最低だった「ロボット・ドリームズ」。生々しい陰キャの現実を無理やり直視させられる。“持て(モテ)る側”の人間が下を見つけて安心するための映画。2024年ワースト1位【感想】

最低だった「ロボット・ドリームズ」。生々しい陰キャの現実を無理やり直視させられる。“持て(モテ)る側”の人間が下を見つけて安心するための映画。2024年ワースト1位【感想】

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映画「ロボット・ドリームズ」を観た。
 
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「ロボット・ドリームズ」(2023年)
 
ニューヨークで暮らすドッグは孤独感に苛まれていた。
 
窓の外を見れば幸せそうな夫婦の姿、楽しそうに遊ぶ子どもたち。
ところが部屋に戻ればそこはいつも通りの孤独な空間。
 
薄明かりの中、ゲームを終えたドッグはレンジでレトルトのピザを温める。
そして適当にチャンネルを回していると、ある通販のCMが目に飛び込んでくる。
 
「友達ロボット」。
 
楽しそうな映像、「ARE YOU ALONE?」のキャッチコピーにドッグの心は大きく動かされる。
 
 
数日後、彼の元に大きな箱が届けられ……。
 
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フランス・スペイン合作の「ロボット・ドリームズ」。先日の「動物界」はフランス・ベルギー合作だったけど

先日「動物界」を観に映画館に足を運んだのは下記の通り。
 
映画「動物界」感想。ウイルス映画だと思ったらマイノリティとの共存、差別がテーマだった。早い段階で不幸な結末が見えたのはキツかったね
 
その際に上映前のCMで今作を知り、さっそく行ってきた次第である。
 
ちなみに「動物界」はフランス・ベルギー合作だったが今作「ロボット・ドリームズ」はフランス・スペイン合作とのこと。
 
近年合作映画がどんどん増え、監督も多国籍化が進んでいるとか。
今作もフランスとスペインの合作(監督はスペインの人)ながらも舞台は米・ニューヨークである。
この流れがどう影響するのかはわからないが、今後も映画界はどんどんボーダーレスになっていくのだろうと。
 

最低の映画。これはない。マジでない。間違いなく2024年ワースト1位

映画の感想だが、はっきり言って「最低だった」
 
今作は各所で絶賛され評価も上々。当日もあまり大きくないミニシアターにかなりの人数が集まっていた。
 
僕もCMを観て期待が膨らんでいたのだが、ないなと。
 
うん、ないな。
これはないですね。
 
“ありよりのなし”とかではなく、100%ない。
間違いなく2024年(映画自体をあまり観てないけど)のワースト1位である。
 

“あるある”すぎてしんどい。導入部分でボッチの陰キャ宣言されてメンタルにきた笑

表題の通りだが、僕が今作を「ない」と思ったのは“あるある”すぎてしんどかったから。
「ない理由があるある」とわかりにくいことを言ったが、要はそういうこと。
 
今作は主人公ドッグが孤独を紛らわすために「友達ロボット」を購入するところからスタートするわけだが、彼の孤独の表現がとんでもなく生々しい
 
幸せそうなカップル、楽しそうな親子の姿に孤独感を募らせるドッグ。
夜中に1人ゲームに興じるものの、虚しさしか残らない。
で、適当にチャンネルを回してたまたま目に入ったCMに釘付けになる。
 
この時点でドッグという人間(犬)が人付き合いが苦手な陰キャだと判明する。
さらにレトルトのピザ? をレンジで“チン”する姿があまりにナチュラル。レンジの中を眺めるドッグの表情からも「いつものコレ」「別に旨くも不味くもないけど」というザ・日常が感じられる。
 
ニューヨーク住まいなことを考えれば恐らくドッグの収入はぼちぼち。裕福ではないが食うに困るほどでもない。とりあえず「友達ロボット」を即決で購入できるくらいの蓄えはある。
 
