バルテレミーがシャフィコフに判定勝ち!! IBFライト級王座獲得で2階級制覇!! フィジカルのある長身テクニシャンのバルテレミーはどこまでいけるのか?【結果】

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バルテレミー、2階級制覇達成!!

2015年12月18日(日本時間19日)、米ラスベガス、パームス・カジノ・リゾートで行われたIBF世界ライト級王座決定戦。

ランセス・バルテレミーとデニスシャフィコフが空位の王座をかけて激突。バルテレミーが3-0(119-109、116-112、116-112)で判定勝利をおさめてS・フェザー級に次ぐ2階級制覇を達成した。

予想以上にシャフィコフを持て余すバルテレミー。こんなにあっさり懐に入られるとは

バルテレミーvsシャフィコフ。
僕はバルテレミーの大差判定勝ちを予想していたのだが、結果的には思ったほどの大差にはならなかった。
シャフィコフががんばったというより、バルテレミーが期待はずれだったと言った方が正確だ。

「バルテレミーは強いし上手いぞ!! 内山も三浦も助かったな」

もともと相手を圧倒するようなスケールの大きさを感じるボクサーではなく、どちらかといえば相手に「やりにくくてしょうがない」と思わせるのがうまいタイプである。
だが、うまさの中にもフィジカルの強さとパンチの力強さがあり、力強さとうまさが両立している選手ということで僕のおすすめボクサーの1人だったわけである。

ただ、今回の試合を観る限り、ちょっと買いかぶり過ぎだったのかもしれないと思い始めた。

あっさり懐に入られるシーンが目立ったし、どうやらフィジカルが強く出入りの激しいボクシングをするタイプを苦手としているようである。
バルテレミーは普通のアウトボクサーとはひと味違うと思っていたが、今回の試合を観る限りそうでもないと言わざるを得ない。

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ムチのようにしなる右ジャブでシャフィコフの突進を寸断すると予想していたのだが、そんなことはなかった。あっさり懐に入られ、打ち合いに巻き込まれるシーンが目立ったのである。

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スイッチを繰り返して両手打ちであることを誇示したいのかわからないが、そんなことよりリードジャブをもう少しパワフルに振った方がいいのではないだろうか。
的中率もよく距離も長いジャブなのだが、とにかく軽すぎる。まるでなでているだけのようなパワーレスっぷりである。
足を踏ん張って打てばパワフルなパンチも打てるのだから、テクニックを見せつけようとせずにゴリゴリ押してもいいような気がするのだが。

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そして、ガードの甘さも気になった。
サウスポースタイルのシャフィコフの左をかなりもらっていたし、特にガードの外からのフックはかなり際どいタイミングで被弾していた。
至近距離でのショートフックやアッパーが得意な選手だと思っていたが、近寄られてからの脆さも露呈してしまった。

ひょっとしてサウスポーが苦手なのか? とも思ったが、前回のデマルコ戦では文句なしの完封勝利を飾っていたのでそんなこともない。しかも前回はS・ライト級での試合である。

シャフィコフ程度の突進力であれば難なく受け止めると思ったのだが。そしてサウスポースタイルからの左の打ち下ろしで圧倒するのではないかと踏んでいたのだが。
ちょっと意外な試合展開だった。

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至近距離での打ち合いでも押されるバルテレミー

苦戦の原因はシャフィコフの突進をさばけなかったこと、そしてハンドスピードについていけなかったことだろう。

頭を低くして両腕を振るうシャフィコフのハンドスピードを持て余し、明らかに正面から受け止め過ぎていた。もう少し左右へステップしながらショートのパンチを返せるボクサーのはずなのだが、突進を受け止めるのに必死で正面からぶつかってしまっていた。

距離のある位置ではムチのような右ジャブから踏み込んでの左を見せるなど、的確でシャープなボクシングを展開できるのだが、距離が詰まった途端にシャフィコフのハンドスピードを持て余すのである。
何度も言うが、思った以上に簡単に懐に入られるバルテレミーは本当に意外だった。

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もちろん悪いところばかりではない。
随所にバルテレミーらしい動きは見せていたのだ。
サウスポースタイルで右に一歩踏み込んで右アッパー。そして左に大きく踏み込んで左アッパー。そこから空いた左にボディ。頭を下げて前に出るシャフィコフの顔面を下から突き上げるように打ち込むなど、バルテレミーの持ち味がよく出たコンビネーションである。

ただ、シャフィコフが止まらない。
バルテレミーがキレのいいパンチをいくら打ってもシャフィコフの突進が止まらないのだ。
頭を振り、バルテレミーのジャブをもらいながらも前に出て懐に飛び込むシャフィコフ。肩口からまっすぐに打ち抜くパンチがバルテレミーの顔面を弾けさせる。

正直に申し上げると、僕は至近距離での打ち合いでもややバルテレミーに分があると思っていた。だが、至近距離での打ち合いでも押しているのはシャフィコフの方だった。

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実際、今回のバルテレミーは前半から中盤まではかなり危なかったと思う。あのままのペースで試合が進めば勝利を掴んだのはシャフィコフだったに違いない。

