亀田和毅vs三宅寛典の放送事故級の謎試合。クソ微妙なモズリーJr.がクイグリーと大接戦、アントワンがサンティアゴ相手にラッセルしてた【結果・感想】
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先週末に行われた注目度の高い2試合。
個人的に楽しみにしていたホルヘ・リナレスvsデビン・ヘイニー戦、あまりテンションが上がらなかった割に凄まじいKO劇に驚いたノニト・ドネアvsノルディ・ウーバーリ戦。
特にリナレスvsヘイニー戦は満足度が高く、かなりワクワクさせていただいた次第である。
リナレスvsヘイニー感想。ヘイニーは若さが出たけど経験を積めたんじゃない? 野口将志選手がヘイニーを気にいるのはちょっとわかるw
で、今回はそれ以外の印象に残った試合をいくつか。
勝敗や内容を振り返りつつ、適当に感想を言っていくことにする。
ちなみにだが、下記の記事によるとWBO世界S・フライ級王者井岡一翔と同級2位のフランシスコ・ロドリゲスに対戦交渉を開始する指令が出たとのこと。
WBOが井岡一翔とロドリゲスに対戦交渉指令 次戦はIBF王者との統一戦か指名試合が濃厚 – サンスポ https://t.co/NkHPNLtmou @SANSPOCOMより
— サンスポ ウェブ (@SANSPOCOM) June 2, 2021
井岡は先日のドーピング検査の騒動が収束しきっていないが、果たしてこのまますんなりJBC傘下で防衛戦が行われるのか。もしくは希望する他団体王者との統一戦に向かうのか。
いずれにしろ、今後の動向に注目である。
○ゲイリー・アントワン・ラッセルvsジョバニ・サンティアゴ×(6R終了TKO)
感想:アントワンが思った以上にラッセルしてた!!
まずはこの試合。
6年以上フェザー級王座に君臨し続けるゲイリー・アレン・ラッセルJr.の弟、アントワン・ラッセルがジョバニ・サンティアゴを6R終了TKOに下した一戦。
サンティアゴは前戦で元4階級制覇王者エイドリアン・ブローナーに判定まで粘った選手で、キャリアで喫した敗戦はその試合のみ。14勝1敗1分11KOの戦績を持つ実力者だったのだが……。
結果はまったく相手にならず。
現時点での実力はブローナーよりも上なのでは? と思わせるアントワン・ラッセルのパフォーマンスにめちゃくちゃ驚かされた。
ブローナーvsサンティアゴ戦がウェルター級契約だったこともあるとは思うが、それを差し引いても凄まじい強さだったのではないか。
スタイル的には“兄貴のデカい版”と言うか、アレン・ラッセルとかなり酷似していた。
きびきびとした前後の動きにスピーディな連打、抜群のカウンター。
ガードが若干低くややオープン気味ではあるが、それ以外は本当に長男ラッセルと似ている。
本人は差別化を図るため? に冗談みたいなリーゼントで試合に臨んでいたが、申し訳ないことに無意味としか言いようがない。動きを見ればラッセル一族の血筋であることはバレバレである()
マジな話、この階級でこれだけのスピードと連打、カウンターを兼ね備えているのは相当すごい。激戦区のS・ライト級においてもトップレベルに匹敵するように思える。
ガードが開き気味な分、右のカウンターをテンプルにもらうシーンもあったが、それ以外はほぼほぼ一方的な試合。ブローナー相手に12R粘ったサンティアゴを圧倒→6R終了ギブアップに追い込んでしまった。
どうやら元トップアマとのことで、聞くところによるとリオ五輪では疑惑の判定で敗れた経緯があるとか。
“年一の男”長男ラッセルはそろそろ今年の防衛戦が組まれる頃だと踏んでいるが、アントワン・ラッセルにはぜひとも長男とは違う道を歩んでいただきたい()
ラッセルvsポストル感想。伊藤雅雪vs三代大訓戦みたいだった。伊藤は三代にさばき切られたけど、ラッセルはスピードと馬力でポストルをねじ伏せた
○ジェイソン・クイグリーvsシェーン・モズリーJr.×(判定2-0 ※97-93、96-94、95-95)
感想:村田の相手にクイグリーを推してたのはすげえわかるw
続いてはこの試合。
ジェイソン・クイグリーとシェーン・モズリーJr.によるNABOミドル級王座決定戦。上述のホルヘ・リナレスvsデビン・ヘイニー戦のアンダーカードとして行われた一戦である。
いわゆるミドル級の中堅どころ同士のサバイバルマッチというヤツで、どちらも譲らぬ大接戦の末にクイグリーが勝利。
と言いつつ、トップレベルと比較すればやや落ちる試合だったかな? と。
両者ともに腕を下げたL字気味の構えながらもスタンスの広さ、踏み込みの鋭さ、左ジャブの正確さなど、各局面でわずかずつクイグリーがモズリーJr.を上回る。
モズリーJr.は「長身+ガードが低いカウンター使い」というスタイルながらも身体能力が足りていない印象。
ジャブの差し合いで上をいかれ、バックステップが利かないせいでそのつど顔を跳ね上げられる。また、追い足もないために相手に足を使われるとどうしても置いてきぼりを食ってしまう。
一方のクイグリーも特別目を見張るものがあるわけではなく。
中間距離ではモズリーJr.を上回るものの、強引に前に来られるとあっという間にタジタジにさせられる。至近距離での打ち合いでアドバンテージを確保したが、危ないタイミングで被弾するシーンも目についた。
ジェイソン・クイグリーは確か村田諒太の防衛戦の相手候補に名前が挙がっていた記憶があるが、今回の試合を観るとなぜ帝拳ジムがこの選手を推していたのかがよくわかる。
身体が大きくない上に前に出る馬力もそこまでではない。
射程が長く足も使えるが、ハンドスピードはない。フィジカル面が心もとなく強引に来られるとすぐにタジタジになる。
エマヌエーレ・ブランダムラやスティーブン・バトラーと少し被るというか、極力村田のキャリアを傷つけないように細心の注意を払った人選だったのだろうと。
村田諒太vsゴロフキン年末合意? 中谷潤人vsアコスタ入札、清水聡vs森武蔵戦感想。今の日本って海外の選手にとっては旨味がないからな
まあ、結果的に「相手にする価値もない」と罵ったロブ・ブラントとの2戦で大きく成長できたわけだが、あのまま村田がクイグリーに勝利してゴロフキン戦を迎える世界線を観てみたかった気もする。
てか、モズリーJr.は実現性を無視すれば村田諒太の調整試合にはちょうどよかったですよね。1発KOの心配がない中堅クラス+“偉大な選手の息子”というプロフィールを加味すると。
モズリー息子、かな〜りビミョいな。
絶対あり得ないけど、村田諒太の調整試合にはちょうどよさそうな選手じゃない?
