木村翔がサビーリョに2RKO勝利で再起に成功。左構えのアウトボクサーが得意な木村はvs中谷潤人がいいんじゃないか?【結果・感想】
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2020年2月15日、フィリピン・マニラで行われた113ポンド契約10回戦。元WBO世界フライ級王者木村翔が元WBO世界ミニマム級王者メルリト・サビーリョと対戦し2R2分16秒TKO勝利。2019年5月にカルロス・カニサレスに敗れて以来の再起戦を飾った一戦である。
タイ、香港、中国など、これまで様々な国、地域でリングに上がってきた木村翔。
2017年7月に念願の初戴冠を果たして以降も積極的に海外のリングで戦ってきたわけだが、今回のフィリピンは初上陸となる。
対戦相手のサビーリョは元ミニマム級王者ではあるが、両者のパワー差は明白。序盤から木村のフルスイングがサビーリョの身体を揺らし、ロープを背負せる展開が続く。
1R終盤に左フックでバランスを崩して両手をつかせるものの、これはスリップと判断される。
だが2Rに入っても木村の馬力がサビーリョを圧倒し続け、最後は再び左フックをヒットし豪快なダウンを奪う。
これを見たレフェリーはカウントを取らずに試合をストップし、木村の勝利を告げる。
約9か月ぶりの再起戦に勝利した木村は試合後のインタビューで、2020年は再び世界を狙いにいくと宣言している。
木村翔が再起戦勝利!! この人の無骨なファイトはやっぱりいいよね
元フライ級王者木村翔が再起戦でTKO勝利を飾った。
ここ数日で先週末の試合をざっと観ているのだが、そのラストとなったのがこの試合。
ライアン・ガルシア、ホルヘ・リナレスというグッドルッキング・ガイの試合を立て続けに観たせいか、木村翔の無骨な試合運びがめちゃくちゃ新鮮に映るww
「ライアン・ガルシアがフォンセカに、ホルヘ・リナレスがモラレスに揃ってKO勝利。この両者の対戦はアトラクション」
顔面偏差値の高い男たちのスタイリッシュなKOも素晴らしいが、常に前に出続けて躊躇なく腕を振る木村のスタイルもこれはこれでいい。2020年は再び世界に挑戦したいとのことで、ぜひともがんばっていただきたいところである。
サビーリョとのフィジカル差は明らか。1Rからパワーで圧倒して付け入る隙を与えない
試合についての感想だが、まあ一方的だったなと。
相手のメルリト・サビーリョは恐らくフットワークと上体のクネクネディフェンスを持ち味とするサウスポー。
正直よく知らない選手だったのだが、何となく名前を聞いたことがあると思っていたら「ああ、元王者なのね」みたいな。
ただ、もともとの階級がミニマム級ということで、木村とのフィジカル差は明らか。
木村がガードを上げて近づくだけでプレッシャーを感じ、まともに正対することができない。腰が引けた状態で出す右にはまったく威力がなく、あっという間にコーナーを背負わされてしまう。
普段の木村は自分の距離まで近づくのに数ラウンドを要するが、この試合に関してはそういった苦労はいっさいなし。開始30秒過ぎに手が届く位置まであっさり追い詰め、ガードの上からの左でサビーリョの身体を大きく揺らしていく。
サビーリョにロープを背負わせ、左ボディをダブルで。
その流れで顔面にフックをねじ込み、返しの右をフルスイング。
頭を下げてもう一歩前進し、再び左ボディ。
1R残り30秒でサビーリョが倒れたシーンがスリップと判断されたが、アレは実際にはダウン。明らかに木村の左フックが側頭部をかすっていたし、そこからサビーリョの足運びも怪しくなっていた。
2Rも一方的な展開のまま、最後は左フック一閃でTKO勝利。完璧でしたね
2Rに入ると、覚悟を決めたサビーリョが足を止めて腕を強く振る。極力リング中央から下がらず、木村の圧力に真正面から対抗する。
だが、木村はまったく動じた様子を見せずにサビーリョの右にカウンターの左を合わせていく。
左右フックをスウェーでかわし、パンチの戻り際に身体を伸ばしながらの左。
サビーリョはこのパンチで顎が上がりそのまま後退。再びロープを背負い防戦一方に。
木村はサビーリョのパンチにいっさい恐怖を感じず、無遠慮に前に出てやりたい放題腕を振り続ける。左右ボディの連打→ガードの間から左アッパー→顔面に左フックと得意のコンビネーションを山ほど叩き込み反撃の余裕を与えない。
そして、最後は玉砕覚悟で出てきたサビーリョの右に左フックを合わせて豪快なTKO勝利。文句のつけようのない完勝である。
