近藤明広がリピネッツを圧倒しながら惜敗。試合は支配してたけど、手数とヒット数がまったく足りず。やってしまいましたなぁ【結果・感想】
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2017年11月4日(日本時間5日)、米・ニューヨーク州ブルックリンで行われたIBF世界S・ライト級王座決定戦。同級3位の近藤明広が1位のセルゲイ・リピネッツと対戦。3-0(110-118、111-117、111-117)の判定で敗れ、初の世界挑戦での戴冠を逃した試合である。
序盤から左を中心に前に出る近藤。
だが、リピネッツの強打と防御の堅さに苦戦を強いられる。
「リナレスはゲスタをKOしてくれるんだろ? 格下扱いだけど、普通に強敵じゃないの? でもリナレスが圧勝してくれるはず」
5Rに右のカウンターを叩き込んでリピネッツの動きを止めるなど、要所でいいパンチを当てて山場を作るもののそこからが続かず。
終盤、足を使って逃げるリピネッツを近藤は追いきれずに12R終了のゴングが鳴る。
結果的に、終始手を出し続けたリピネッツが無難にポイントアウトを完遂した試合である。
「ロマチェンコvsリゴンドー予想。利害の一致だろ? 先行きが見えない同士の消去法マッチ。ってゴメン、ちょっと楽しみにしてるw」
近藤惜しかった。作戦はうまくいってたし、リピネッツとは相性的にも悪くなかった
まず最初に。
近藤明広惜しい!!
内容的には圧倒していたというか、試合を支配していたのは間違いなく近藤だった。だが、手数と正確性でリピネッツに上をいかれてしまった。
ニューヨークでの王座決定戦という千載一遇のチャンスを逃したのもさることながら、穴だらけのこの相手を何とかできなかったのは本当に痛い。S・ライト級の日本人王者が誕生する絶好の機会だったのだが。
恐らく近藤陣営の作戦は、左で追い詰めてからの右。
左回りでリピネッツの正面に入り、ボディ中心に左で攻めて進行方向を限定。
右サイドに先回りして、得意の右を顔面に。
リピネッツの低いガードの外側から、カウンターの右を叩き込むというものだったと思う。
そして、作戦自体はうまく機能していたのではないか。
予想記事でも申し上げたように、僕は近藤明広という選手の試合を1試合しか観たことがなく、しかも相手がサウスポーだったせいでほとんど情報らしい情報を持っていなかった。
「セルゲイ・リピネッツvs近藤明広だってさ。よーわからんけど、どうやって勝てばいいんだろね。中谷正義なら勝てるんでね?」
その1試合を観た限りでは、
・右のカウンターが得意
・左ジャブを出しながらフットワークが使える
という印象が残っていた。
特に、日本人選手には珍しく左ジャブを出しながら動けるというのはかなりの強み。僕が思う左の使い方がうまい日本人選手はL・フライ級の拳四朗選手なのだが、近藤の左もそれにちょっと近い気がした。
あの左と足が通用すれば、もしかしたらリピネッツ相手にも勝機は見出せる? かも? などと申し上げている。
「見どころ満載の拳四朗vsガニガン・ロペス。思った以上におもしろかった試合。拳四朗が大接戦を制して初戴冠」
さらにリピネッツには、ジャブを出しながらプレスをかけるタイプには苦労しそうな気配がプンプン感じられた。
そう考えると、言われているほどリピネッツのワンサイドゲームになるとは思えない。案外近藤選手が健闘するのでは?
などなど。
わからないなりに予想していた次第である。
近藤選手のフィジカルがアップしていたように見えた。あそこまでリピネッツを後退させるとは
さらに、僕が近藤選手から受けたイメージと違っていたのが、この選手のフィジカル面。
下半身から肩回りがガッシリと分厚く、屈強な上半身を持つリピネッツよりも明らかに一回り大きい。
僕が観たのは2017年5月の試合なのだが、そこから約5ヶ月間、この試合に向けてトレーニングをしてきたということか。
かなりヤバいタイミングでカウンターを被弾していたし、再三ガードの間からジャブやボディをもらってもいた。だが、効いたそぶりはほとんど見せず。しかも、そこから力を込めた連打で反撃するというのは、前回の試合では見られなかったと記憶している。
「クローラvsバーンズ感想。もの足りない人同士の壮絶サバイバル。両者が足りない部分を攻め合う駆け引きがおもしろかったよ」
恐らくリピネッツのカウンターに耐える覚悟をしていたのだとは思うが、間違いなくフィジカル面の成長もあったのではないだろうか。
正直、僕は正面衝突ではリピネッツに圧倒されると予想していた。
なので、早いラウンドでのカウンター勝負に賭けるしかないのでは? と考えていたのだが、まったくそうはならず。
むしろリピネッツの方が近藤のプレッシャーを嫌がっており、パワー面でも優位に立っていた。
リピネッツがカウンター勝負に切り替えてから手数が減ってしまった。まあ、あそこで強引にいくのは難しいんだろうな
それだけに、3R以降手数が減ってしまったのが本当に痛かった。