— 俺に出版とかマジ無理じゃね? (@Info_Frentopia) July 25, 2020
○亀田和毅vs三宅寛典×(判定3-0 ※78-73、78-73、79-73)
感想:放送事故級の謎試合。ホントに不思議だった
ラストはこの試合。
元2階級制覇王者亀田和毅が長男・興毅の開設した3150ファイトクラブ所属選手として迎えた復帰戦。戦績9勝10敗2分1KOの三宅寛典を相手に3-0の判定で勝利した試合である。
上述の通りなのだが、この試合はガチで不思議だった。
2Rの後半くらいからずーっと頭の中に「?」マークが点滅し続け、そのまま8R終了のゴングが鳴るという。
序盤から亀田がガードを上げてじりじりプレッシャーをかけ、鋭い左リードで早くもペースを掴む。
対する三宅は亀田の左を被弾しながらも左右に動き続け、左リードの合間に時おり大振りの右をカウンターで合わせていく。
僕の記憶では亀田はもう少し出入りのスピードがあったように思うのだが、この試合はどちらかと言えばべた足でじっくり距離を詰めるスタイル。
体格差(三宅の主戦場はバンタム級)を活かしたのだとは思うが、もしかしたらブランクの影響(1年10ヶ月ぶりの試合)があったという噂も?
どちらにしろ、本人がコメントしていたように久しぶりの実戦でいろいろ試したかったのだろうと。
井上尚弥に対するスタンスは亀田和毅が一番好きかな。「スゲー! エギー!」もいいけど周辺階級の選手は多少ギラついててほしいよね。口汚く罵るとかではなく
一方の三宅寛典だが、こちらはホントによくわからなかった。
自ら手を出すわけでもなく、打ち合いに出るわけでもない。
ひたすら亀田のジャブを被弾しながらリングを旋回し続け、たまに左ボディや右カウンターを単発で返すのみ。
ダウンを奪った次のラウンドなどは特に謎。
前のラウンドからプレッシャーを強めつつあった亀田がガードを上げて守りを固めたのに対し、三宅はこれまで通りリングを旋回するだけの“待ち”に終始。
実況席の鬼越トマホークもコメントしていたが、あそこは三宅にとっての千載一遇のチャンスだったはず。あの状況で勝負をかけないというのはいったいどういう意図があったのか。
・スピードが段違いだった
・いけばカウンターがくるのがわかっていた
・体格差による圧力を感じていた
・ボディが効いて足が動かなかった
理由を挙げようと思えばいくらでも浮かぶし、実際に対峙してみないとわからないこともあるのだと思う。画面で観ているだけの素人にはうかがい知れない何かがあるのかもしれない。
ただ、勝利を目指すのであればあそこで勝負をかけない理由は見当たらない。
1〜4Rまでが亀田のラウンドだったと仮定して、あのダウンで10-8。5R終了時点でのポイントは亀田48-46三宅となる。つまり、残り3Rをすべて取れば三宅の勝利となるのである。
実際にジャッジ2人が78-73をつけていたことを考えれば、6〜8Rを三宅が取っていれば亀田75-76三宅という結果が出ていたわけで。
どこからどう見てもあの6Rは勝負をかける局面だったとしか言いようがない。
セコンドがその程度の計算すらしていないとは思えないし、いくら考えても僕には理解不能である。
売名目的にしても「元トップアマの松本圭佑、元二階級制覇王者の亀田和毅からダウンを奪った」というプロフィールだけでは少々弱い気もするしね。
まあ、試合後のコメントにもあまりピンとこなかったことも事実。
「三宅寛典、亀田和毅に「これが世界チャンピオンか」判定負けも収穫」
自分にとってはいい収穫でした
みすみす元世界王者に勝つチャンスを逃した上にあれだけ一方的に負けたあとに「収穫」という言葉がでてくることが謎な上に、
コロナだからこそ、大きな壁の選手と試合ができる。チャレンジすることが大事。負けることにビビって、格闘技をするぐらいなら、やらなくていいと思っている。自分が成長するためにやっています
勇ましいコメントの割にいまいち悔しさが伝わってこないというか。
もちろん文章だけでは何とも言えませんが。
まったく倒す気のない(ように見える)元世界王者vsいまいち勝つ気のない(ように見える)アンダードッグ。
繰り返しになるが、近年稀に見る放送事故級の謎試合だったなと(もちろん八百長とか陰謀論云々などと言っているわけではないです念のため)。
ちなみに亀田和毅は今回でちょうど40戦目だったんですね。
29歳でキャリア40戦というのもなかなかですよね。日本人との対戦が2度目ということを含めて“元祖逆輸入ボクサー”と言ってよさそう。
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