パッキャオの敗者の弁、言い訳振り返り。グッド・ルーザーなんぞクソくらえ。自分勝手なエゴイストが生み出すカタルシスが大好きです

パッキャオの敗者の弁、言い訳振り返り。グッド・ルーザーなんぞクソくらえ。自分勝手なエゴイストが生み出すカタルシスが大好きです

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潔く負けを認め、勝者をたたえる敗者のことを「Good Loser(グッド・ルーザー)」と呼ぶらしい。
 
「敗者は黙って去るべき」
「謙虚に振るまうことが美徳」
僕が思うに、世間一般? では「敗者はグッド・ルーザーであってこそ」という風潮が強い(ように感じる)。
 
中でもスポーツの世界では負けた側が試合後にごちゃごちゃと言い訳を並べることを良しとしない。
素直に敗北を受け入れ、勝者をたたえることこそスポーツのあるべき姿。強者であればあるほど公の場では“品格”を求められるケースが多い(気がする)。
 
当然だが、ファンの側も「真の強者は人間性が伴ってこそ」と考える人間が多い。
感想コメントなどを読んでも“ナイスガイ”“好感度”といったフレーズが散見されるし、潔さや謙虚さ、人間性はスポーツ選手の人気に大きく影響する。
 
 
ただ、僕はこの「Good Loser(グッド・ルーザー)」というヤツにそこまで興味がない。
基本、スポーツ選手の人間性などはどうでもいいし、「そりゃ強者は自分勝手なエゴイストに決まってるだろ」とも思っている。
 
ボクシングで言えば、2016年11月にアンドレ・ウォードに敗れたセルゲイ・コバレフが不満タラタラの表情で「人種によってジャッジが左右されるのはよくない」と絞り出すような声で答えたり、2019年1月にマニー・パッキャオに敗れたエイドリアン・ブローナーがリング上でのインタビューで「俺が勝ってただろ!!」とキレ散らかしたり。
 
最近では、2020年10月にテオフィモ・ロペスに判定負けを喫したワシル・ロマチェンコがいまだにグチグチ文句を垂れていたりする。

 
そして、僕はこの“試合後に敗者がガタガタ喚き散らす光景”が嫌いではない(ロマチェンコはさすがにちょっとしつこいけど笑)。
 
申し上げたように強者は基本的に自分勝手なエゴイストだと思っているし、結局ボクシングの原点は“腕力自慢の我の張り合い”。崇高なスポーツ、競技性がどうだとキレイごとを並べたところで、どこからどう見ても殴り合いである。
 
 
自分よりも強いヤツの存在が我慢できない。
肩で風切って歩きたい。
女にモテたい。
 
自己顕示欲、煩悩丸出しの俺様人間に謙虚さを求めてどうするの?
ボクシングが育ちのいいボンボンばっかりになったとして、それの何がおもしろいの?
強烈な雄度とウジウジした往生際の悪さが混同するからこそ、後世に残るようなドラマが生まれるんですよOK?
 
 
2016年5月のアムナット・ルエンロエンvsジョン・リエル・カシメロVol.2なんかはマジで素晴らしかったですからね。
 
初戦からアムナットの首投げ、露骨なクリンチ作戦にイライラを募らせていたカシメロが強烈なボディで4RKO勝利→跪いて立てないアムナットに舌を出して「ざまあみろ」のパフォーマンス。
 
ああいう感情が爆発する瞬間を目の当たりにできるのもボクシングの醍醐味であり、それが観る側の熱量にも直結する。
 
「強者こそ人格者であれ」「Good Loser(グッド・ルーザー)」が理想なのはわかるが、それが必ずしも最適解とは限らない。人間の本音がむき出しになる瞬間のカタルシスというのは間違いなく存在するわけで。
 
 
「敗者は黙って去るべき」「謙虚に振るまうことが美徳」の枠内からこういう名場面は絶対に生まれない↓


で、表題の件。
エゴイスト揃いのボクシング界の中でも僕が特に気に入っているのが6階級制覇王者マニー・パッキャオ。
フィリピンの英雄として大統領選挙への出馬を表明するほどの大スターだが、この人のザ・言い訳マンっぷりは目を見張るものがある。
 
