「はじめの一歩」が連載終了待ったなしなわけだが、そろそろ俺の意見を言ってみようか。あしたのジョーを踏襲するには手遅れ

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「はじめの一歩」がヤバい。
 
この噂を聞いたのが、約2か月ほど前。
 
僕自身、「はじめの一歩」はマンガ喫茶やブックオフでまとめて読む程度の人間で、「週刊少年マガジン」(講談社)を購入することはほとんどない。
 
「幕之内一歩が復帰する気満々の件だけど。通算成績26戦23勝3敗(23KO)。展開予想というか、キレイな終わりかたを考える」
 
それでも「はじめの一歩はつまらない」「終わった」「作画もおかしい」という話は常々耳にしていて、かつての人気作品の陰りは嫌でも伝わってきていた。
また、新刊が発売されて初めて話に追いつくニワカww な僕でも、ここ最近の熱量のなさはビシビシ感じていた次第である。
 
そんな中、マジのトーンで聞こえてきた「はじめの一歩」がヤバいという声。
世間の反応もなかなかのもので、いよいよ本格的に「終わりの始まり」の雰囲気を漂わせていた。
 
それを受けて、大急ぎで「週刊少年マガジン」を読んだのだが、確かにこれはヤバいww
 
アントニオ・ゲバラとかいう瞳がキラキラしているだけのポッと出に何度もダウンさせられ、新型デンプシーロールは掛け声ばかりでちっとも発動せず。
セコンドの鴨川会長や控室の鷹村も、一歩の異変を確信する始末。
 
そして、2017年11月22日発売の「週刊少年マガジン」51号に掲載された1201話。
 
「以前の自分ではないというコトは わかっていたんです」
「届いたと思ったパンチが届かない」
「この試合の記憶すら いくら探しても 抜け落ちています」
 
とうとう一歩本人がパンチドランカーの自覚症状を告白してしまう。
 
あ~~あ、ついにやっちゃったよ……。
苦節28年。ボクシングマンガにおいて、絶対に超えちゃいけない一線をあっさり超えやがった。
しかも大股で
 
マジな話、作者は何がしたいんだろうか。
担当編集は何をやっているんだろうか。
 
パンチドランカーは「鴨川、猫田、ユキさんの過去編」で消化した案件だったはずなのだが。
 
というわけで今回は、尋常じゃない終末感を発している「はじめの一歩」について、僕の感想を書いてみようと思う。
 

作者は連載をやめたいのだと思う。今すぐにでも

まず直近数週間の「はじめの一歩」を読んだ感想だが、結論から言うと作者の森川ジョージは連載をやめたがっているのだと思う。
 
ここ数年の熱量のなさや作画の崩壊(まではいかないけど)、あからさまに常態化した1話の減ページなど。リアルタイムで読まないのでアレだが、「作者取材」と称した休載もしょっちゅうだとか。
 
もはや連載初期〜日本王座獲得前後までの熱さはどこにもない。すでに森川ジョージは抜け殻状態で、かつての情熱を取り戻すのは不可能なのではないか。
 
ところが、作者の情熱とは裏腹にストーリーはまだまだ志半ば。
一歩の世界挑戦や宮田との決着、久美との関係。鷹村の6階級制覇や青木村の動向など。未回収の問題は山ほど残っている。寄り道なしで描いても、最低5、6年はかかりそうなくらいに。
 
本人は今すぐにでもやめたい。
でもストーリーの関係上、このまま終わることはできない。
にっちもさっちもいかない状況の中、作者がひねり出した解決策が「一歩を再起不能にして、無理やり最終章に突入する」こと。
 
これが、一連の誰得展開の正体なのではないか。
 
 
体調面が原因なのか、モチベーションの問題なのか、担当編集などの取り巻きが許さないのか。実際のところはわからない。
 
「「はじめの一歩」が酷すぎる。マンガ史に残る汚点。まさか井上尚弥の試合を丸パクリするとは…。森川ジョージは完全に終わったんだな
 
ただ、広げた大風呂敷を畳む余裕もないくらい、今すぐやめたい理由が作者にあるんじゃない? というのが、最近の連載を読んだ僕の印象である。
 
少なくとも「ボクシングの残酷さを伝えるため」などという高尚な思考とは一番遠いところにいるような気がする。
 
もしかしたら、連載を終わらせざるを得ない何かが起きたことも考えられるのではないか。作者自身に継続する意思があっても、それを許さないほどの重要な何か。
そのせいで、払拭したはずのパンチドランカー説を復活させざるを得なくなった。
 
ゲバラ戦の開始直後に千堂や間柴、宮田が「ゲバラはかませ犬」「新型デンプシーロールの犠牲者1号」などと言っていたし、その時点では普通に続けるつもりだったのかもしれない。
 
だってアレでしょ。
ここから一歩が復活する展開なんてあると思います?
 
