スーパーエースの無双こそが一戦必勝のトーナメントを勝ち上がる最善手。金足農業・吉田輝星投手は最後まで腕を振る【2018甲子園】
記念すべき100回目を迎えた2018年の全国高校野球選手権大会が大詰めにさしかかっている。
8月20日の準決勝で金足農業(秋田)が日大三高(東京)に2-1、大阪桐蔭(大阪)が済美(愛媛)に5-2で勝利し、21日の決勝にコマを進めた。
特に金足農業は秋田勢として103年ぶりの決勝進出を果たすなど、公立高校ながらも強豪校を次々と下す戦いぶりは大いに注目を集めている。
またレギュラーメンバーが全員地元出身、さらに軟式野球からの転向組ということで、各県からエリートを集めた名門大阪桐蔭との対比もおもしろい。
「平成最後の夏が終わる。批判もあるけどクソほど感動したよ。大阪桐蔭が金足農業を敗り史上初2度目の春夏連覇」
中でも予選から1人で投げ抜いてきたエースの吉田輝星投手は、“平成の怪物”松坂大輔級のストレートを投げるとも言われ、プロスカウトからも注目を集める逸材。
名スカウトが金足農エース吉田輝星を「松坂大輔級の直球の質」と高評価(THE PAGE) https://t.co/Helt7Hzi74 #thepage_jp
— THE PAGE(ザ・ページ) (@thepage_jp) 2018年8月18日
マウンドに上がるたびに評価を高める吉田輝星投手。
最強大阪桐蔭打線との一騎打ちに大注目である。
吉田輝星はストレートだけじゃない。横浜を倒した駆け引きと変化球。#高校野球 #kokoyakyu #甲子園 #金足農 #吉田輝星 https://t.co/nop8zFhYfF
— Number編集部 (@numberweb) 2018年8月17日
金足農業、快進撃!! でも吉田輝星投手の疲労も心配されてるね
金足農業の快進撃が続いている。
公立高校が名門私立高校に挑む構図は観客の心をがっちりつかみ、試合を重ねるたびに人気も急上昇。秋田出身の芸能人が喜びのコメントを残すなど、高校野球の知名度を改めて感じさせてくれる。
「ハイレベル過ぎてFA選手の契約にも影響してるよ。MLBオールスター2018がとんでもなかった件」
ただ、予選から1人でマウンドを守り続ける吉田輝星投手の疲労を心配する声は多い。
「将来有望な球児の才能を甲子園で潰すな」
「球数制限を導入して球児の肩を守るべき」
毎年のように繰り返される高校野球の酷使問題が、ご多分に洩れず今年も各所で展開されている。
甲子園決勝は本当に明日でいいのか。金足農業・吉田輝星の投球数が……。#高校野球 #甲子園 #金農 #金足農 #金足農業 #金足農業高校 #吉田輝星 https://t.co/jfYV6M4FuY
— Number編集部 (@numberweb) 2018年8月20日
ちなみにだが、吉田輝星投手のここまでの投球数は、
鹿児島実業戦:157球 ○5-1
大垣日大高戦:154球 ○6-3
横浜高戦:164球 ○5-4
近江高戦:140球 ○3-2
日大三高戦:134球 ○2-1
準決勝の時点で計749球。
これは98年の松坂大輔の767球、2011年の吉永健太朗の766球に迫る投球数で、21日の決勝で先発すれば確実に超えると考えられる。
一戦必勝のトーナメントを制するために絶対的エースに依存する戦略はありっちゃあ、ありなんだよね
とまあ、金足農業の快進撃の裏でエース吉田輝星投手の消耗が心配されているわけだが、ぶっちゃけこの戦略はトーナメントを制する上では間違いではないと思う。
表題の通りなのだが、一戦必勝の短期決戦、負けたら終わりのトーナメントを勝ち上がるには、スーパーエースに依存するやり方は理にかなっている。
金足農業の戦績を振り返ると、どの試合も接戦ばかり。
特に3回戦以降はすべて1点差で、味方が挙げた少ない得点を吉田輝星投手が守りきるスタイルで勝ち上がっていることがわかる。