というわけで、今回は「僕が大好きなパッキャオの敗者の弁」と題してパッキャオの歴代の言い訳を振り返っていくことにする。
 
 
一応申し上げておくと、僕が「Good Loser(グッド・ルーザー)なんぞクソくらえ」と思っているだけで、スポーツ選手の人格を重視する人を否定する気はまったくない。
 
ボクシング好きな選手TOP10。普段「選手の人間性には興味がない」とかほざいてるけど、パーソナルな部分が重要なのかも。オレ様気質な選手が意外と嫌いじゃない
 

僕が大好きなパッキャオの敗者の弁:その1

「ハメられた」(2017年7月 vsジェフ・ホーン)
 
WBO世界ウェルター級タイトルマッチでジェフ・ホーンに敗れたパッキャオが試合後のインタビューで、
「ハメられたと感じた」
「ジェフ・ホーンがやっかいだったのは肘と頭だけ」
「審判が何もしなかったせいで負けた」
と答えた件。
 
試合終了直後は「判定を尊重する」とコメントしていたのに、帰国してから一転、判定やホーンのダーティファイトへの不満を散弾銃のように喚き散らしたとのこと。
 
「Pacquiao: ‘I Felt I Was Set Up’ in Controversial Loss to Horn!」
「Pacquiao: Horn’s Head and Elbows Were Issues, Not His Power」
 
いや、素晴らしい笑
 
微妙な判定、ジェフ・ホーンの強引なファイトに対するイライラはもちろん、パッキャオの自我の強さがよく表れたコメントである。
 
 
この試合のパッキャオはすこぶる動きが悪く、やはり政治家とボクサーの両立は難しいのでは? とも言われていた。
 
ところがそれ以降はルーカス・マティセ、エイドリアン・ブローナー、キース・サーマンに3連勝。
要するにこの時期は政治活動とボクシングを両立するルーティンが完成していなかったのだと想像する。
 
そこさえ解決できればまだまだやれると判断したからこその現役続行だっただろうし、実際に2018年4月~2019年7月までの3試合は素晴らしいパフォーマンスだった。
 
ゲイリー・ラッセルが右肩ベコンでマグサヨに判定負け。思った以上にショックがデカいw 年一キングは勝ってこそのネタキャラなのに
 

僕が大好きなパッキャオの敗者の弁:その2

「もっとも簡単な相手に負けた」(2021年5月 vsヨルデニス・ウガス)
 
2019年7月のキース・サーマン戦以来、約2年ぶりのリング復帰となったウガス戦。この日のパッキャオは序盤から足取りが重く、ウガスの鋭いジャブ、右フックを被弾しまくった末に0-3の判定負けを喫してしまう。
 
で、試合後の会見では「引退を考えている」とコメント。翌日に自身のSNSに「ウガスと彼のチームを祝福したい」と投稿するなど、今回は素直に負けを受け入れたと思われたが……。
 
後日のインタビューでは「ウガスは今までの対戦相手の中でもっとも簡単な敵の1人」だったと豪語し、序盤に足のけいれんを起こしたことが敗戦の要因だと主張。
 
ウガスの単純なファイトスタイルを攻略するのは容易だとして再戦をほのめかし、さらに「アル・ヘイモンに連絡するだけで再戦はかなう」と自身の立場をアピールすることも忘れなかった笑
 
「Filthy Pacquiao hints at rematch after loss against ‘one of the easiest opponents I ever faced’」
 
もう、最高すぎるとしか言いようがない。
結局再戦は実現せずにパッキャオは正式に引退を表明したわけだが、42歳になってもこれだけ自分勝手な負けず嫌いでいられるというのはやはりすごい。
 
20年以上にわたってトップ戦線に君臨し続けるにはそれなりの理由があるのである()


 

僕が大好きなパッキャオの敗者の弁:その3

「試合前に肩を負傷した。でも書類上の不手際で痛み止めを打てなかった」(2015年5月 vsフロイド・メイウェザー)
 
2人合わせて300億円オーバーという凄まじいファイトマネーが動いたこの試合。結果的にはメイウェザーの安全策によって「世紀の凡戦」と呼ばれてしまったわけだが……。
 
まあ、それはそれとして。
 
試合後の会見でパッキャオが実は練習段階で左肩を負傷していたと告白。試合を延期しようとも思ったが、規模の大きさを考えるとリングに上がらざるを得なかった。
などなど。
突然釈明をおっ始める事態に。
 
