ディミトリー・ビボル危なッ! クレイグ・リチャーズ強かったよね? そろそろベテルビエフとの統一戦をだな…。カネロを狙うよりも【結果・感想】
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2021年5月1日(日本時間2日)、英・マンチェスターで行われたWBA世界L・ヘビー級タイトルマッチ。同級王者ディミトリー・ビボルがランキング5位の挑戦者クレイグ・リチャーズと対戦し、3-0(118-110、115-113、115-114)の判定で勝利。7度目の防衛に成功した一戦である。
2019年10月のレニン・カスティーリョ戦以来、約1年半ぶりの防衛戦を迎えたディミトリー・ビボル。
対戦相手のクレイグ・リチャーズは前戦で英国L・ヘビー級王座を獲得し、今回のタイトルマッチにこぎつけた選手である。
試合は序盤から両者の鋭いジャブが交錯する展開。
ビボルが高いガードから打ち出す左でリチャーズの顔面を跳ね上げると、リチャーズも負けじとビボルのガードの間から鋭い左を通す。
時おり右カウンターをリチャーズの顔面にヒットするなどビボルがペースを掴みかけるものの、リチャーズもすぐさまワンツーで応戦。両者ともまったく譲らない接戦が続く。
中盤以降、たびたび近場で連打を浴びせる場面を作ったビボルだったが、一回り身体の大きいリチャーズをなかなか崩せない。最後まで山場らしい山場を作れず、3-0ながらも僅差判定で何とか7度目の防衛に成功している。
なお勝利したビボルは試合後、WBC/IBF王者アルツール・ベテルビエフとの統一戦やS・ミドル級王者サウル・“カネロ”・アルバレスとのビッグマッチ実現を希望している。
選び放題のカネロが渦中のビボルとの対戦を選択。ビボルのジャブがカネロの圧力にどこまで対抗できるかかだろうな
ビボル辛勝。王座戴冠後、最大の苦戦だった。クレイグ・リチャーズがよかったよね
先日、英・マンチェスターで開催されたマッチルーム主催のDAZN興行。
メインイベントでは元WBO世界ヘビー級王者ジョセフ・パーカーがデレク・チゾラに判定勝利を挙げたが、申し訳ないことに僕はこの試合にはあまり興味がわかず。
中継された全7試合のうち、唯一テンションが上がったのがこのディミトリー・ビボルvsクレイグ・リチャーズのL・ヘビー級タイトルマッチである。
というより、ここ最近KO勝利から遠ざかっている&約1年半のブランクを経たビボルがどんなパフォーマンスを見せるかが今回の見どころだと思っていた次第である。
で、結果は3-0の判定でビボルの勝利。
ところが内容自体はかなり際どいもので、全ラウンドを通して両者に大きな差はなかった。
ポイントも2ポイントと1ポイント差が1人ずつ。118-110の大差をつけたジャッジが1人いたが、微妙なラウンドが多かったせいもあって累積でこうなってもおかしくないかな? という印象。
マジな話、ビボルにとっては2016年5月の暫定王座戴冠以降、もっとも苦労した試合と言えるのではないか。
これはビボルが低調だったというより、挑戦者クレイズ・リチャーズがよかったという方が正解な気がする。
ビボルと左リードの差し合いで互角のリチャーズすごい。やっぱりL・ヘビー級は化け物揃いやな
申し上げたように今回の挑戦者クレイグ・リチャーズはかなりいい選手だった(と思う)。
腕をやや低く下げた位置から打ち出す鋭い左リードに大きな身体。
ビボルの身長差はわずか2cmとのことだが、パッと見では一回り大柄で顔の位置も高い。
相手に先に手を出させ、そこに同時打ちのタイミングでカウンターを被せる。
常に一定の距離をキープし、わずかでもビボルが怯めばすぐさま打ち下ろし気味のワンツーで追撃。
左リードの差し合いで均衡を保ったまま、タイミングのよさとリーチ差を活かしてビボルを中に入れさせない作戦。
身体能力の高さはそこまで感じなかったが、中間距離の差し合いでビボルをこれだけ手こずらせたのは普通にすごい。
左の多彩さ、近場での回転力の差でわずかに上を行かれたものの、無敗王者に初めてピンチを味わわせたこと自体はもっと注目されていい。
カネロvsサンダース感想。カネロの凄さと大観衆の熱気に目を奪われた。同時にボクシングのしょーもなさも山ほど目の当たりにしたよね
僕自身、今回の試合でクレイグ・リチャーズに興味がわいたのでちょろっと調べてみたのだが、がっつり強くて驚いてしまった。
下記はリチャーズが英国L・ヘビー級王座を戴冠した試合。凄まじい左をぶち当ててのTKO勝利が印象的である。
しかも、相手のシャカン・ピッターズとかいう首都高でめっちゃ煽ってきそうな名前の選手もかなりいい。元WBA暫定王者のマーカス・ブラウンを右にしたようなタイプで、この試合まで全勝をキープしていたのも納得である。
さらにクレイグ・リチャーズに初黒星をつけたフランク・ブグリオーニなる選手は、ディミトリー・ビボルと似たタイプのワンツーパンチャー。
