三浦vsバルガス壮絶決着!! 最強挑戦者フランシスコ・バルガスに三浦隆司がTKOで敗れて王座陥落!! 最高の打撃戦に大満足の結末!!

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入道雲イメージ
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WBC世界S・フェザー級タイトルマッチが21日(日本時間22日)にアメリカ・ラスベガスで行われた。
チャンピオンの三浦隆司が同級1位の最強挑戦者フランシスコ・バルガスに9回TKO負けを喫して5度目の防衛に失敗。残念ながら王座から陥落した。

試合は倒し倒されの大激闘。
ミゲール・コットvsサウル・“カネロ”・アルバレス戦のセミファイナルとして行われた試合だったが、このメインイベントを食うほどの好試合だったことは間違いない。

「“カネロ”・アルバレス、コットに大差判定勝ち!! 最高峰の技術戦に完勝し、王座獲得!!」

この試合で三浦の評価は下がるどころか、むしろ上がるのではないだろうか。今後もラスベガスのリングから声がかかり、さらなるビッグマッチの舞台が用意されるかもしれない。

「ゾンビか!! サリドがバルガスを追いつめ惜しくもドロー!!」

想像以上の激闘。三浦の圧力は本物だ

結果的に三浦にとっては残念な結末を迎えてしまったが、僕の予想を遥かに超える大激戦、大激闘であった。すべてが予想外というか、予想以上の試合だった。

「三浦隆司vsフランシスコ・バルガス in ラスベガス予想!! コットとアルバレスのセミファイナルで自慢の強打を存分にアピールできるか?」

スロースターターだと思っていたバルガスは予想以上に序盤からエンジン全開で飛ばしていたし、バルガスが長い左リードで三浦の突進を遮断するかと思ったが、これが三浦の突進に通用しないのも予想以上だった。相手との距離を詰める三浦の技術は僕の予想以上に向上していた。
そして左では止められないと判断したバルガスが、右ストレートで三浦の突進を受け止める作戦に切り替えたのも予想の遥か上をいっていた。

「江藤光喜vsクアドラス予想!! 無敗王者のカルロス・クアドラスに挑戦する長身の江藤光喜。人生を賭けて挑む一戦を予想する!!」

あそこまで詰められても諦めずに自分の距離で戦うことに徹したバルガス。あそこまでバルガスを追いつめながらも決死の反撃を許して陥落した三浦。

8Rあたりからバルガスのパンチが的確に三浦の顔面を捉えていたのと、バルガスの残りの体力を考えた上で、陣営は9Rが勝負だと判断したのだろう。
パンチが当たることはわかった。距離感も掴んだ。後は強く振り抜くだけ。三浦の圧力に負けないような強いパンチを打ち込んで、勝利をもぎ取る。そういう決意が感じられた9Rのバルガスの攻勢だったのではないだろうか。

開始直後にダウン寸前のピンチを迎える三浦。だが、徐々に流れを引き戻す

試合としては、前に出て得意の強打を打ち込みたい三浦に対し、長いリーチを活かして離れた位置で戦いたいバルガス。そういった流れだったと思う。

ファンマ・ロペスを完膚なきまでに叩きのめしたバルガスだが、さすがに三浦の強打と真正面から打ち合うのは危険だと感じていたのだろう。ラウンド序盤は左を伸ばして三浦の突進を止めようという意図が感じられるボクシングを見せていた。
だが、三浦の突進はバルガスの予想を遥かに超えていた。ラウンド中盤になると2人の距離は縮まり、三浦が自分の距離で左右の豪打を振り回すシーンが多く見られた。

「木村悠vsペドロ・ゲバラ予想!! 商社マンボクサーが弁護士チャンピオンに挑む!!」

好戦的なバルガスも三浦の突進に強打で対抗する。だが、どうしても正面衝突では三浦の圧力に押し込まれてしまう。

三浦のパンチの強さや突進力を肌で感じたバルガスはすぐに作戦を切り替える。三浦が出てくる瞬間を狙って左ジャブを出して、すぐにバックステップ。このパターンで三浦の突進を防ぐ作戦に切り替えたのである。

「ウォータースがソーサにまさかのドロー!! S・フェザー級転向初戦で連勝ストップ」

1R中盤。
右ジャブをかわされ、バルガスの右をカウンターで豪快にもらう三浦。必死にダウンを堪えるが、ここぞとばかりにバルガスがラッシュを仕掛ける!!
膝が笑ってよろめく三浦。身体を預けるようにして何とか堪える。
いきなり決まるかと思われたが、どうにかラウンド終了までしのぎきる。

