僕が「アスリートファースト」という言葉が好きではない理由。それをまさかセルジオ越後が言語化してくれるとは
先日、日光でアイスホッケーを現地観戦したのを受けてアイスホッケー関連の記事を漁っていたところ、たまたま見つけたのが下記。
#日光アイスバックス のシニアディレクターを務める #セルジオ越後 さん?にインタビュー<前編>
チームと関わり続けて15年?勝っても負けても“愛されるクラブ”であることの大切さとは?https://t.co/JRdWJqbhoA #アミノバイタル #バイタリスト #挑戦のそばに #icebucks
— アミノバイタル® 日本公式 (@aminovital_jp) February 18, 2020
H.C.栃木日光アイスバックス シニアディレクター・セルジオ越後氏のインタビュー記事。
2006年の就任以来、さまざまなイベント出演をこなしながら選手やチームに「地元とのつながりの大切さ」を伝えてきた。
その努力の甲斐もあって就任から15年経った今ではアイスバックスの認知度も上がり、地元で“愛されるクラブ”として定着しつつあるとのこと。
特にセルジオ氏の
「スポーツはフィールドじゃない」
「スポーツはスタンドのもので、スタンドのためにスポーツがある」
方針がチーム、選手に浸透したことは大きい。
「チームが強くなればファンは来る」のではなく、「チームを存続させてファンのみなさんに会う」のがもっとも大事。
「スタンドが固まったら、チームは潰れない」ことを強く意識することでチームにプロ意識が芽生え、スタッフ、選手が自ら積極的に勉強するようになる。
その結果、栃木県という場所を“スポーツでまとまった県”にすることができるのではないか。
少子高齢化が進む現代社会において「スポーツで交流する場」を作る重要性を強く訴えたインタビュー記事となっている。
「セルジオ越後「日本のスポーツは技術畑出身の人ばかりが偉くなっていく」。アイスバックスのよさを振り返ってみる」
セルジオ越後氏がアイスバックスのシニアディレクターなのは知ってたけど、具体的に何をやっているかは知らず
セルジオ越後氏による「プロスポーツが果たすべき役割や地域貢献」についてのインタビュー記事。
僕自身、セルジオ越後氏についてはあまり詳しくなく、
・いつまで経っても日本語がうまくならんおっさん
・安全圏から日本サッカーに石を投げてるガヤ
という印象しかない。
アイスホッケー H.C.栃木日光アイスバックスのシニアディレクターをやっていることは知っていたが、正直どんな役割なのかは知らず。
最初にこの人を見たのが2018年12月の日本選手権。
そのときは「な〜んかセルジオ越後に似てるおっさんがおるなぁ」と思っていたらガチで本人だったという。
「え? あの人ってサッカー関連の人じゃなかったっけ?」と頭にクエスチョンマークが山ほど浮かんだ記憶がある。
「栃木日光アイスバックスvs東北フリーブレイズin霧降アリーナ現地観戦が最高杉。これで指定席3500円? やっす!!」
セルジオ越後氏の印象?「サッカーファンから煙たがられてるガヤのおっさん」かなぁ。ちょっと断定的に言い過ぎたよね
また、サッカーファンからはめちゃくちゃ煙たがられている感じで、先日も日本サッカーへの提言とやらが物議を醸していた。
[STAFF]掲載情報@tvtokyosports
テレビ東京が運営するスポーツメディア「テレビ東京スポーツ」にて、セルジオ越後が様々なスポーツを語る。
「セルジオ越後 香川真司の移籍は遅すぎる!海外移籍するなら試合に出ろ!」https://t.co/PGHFr7cIDz— セルジオ越後 (@sergio_echigo) February 12, 2019
これに対しては日本代表選手からも否定的なコメントが聞かれるなど、とにかくサッカー関係者やファンから嫌われているイメージが強い。
「ご意見番を気取るな」
「安全圏から現場に口出しするな」
「それだけ言うなら一度現場を経験してくれ」
乾貴士、セルジオ越後に直言「全部を否定しないで」 以前には「めっちゃ嫌い」と非難も#サッカー #セルジオ越後 #乾貴士 #日本代表 https://t.co/jB0lQGanCL
— J-CASTニュース (@jcast_news) February 13, 2019
https://t.co/mnYyAKbCx1
誰も海外に行っただけで満足してる選手はいません。
W杯で戦ったり、世界のほんまにすごい奴とやったり、憧れのリーグでやるために、皆んなどうなるかわからん挑戦をしてるんです。
もちろん試合に出れる事が一番やけど、そこでもがいて頑張る事も必要になる事はある。— 乾 貴士/Takashi Inui (@takashi73784537) February 12, 2019
僕自身、あまりサッカーに詳しくないのでアレだが、セルジオ氏のこのコメントについては「一理あるけど断定口調で言っちゃダメなヤツ」という感想である。
プロ選手は試合に出てナンボなのは間違いなく、練習だけしているのでは試合勘は鈍っていくばかり。出番のないチームで燻っているより、出場機会を求めて早めに移籍するべきなのはその通りだと思う。