しかも吉田投手は打線でも3番を打っており、まさしく投打ともに大黒柱の存在。
レギュラーが地元出身の選手ばかりだったり、準々決勝のツーランスクイズなどが話題になっているが、実はそれは枝葉に過ぎない。
ワンマンチームとまでは言わないが、やはり吉田投手におんぶに抱っこのチームであることは否定できない事実である。
「野球U-18日本代表の日の丸自粛ってそこまで悪手だったか? 日韓関係以前におかしなヤツはどこにでもいるしね」
そして繰り返しになるが、一戦必勝のトーナメントを勝ち抜くにはそれがてっとり早い。
酷使による将来性への懸念や猛暑の中での開催など。もろもろの議論はあるが、そういった話はとりあえず置いておいて。
その場の「勝利」だけを追求するのであれば、1人の絶対的エースにぶら下がる戦略はマジでありだよねという話。
MLBやNPBでも、ポストシーズンでエースに依存する起用方法はよくあるんですよね
実はMLBやNPBでも、そういった起用は珍しくない。
2016年にシカゴ・カブスに所属していたアルディロス・チャップマンはポストシーズンで計13試合に登板し、2勝4S。
また、2017年にワールドシリーズで敗れたロサンゼルス・ドジャースでは、エースのクレイトン・カーショウがポストシーズンで先発、リリーフを含む6試合に登板して3勝を挙げるなど、大車輪の活躍を見せている。
古くは1958年の日本シリーズで稲尾和久が7戦中6戦に登板し、4勝2敗4完投という意味不明な成績を残したケースもある。
つまり、ポストシーズンや短期決戦では、チーム力で挑むよりも個の力に頼る方が効率がいい。
運用どうこうよりも、ぶっ飛んだ1人が全試合投げきれば勝ちでしょ? というクソ理論。
「2018年MLB開幕。躍動する大谷翔平。「動く球を覚えるべき」でも「メジャー仕様にモデルチェンジしたから勝てた」んでもないと思うよ」
もちろん今回の金足農業も同じ。
吉田輝星投手が打たれなければチームが負けることはない。
相手のエースから奪った1点をギリギリで守りきれば勝てる。
で、それを6回繰り返せば優勝でしょ? という単純明快かつ強引な理論である。
繰り返しになるが、才能ある若者の将来どうこうではなく、今この瞬間の勝利のみを追求すればという話。
金足農業はまさしく絶対的エースに依存する条件が揃ったチーム。いいか悪いかではなく、勝利のためのてっとり早い戦略として
ちなみにだが、甲子園で勝てる投手の条件としては、
・コンスタントに140km台が出る
・ストライクを取れる変化球が1つ
僕が何試合か観たイメージだと、こんな感じかなと思う。
そして、そこから絶対的エースとして君臨するには、
・ストレートの球速が145kmを超える
・ストライクを取れる変化球が2つ
といったところか。
金足農業の吉田投手はストレートが140km後半、MAX150km。
そこに空振りの取れるスライダーとスプリットが加わるので、高校野球のレベルではかなり無双できるピッチャーということになる。
さらに、破綻しない程度の守備力とボチボチの打撃力を兼ね備えたバック。
まさに絶対的エースに依存する条件がバッチリ揃ったチームと言える。
「2019年の原巨人が優勝せざるを得ない理由。でも、優勝するのは広島だと思う件」
なお、何度も申し上げるように、これが「高校野球のあり方として正解」などと言うつもりはないです。
酷使云々を考えずに「勝利」だけを追求した場合、こういうやり方は理にかなってるよね? という話です。念のため。
-
前の記事
フューリーがピアネタを寄せ付けず。陽気なクズが蝶のように舞い、蜂のように刺した10R。睡魔との戦いこそが神の御心【結果・感想】 2018.08.19
-
次の記事
亀海完敗…。グレグ・ベンデティとのカウンター勝負で歯が立たず。今回はどうにもならなかったな。動きは落ちてないと思うけど【結果・感想】 2018.08.22