作者は「あしたのジョー」のちばてつやを尊敬してるから、絶望からの復活も十分考えられるって?
 
いや〜、さすがに無理があるんじゃないの?
 

名作「あしたのジョー」はこうして生まれた。小規模なマーケットと時代背景が作者を後押ししてくれた

では、とりあえずこちらの記事を↓
「『あしたのジョー』が最高傑作である理由(いまの漫画じゃ無理)」
 
ボクシングマンガの金字塔「あしたのジョー」について書かれた記事。
この作品がいかに優れているか、どれだけ深みのある作品であるかが、「はじめの一歩」の作者森川ジョージとのエピソードも交えてたっぷりと語られている。
 
テンプルへの一撃で力石徹の命を奪ってしまったジョーは、その後遺症から相手の顔面を打つことができなくなる。顔面を打つたびにリング上で嘔吐を繰り返し、とうとうどさ回りの草拳闘屋にまで身を落としてしまう。
 
いわゆる主人公がスランプに陥って苦労する展開だが、ここのパートが実に新書版のコミックス3冊分。現代では考えられないほどの長期間に及んだとのこと。
 
今の時代、人気作の連載でこんなことをやれば、あっという間に読者は離れる。
なぜなら、読者は主人公が華麗に勝利する姿を見たいのであって、底辺でもがく姿を求めているわけではないから。
 
「「はじめの一歩」とかいう最高のギャグマンガ。滅びの美学への方向転換のために作品の根幹すらも折っててワロタw」
 
ところが、このやたらと長い草拳闘屋のパートが「あしたのジョー」という作品に深みを持たせ、結果的にマンガ史に残る傑作へと昇華させた。この方はそうおっしゃっている。
 
さらに、出版社にとっての「あしたのジョー」が主力商品ではなかったことが、このパートをしっかり描ききれた要因だとも言っている。
 
つまり、「あしたのジョー」はマイナーだったがゆえに生み出された最高傑作。マンガのマーケット自体が小さい時代だったからこその作品とのことである。
 

宮田と再戦の約束を交わし、千堂に勝利し、沢村を葬るまでで10年。物語としては完璧だった

上記を踏まえた上で、「あしたのジョー」に大きく影響を受けたと言われる「はじめの一歩」の遍歴を見てみる。
 
・宮田一郎と再戦を約束(2巻、1990年)
・一歩vs間柴了戦(9巻、1991年)
・一歩vs千堂武士初戦(11巻、1991年)
・一歩vs千堂武士再戦(29巻、1995年)
・WBA世界フェザー級王者リカルド・マルチネス登場(37巻、1997年)
・鴨川、猫田、ユキさんの過去(45巻、1998年)
・一歩vs沢村竜平戦(52巻、2000年)
・宮田が一歩に土下座(76巻、2006年)
・宮田一郎vsランディ・ボーイJr.戦(86巻、2008年)
・一歩vsウォーリー戦(90巻、2009年)
・一歩vsアルフレド・ゴンザレス戦(106巻、2014年)
・一歩vsアントニオ・ゲバラ戦(118巻、2017年)
 
どうだろうか。
あくまでコミックスの発売日ベースなのだが、これを見ると、とてもじゃないが今の状況から一歩が復活するとは思えない
 
「ドラゴンボールベストバウト完結編、5位~1位発表!! 番外編もあるぞ」
 
そもそも論として、仮に「あしたのジョー」の流れを踏襲して、一歩を奈落の底に突き落とすのなら29巻。千堂武士との再戦後がそのタイミングだったはず。
 
仮に、
一歩→矢吹丈
千堂武士→力石徹
と考えると、一歩が堕ちるとすれば千堂との再戦の後しかない。
 
たとえばだが、間柴了をウルフ金串的な立ち位置に見立てると、
 
1991年 間柴了戦
1991年 千堂武士初戦
1995年 千堂武士再戦
 
多少順番は違うが、一歩の成長過程もほどよく物語のテンポもいい。諸々のものがしっくりくる展開である。
 
そして、白熱の千堂戦から2年後の1997年。
WBA世界フェザー級王者リカルド・マルチネス(ホセ・メンドーサ)が登場し、今作のラスボスの正体が明らかになる。
 
2000年には最強の挑戦者沢村竜平(金竜飛)のデンプシー破り(チョムチョム)をデンプシー破り破り破りで跳ね返し、ついにライバル宮田一郎(カーロス・リベラ)との一騎打ちの準備が整う流れ。
 
再戦の約束を交わしたのが1990年で、実現までに約10年。若干の間延び感は否めないが、盛り上げ方としては完璧である。
 
実現してればな!!
 

