マイキー・ガルシアvsジェシー・バルガス感想。マイキーの右すげえ。でもバルガスもヨカタ。予想以上にいい試合だったな【結果・感想】
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2020年2月29日(日本時間3月1日)、米・テキサス州で行われたWBC世界ウェルター級ダイヤモンド王座決定戦。元4階級制覇王者マイキー・ガルシアvs元2階級制覇王者ジェシー・バルガスの一戦は、3-0(116-111、116-111、114-113)でマイキーの勝利。2019年3月以来約1年ぶりの再起戦を飾った試合である。
昨年3月にエロール・スペンスJr.に敗れて初黒星を喫したマイキー・ガルシア。ウェルター級でのキャリア継続を決断し、今回はDAZNとのワンマッチ契約の一戦となる。
対するジェシー・バルガスは元2階級王者の強豪。過去に喫した敗戦はティモシー・ブラッドリー、マニー・パッキャオの2戦のみで、2018年4月には元4階級制覇王者エイドリアン・ブローナーと引き分けた実績もある。
試合はマイキーが鋭い左を打ち込み、そこにバルガスがカウンターを合わせる展開。
序盤から一進一退の攻防が続くが、リーチで勝るバルガスのカウンターが的確にマイキーの顔面を捉える。
だが中盤から徐々にマイキーがバルガスとの距離を把握しペースを取り戻す。5Rには凄まじいワンツーでダウンを奪い、あっという間に試合の流れをひっくり返す。
そこからマイキーの豪打がさく裂するかと思われたものの、バルガスが距離をとって細かいパンチを当てる作戦に切り替えて以降は試合がこう着する。マイキーもたびたび得意の右をヒットするが、懐の広いバルガスを追いきれず。両者とも決め手を欠いたまま試合終了のゴングが鳴る。
結果は各ラウンドごとに的確にポイントを重ねたマイキーが3-0の判定で勝利。試合後のインタビューではエロール・スペンスJr.との再戦、もしくはマニー・パッキャオとのビッグマッチを目指す意向を示している。
まさかのパッキャオvsスペンスJr.か。実はメイウェザー 以上にオレ様ルールのパッキャオだけど、それが許される格があるんだよ
マイキーvsバルガス、あんまり期待してなかったけどめっちゃおもしろかったな
2月29日(日本時間3月1日)のDAZN興行のメインで行われたこの試合。
セミファイナルでは元PFP No.1のローマン・ゴンサレスがカリド・ヤファイを9RTKOに下して3年ぶりの戴冠を果たすなど、日本のファンにとっても見どころの多い試合が続いた。
「ロマゴン復活! ヤファイを右一閃でTKOに下して3年ぶり王座返り咲き。デカなっとったな。パワフルな前進が戻った」
ただ、僕はメインのマイキー・ガルシアvsジェシー・バルガス戦についてはあまり期待しておらず。
マイキーの試合が前戦から約1年も空いていたのと、適性階級ではないウェルター級にとどまると聞いて「あ、そうなの?」と。この選手は骨格的にライト級がちょうどいいと思っているので、ウェルター級にこだわるのはかなりもったいない気がしている。
恐らく何としてでも5階級制覇の称号が欲しいのだと思うが、できればライト級、S・ライト級で躍動してもらいたかったり……。
などと思いつつ試合を観たところ、めちゃくちゃおもしろかったww
僕の中でのメインはあくまでセミファイナルのロマゴンvsヤファイ戦。申し上げたようにメインのマイキーvsバルガス戦への期待感はあまり大きくなかったのだが、参ったことにクソほどおもしろかった。
前回に比べて身体が分厚くなり、全体的に力感を増したマイキー。
それに対し、長身でリーチのあるバルガスは体格差を活かして前進を阻む。
決してウェルター級の頂上決戦とは言えないが、両者の駆け引きが山ほど感じられる好試合だった。
カウンターでマイキーの左を封じたバルガス。出来自体はよかったよね
まず今回の試合、ジェシー・バルガスの出来はかなりよかったと思う。
左もキレていたし右も伸びる。マイキーの鋭い左にもよく反応できていた。「マイキーが勝つ」という大方の予想を覆すべく、コンディションをばっちり整えてきたのではないか。
マイキー・ガルシアの持ち味は何と言っても強烈なワンツー。ライト級時代は目標物が数m先にあるのでは? と思うほどの貫通力を誇っていた。またセルゲイ・リピネッツやエイドリアン・ブローナーといったL字の構えにはめっぽう強く、上体反らしがまったく間に合わないほどのスピードと精度で試合を支配し続けた。
ウェルター級に階級を上げた今もワンツーの威力は健在。今回の試合もジェシー・バルガスがマイキーのワンツーにどう対応するかが一番の見どころだと思っていた。