ただ、申し上げたように人付き合いが苦手で不器用な陰キャタイプ。
どのくらいの年齢かは定かではないが、これまで「いい思いをできない側」にいたことは容易に想像がつく。
 
もう、この時点でいたたまれない。
 
僕自身、どちらかと言えばボッチ気質の陰キャな人間である。
導入部分でドッグが自分と同類? であると宣言されたことでだいぶメンタルがやられた笑
 
映画「ユニバーサル・ソルジャー」感想。ジャン=クロード・ヴァンダムとドルフ・ラングレンのピーク。あと、アリー・ウォーカーがいい味出してる
 

妄想ですら幸せになれない陰キャっぷり。やることなすことズレていて間が悪いのも…

ロボットが砂浜に置き去りにされて以降もしんどさは加速する。
 
不時着したカヌーのクルーがオイルを補給→動けるようになったロボットがドッグの家を訪れるも、彼はすでに別のロボットを購入している。ドッグと家に入る瞬間、新ロボットが蔑みと誇らさの入り混じった笑みを向けてくる……。
ところで目が覚める
 
 
出会いを求めてスキーのツアーに参加したドッグだったが、たまたま近くにいた陽キャ2人に目をつけられてしまう。
彼らはドッグが初心者であることを知りながら上級者コースへ連れて行き、無理やり滑らせる。
慣れない操作に戸惑いながらどうにか体勢を立て直すドッグ。ところが後ろからきた陽キャ2人に邪魔され、茂みに突っ込んでしまう。
 
その帰り道。
楽しそうにおしゃべりする陽キャの後ろで三角巾で腕を吊ったドッグの姿が……。
 
 
それ以外にも閉鎖されたビーチに忍び込んで補導されたり、ロボットが見つからずに砂浜を掘り続けて周囲をドン引きさせたり。
 
陰キャにしてはだいぶ行動的だが、少しずつズレていてすべてにおいて間が悪い。
自然と妄想を膨らませるが、妄想の中ですら幸せになれない。普段の卑屈な自分に引っ張られて苦しい結末を迎えてしまう。
 
これらすべてが自分の姿を俯瞰で見せられているようで吐き気がする。
 
 
うん、その前フリとやらがデカすぎて吹き飛ばされそうになるのよ笑

「「都市生活者の孤独」という前フリが効いているからこそ、ドッグの喜びが何十倍にもなって、観ている我々に響いてくるのだ。」


 

陽キャ人生しか知らないヤツに陰キャの気持ちなんてわかるわけがないんだよ

突然動き出した雪だるまに連れられてボーリングに行くシーンなどはクソ以外の何ものでもない。
 
陽キャで友人も多い雪だるまニキは誰でも分け隔てなく付き合えるタイプ。
 
たまたま出会ったドッグを気軽にボーリングに誘うが、彼の周りにいるのは決していいヤツばかりではない。
その中の1人を紹介されるドッグだが、いきなり現れた根暗野郎に露骨に拒否反応を示され受け入れられる気配はゼロ。
 
ところが陽キャ人生しか知らない雪だるまニキはそんなことに思いが及ぶはずもなく。
自分が楽しいなら他人も楽しいに決まっている。当然ドッグも楽しんでるはずだし周りも新しい仲間を歓迎しているに違いない。
 
ドッグの居心地の悪さなど知る由もなく、冷笑と盛り上がりの区別すらつかないおめでたいヤツ……。
 
これはドッグの夢で起きた出来事だが、上述の「自然と妄想を膨らませる」「普段の自分に引っ張られて妄想の中ですらハッピーになれない」という陰キャの特徴そのものである。
 
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ドッグとダックのエピソードがまんま「キャバクラ嬢に依存するモテない君」だった件

極め付けは広場で出会ったダックとのエピソード。
ボッチ凧揚げがうまくいかず、たまたま近くにいたダックに手伝ってもらうところから関係がスタートするのだが、あんなもん、完全にキャバクラ嬢に依存するモテない君のムーブだろと。
 
