映画「動物界」感想。ウイルス映画だと思ったらマイノリティとの共存、差別がテーマだった。早い段階で不幸な結末が見えたのはキツかったね
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映画「動物界」を観た。
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「動物界」(2024年)
フランソワは息子のエミールを連れて妻ラナの面会に向かっている。
だが不機嫌な様子を隠そうともしないエミールはフランソワの問いかけにいちいち反抗的な態度を取る。
そして激しい口論の末、ついに渋滞中の車から飛び出してしまうのだった。
慌てて後を追うフランソワだが、エミールはまったく聞く耳を持たない。
公道で怒鳴り合う親子。
車の中からその様子を見守る周囲の人たち。
すると、彼らの前に突然一台の車が停車する。
バックドアが開いた途端、人が弾かれるように飛び出し……。
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- 1. 今年4回目の映画館。アンテナを張ってなかったせいで足を運ぶ機会が少なかった
- 2. パンデミック作品だけど奇病に法則性がまったくない。感染経路も発生源も明かされない
- 3. 本当のテーマはマイノリティとの共存、差別。グロ要素と真正面から向き合わされる強制的がある
- 4. エミールの動物化はメンタルに来た。早い段階でハッピーエンドがないとわかったのも…
- 5. 最後までブレないフランソワ。エミールの状態に気づきながらも態度を変えないニナ
- 6. 甲冑バトル大好き少年に一番共感したよ。同じ状況に置かれれば僕もその反応になるんだろうな
- 7. 動物化した人たちが暮らす森の描写は美しさすら感じさせる。惨劇の前の静けさでもあり…
今年4回目の映画館。アンテナを張ってなかったせいで足を運ぶ機会が少なかった
一部? で話題となっている映画「動物界」を観てきた。
なお映画館に足を運ぶのは8月の「THE FIRST SLAM DUNK」再上映以来。今年に入ってからは4度目である。
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例年はもう少し映画館に行くのだが、今年はあまりアンテナを張っておらず。
今作もたまたまSNSで存在を知り、大急ぎで足を運んだ次第である。
パンデミック作品だけど奇病に法則性がまったくない。感染経路も発生源も明かされない
今作はパンデミックを題材とした物語。
人間の身体が徐々に動物化していく&理性が失われていく奇病が蔓延する世界が舞台で、フランソワの息子エミールもその奇病に侵されてしまう。
だが、今作が他のパンデミック作品と少し違う(と思う)のは奇病に法則性がないこと。
わかっているのは人が徐々に動物化していく現象のみ。
何の動物に、どのくらいの期間で、どの部位から変化していくかは人によってバラバラ。
感染経路や発生源、感染範囲等も作中で明かされることはない。
冒頭のシーン、ラナの担当医? がフランソワとエミールに「進行を遅らせることができると思います」旨のフワッとした説明をするわけだが、アレは原因究明が進んでいないことを視聴者に伝える意味もあったのではないか。
本当のテーマはマイノリティとの共存、差別。グロ要素と真正面から向き合わされる強制的がある
そしてこの唐突感というか、雑多な感じがいい意味でこちらの思考を停止させる。
「何でそうなるの?」
「どうすれば防げるの?」
「こいつらの弱点は?」
といった疑問を最初に遮断することで本当のテーマを浮かび上がらせるというか。
実は今作の本題はウイルス拡大によるパニックではない。
マイノリティとの共存、差別である。
自分と違う性質を持った相手(姿、性格、性別)とどう接するか。
また家族や恋人、自分にとって大切な存在がマイノリティだと知ったときにどう振る舞うか。
自分の爪をむしり取ったり奥歯を引っこ抜いたりとグロ要素満載ながらもそれと真正面から向き合わされる。妙な強制力を持った作品である。
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エミールの動物化はメンタルに来た。早い段階でハッピーエンドがないとわかったのも…
今作で身につまされたのが、動物化していくのが息子エミールだったこと。