まともに打ち合っては分が悪いと踏んだリピネッツが3Rからカウンター勝負に切り替えたのだが、それに見事にハマってしまった。
リラックスした構えで頭を動かし、的を絞らせないリピネッツ。
近藤の踏み出しを狙って左を1発。さらに、ジャブを出す瞬間にも1発。
動き出しを狙い、ことごとく攻撃の流れを寸断する。
ガードを上げて強引に前に出る近藤。
だが、リピネッツはその分だけバックステップで距離をとり、絶え間ないダッキングで攻撃の機会を与えない。
そして、手を止めればガードの間から左のダブル。
「消耗戦ゴルァw ヒルベルト・ラミレスvsジェシー・ハート。フラッフラで打ち合う疲労感満載の壮絶なシーソーゲーム」
WOWOWエキサイトマッチの解説者が「ここでもっと強引に出なくては」と何度も言っていたが、たぶんそれは難しい。あれだけ露骨なカウンター狙いの懐に飛び込むには、相当な踏み込みのレンジとスピードが必要になる。もしくはロマゴンやゴロフキン並みのジャブ。
それでも中盤から終盤にかけてたびたび右のカウンター勝負に持ち込んでいたし、かなりがんばっていたのではないか。もう少し角度をつけられればいいかとも思ったが、残念ながらあれが精一杯かなという印象である。
さらに言うと、セルゲイ・リピネッツに勝てる選手は日本にもいるのでは? という思いはこの試合を観てさらに強くなった。
第一候補としては、前回も申し上げたように井岡ジムの中谷正義選手。
182cmの長身を活かして左ジャブとボディで削りつつ、打ち下ろしの右を叩き込むパターンに持ち込めば、高確率で勝てそうな気がする。
だからアレだ。
5000万円くらい出して、エディオンアリーナ大阪に呼んじゃえよ(無茶言うな)。
興行的にはどうなのよこの試合。近藤選手の試合運びはプロモーターに求められていたものだったの? ちょっと物足りなかったんじゃないの?
とまあ、ここまでが試合の感想。
セルゲイ・リピネッツは言われているほどの怪物ではなく、近藤選手はその相手にかなり健闘した。
「拳四朗は和製ロマチェンコを目指せ。ゲバラに消耗戦で勝利!! だけど、これじゃない感半端ない」
だが、それはそれとして、今回の試合は興行としてどうだったの? というのはちょっとだけある。
セミファイナルのショーン・ポーターvsアドリアン・グラナドス戦のグダグダっぷりを含め、興行自体がワイルダーの豪快な1RKOに救われた感は強い。
「やっぱ、これやでヘビー級はww」
「さっさとAJ出てこいやww」
恐らくあの瞬間、近藤vsリピネッツ戦を覚えていた観客など一人も存在しないww
そもそも論として、今回の試合がなぜ決まったのか。
なぜワイルダーのアンダーカードなどという大舞台に近藤明広が立てたのか。
これはもう一目瞭然。言うまでもなく亀海喜寛と三浦隆司のおかげ以外の何物でもない(と思う)。
2011年からアメリカのリングに上がり、ロバート・ゲレロ戦やヘスス・ソト・カラス戦を経てじっくりと実績を積み、やっとのことでミゲール・コット戦にたどり着いた亀海。
内山高志に敗れて以降、ジムを移籍して国内で力を蓄え、王者としてアメリカに乗り込みワンチャンを活かした三浦。
「コットvs亀海感想。あ~、亀海これでいっちゃったか。もう少しやりようがあったような気が…。頂上は高かった。コットに完敗」
2人の偉大な先人が、挫折を繰り返しながらようやく切り拓いた道である。
彼らの試合を観たプロモーターが「日本人選手はいい」「興行で起用してみたい」と思ったからこそ実現した舞台で、クソほど失礼な言い方をすればタダ乗りである。
小原佳太や石田匠のように隙間を狙って敵地に飛び込んだのではなく、井上尚弥のように満を持して呼ばれたわけでもない。
ワイルダーの防衛戦の盛り上げ役として、激闘型で諦めない日本人選手はうってつけだと思われたから。つまり、亀海や三浦が求められた役割をこなし、その上できっちり結果を出してきたおかげである。
その大事な舞台で、あの消極的な姿勢はどうなの?
確かに海外のリングで世界戦を戦うのはすごい。だが、亀海喜寛、三浦隆司という偉大な先人のあとに続くには、今回の試合はちょっと物足りない。
ひと言で言うと「やってしまいましたなぁ」というヤツ。
まあ、試合前のインタビュー記事で「自分の強運を信じている」などと言っていたのを見て、嫌な予感はしていたのだが。
「マイキー・ガルシア4階級制覇達成!! リピネッツに3-0で勝利。やっぱりS・ライト級ではスペシャル感は薄れるよな」
こうなったら、とりあえずは12月の尾川堅一に期待するしかない。
テビン・ファーマーは確かに強敵だが、何とか爪痕を残してもらいたい。そして、今後も日本人選手がアメリカのリングに呼ばれる流れを継続してほしい。
ルイス・ネリのドーピング問題など「おいおい」と思うことも多いが、やっぱり帝拳ジムはさすがだよねと思わせてくれることを期待しつつ。
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