その反面、レベルの高い環境でもまれることがプラスになるというのは間違いなくある。乾選手も言っていたが、未知の環境に飛び込んでもがくことは決して無意味ではない。
また、セルジオ越後氏の言う「Jリーグができたとき」の90年代半ばはまだ日本に経済力があった時代。そこにJリーグバブルが重なり、各国の有名選手が大挙して来日した。状況的には今の中国サッカー界と少し似ている。
氏が言うには、日本サッカーはあの時代を目指すべきとのことだが、残念ながらこの先日本がそうなるとは思えない。先細りが濃厚な日本経済を見れば、90年代のJリーグバブルが戻らないことは明白である。
そして、海外に行っても試合に出場できない選手が多いことが日本サッカーの低迷につながっているとのことだが、さすがにそれは的外れも甚だしい。
そもそも日本サッカーは低迷していないし、90年代に比べて間違いなくレベルは上がっている。2018年W杯でのベスト16入りでもわかるように、Jリーグ発足時とは比べ物にならないほど日本のサッカーは進化している。
時代背景、経済力、チーム事情その他。
諸々の要素が絡む分、過去と現在を単純比較するのは難しい。
だが選手が成長するには“身の丈にあった場所”で試合に出続けて経験を積むのが一番なのも確か。
最初に申し上げた通り「セルジオ越後氏の意見は一理ある。でも、断定的に言っちゃったのはマズいよね」ということかなと。
このセルジオ越後氏のコメントにサッカーファンがめちゃくちゃ激怒していた記憶があるが、改めて見直すとそこまででもない。「まあ、そういう人なんだろうし、ほっとけばええんちゃうの?」という感じで、適当に聞き流しておけばいいのかなと。
「僕がサッカーを嫌いな理由。「悩みがある人間はスポーツをやれば解決する」とかいうスポーツ万能クソ理論」
僕は「アスリートファースト」という言葉が好きではない。「プロのすごさがわかれば批判などできない」なんて絶対違うから
ところが。
まさかこのセルジオ越後氏にこんな一面があったとは。
上記のインタビュー記事を読んだ結果、僕の中での「安全圏から石を投げてるガヤのおっさん」というイメージとはまったく違う思慮深さにめちゃくちゃ驚いてしまった。
表題の通りなのだが、僕は「アスリートファースト」という言葉があまり好きではない。というより、正確には「アスリートファースト」の行き過ぎた解釈が好きではない。
下記の記事のように「アスリートファースト」とは「選手が最高のパフォーマンスを発揮できる環境づくりをすること」。
アスリートファーストでなくリスペクトこそ必要 編集委員 北川和徳 https://t.co/NLhzGFDznc
— 日経電子版 スポーツ (@nikkei_sports) November 24, 2016
施設の豪華さや派手な演出より、公平なジャッジ、最高の雰囲気の中で競技ができることの方が大切。
2020東京オリンピックでのマラソンの会場が札幌に変更されたことが物議を醸していたが、アスリートファーストとはそういうことではない。
どれだけ暑かろうが寒かろうが、会場が決定すればそこに合わせるようにベストを尽くすのが一流のアスリート。直前で開催場所を変えられてしまう方がよっぽど影響は大きい。
などなど。
練習の成果を100%発揮できる環境を提供し、選手にストレスなく競技に集中してもらうことを「アスリートファースト」と呼ぶ(らしい)。
だが、この「アスリートファースト」の解釈が行き過ぎているというか、昔から「選手のやることに口を出すな」的な風潮が根強いことに僕はめちゃくちゃ違和感を感じている。
「自分ができないくせにプロに文句をつけるな」
「プロのすごさがわかれば批判などできなくなる」
何度か申し上げているのだが、僕はこの「素人がプロに口出しするな」という考えが虫唾が走るくらい嫌いである。しかも、これを言う人間は決まって「選手に対するリスペクト」という言葉を使いたがる。
そもそもプロがすごいのは当たり前で、我々パンピーの手の届かない場所でしのぎを削っていることなどすべての大前提である。
それを「自分ができないのに」「プロのすごさがわかれば」などと、プロと同じ土俵に立ってどうする? という話。リスペクト云々の話をするなら一般人とプロを比べる方がよっぽどリスペクトに欠けると思うのだが。
だってアレでしょ?
「あのプロ野球選手はコンビニのバイトの兄ちゃんよりも球が速い。だからすごい」とは言わんでしょ?
さらにエスカレートすると、
「つまらない試合など存在しない」
「人生をかけてプレーしている選手に失礼」
「負けた選手にもストーリーがある」
などと言い出す始末。
いやいや、勘弁してくれよ。
プロがすごいのは当たり前だし、なんでたかだかスポーツ観戦でそこまで重いものを背負わされなきゃいかんのよ。
「ゴミ」だの「雑魚」だの言うのはもちろんアウトだが、最低限の節度を守れば思ったことを言うのは個人の自由でしょ。
「アスリートファースト」は大いに結構だけど、観客に不便を強いるような類のものではない。スポーツの感想くらい好きに言わせてくれよ。
アスリートファースト?