後半からポイントゲームに徹したメイウェザーに対しては「彼は何もしなかった」
自身の怪我については「書類上の手違いで痛み止めを使えず、本来の力が出せなかった」
 
「Manny Pacquiao fought with injured shoulder, was denied shot in locker room」
「Manny Pacquiao was denied treatment for his injured shoulder before the Mayweather fight because of a paperwork blunder」
 
悔しさのあまり、敗戦の理由を運営側、プロモーターに押し付ける英雄パッキャオさん。
おかげで再戦に乗り気だったメイウェザーを激怒させてしまうという。
 
 
繰り返しになるが、こういうウジウジとした往生際の悪さはガチで嫌いじゃない。
 
これをダサいと思う方は多いが、僕に言わせれば「さすがはパッキャオ」である笑
 
歴代No.1の規模、注目度の中で開催された一戦で明確に負けておきながら、いっさいそれを認めようとしないメンタルは賞賛に値する。
 
 
「自分を舐め腐った相手を屈服させたい」
不純物まみれのドロドロな動機が明日への活力を生み出すというのは確実にあるのでね。
 
ノニト・ドネアの次戦以降を予想(希望)してみる。ドラマ・イン・サイタマ2はあまりそそられないし、カシメロの停滞が邪魔で仕方ないw
 

僕が大好きなパッキャオの敗者の弁:その4

「あれはラッキーパンチだった」(2012年12月 vsファン・マヌエル・マルケス)
 
宿命のライバル、ファン・マヌエル・マルケスとの4度目の対戦。
序盤こそ優位に試合を進めていたパッキャオだったが、5Rあたりから徐々に動きが鈍り、6R終了間際にマルケスの右カウンターを被弾。顔面からキャンバスに落下しそのままピクリとも動かず。すぐさまレフェリーが試合を止める衝撃的な結末に。
 
のちにマルケスの禁止薬物使用が疑われるなどケチがついたものの、間違いなく2010年代前半を代表する名シーンだった。
 
そして、この試合から数日経ったパッキャオのコメントがあまりに秀逸。
 
「あれはラッキーパンチだった」
 
「Pacquiao: ‘It’s a lucky punch’」
 
この試合のパッキャオは2000年代に比べてやや下降線に入り始めていた時期。
30歳を超えて身体能力も頭打ちとなり、これまでのように無尽蔵のスタミナで12R動き続けることは難しい。
メンタルは20代のままだがそこに身体がついてこない。非常に中途半端な時期だった(と思う)。
 
僕もこの試合をリアルタイムで観ていたのだが、5Rあたりでパッキャオの動きがガクッと落ちたことを覚えている。
踏み込みスピード、サイドへの動きが目に見えて遅くなり、「あれ? これは危ないか?」と思っているうちにマルケスのカウンターがズドン。
 
普通に観ていればアレがラッキーパンチでないことは明白なのだが、そこは俺たちのマニー・パッキャオ。“たまたまラッキーが起きた”のゴリ押しで第5戦への布石を打つ粘着っぷりを発揮してみせる。
 
正直、さすがに5回目はいらんだろという話なのだが、どうあっても負けを認めないパッキャオには清々しささえ感じるw
上述の「強者は自分勝手なエゴイストに決まっている」という言葉通りの面の皮の厚さである。
 
 
 
マニー・パッキャオ(33)
「たまたまラッキーパンチが当たって負けた」
 
マニー・パッキャオ(36)
「肩の怪我で力を発揮できなかった」
 
マニー・パッキャオ(38)
「ハメられた。レフェリーが未熟だった」
 
マニー・パッキャオ(42)
「今までで一番楽な相手に負けた」
 
マニー・パッキャオという選手の往生際の悪さには改めて惚れ惚れさせられる。
 
できることなら今後も闘争心をなくさず勝負師のままでいてほしい。
そして、いずれは“ボクシング界のペレ”として老害化してくれれば(さすがにそれはない笑)。
 
 
ちなみにだが、パッキャオのような自分勝手で我の強い人間が大統領に向いているかは知らん。
 
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