接近戦への切り替えが流れを変えた

流れが変わったのは8R。
恐らくバルテレミーは7Rの中盤あたりで距離をとっていなしきることは無理だと判断したのだろう。
懐に入られた状態からショートフックやアッパーで突き放すことも難しい。もしかしたらポイントもリードされているかもしれない。
だったら思い切って相手の土俵で勝負してやろうじゃないか。
開き直って頭をくっつけての打ち合いでの勝負に出たのである。

ここからのバルテレミーはなかなか見事だった。
というより、あの判断があと1R遅れていたら勝敗は逆になっていたかもしれない。

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ガードを固めて頭をくっつけ、肩を押し付けながら小さなパンチを当てていく。細かくスイッチを繰り返して的を絞らせず、シャフィコフの回転が上がりそうになると自分の頭をシャフィコフの頭に押し付けて顔面を打たせない。
一発、二発当てて、そこから前屈みにシャフィコフにもたれるように身体を預けて距離を潰す。シャフィコフがじれて下がったところを狙ってパンチを当てるのである。
お互いに被弾を許しつつ、パンチの正確性とヒット数でポイントを奪取するという展開である。

この接近戦は本当にいい判断だった。
9Rに入るとシャフィコフの突進力に陰りが見え、至近距離での打ち合いの中にもシャフィコフが距離を詰め切れずにスペースができる瞬間が生まれる。バルテレミーはこの一瞬を逃さずにロングの左をヒット、そして再び覆い被さるように身体を預けてシャフィコフの体力を奪うのである。

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左をヒットして身体を預けるバルテレミー。
肩で押し返すシャフィコフ。
バルテレミーはその瞬間にスッと力を抜いて右にステップ、そこから右フックをヒットする。
すぐに飛び退きもう一度距離をとる。サウスポースタイルで遠い距離から軽い右を当て、さらに左のストレート。
突進力の弱まったシャフィコフはバルテレミーを追いつめることができない。踏み込んだ瞬間に一歩下がって距離をとられ、打ち終わりに右をもらう。
なるほど。この展開はいつものバルテレミーだ。

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最終12R。
力を振り絞って前に出るシャフィコフだが、疲れからか突進に勢いがない。完全に動きを見切ったバルテレミーに余裕のステップでいなされる。
終了間際、膝に手をついて顔の動きだけでシャフィコフを挑発するバルテレミー。
「お前のパンチは当たらないよ」
言っておくが、そこまで余裕を見せるほど大差がついた試合でもないからな。

ゴングが鳴り、試合終了。
2人が健闘を称え合う。

119-109、116-112、116-112の3-0でバルテレミーの勝利!!
S・フェザー級に続き、ライト級の王座を獲得である。

うん、なかなかおもしろい試合だった。
予想以上にシャフィコフががんばったのと、思ったよりバルテレミーがシャフィコフの突進に手を焼いたのが要因だが、バルテレミーの圧勝を予想していた僕としては想像よりはるかに楽しめた試合だった。

予想外の苦戦を強いられたバルテレミーにこの先ビッグマッチのチャンスは訪れるのか

やはり、バルテレミーは突進力のある相手が苦手だ。フィジカルが強く、鋭く踏み込んでくるタイプを完全に持て余す。
といいつつ、至近距離での打ち合いで相手の体力を削るくらいの強さもある。

何とも言えない、非常に評価のしづらい選手である。

最初に申し上げたように、僕はこの試合はバルテレミーが圧勝すると思っていた。
以前の記事でも書いたようにシャフィコフはバルテレミーの右ジャブに突進を阻まれて何もできなくなると予想していたのだ。
ジャブで距離をとられ、遠い距離からの多彩なパンチで削られ続けて12R。大差判定でバルテレミーの勝利。こう考えていたのである。

だが、違った。
思いのほかバルテレミーはシャフィコフの突進を持て余していたし、あっさりと懐に入られていた。
しかも至近距離での打ち合いになっても、バルテレミーのショートのフックやアッパーがシャフィコフを圧倒することはなかった。むしろシャフィコフが押し気味に試合を進めていたのである。

バルテレミー、どうなんだろうか。
確かに接近戦で相手の体力を奪う作戦に切り替えた判断は見事だった。
身長差を活かして覆い被さるようにシャフィコフにもたれかかり、徐々に突進力を奪う冷静さはさすがのひと言である。

ただ、シャフィコフ程度のインファイターをあれだけ持て余すとなると……。
今後はどういった展開を考えているのだろうか。タレント揃いのS・ライト級に上げてのビッグマッチを目論んでいるのなら、今回の内容ではかなり厳しいように思えるのだが。
シャフィコフ程度に苦戦していて、果たしてそれより上のクラスの猛者を相手に勝機はあるのだろうか。

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というより、それ以前にそのチャンス自体が巡ってくるだろうか。
ただでさえ微妙な試合が多くて人気が出なさそうな選手なのに、今回の試合で評価を落としてしまったのではないか。この先、ブローナーやクロフォードに相手にしてもらえるのか。
個人的にはビクトル・ポストルとの試合がおもしろいのではないかと思っていたが、今回の試合を観る限り現時点ではポストルが勝つとしか思えない。

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たとえばだが、WBCのホルヘ・リナレスとの統一戦などはどうだろうか。勝てる可能性が高いと思うのだが。
ちなみにガンボアとぶつかるのは避けた方がいい。

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ランセス・バルテレミーは僕が好きな数少ないキューバ出身ボクサーの1人なので、ぜひともがんばってもらいたいのだが。

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