ちげえだろ。
そんなもん、俺ファーストに決まってますよOK?
久米宏 ラジオなんですけど
2017年6月17日(土)放送:
オリンピックはいつからそんなにエラくなったの? 有森裕子さん https://t.co/Cv4Ro3a8wM#tbsradio #radiko #kume954 #TBSラジオきいてみて— 久米宏 ラジオなんですけど (@KumeRadio) June 17, 2017
スポーツはスタンドのもの。もっとも大切にすべきはスタンドのファン。セルジオ越後氏にこんな一面があったとは
とまあ、僕が言うとこんな感じでバイオレンス風になってしまうのだが、上記のセルジオ越後氏のインタビューは一味違う。
「スポーツはスタンドのもので、スタンドのためにスポーツがある」
「スタンドが固まったら、チームは潰れない」
スポーツはフィールドではなく、フィールドはあくまできっかけに過ぎない。
もっとも大切にすべきはファン同士の憩いの場であるスタンド。
地域に愛されるチームを作れば自然とファンに応援され、スタンドが埋まる。
スタンドが埋まれば売店の業績も上がり、経営も安定する。
その結果、スタンドがファン同士の憩いの場となり「地域貢献」につながる。
最終的には栃木のスポーツ界(バスケ、サッカー、アイスホッケー、自転車等)が一つになれば、それが本当のスポーツクラブと呼べるものになるのではないか。
少子高齢化社会が進む現代において、スポーツでつながれる場所を作ることは非常に重要。
何かアレっす。
僕が「アスリートファースト」という言葉に感じていた違和感をすべて言語化してくれている。
しかも、それをやったのがまさかあのセルジオ越後氏だとは。
サッカーファンに煙たがられ、日本代表選手に噛み付かれる老害感満載のガヤのおっさんにこんな一面があったとは。
いや、そうなんだよな。
アスリートファーストは間違いなく重要だが、そればかり強調していると絶対おかしなことになる。
スポーツのため、選手のために社会があるのではなく、社会の一部としてスポーツがある。
アスリートのために社会やファンが我慢や不便を強いられる状況は絶対に違うよね。
アイスバックスvs横浜グリッツ感想。費用対効果最強のイベントを現地観戦してきた。平野裕志朗やっぱりええわ
プロは勝ってナンボ。さすがに「勝っても負けても、“愛されるクラブ”」というのは綺麗ごと過ぎるよね
ただ、一応言っておくと「勝っても負けても、“愛されるクラブ”である」というのはさすがに綺麗ごと過ぎるとは思う。
断言するが、プロチームは勝ってナンボ。チームの成績が観客動員に影響することは間違いない。
先日、セルジオ越後氏がシニアディレクターを務めるH.C.栃木日光アイスバックスの過去3年の平均観客数を調べてみたが、
・2017-2018シリーズ
ホームゲーム数:14
平均観客数:1337.21人
順位:4位
土日平均観客数:1501.4人(試合数10)
平日平均観客数:926.75人(試合数4)
・2018-2019シリーズ
ホームゲーム数:17
平均観客数:1343.64人
順位:7位
土日平均観客数:1539.9人(試合数10)
平日平均観客数:1063.29人(試合数7)
・2019-2020シリーズ
ホームゲーム数:18
平均観客数:1382.72人
順位:6位
土日平均観客数:1449.33人(試合数12)
平日平均観客数:1249.5人(試合数6)
4位でプレーオフに進出した2017-2018シーズンに比べ、レギュラーシーズンで6位に終わった2019-2020シーズンは土日の観客数が落ちていることがわかる(1501.4人→1449.33人)。
僕の勝手な想像だが、2017-2018シーズンにプレーオフに出たチームに期待感が高まり、次シーズンには観客動員が増えた。だが残念ながら7位と低迷し、翌シーズンも6位と振るわず。その結果、土日の観客数が減少してしまったのではないか。
以前、プロ野球中日ドラゴンズの落合監督が「勝利が最大のファンサービス」と言っていたが、それは半分正解で半分間違い。
要はバランスの問題で、プロなら当然勝利を目指すべき。補強を含めたチーム強化を積極的に進めるのは当たり前である。
「勝っても負けても愛される」のではなく、プロなら「より愛されるために」勝たなければならない。
と同時に、ファンサービスにも力を入れて現地のファンを楽しませる努力もしましょうねという話。
競技性ばかり追い求めていてもダメ。
エンタメに走り過ぎるのもダメ。
競技や地域によって度合いは違うとは思うが、上記の2つがちょうどいいバランスで両立できればクラブチームとして最強なんじゃないの? と。
セルジオ越後氏の意外な一面に驚きつつ、そんなことを考えた次第である。
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