「ファイティング・ファミリー」感想。クソ名作出ました。ロック様「プロレスは脚色された世界だ。だが、観客は嘘を見抜く」。唐突な女子プロ版ロッキーにビックリした
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映画「ファイティング・ファミリー」を観た。
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「ファイティング・ファミリー」(2019年)
プロレス一家であるナイト家の長女として生まれたサラヤ・ジェイド・ベヴィスは、兄のザック・ベヴィスとともに幼い頃からレスラーとしてリングに上がっていた。そして、いつか兄妹でWWEの舞台に立つ夢を胸に、両親やメンバーとともに巡業に心血を注ぐ毎日を送っていた。
だがなかなか興行は振るわず、資金繰りはいつもギリギリ。強いプロレス愛を持つ両親にとっても一家の行く末は悩みの種となっていた。
そんな折、一家に転機が訪れる。
サラヤとザックの兄妹にWWEトライアウトのチャンスが巡ってくるのである。
突然の吉報に舞い上がるナイト一家。
幼い頃から夢見たWWE入りが実現するかもしれない事実に、サラヤとザックは目を輝かせる。
迎えたトライアウト当日。
会場を訪れた兄妹の前に、2人が尊敬してやまない大スター、“ロック様”ことドウェイン・ジョンソンが偶然通りかかる。
突然の出来事に興奮が収まらない2人は、先を急ぐジョンソンを何度も呼び止め矢継ぎ早に質問を浴びせてしまう。
そして、ついに運命のトライアウトがスタートするのだが……。
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公開中の「ファイティング・ファミリー」。たまたまYouTube広告を観て映画館に行くことを決めました
2019年11月29日から公開されている映画「ファイティング・ファミリー」。
たまたま出てきたYouTube広告を観て「お、これはおもしろそう」と映画館での視聴を決めたわけだが。
本当は公開第一週目に行こうと思ったのだが、その週はどうしても予定が立たず。
仕方なく二週目に上映館を漁ったところ、近場の映画館はすでに昼の1回とレイトショー、計2回のみの上映という状況。
え? もう?
公開一週間ですでに1日2回の上映しかないの?
あんなにおもしろそうな映画なのに?
そりゃまずい。
これはもう、来週になったら打ち切りの可能性すらあるぞ。
やっぱりアレだな。題材が「プロレス」ってのはとっつきにくいのかもしれないな。
そういえばボクシングが題材の映画もコケやすいというのは聞いたことがある。要するに殴る蹴る、血が出るの格闘技系には拒絶反応を起こす人が多いってことかもしれませんね。
などなど。
余計なことを考えつつ、大急ぎでレイトショーに向かった次第である。
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ちなみに今回は前日にネットで予約したのだが、僕のほかに埋まっていた席はわずかに2つ。
で、当日会場にいたのは僕を含めて合計6人。平日のレイトショーとはいえ、さすがにこれだけ壊滅的だと早々にスケジュールを削られるのも仕方ないのかもしれない。
最高によかった。想像していたストーリーとは違ったけど。「女子プロレス版ロッキー」だね
映画についての感想だが、はっきり言って最高だった。
それなりに期待して観に行ったものの、結果はそれをはるかに上回るもの。割とガチで(僕の中では)掘り出し物のクソ名作を見つけたと言っていい。上映中は不覚にも涙をこらえるのに苦労したことを報告させていただく。
よかった点としては、ストーリーが予想の斜め上のスポ根友情物語だったこと。
予告動画を観る限りコメディ寄りのわちゃわちゃした内容なのかな? と漠然と思っていたのだが、とんでもない。
夢見る主人公が家族の愛と友情に支えられながら努力を重ね、WWEの舞台まで上り詰める熱いサクセスストーリー。
とあるレビューサイトでどなたかもおっしゃっていたが、これは「女子プロレス版ロッキー」である。
主人公のサラヤ(リングネーム:ペイジ)については「WWEの最年少ディーヴァズ王座獲得選手」であることは何となく耳にしていたものの、そこまでの道のりや背景はいっさい知らず。
大した思い入れもなかったペイジにまさかこんな家族愛、友情溢れる物語があったとは。
ノリのいい音楽をBGMに家族のプロレス風景からスタートし、ラストのディーヴァズ王座戦まで。
終盤は多少駆け足だったが、上映時間も108分と短くほぼダレることのない作品。もちろん多少の誇張はあるとは思うが、それを踏まえた上ですばらしかった。
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ベタなサクセスストーリー。王道と呼ばれるには理由がある
具体的には、
・ゴリゴリにベタなサクセスストーリーだったこと
・挫折した兄にもスポットを当てていたこと
・ロック様の色気がヤバかったこと
この3点である。
1点目の「ベタなサクセスストーリー」については、もうそのままの意味。
幼い頃からプロレスに触れて育ったサラヤは自然とリングの上に自分の居場所を見つけ、将来は兄と2人でWWEの舞台に立つことを夢見る。
トライアウトに合格してトレーニングをスタートしたはいいが、なかなか周囲になじめず練習にもついていけない。自暴自棄になって一度は投げ出すものの、夢を失った兄や苦悩する家族の姿を目の当たりにして再起を決意。
それ以降は自ら進んで心を開き、周囲に溶け込めるよう努力を重ねるサラヤ。
徐々に仲間との絆や師匠との信頼関係も生まれ、最後はリングの上で喜びの涙を流しながら「ここが私の家よ!!」と絶叫する。その姿をテレビ越しに観ていた家族も抱き合って喜ぶという結末。
夢見る主人公が、あるきっかけからチャンスを掴む
↓
周囲との軋轢により志半ばで挫折
↓
家族の励まし、支えによって奮起