鑑賞前は周りがウイルス? に侵されていく様子に主人公が恐怖する展開を想像していたのだが、感染者がエミールだとわかって「いや、お前かい!」となった次第である。
冒頭で「このウイルスは原因不明」「回復の見込みもほぼない」ことを知らされた。
ウイルスが収束する結末のパンデミック映画に僕はこれまで出会ったことがない。
↑
この時点で今作が(僕の好きな)ハッピーエンドを迎える可能性はほぼ失われた。
しかもウイルスに苦しめられるのは単なるモブではなくゴリッゴリの主要人物。
早い段階で不幸な結末しかないとわかったことはまあまあメンタルに来た。
マジな話、この時点でストーリーへの興味は「オチをどうするか」と「そこにどう持っていくか」のみ。
実際のラストも予想の範疇だったことをお伝えする。
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最後までブレないフランソワ。エミールの状態に気づきながらも態度を変えないニナ
妻ラナが動物に変異しようが息子エミールが動物化に苦しもうがブレることなく“家族”として接する父フランソワ。
いちいち哲学的なご託を並べるウザさはあるが、家族愛に溢れて周りに流されることはない。最後まで自分の生き方を貫くイカした人物である。
またエミールの彼女ニナもなかなかいい。
エミールが動物化の真っ最中であることに気づきながらも態度を変えない。
本人が自分の口で言ってくれるまで待ち続ける一途さ、間もなく訪れる別れを感じて一線を超える肝っ玉。
もともとマイノリティを理解しようとする、動物化する人間を受け入れるフシはあったが、自分が当事者になってもそれを乗り越えていく様子は文句なしにカッコよかった。
てか、ニナ役のビリー・ブランさん、「負け犬の美学」の娘役だったんですね。
しばらく見ない間にデカなっとるやんけ笑
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甲冑バトル大好き少年に一番共感したよ。同じ状況に置かれれば僕もその反応になるんだろうな
そして作中で僕がもっとも人間味を感じたのが甲冑バトル大好き少年である。
あの甲冑バトルが何なのかも知らない、役名も忘れるほどのモブキャラだが、彼が最後に映ったシーンだけは妙に印象に残った。
エミールの動物化が明るみになり祭りは大パニックに。
銃を持った大人が総出でエミールを追い、父フランソワがそれを防ごうと奔走する。
町の喧騒? を背に帰路につく甲冑少年だったが、その背後を動物化した異形が横切り……。
ガサガサという物音に振り返り、何もないとわかって再び前を向く甲冑少年。
その瞬間の表情が何とも言えない心情を感じさせた。
異形への恐怖、得体の知れない存在への拒否感はあるが、それが正しいかどうかを常に自問している。
生理的に受け付けない、間違いなく気持ちが悪い。
だが、それが迫害していい理由にならないこともわかっている。
わかってはいるが、もろ手を挙げて受け入れるのは難しい。
自分の住む町に隔離施設ができることにはやはり抵抗がある。
理屈と感情の狭間で揺れる中、親しいクラスメートがウイルスに侵されていたと知る。
事実を目の当たりにした甲冑少年がどちら側に振れたのかは不明だが、いずれにしろあの表情は自分の心情ともっとも近いものだった。
同じ状況になれば僕も彼と同じ反応をするだろうなと思った次第である。
なお、あの少年が甲冑少年とは別人だったらゴメンw
モブ過ぎてよくわからんのよ笑
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動物化した人たちが暮らす森の描写は美しさすら感じさせる。惨劇の前の静けさでもあり…
森に逃げ込んだエミールはそこで自分と同じ動物化した人たちの楽園を目の当たりにする。
爬虫類や鳥類、哺乳類と様々な動物が共存する世界は美しさすら感じさせる。
画面全体の色合い、少しだけ斜がかかった幻想的な演出。
これらが物語の終末感と妙にマッチして異世界的な空気を醸していた。
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アレも恐らくマイノリティとの共存/分断を表現しつつ、直後に訪れる惨劇との対比を狙ったのだと想像する。
ちなみに物語中盤でエミールと友達関係になる鳥人間のフィックスだけは若干コスプレっぽさが勝っていたことをお伝えする笑
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