最高に盛り上がったところで謎の停滞。さらっと6年が過ぎ、まさかの一歩vs宮田戦がポシャるという前代未聞の引き延ばしへ

幕之内一歩vs宮田一郎戦の機運が高まった2000年以降。
 
最高潮の盛り上がりを見せる「はじめの一歩」だったが、なぜかここで謎の停滞が始まる。
一歩が唐沢や武といったモブキャラをボコったり、宮田が手を骨折して試合が延期になったり。グダグダやっているうちに、いつの間にか6年が経過。
 
そして2006年発売のコミックス76巻で、唐突に宮田が一歩に土下座をかまし、一歩vs宮田戦がポシャる前代未聞の「ナニソレ?」展開に突入する。
 
しかも、
 
・「父親の仇を倒す」というワケワカメなこじつけのために、
・ランディ・ボーイJr.とかいうモブキャラを登場させ、
・案の定、1試合のみでポイ捨て
 
という露骨な引き延ばしを敢行。読者を混乱と失望の闇に叩き落としてしまう。
 
その時、すでに2008年。
「宮田一郎との再戦」の約束から数えて実に18年。当時0歳だった子どもが車の免許を取れるまでの年月が経過してしまった(作中では6年)。
 
この一歩vs宮田戦が流れたことで、当然ながら多くの読者が「はじめの一歩」から離れたという。
 

ウルフ金串と金竜飛をループしつつ、ハリマオまで登場。でも、物語はちっとも進まない地獄。「はじめの一歩」ファンの辛抱強さパネエ

正直、その後の展開はかつての名作っぷりからはほど遠い。
 
ウォーリーとかいうハリマオを挟みつつ(2009年)、延々と続く防衛戦(ウルフ金串と金竜飛のループ)。
 
挙げ句の果てに、アルフレド・ゴンザレスとかいうリカルド・マルチネスの劣化コピーにKOされ(2014年)、一歩のパンチドランカーの疑いが表面化する。
 
「はじめの一歩ベストバウトランキング7選。やる意味ないと思ったけど、やっちゃいます。終末感漂うボクシングマンガの名作記念碑」
 
てか、その下位互換キャラ、伊達英二と沖田佳吾で見たヤツじゃねえかww
 
で、3年ぶりの試合(2017年)だと思ったら、ウルフ金串にも金竜飛にもなれないモブキャラのアントニオ・ゲバラにKOされて引退まっしぐら。パンチドランカーの自覚症状を告白するというとどめも忘れない。
 
ああ?
何だって?
 
「あしたのジョー」は時代背景も手伝って名作へと昇華した?
3巻にわたって絶望を描ききったのがよかった?
あの時代は読者が辛抱強く待つ土壌があった?
 
おう、だからどうした
 
それを言うなら「はじめの一歩」は宮田との約束が反故にされるまでに16年。
世界戦線へ打って出ると宣言してから停滞すること11年。
 
たかだか3巻分の絶望など、箸休めにすらならない。
「はじめの一歩」ファンの辛抱強さを舐めんなよww
 

やっぱり「はじめの一歩」は最終回に向かってるよね。続けるとしたらどうなるの? 逆に興味があるんだけど

言っても仕方ないのでこの辺で止めておくが、とにかく僕にはここから「はじめの一歩」が復活ロードに乗るとは思えない。
「あしたのジョー」の展開を踏襲するには今さら過ぎるし、やはり最終回が近いと考えるのが妥当ではないか。
 
むしろ、ここから続くとすれば逆にビックリするレベルで、どう軌道修正するかの方にめちゃくちゃ興味がある。
 
さらに言うと、一歩のパンチドランカーが判明してからの作品への注目度。
作者や担当編集者のTwitterに罵声を浴びせたりというのは論外だが、曲がりなりにもこれだけの注目を集めているのはすごい。僕のように、大して思い入れのない人間をリアルタイムに引き込んだことも含めて。
 
いろいろな意味で、2017年末〜2018年明けの「はじめの一歩」から目が離せない。
 
 
「誰も幸せにならない終わり方」と言われているが、世界で唯一幸せになれる人間がいる。
それは作者です。
 
など、銭形警部っぽく言いたくなる程度には。
 
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第1話 「The First Step」
 
FINAL ROUND~「はじめの一歩」 ― オリジナル・サウンドトラック Vol.2
 
はじめの一歩(3) (講談社漫画文庫)
 

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