で、そのフランク・ブグリオーニは2018年11月にメン・ファンロンという中国の選手(内モンゴル自治区出身らしい)に敗れて引退している。
ちなみにこのメン・ファンロンは先日アルツール・ベテルビエフに挑戦したアダム・デニスにも判定勝利しており、どうやらガチの強者っぽい。
身長188cm、リーチ192cmのサウスポー+元オリンピアンというスペックの持ち主で、試合運びもかなり面倒くさそう。2021年5月現在で33歳とやや高齢だが、チャンスさえあればビボル相手でも十分勝機を見出せそうに思える。
うん、やっぱりアレやな。
L・ヘビー級は化け物の巣窟やな。
王者クラスだけではなく、どの選手も一芸に秀でていて「おお!」と思わされる。
元統一王者のセルゲイ・コバレフが禁止薬物陽性で脱落して以降、あまり注目していなかったが、改めてこの階級はたまらんっすw
セルゲイ・コバレフベストバウト3選。やっぱりコバレフ超カッコいい。圧倒的な“クラッシャー”っぷりと人間味溢れるコバレフが大好きですww
ビボルが落ちていたとは思わないし、ブランクの影響も感じなかった。単純にリチャーズがよかったのと相性の悪さかな
一方のディミトリー・ビボルだが、申し上げたように今回は本当に際どい試合だった。
この選手はもともとL・ヘビー級ではやや線が細く、今回も含めて常に一回り大きな相手との対戦を強いられている。
2017年11月のトレント・ブロードハースト戦以降KO勝利からも遠ざかっており、相手のレベルが上がるにつれてパワー不足が表面化している印象。
特に今回のクレイグ・リチャーズは身体の大きさに加えて左リードの精度もビボルに匹敵するやっかいな相手だった。
ディミトリー・ビボルという選手は内山高志やマイキー・ガルシアとタイプが似ていて、中間距離での左リードの差し合いで優位性を作るのが基本戦術。
内山高志は僕が心底カッチョいいと思った選手。中間距離でかなうヤツは誰もいないんじゃない? ウォータース戦は実現してほしかったよね
内山のように近場での右クロスや左ボディといった一撃必殺のパンチはないが、その分貫通力と回転力、抜群のカウンターを兼ね備える。
前回のレニン・カスティーリョ戦もそうだが、「左リードの差し合いで圧倒→打ち合いに巻き込みカウンターのタイミングを探す」というのがビボルの勝ちパターンとなる。
見切り勝負に徹したジャン・パスカルや差し合いを放棄して一発勝負を挑んだジョー・スミスJr.相手にも、何だかんだでこの左リードで勝利を引き寄せている。
だが、今回はもっとも得意とする中間距離の差し合いでアドバンテージを取れなかった結果、かつてないほどの苦戦を強いられた。
一応申し上げておくと、この試合のビボルにブランクの影響は感じなかったし、年齢的にも下降線に入ったとは思えない。動き自体は数年前と大きく変わっていないと断言できる(気がする)。
そう考えると、やはりクレイグ・リチャーズがいい選手だった&左リードが機能しないと苦しくなることが証明された試合だったなと。
繰り返しになるが、上述のメン・ファンロンなら割とガチでいい線いくんじゃねえか? と思うのだが、どうだろうか。
そろそろビボルもビッグマッチ路線に。カネロよりもタイムリミットが迫るベテルビエフとの統一戦をだな…
また、個人的にはそろそろディミトリー・ビボルのビッグマッチ路線が観たいと思っている。
今回で王座防衛も7回目。対戦相手もスリバン・バレラ、イサック・チレンベ、ジャン・パスカル、ジョー・スミスJr.と文句をつけるところは見当たらない。
なので、できることならこの辺りでアルツール・ベテルビエフとの3団体統一戦に進んでもらいたいのだが……。
S・ミドル級でカネロを狙うのもいいが、どちらかと言えばタイムリミットが迫っているベテルビエフを優先していただければ。
現状、ビボルがマッチルーム所属でベテルビエフがトップランク所属。お互いライバル関係ではあるが、僕のためにもいったん手を結ぼうぜということで(勝手なこと言うな)。
てか、L・ヘビー級なら普通に実現できるんじゃないの?
S・ライト級のジョシュ・テイラーvsホセ・カルロス・ラミレス(両者ともにトップランク所属)の4団体統一戦のために、クイーンズベリープロモーションのフランク・ウォーレンがWBO指名挑戦者のジャック・カテラルを待機させたりというのもあるみたいだし。
ジョシュ・テイラーvsホセ・カルロス・ラミレスの統一戦は絶対に実現しろよな。グダグダのヘビー級とは違うところを見せろやw
ここは一つ、谷間の階級における特権を目いっぱい発動してだな(勝手なこと言うな)。
余談ですけど、待ちぼうけを食わされてるジャック・カテラルもなかなか面倒くさそうなサウスポーっすね。
ホセ・ラミレス相手でも、こういう試合ができればまあまあ可能性あるんじゃないっすか?
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