寺地拳四朗vsユーリ阿久井政悟現地観戦。ユーリの作戦遂行能力と足が動かない拳四朗。拳四朗は過去一出来が悪かった気が。12Rの逆転劇は被弾の仕方の違いが出たのかも? とオモタ【結果・感想】

寺地拳四朗vsユーリ阿久井政悟現地観戦。ユーリの作戦遂行能力と足が動かない拳四朗。拳四朗は過去一出来が悪かった気が。12Rの逆転劇は被弾の仕方の違いが出たのかも? とオモタ【結果・感想】

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2025年3月13日に東京・両国国技館で開催された「U-NEXT BOXING.2」を現地観戦してきた。
 
お目当てはもちろんメインの3試合、
・寺地拳四朗vsユーリ阿久井政悟(WBC/WBA世界フライ級王座統一戦)
・アンソニー・オラスクアガvs京口紘人(WBO世界フライ級タイトルマッチ)
・岩田翔吉vsレネ・サンティアゴ(WBO世界L・フライ級タイトルマッチ)
である。
 
だが今回は予定があったために開始時刻には到着できず。席に座ったときには岩田翔吉vsレネ・サンティアゴ戦の3Rが始まったところだった。
 
当然アンダーカードは観ていないわけだが、正直あまりよくなかったっすね笑
いきなりメインディッシュを出されてポカンとするというか、やはりアンダーカードは重要。
「徐々に盛り上げて~」「気持ちを高めて~」と段階を踏むことに意味はあるのだなぁと。
 
そんな感じで岩田vsサンティアゴ戦は最後までフワフワしていたことをお伝えする。
 
 
そして今回はメインの寺地拳四朗vsユーリ阿久井政悟戦について。
拳四朗が12R1分31秒TKOで勝利、2階級で2団体統一を果たした試合の感想を言っていく。
 
5、6月に佐々木尽の世界戦? vsマリオ・バリオスくるか? デビン・ヘイニーvsホセ・カルロス・ラミレス、スレイマン・シソコvsエギディウス・カバラウスカス。そそる試合が続くなオイw
 

おもしろい試合だった。ジャブの差し合いで拳四朗が後れを取ったのは意外でしたね

まず全体を通しておもしろい試合だった
 
ここ数年で激闘型に傾倒した拳四朗だが、前回のクリストファー・ロサレス戦では比較的落ち着いたファイトが戻っていた。
なので今回も“動きながら打つ”ハイテンポなボクシングでいくのかな? と思っていたところ……。
 
ユーリ阿久井政悟vsタナンチャイ・チャルンパック、寺地拳四朗vsクリストファー・ロサレス。タナンチャイはいい選手だった。拳四朗はよく戻したね。でも、相手の攻撃が届くようになった?
 
とんでもない激闘でしたという。
 
スコアカードによると11Rまでは2-1でユーリのリード。
僕は採点しながら観ていたわけではないが、一進一退のシーソーゲームだったことは間違いない。
 
特に序盤はスコア通りの印象で、ジャブの差し合いで拳四朗が後れを取る展開はちょっと意外だった。
 

作戦の遂行能力が高いユーリ阿久井政悟。ダラキアン戦、桑原戦で印象がガラッと変わった

WBA王者ユーリ阿久井政悟だが、この選手はとにかく作戦遂行能力が高い。
初戴冠を果たしたアルテム・ダラキアン戦、東京ドームでの桑原拓戦は試合運びがめちゃくちゃよかったのを覚えている。
 
ダラキアン戦では前に掲げた左でダラキアンの踏み込みを封じ、低い姿勢でボディを打ち込み足を鈍らせる。
クリンチ際では肘をうまく使ってスペースをこじ開けコンパクトなフックをねじ込んだ。
 
ユーリ阿久井政悟がダラキアンを圧倒して初戴冠。準備、勝負どころの見極めに驚いた。こういうのを“チームの勝利”って呼ぶんじゃないの?
 
また桑原拓戦では多彩なジャブで進行方向を塞ぎ、相手を正面に誘い出して右をぶち当ててみせた。
固いガードとパリングで攻撃を弾きつつ常に射程から逃がさない。
 
いずれも運動量の豊富な相手を効率的に追い詰めた上での勝利である。
 
 
相手を的確に分析する陣営と、その作戦を忠実に遂行する本人の能力。
「右の剛腕」という印象しかなかったユーリの印象がガラッと変わる2試合だった。
 

さすがに拳四朗は厳しいのでは? でも、ジャブの差し合いで負けなければ…

だが、今回はさすがに厳しいのではないか。
前戦でタナンチャイのサイズと足を活かしたカウンター作戦に手を焼いたことを踏まえると、それ以上の機動力とジャブを兼ね備えた拳四朗を攻略できるかは疑問。
 
ただ前回のロサレス戦を観ると拳四朗は階級アップの影響でサイズのアドバンテージが目減りしている。
ジャブに刺されまくるようだとキツいが、逆にそこで後れを取らずに打ち合う局面を作れれば。
勝敗予想は拳四朗の10RKOだが、ユーリがどう立ち回るかに注目したい。
 