そして、今回のバルガスが出した答えはカウンター。
中間距離よりやや遠い位置で対峙し、マイキーの左に同時打ちのタイミングで左を被せる。その場で腕を振ればパンチが届くバルガスに対し、マイキーが強いパンチを当てるにはもう一歩踏み込む必要がある。
マイキーの左は確かに威力抜群だが、同時に打てばリーチの長いバルガスのパンチが先に届く。
リング中央で軽く左を振ってけん制し、初弾に合わせて踏み込みスペースを潰す。
と同時に左をカウンターで被せ、マイキーに右を出す余裕を与えない。
そのままもう一歩前に出て上から覆いかぶさるように動きを封じる。
基本的にマイキー・ガルシアは「ガードを上げて距離を詰めて~」というタイプではなく、セミファイナルに出場したロマゴンとは違い動きも直線的。自分の得意な間合いに入れなかった場合は若干モタモタする。
特に前回のエロール・スペンスJr.、今回のジェシー・バルガスと長身選手との対戦が続いているため、その傾向はさらに目立つ。
相手の正面に立ち、リーチ差を活かしたカウンター作戦を選択したジェシー・バルガスはなかなかいい立ち上がりだった気がする。
マイキーの対応力。左を餌にしての右の打ち下ろしでダウンを奪う
だが、そこからマイキーが対応力の高さを見せる。
2、3Rとバルガスにやや押され気味(に見えた)だったものの、徐々に距離感を掴むマイキー。
1発目の踏み込みをやや浅くし、これまでよりも奥足重心で待ち構えてバルガスのカウンターに備える。
ジェシー・バルガスはリーチも長く左も鋭いが、交錯の際に頭が下がる癖がある。遠い位置から身体を伸ばして左を打ち込むのだが、その瞬間に下を向いて相手から目を切ってしまう。
5Rにこの試合唯一のダウンをバルガスが喫するわけだが、アレがまさにそう。バルガスの癖をマイキーが見抜いてうまくねじ込んだカウンターだった(と思う)。
「長濱陸がクドゥラ金子を寄せつけずにOPBF戴冠。土屋修平は山口祥吾にTKO負けで復帰戦を飾れず」
試合開始直後と同様、バルガスは遠い間合いでマイキーと対峙する。
そして、マイキーの左に同時打ちのタイミングでカウンターを返すのだが、申し上げたようにマイキーの踏み込みはこれまでよりもやや浅い。
コンパクトな左を餌にしてバルガスのカウンターを誘い、頭が下がった瞬間を狙って打ち下ろしの右。
序盤から被弾を続けたカウンターにさらにカウンターを被せ、一気に流れを逆転する。直後にコーナーで芸術的な右を炸裂させたが、あそこは文句なしにこの試合のハイライトだった。
すげえわマイキーの右。
背中からのアングルが一直線過ぎてクッソ美しいw
このワンツーだけでもDAZNに入る価値がある。— 俺に出版とかマジ無理じゃね? (@Info_Frentopia) March 1, 2020
バルガスが中盤から遠い位置からボディを打ち込んでマイキーの前進を止める。アレを最初からやれていれば…
そして、そのままマイキーがペースを掴むと思われた7R。
ピンチに陥ったジェシー・バルガスが経験値の高さを発揮する。
遠い位置で対峙するのはこれまでと同じだが、今度は自分からパンチを打ち込んでいくバルガス。序盤のカウンター狙いではなく、身体を伸ばしてボディ、顔面へと距離の長いパンチを打ち分ける。
マイキーも得意のワンツーで迎撃するが、なかなか距離が合わずクリーンヒットを奪えない。バルガスが射程内に立ち入ってこないために右を強振できず、離れた位置で停滞させられる。
時おり右がヒットするものの、射程が遠く当たりも浅い。決定打にはほど遠いパンチである。
なるほど。
序盤はカウンター狙いで勝負を掛けたが、ここからはポイント奪取優先に切り替えたか。
サイズ差のある相手に判定勝利を狙うには確かにこれが一番いい。追い足のないマイキーを攻略するための最適解かもしれない。
果敢に勝負を仕掛けて跳ね返された前半から、後半以降は“負けないスタイル”に切り替えてのポイント勝負。エキサイティングさには欠けるが、中盤以降の攻防はジェシー・バルガスの経験値が山ほど詰まった内容だった(と思う)。
「最強スペンスがマイキーに大差判定防衛。ど正面からのどつき合いは見応えあったな」
繰り返しになるが、今回は思った以上におもしろい試合だった。できることならバルガスがダメージを受ける前にあの攻防を観たかった気もするが、そういうタラレバが無意味なのは言うまでもなく。
とにかく僕はこの試合に大満足である。
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