映画「リーサル・ウェポン」感想。バディものの金字塔にしてシリーズ最高傑作。腕は立つが弱点だらけのリッグスの孤独がマータフの家族愛に救われる
- 2020.06.17
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映画「リーサル・ウェポン」を観た。
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「リーサル・ウェポン」(1987年)
LA市警捜査一課のロジャー・マータフ部長刑事は、市内の高層アパートから娼婦が投身自殺した事件の聞き込みを行っていた。
最初は単なるヤク中娼婦の自殺と軽く考えていたマータフだが、亡くなった娼婦がベトナム戦争時代の戦友マイケル・ハンサカーの娘であることを知る。
と同時に、先日ハンサカーからかかってきた不審な電話を思い出すのであった。
マータフが本格的な捜査を開始しようとする矢先、上司にある男を新しい相棒としてあてがわれる。
男の名はマーティン・リッグス。元薬物対策課の刑事で、ベトナム戦争では陸軍の特殊部隊として数々の修羅場をくぐり抜けた凄腕とのこと。
だが3年前に最愛の妻を亡くしてから自暴自棄になり、命知らずで無茶な捜査を繰り返すことが署内でも問題視されているという。
50歳の誕生日を迎え、定年までを穏やかに過ごしたいマータフの前に現れた時限爆弾のようなリッグス。突如としてスタートした嵐のような毎日に困惑しつつ、新しい相棒とともにマータフは捜査を進めていく。
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バディもの金字塔「リーサル・ウェポン」最高です。陰と陽のバランスが抜群だった
メル・ギブソン、ダニー・グローヴァ―主演で1987年公開された刑事アクション映画。バディものとしては元祖とも呼べる本作を久しぶりにWOWOWで観たので、その感想を。
最高だった。
いやもう、「リーサル・ウェポン」最高にヤヴァい。
このシリーズは僕も大好きで、中でも第1作目は文句のつけ所がないくらいに素晴らしい。
有名なバディものとしては1982年の「48時間」や1995年の「バッドボーイズ」、1998年の「ラッシュアワー」、日本では「危ない刑事」などが思いつくが、この1987年の「リーサル・ウェポン」はこれまで何度観たかわからない。僕の中ではダントツのNo.1である。
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シリーズが進むごとにだんだんとコメディ寄りに傾倒していくのが特徴ではあるが、第1作目はどちらかと言えばシリアスパートが多め。
主人公マーティン・リッグスの抱える闇の深さと家族思いで平和主義のロジャー・マータフ。
破天荒で投げやりなリッグスに振り回されるマータフの様子が笑いを誘うものの、リッグスの背負った苦しみがまったく理解されないジレンマも残る。
全体的にトーンは暗めだが端々に救いもある。陰と陽のバランスというか、対照的な2人の見せ方が抜群にうまかったと思う。
明るい家族に囲まれるマータフの幸福感によって「自殺願望のある主人公」という特殊なキャラクターをより一層際立たせる。
序盤20~30分でリッグスに対する思い入れはバッチリである。
主人公リッグスの人物描写が秀逸。とつとつと自分語りを始めるシーンが本当に印象的です
申し上げたように、本作は主人公マーティン・リッグスの人物像の見せ方がとにかくうまかった。
自殺用の弾丸を常に携帯し、無茶な捜査で数々の手柄を挙げるも署内では腫れもの扱い。
昼間は破天荒ながらも明るいキャラクターで通しているが、夜中に1人で亡くなった奥さんの写真を見ながら涙する。
銃口を口に咥え、引き金に指をかけるも寸前で思いとどまる。
そして、涙でぐしゃぐしゃに濡れた顔で
「寂しいよ……」
とつぶやく。
自殺願望があるのかとマータフに問い詰められ、
「自殺を考えたことがあるかだって?」
「毎晩のように考えるさ!!」
「自殺用の弾だって持ち歩いてる!!」
と激高。
「なぜ自殺しないかわかるか!?」
「仕事があるからだよ!!」
「笑っちゃうだろ!?」
人前では決して本音を見せなかったリッグスが初めて感情を爆発させた瞬間である。
凄まじい形相で銃口を口に突っ込み、引き金に指をかけるリッグスの手から銃を取り上るマータフ。
「年金狙いじゃないな」
「本当にイカれてる」
今日初めて会った同僚にとんでもない言い草だが、それも仕方ないと言わざるを得ないほどリッグスの目は狂気に満ちた光を放つ。
ここは序盤の山場とも言えるシーンだが、メル・ギブソンの鬼気迫る演技はマジで必見である。
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リッグスのような「表向きは屈強だけど、実は弱点だらけの陰のある」キャラクターは本当に魅力的。
特殊部隊出身で戦闘の達人。だが、奥さんを亡くしたことで自暴自棄になり、周囲からは「人間凶器(リーサル・ウェポン)」と呼ばれるほどの“危ないヤツ”として厄介者扱いされる。
こういう特異なタイプを主人公に据えたことが本作を単なるバディものではない、奥行きのある作品に昇華させたことは間違いない。