試合前の展望はそんな感じである。
 
寺地拳四朗vsユーリ阿久井政悟、オラスクアガvs京口紘人、岩田翔吉vsレネ・サンティアゴ。拳四朗はユーリをKOする? オラスクアガ京口はあえての逆張り。岩田サンティアゴは…
 

陣営の分析、本人の作戦遂行能力。左ジャブにカウンターを合わせて間髪入れずに追撃

結論としては、ユーリ陣営の分析力、本人の作戦遂行能力は相変わらずとんでもなかった。
 
拳四朗は得意のジャブで試合を動かすスタイルだが、そのジャブにカウンターを合わせられると途端にペースを乱される。2021年9月の矢吹正道戦では長いリーチを活かした矢吹のカウンターで勝ちパターンを封じられている。
 
今回のユーリも同様で、左ジャブやいきなりの右をカウンター気味に打ち込むことで拳四朗の追撃を抑え込んでみせた。
 
さらに間髪入れずに追撃を出して拳四朗がリズムに乗る前に潰す。
たとえ被弾しても我慢して1歩前に出る→拳四朗がアクションを起こす前に手を出す。
 
1発もらうと大げさにのけぞる、死に体になって防戦一方になる拳四朗の悪癖を見抜いていたのだと思うが、“先に2発目を”打ち込む意識が随所で感じられた。
 
ユーリ阿久井政悟vs桑原拓、井上拓真vs石田匠。石田は残念だった。ユーリは勝ってよかった。メインと同じくらいのインパクト
 
矢吹正道のカウンター作戦が機能していたこと。
1発打たれると大きくのけ反り、歯止めが効かなくなること。
前戦でロサレスの攻撃が普通に届いていたこと。
 
過去の試合を参考に自分とのサイズ差、階級アップの影響、長所と短所を見極め最適な作戦を立てる。
本人はその作戦を忠実に実行、最後まで貫き通す。
 
表面上の派手さやスペック数値ではわからない強さやうまさ、それを支える陣営の優秀さはバンタム級王者の西田凌佑と少し似ている。


 

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拳四朗は出来がよくなかった。足が動かない割に打たれると防戦一方になる悪癖はそのまま

一方の拳四朗だが、こちらはあまりよくなかった(と思う)。
 
序盤から足が動かず中間距離の差し合いのみで勝負。
結果、ユーリのカウンターを再三被弾→大きくのけ反ったところに追撃をもらう悪循環に陥った。
 
正直、ここまで動けない拳四朗を観たのは初めて。
調子が悪いと言われた矢吹正道Vol.1も比較にならない、開始直後から「あれ? 足が動いてねえぞ?」となった。
 
そして被弾を重ねるうちにダメージが溜まり、4Rあたりで本格的に足が止まるという。


機動力は落ちているのに打たれると防戦一方になる悪癖はそのまま。
階級アップによって相手とのサイズ差も縮まり、“デカくて動ける人”ではなくなった。
 
強いパンチを出すためにあえて足を踏ん張っていたのか、本当に動けなかったのか、もしくは以前の“打ち合いたい”衝動を引きずっているのかは不明だが、とにかくよくない。
 
ユーリがよかったのと同時に拳四朗の出来の悪さがあの激闘を生んだと思っている。
 
前のめり過ぎる拳四朗。粘りと誤魔化しのカニサレス。長谷川穂積っぽさがさらに増した気が…。京口戦が一番バランスがよかった
 

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拳四朗の底力に感服したよ。両者の被弾の仕方が最後の逆転劇につながったのかもしれないね

「ユーリ陣営の作戦がよかった」「拳四朗の出来がよくなかった」と申し上げたが、何だかんだで拳四朗の底力には感服させられる。
9Rに足を使い出した際に「お、ようやく動きが戻ったか?」となり、12Rのラッシュには「マジかよ」と。最終回の逆転劇は「二番底」という言葉すら薄っぺらい笑
 
 
そして、あのラストは両者の被弾の仕方が要因かも? と思い始めている。
 
パンチをもらうたびに大げさにのけ反る拳四朗に対してユーリは“芯”で思い切り被弾する。
拳四朗のもらい方は確かに豪快だが、大きくのけ反る分威力は分散される。
逆にユーリは正面から受け止める&グッと我慢するせいで見た目は地味だがダメージは蓄積する。
 
派手な被弾ながらもダメージを最小限に抑えている拳四朗と、自身の耐久力に依存しているユーリ。
“先に”手を出すことを優先したのもあると思うが、終盤の消耗戦で置いていかれた要因はこの辺にあるのではないか。
 


 
 
試合後会見の表情からもそれは明らかである。
 
散々打たれまくった割に綺麗な顔をしている拳四朗。


11Rまでポイントでリードしていたのに傷だらけのユーリ。


有効打の数に大きな差があったとは思わないが、試合後の状態にここまで差が出るのは……。
 
 
 
ちなみにS・フライ級に上げてのジェシー・ロドリゲス戦は相当厳しいと思っております。
 
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