たしてあの投球を今後も継続することが可能なのだろうか。
4シームがアベレージで94マイル超え、2シームは93マイル。スライダーの球速が86マイルに迫る。中4日の登板間隔であのクオリティをずっと続けるのは、ちょっと難しいように思えるのだが。
ただ、それくらいでないと今のMLBで成績を残すのは困難なのも確かなのだろう。そういう意味で、中4日となる次回登板にはマジで注目したい。
「「リスペクト」を便利使いするお前ら。「マスコミ対応もプロフェッショナルの仕事だ」ってのはお前らマスコミ側が言うことじゃない」
とは言え、今回の投球はホントによかったっすよ。
めちゃくちゃテンション上がりましたからね自分。
やっぱり田中マー君、いいっすわ。ダルビッシュもいいけど。
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