また、マータフ家を訪れたリッグスが帰り際にとつとつと自分語りを始めるシーンもいい。
「19歳のとき、強風の中で1km先の敵に命中させた」
「同じ腕前は世界に10人いるかな」
「それしか自慢できない」
マータフの幸せな家庭に触れ、暖かい気持ちになるとともに孤独感を強めたリッグス。自分には殺し以外にとりえがない空虚さと寂しさ、達観した諦めが同居する様子がたまらなく切ない。
黙って昔話を聞いていたマータフが静かに問いかける。
「正直に答えろ」
「本当に女房の飯は美味かったか?」
「いいや」
このリッグスの言葉がエンディングでの「俺だけに不味い七面鳥を食わせるな」への伏線となるわけだが、一連のやり取りからは何とも言えない渋さを感じた次第である。
ラスボスのジョシュアが醸し出す得体の知れない雰囲気。徐々に全貌が浮かび上がる過程に震えが止まらない
さらに敵組織の醸し出す“得体の知れない”雰囲気も素晴らしい。
最初は単なる娼婦の投身自殺だと思っていたら、のちに裏に暗躍するヘロインの密輸組織の存在が浮かび上がる。
しかもメンバーはCIAのOBで構成されており、中でもマカリスター将軍の片腕であるジョシュアのインパクトはすごかった。
影のように将軍に付き従い、すべての命令に「イエス、サー」と答える。
腕を出せと言われればサッと袖をまくり、腕をライターで炙られても「もういい」と言われるまで引っ込めない。
氷の目で淡々と命令を遂行するロボットのような男。
リッグスの腕に彫られた特殊部隊のタトゥーを指さした少年がひと言。
「これと同じ絵があった」
少年の目撃情報からジョシュアがリッグスと同じ特殊部隊出身であることが判明するわけだが、徐々に全貌が浮かび上がるこの感じが本当にたまらないww
常にリッグスとマータフを先回りし、家族や同僚を危険に晒す。彼らの迅速かつ正確な情報網とフットワークの軽さに驚かされ、ベトナム戦争時代から続く宿命に震え上がる。
強風の中で1km先の敵に弾を命中させるリッグスと同等?
世界に10人といない殺戮マシーンのうちの1人?
おいおいマジかよ。
俺たちのリッグスに匹敵するだと?
ラストバトルへの期待は膨らむばかりである。
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大盛り上がりのラストバトルからエンディングまでの流れが完璧。そりゃあここから先はコメディ色を強めるしかないわな
たっぷりと期待感を煽った上で迎えたリッグスvsジョシュアのラストバトル。
将軍はマータフの銃弾に倒れ、残されたジョシュアも警官隊に囲まれた。
勝負はほぼ決したも同然だが、リッグスの「果たし合いをしないか?」の提案に「望むところだ」と答えるジョシュアの笑顔からは殺し屋としての本能が見え隠れする。
組織は崩壊し、仕える将軍もすでにいない。
もはや先などないに等しい状況だが、殺戮マシーンとして生きてきた男が1対1の果たし合いで負けるわけにはいかない。しかも相手は同じ特殊部隊出身のマーティン・リッグスである。
金儲けのために卑怯な手も使ったし、あれこれ策略も巡らせてきた。
でも、やっぱり最後は身体一つでカタをつけようやんけ。
勝っても負けても恨みっこなしの一発勝負。
それが俺たちが共有した唯一のルールだろ?
両者の覚悟を感じたマータフも「ここは俺が責任を持つ」「リッグスに任せろ」と腹をくくる。
そして、ボロボロになって倒れ込むリッグスを抱きしめ、
「俺がついてるぞ」
もう完璧である。
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自暴自棄で破天荒な序盤から、2人の距離が徐々に縮まっていく中盤。
娘のリアンがさらわれて以降はまさに怒涛の展開。リッグスが“殺しのプロフェッショナル”の実力を目いっぱい発揮し、我々オーディエンスに「ほら見ろ、俺たちのリッグスはすげえだろ」的な爽快感を山ほど与えたところでジョシュアとのラストバトルへなだれ込む。
エンディングでのマータフとリッグスの会話もたまらない。
マータフに呼び止められたリッグスが「俺はイカれてない」と言うと、マータフが「知ってるよ」と笑顔で答える。
それを聞いたリッグスも笑顔を浮かべて「じゃあ寄っていく」。
無理やりコンビを組まされた2人がファミリーとなり、最後の最後で主人公が長い孤独から抜け出した瞬間である。
オールドスクールな男臭さ、家族の温もりその他。
最初から最後までパーフェクトとしか言いようがない。
まあでも、ここまで完璧に完結させちゃうとね。
シリーズを重ねるごとにコメディ色を強めていかざるを得なかったのもわかる気がする。
あれだけ綺麗に救われたリッグスが「2」でいきなり闇堕ちしするのはどう考えてもおかしいし、かといってこれだけの人気作を続編を作らずにポイ捨てするのはもったいない。
どうやら「2」以降でのリッグスのキャラ変を嘆く方も多かったようだが、もしかしたらいろいろ模索した上で絞り出した苦肉の策だったのかもしれない。
そういう意味では、ある程度広い心で観るべきなのかも? と思ったり。
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