ここは本当に危なかった。
試合開始直後で身体がほぐれていなかったのだろう。バルガスのハンドスピードに慣れないうちにいきなり被弾してしまった。

「木村悠が1ヶ月休職の覚悟で挑んだ世界戦で逆転勝利!! ゲバラに判定勝ちで世界王座奪取!!」

さらに、序盤はバルガスの左フックが三浦の顔面をカウンターで捉えるシーンが目立った。三浦はこの左に右を被せようとするのだが、スピードに差があるためにバルガスを捕まえることができない。三浦の大きな右をかわし、打ち終わりにバルガスの左フックが三浦の顔面に入る。三浦はとにかく近づいての打ち合いに巻き込みたい。

3Rに入ると、バルガスのパンチが目に見えて大振りになる。
恐らく1、2Rで三浦のパンチを脅威に感たのだろう。自分も強いパンチを出して三浦の前進を止めようという意図が感じられる。この力み方はチャンスだ。

「長谷川穂積辛勝!! カルロス・ルイスに2度のダウンを奪われながら僅差判定勝ち」

プレッシャーを強める三浦。
2人の距離が徐々に近づく。

2Rまではバルガスのハンドスピードにまったくついていけなかった三浦だが、3R以降は身体もほぐれてきたのだろう。スピード差にも慣れて、だんだんと自分の距離での打ち合いに持ち込むシーンが多くなる。そして、打ち合いの局面で三浦がバルガスを押し込むシーンが目立ち始めるのだ。

「ボンバー三浦vsサリドキター!! 好戦的インファイター対決がアメリカで実現。バルガス戦を上回る激闘に期待感」

3Rに入ると、バルガスの動きが露骨に落ちる。パンチに迫力がなくなり、いきなりのパワーダウンだ。三浦のプレッシャーが効いたのだろう。
さらに序盤はタイミングが遅れていた被せの右もバルガスの左に合い始める。

おお!! これは期待が持てるぞ。
と思っていた矢先。

三浦の左がモロにバルガスのアゴを捉える!!
吹っ飛ぶようにダウンするバルガス!!

すげえ!! さすが三浦だ。
試合の流れが完全に変わった。
変わったというより、三浦が自らの力で引き寄せた!!

前回のファンマ・ロペス戦でも思ったのだが、バルガスは接近戦でガードが開く癖がある。三浦がこの瞬間を逃さずに左を打ち抜き、バルガスに尻餅をつかせたのだ。

「内山がフローレスを粉砕!! 誰がゴリラをリングに上げていいって言ったよww」

何とか立ち上がるバルガスだが、足下がおぼつかない。
距離をとって小さいパンチを出すバルガス。だが、三浦の強烈な一発が身体に当たるたびにバルガスの動きが止まる。頭を振って前に出たいのだが、三浦の圧力がすごすぎるのでガードするので精一杯なのだ。

三浦が右を打ち込む。
バルガスが左にステップして身体を入れ替える。
その瞬間、三浦がバルガスの左足のさらに外側に自分の右足をねじ込んで退路を断つ。左へ回れなくなったバルガスはまっすぐ下がるしかなくなる。その瞬間に三浦がまっすぐ踏み込んで左をズドン。
この追い足こそ、インファイター三浦の大きな武器である。

立ち上がったはいいが、右目の腫れがひどいバルガス。
細かいパンチを出すが、ダメージの大きさは明らかだ。一発一発のパンチにまるで迫力がない。
これはチャンスだ。倒せ三浦。

「天才三浦隆司がミゲル・ローマンの努力を牛耳るからまあ見とけ。S・フェザー級トップ戦線生き残り」

ゆったりとしたリズムで相手を追いつめる三浦

7Rに入ると、バルガスがリードジャブを使わずにいきなりの右で反撃に出る。
このパンチを無防備にもらい続ける三浦。相手の変化に戸惑いが見られる。

恐らく、バルガスは左だけで三浦の突進を止めることは無理だと判断したのだろう。かといって、これだけ距離を詰めるのがうまい三浦から足を使って逃げ切ることもできない。
そこで、右でリードパンチを打つことで三浦の突進を止める作戦に切り替えたのである。

この判断によって試合の風向きが再び変わる。

右のストレートを打ち込むバルガス。そして一転して左のアッパー。
これはうまい。
あれだけ前のラウンドからまっすぐの軌道を意識させておいて、そこから意表をついて下からの突き上げ。
バルガスと同様、三浦の顔面も徐々に腫れ始める。まさしく大激戦だ。

「バルテレミーは強いし上手いぞ!! 内山も三浦も助かったな」

8R。
序盤は積極的に前に出て打ち合うバルガスだが、三浦のボディ、左で迎撃されてすぐに失速する。
すごい。
三浦のパンチ力とインファイトはマジですごい。
ファンマ・ロペスとあれだけ打ち合ったバルガスが三浦とはまともに打ち合うことができないのだ。

解説陣は「三浦のリズムが悪い」と言うが、このゆったりとしたボクシングこそ三浦のリズムである。
ゆっくりとしたリズムでにじり寄り、いきなりペースアップして右から必殺の左を打ち込む。特別スピードがあるわけではないが、この緩急が絶妙なのだ。