「ラッセルさんがニャンバヤルに安定の判定勝利。でもニャンバヤルはいい選手だったな。那須川天心はラッセルを目指そうぜ」
木村翔は恐らく左構えのアウトボクサーが得意。左ボディ、フックの連打を躊躇なく打てるのがいい
とまあ、こんな感じで木村翔がパーヘクツな勝利を挙げたわけだが。
同時に「木村翔はサウスポーのアウトボクサーが得意なんだろうな」と思わされた試合でもあった。
今回はだいぶ力量差があったが、それでも足を使う相手をいっさい苦にせず圧倒できるのは普通にすごい。
もともとこの選手は左フックや左ボディなど、外旋回の左の連打を得意とする。
リードジャブが少なくスピードもないため自分の距離に入るまではやや苦労するが、ペースを掴んでからのラッシュは問答無用で凄まじい。
特にサウスポー相手にも躊躇なく左が出るのがいい。
相手の右リードにカウンター気味の左を合わせ、戻り際に一歩前へ。
ガードの上からでもお構いなしにボディ、顔面に左の連打を叩き込み、右サイドへの逃げ場を塞ぐ。
相手がまっすぐ下がらざるを得ない状況を作り、今度は右のフルスイング。怯んだところでさらに距離を詰めて、再び左の連打で畳み掛ける流れ。
2017年末の五十嵐戦同様、左構えのアウトボクサータイプとはめちゃくちゃ噛み合うのだと思う。
「木村翔が五十嵐を根元から粉砕。大振りで恐怖を植え付けて真ん中を右でドーン。圧巻の五十嵐対策でしたね」
逆に左リードが少ない分、足を使うオーソドックスの選手には苦労させられる。
戴冠を果たしたゾウ・シミン戦でもひたすら動き回るゾウ・シミンを捉えるのに11Rかかっているし、そこまではポイントでリードされていたと聞く。L・フライ級に下げて2階級制覇を狙った前戦でも、最後までカルロス・カニサレスに追いつけずに判定負け。
田中恒成の出入りに置いてきぼりを食ったのも含め、得手不得手がめちゃくちゃはっきりしている選手なのだろうと。
木村翔vs中谷潤人なんてどうよ? 木村が中谷に勝つには今しかない
なので、僕の勝手な希望としては木村翔vs中谷潤人戦が観たい。
4月の王座決定戦に中谷潤人が勝てば、そこに木村が挑戦すればいいのではないか。
申し上げたように木村翔はサウスポーのアウトボクサーと相性がいい。
そして中谷潤人は鋭いカウンターを持ち味とする長身サウスポー。五十嵐やサビーリョに比べて一段スケールが大きく1発の威力も段違い。木村の馬力をもってしても、簡単に自分の距離まで近づけるとは思えない。
ただ、中谷潤人は上背がある分、フィジカル面はやや心もとない。
過去の試合を観ても強引に前に出て腕を振ってくる相手にタジタジになるシーンが目立つ。また、以前生観戦した際も身体の細さが何とも頼りないと思った記憶がある。
「中谷潤人vsミラン・メリンド、赤穂亮vsグオン・ギョンミン感想。ダイナミックグローブ589in後楽園ホール」
パンチのキレ、センスは抜群だが、若干パワー不足な中谷潤人。
前に出る馬力とフルスイングが持ち味で、足を使うサウスポーを得意とする木村翔。
恐らく中谷は近い将来階級を上げると思うが、逆に言えば木村がねじ伏せるなら今が最後のチャンスだと思っている。
木村翔の“叩き上げ”っぷりがすごい。ホームを持たず、どこのリングにも上がり続ける
なお木村翔のキャリアを振り返ると、改めて雑草だなぁと思わされる。
2013年から2016年までは後楽園ホールを中心に試合を重ねていたのが、2016年7月のタイでの一戦以降は香港、中国、フィリピンといろいろな場所でリングに上がっている。
また、日本でやる際も大阪や名古屋などのアウェイが中心。いわゆる“ホーム”と呼べる場所は存在しない。
デビュー戦でのKO負けも含め、本当に“叩き上げ”という言葉がピッタリの選手である。
「木村翔アカンか…。カニサレスの連打をもらいまくって失速。余裕の減量が逆に仇になったか? 村田vsブラントっぽかった」
しかも、ここ最近はトレーナーを変えてフィリピンを拠点にしているとのこと。
所属ジムのゴタゴタが直接の理由だとは思うが、もはやフリーランスに近い状態と言ってもいいのではないか。
こういう選手がベテランの域に入り、キャリアの集大成として国内若手No.1の中谷潤人に挑戦する。あくまで実現性を無視した妄想でしかないが、できれば僕は木村翔が勝利する光景を観たい。
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