恐らくダックにとってドッグとの出会いは一期一会にすぎない。
彼女は引っ越し先でも同じように友達ができるし別れもカラッとしている(と思う)。
 
ところがドッグにとってダックはようやくできた唯一の友人。
向こうも自分を一番に思ってくれているはずだと言い聞かせ、連絡が取れなくなったあとも何度も電話をかけて一途に待ち続ける。いてもたってもいられずついには家に押しかけてしまう。
 
相手に依存するあまり妙に積極的になる上に経験の少さからか距離の取り方が下手。
ついでに言うと、釣り糸が上手く扱えない不器用さ、鈍臭さも陰キャそのものである。
 
ドッグよ。
わかる、わかるぞ。
 
お前は俺か?
俺なのか?
 
そうなのか?
そうなんだな?
 
 
もう涙が止まらねえっす(別の意味で)笑
 
 
そもそも論として、友達(ロボット)を金で買っている時点でキャバクラで寂しさを紛らわすモテない君と何ら変わらないという噂も……。
 
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ラストがアレでいいわけないだろ。生々しい現実と向き合いたいなんて誰が言ったよ?

そして世間で大絶賛が止まらない? ラストについて。
 
ロボットとドッグはギリギリのところで行き違い、それぞれの人生? を歩み続ける→エンドロール。
 
いや、ダメだろ。
そうじゃねえだろ。
 
そこはハッピーエンドで締めねえと。
 
ドッグもロボットも、ロボットを直してくれたおっさんも、新しく購入した黄色いロボットも。登場人物全員がハッピーになる結末を用意しろや。
あの程度で俺たち陰キャが納得すると思ってんのか、あ?
 
 
散々申し上げてきた通り今作は「陰キャあるある」がすぎる。
自分の黒歴史を強制的に見せられているようでメンタルが抉られる。
 
基本的に僕が映画に求めているのは非日常感。
ひと時の現実逃避で幸せな気分になりたい。極論、その瞬間だけ別の人生を妄想して楽しい気分を味わいたい。
 
生々しい現実と向き合うなどもってのほかである笑
 
アニメ映画「SAND LAND」クッソおもしろい。結局冒険活劇はベタでいい。メカもめちゃくちゃカッコいい。世界が未知のロマンに溢れていた頃
 

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今作のドッグはガチの陰キャではない。“持て(モテ)る側”が下を見て安心(同情)するための作品

マジな話、ドッグのように日々の孤独感に苛まれている方はそこそこ多いと思っている。
そうでなければ異世界転生ものがジャンルとして確立されるはずがないし、モテない男の理想を具現化したハーレム作品が量産されるはずもない。
 
今とは別の人生を生きたい、イージーモードで人生をやり直したいという妄想はどなたにも少なからず存在するのではないか。
 
そんな方たち(僕を含めて)にとって今作はまったく優しくないと申し上げている。
 
 
それ以前にガチの陰キャはあそこまで行動的ではない
 
ガチの陰キャは「友達ロボット」を購入しない、観光地であんなはしゃぎ方はしない、出会い目的のスキーツアーにも参加しない、ボッチで凧揚げなど絶対に行かない。
 
なぜならガチの陰キャだから
ガチの陰キャは寂しがり屋なくせにプライドが高く見栄っ張り。出会いの場に1人で足を運ばない。
なぜならガチの陰キャだから
 
つまり今作は「“持て(モテ)る側”の人間が下を見つけて安心するための映画」である。
 
ヒエラルキー上位の人間が非モテの生態を想像で作り上げたのがドッグという人物。
それを“持て(モテ)る側”の人間が見て「自分より下」だと安心(同情)するための作品。
 
「はじめの一歩」が細切れすぎてちっとも乗れない。毎回盛り上がりそうなところで休載、ページ減の繰り返し。これはもはや作者の計算なのか? とすら…
 
繰り返しになるが、マジで涙が止まらない(別の意味で)笑
 
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