ラウンド終了間際、三浦の左がカウンターでバルガスのアゴを捉える!!
ガクっと膝が落ちるバルガス!!
追撃の態勢に入ったところで惜しくもラウンド終了のゴング。

いや〜、あと少し時間があれば……。

ほら見ろ、これなんだよ。これが三浦の緩急なんですよ。

逆転KO負けの三浦。勝負どころを見極めたバルガス。勝利の女神は勝負をかけたバルガスに微笑んだ

そして決着の9R。
開始早々、バルガスのパンチを立て続けにもらった三浦がもんどりうってダウン。そのまま猛攻を許してTKO負けを喫してしまうのだが、本当に惜しかった。

この試合、三浦は間違いなく勝利を掴みかけていた。
バルガスは、三浦のパンチが頭をかすめるだけでもよろけるほどダメージが蓄積していた。それだけにあの状態から勝負をかけたことはすごいと言わざるを得ない。
とはいえ、三浦も前のラウンドからバルガスの軽いパンチを被弾し続けていた。そのせいで、バルガスに手応えを掴ませてしまったのかもしれない。
「出せば当たる」
「もう一息だ」
相手陣営にもそう思わせてしまったのではないだろうか。

三浦もギリギリだったのだろうが、できることならもう少しだけガードを上げて防御を意識したかった。わずかに攻撃に比重を置き過ぎた部分があったのかもしれない。

強烈なダウンを喫した三浦。どうにか立ち上がるが、深刻なダメージはありありと見て取れる。
この機を逃すものかと猛攻を仕掛けるバルガス!!
近づいてクリンチにいく三浦。浴びせ倒すようにバルガスをコーナーに押し付ける。

レフェリーが2人を引き離す。

再びリング中央で対峙。
打ち疲れて失速するバルガス。
三浦も厳しい!!

だが、ここでバルガスがさらにラッシュ!!
うおお!!
まだギアが残っていやがった!!

最後はバルガスの左フックから返しの右ストレートを被弾したところで、レフェリーが試合を止める。
9R1分31秒TKOでフランシスコ・バルガスの勝利。三浦隆司、王座陥落の瞬間である。

三浦は間違いなく評価を上げた。でもここが限界?

いや、すごい試合だった。
これだけの試合を見せられればお客さんも大満足だろう。
この試合で三浦の評価は下がらないだろうし、あの劣勢から逆転してみせたバルガスもすごい。

試合後のバルガスの表情を見ただろうか。
どう見ても勝者の顔には見えないほどボロボロに腫れ上がった表情だった。

とんでもない試合だった。
見事としか言いようがない。
ナイスファイト。

三浦が負けてしまったのは残念だったが、メインのアルバレスvsコット戦を食うくらいのインパクトを残した試合だったのではないだろうか。

「クリチコに勝ったタイソン・フューリーがおもろすぎる件ww」

先ほども言ったが、三浦の前進にバルガスは思った以上にプレッシャーを感じていた。
いつものように覆い被さるようなクリンチもなかったし、本当に余裕がない試合だったのだろう。まともに打ち合ったら分が悪いと感じた相手は彼のキャリアでも初めてだったのではないか。あれだけ打ち合いを嫌がるバルガスも珍しい。

先ほども申し上げたが、三浦の突進力と距離の詰め方は2011年の内山戦と比べて格段のレベルアップを見せている。打ち合いの好きなバルガスが正面から止めることを諦めたのだから、その技術とパワーは本物だろう。

だが、バルガスのカウンターをモロに被弾し続けたのも確かで、防御に難があることを改めて露呈した試合でもあった。もしかしたら、今のスタイルで上り詰めるのはこの辺りが限界なのかもしれない。

恐らく今日の試合ならば、もう一度ラスベガスからお呼びがかかることはあるだろう。だが、今回かなり大きな穴を見せてしまったことで今日以上のインパクトを残すのは難しいかもしれない。

相手のレベルが今以上になれば、近づくことすらできずに完封される事態に陥る可能性もあるのではないだろうか。
三浦の突進を受け止めるだけの馬力を持った相手が、三浦を遥かにしのぐテクニックで完膚なきまでに叩き伏せる。そんなときがくるかもしれない。

「村田諒太の課題が見えた? 実力は? ガナー・ジャクソンに判定勝ちでラスベガスデビュー戦を飾ったものの、派手なKO勝利とはいかずにアピール不足か」

三浦のボクシングは確かにエキサイティングで魅力的だ。ラスベガスでも人気が出る戦い方であることは間違いない。だが、確実性、安定性という意味ではここが頭打ちかもしれない。そうも感じてしまった試合だった。

とはいえ、近年まれに見るほどの好試合だったことは動かしようのない事実である。改めて近年の日本人ボクサーのレベルの高さが証明された試合だったといいってもいい。
本当にナイスファイトだった。

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