↓
仲間との絆、師匠との信頼が生まれ無双モードに突入
↓
ラストバトルで勝利し、感動の大団円
こういうベタなスポ根の代表作はシルベスター・スタローンの「ロッキー」だと思うが、ぶっちゃけこのパターンは何度やってもハズレがない。
以前「クリード チャンプを継ぐ男」を観た際に「何年かおきにこれをやれば、あと3回はいける」的なことを言った記憶があるが、普通にあり得る話だと思う。
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ベタこそ大正義というか、王道ストーリーはどれだけコスっても色褪せないからこそ王道と呼ばれる。
一応言っておくと、行き詰まったサラヤが金髪ガングロで登場した際、すべての視聴者が「いや、お前はそっちじゃないから」とツッコミを入れただろうことを僕は確信している。
挫折した兄のストーリーとサラヤの成功との対比が作品に奥行き、深みをもたらした
2つ目の「挫折した兄にもスポットを当てた」については、まさにこの作品のキモになる部分と言える。
いくつかレビューサイトを漁った際にも「兄ザックが荒れていく様子を描いたことがよかった」旨の感想が多く見られたが、マジでその通り。
躓きながらも這い上がり、最終的にWWEの最年少王座まで上り詰めるサラヤが“光”だとすれば、トライアウトに落ちて挫折を味わう兄ザックは“陰”の部分。
コーチのハッチ・モーガンが言うには、WWEの舞台はトライアウト希望者が毎週? 毎月? 数千人集まるほどの狭き門。その中から合格してWWE NXTのリングに上がるだけでも奇跡と呼べるほどの競争率である。
そういうひと握り(ひとつまみ)の成功者の裏には当然、数千倍、数万倍の脱落者の存在があり、彼ら一人一人にもそれぞれドラマがある。
特に兄のザックは妹以上にWWEへの憧れが強く、不合格になったあともなかなか夢をあきらめられない。何度もハッチ・モーガンにビデオを送り付け、そのつど電話をかけて食い下がる。
そして、最終的にハッチ・モーガンから
「妹と違って君にはスター性がない」
「そういう人間はスターの日陰者として使い倒されるだけ」
「別の人生を見つけるんだ」
と三行半を突き付けられ、酒に溺れて道を外しそうになる流れ。
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クライマックスのシーンでこの「スター性がなく、使い倒された日陰者」がハッチ・モーガン自身を指していたことが判明するわけだが、いや、もうホントにいい。
誰もが幼い頃からの夢をかなえられるわけじゃない。
多くの人間が“持たざる者”としての現実を突き付けられ、別の人生を選択する。
だが夢破れたからと言って、簡単に切り替えられる人間ばかりではない。
夢が大きければ大きいほど、思いが強ければ強いほど、その場所から前に進めなくなる。
ウジウジ悩んで八つ当たりを繰り返し、道を踏み外しそうになったとき。
ザックには助けてくれる家族がいた。
かつてザックと同じくWWEを志し、夢破れた兄は間違いを犯して収監された。
だが、ザックには彼の支えとなるサラヤがいた。
力ずくで止めてくれる父親がいた。
人生をかけて守らなければならない妻子がいた。
支えてくれる家族のおかげで、ザックは新たな一歩を踏み出すことができた。カッコ悪い自分と決別することができた。
こういう“陰”の部分にスポットを当て、それを主人公の活躍と同じくらいの尺で描く。個人的にこのパターンの映画はあまり観た経験がない。
最初に「この映画は女子プロレス版ロッキー」だとは言ったが、ザック側の描写を多めに入れたことによって今作はロッキーとは一線を画すものとなった。単なるスポ根サクセス映画ではない、奥行きと深みを持った名作に昇華したと言えるのではないか。
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ロック様の色気がとんでもない。「スターってこういうもん」を体現してたよね
ラスト、3つ目の「ロック様の色気がヤバかった」について。
これも読んで字のごとくなのだが、今作のドウェイン・ジョンソンの役どころははっきり言ってめちゃくちゃおいしい。
本人が脚本に共感して出演を決めたとのことだが(違ったっけ?)、とにかくロック様のセクシーさがえげつない。
サラヤ、ザック兄弟の憧れなだけでなく、現在はハリウッドでもっとも稼ぐと言われる売れっ子俳優。
振り向きざまの笑顔のキラッキラがたまらず、サラヤの父親パトリック・ベヴィスに電話口で本人だと気づいてもらえなかった際の表情もいい。
唐突にヴィン・ディーゼルの名前を放り込んできたのもよかったし、ロック様と会ったサラヤの第一声が「妊娠させて」だったのには大いに笑わせてもらった。
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偶然出会った兄妹にプロとしての矜持を諭し、成長したサラヤに直接WWEでのデビューを伝える。
そして、そのつどキラースマイルで我々オーディエンスを魅了し、最強の決め台詞とともに去っていく。
「プロレスは脚色された世界だ。だが、観客は嘘を見抜く」
いやお前ww
こんなもん、ファンじゃなくても惚れるに決まっとるやろがww
決して出演シーンは多くないが、何だかんだでとんでもないインパクト。作中、もっともいいとこ取りをしているのは間違いなくこのドウェイン・ジョンソンだと断言できる。
まあでも、アレだな。
この人がいなくても成立するけど、この色気がないと始まらないってのは確実にあるよね。
今作は“表に立つ資格を得た者”と“そうでない者”のコントラストを鮮明に描いたことがすばらしかったわけだが、ドウェイン・ジョンソンの存在感を際立たせることで「スターとは」というメッセージをはっきりと示そうとしたのかもしれない。
違うかもしれない。
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