アフマダリエフがゴンサレスに勝利しWBA挑戦権獲得。前回はタパレスがよかったのかもしれん。井上尚弥がフルトン以上に警戒するのもなるほどとオモタ【結果・感想】
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2023年12月16日(日本時間17日)に米・アリゾナ州で行われたDAZN興業。セミファイナルでは元IBF/WBA世界S・バンタム級王者ムロジョン・アフマダリエフとWBA同級2位ケビン・ゴンサレスが対戦し、8R2分49秒TKOでアフマダリエフが勝利。同王座挑戦権を獲得している。
今年4月にマーロン・タパレスに敗れまさかの王座陥落、3年以上保持してきた2団体のベルトを失ったアフマダリエフ。
挑戦者決定戦となった今回は無敗のケビン・ゴンサレスとの対戦である。
試合はガツガツ前に出て打ち合いを挑むゴンサレスに対し、アフマダリエフは時おり後退させられながらもパンチの的確さで徐々にポイントを稼いでいく。
パンチの精度、カウンターのタイミング等により、中盤以降は両者のダメージの差は明らか。
強引に突っ込んでくるゴンサレスにアフマダリエフは左のカウンターを何度も合わせ、6Rには壮絶なアッパーでダウンを奪う。
深いダメージを抱えながらも前に出続けるゴンサレスだったが、8Rに再びカウンターのアッパーでダウンを喫する。一度は立ち上がるもアフマダリエフの連打を浴びたところで試合終了。
8R2分49秒、アフマダリエフのTKO勝利が決定した。
アフマダリエフvsリカルド・エスピノサ暫定王座戦。指名挑戦権を保持したまま待ちぼうけ→暫定王座戦は気の毒だよな。だから統一王者がいるときは素直に暫定王座を設けろって言ってたんだよ笑
アフマダリエフがタパレスに負けたのは驚いた。亀田和毅との対戦を期待していた
ムロジョン・アフマダリエフvsケビン・ゴンサレス。
スティーブン・フルトンと並ぶS・バンタム級での井上尚弥のライバル候補と言われていたムロジョン・アフマダリエフ。
2021年4月に日本の岩佐亮佑をKOしていることもあり近い将来井上との対戦が期待されていた選手でもある。
正直、僕はアフマダリエフが井上相手にどこまでやれるかはわからず、フルトン以上の脅威にはならない気がしていた。
というより、もともと(WBA王座挑戦権を保持していた)亀田和毅との対戦を期待していた。
亀田和毅とアフマダリエフの挑戦者決定戦? 和毅とアリームさんはホントに気の毒だよね。和毅がアフマダリエフに勝つのはなかなか難しい気が…
なので今年4月にマーロン・タパレスに負けたときはかなり驚かされた。
「え? アフマダリエフ負けたん?」
「今後の展望(僕の中での)がめちゃくちゃになっちゃったじゃねえか笑」
諸々の経緯もあり、今回の挑戦者決定戦にはそれなりに注目していた次第である。
前に出て打ち合うケビン・ゴンサレスの作戦はよかった。アフマダリエフと勝負するには岩佐亮佑みたいに待ったらダメ
まず今回のケビン・ゴンサレスはなかなかよかったと思う。
以前にも言った覚えがあるが、アフマダリエフと勝負するには下がったらダメ。
この選手は少しでも怯めばカサにかかって攻めてくる&どんどん回転も上がっていく。
なので、それをさせないためにはとにかく先手が大事。
自分から前に出て距離を潰す、先に手を出す、どんどん圧力をかける。
岩佐亮佑のように「前半5Rは捨てる」「後半から勝負をかけるプランだった」などと悠長なことを言っていては話にならない。
岩佐亮佑、敵地でアフマダリエフに5RTKO負け。レフェリーがストップのタイミングを探してたよね。セコンドが声をかけてもよかった?
勝機を見出すには腕を振るスペースを与えないために強引にでも懐に入る、打たれても手を出し続けることが重要。
そういう意味でもガツガツ前に出て打ち合いを挑んだケビン・ゴンサレスの作戦は正解だったと思う。
実際、アフマダリエフも嫌そうな仕草が目立っていた。
何度か後退させられるシーンや腕や肩で押し返してレフェリーに注意される一幕も見られた。
少なくとも“待ち”の作戦でつるべ打ちにあった岩佐亮佑よりはるかにいい立ち回りだったのではないか。
田中恒成vsエドゥアルド・バカセグア、阿部麗也vsルイス・アルベルト・ロペス。田中の相手、これでいいの? 見間違いじゃなくて? 阿部麗也はホントにがんばってもらいたい
アフマダリエフを押し切れる感じはまったくなく。前手の差し合いに差がありすぎて…
だが、ゴンサレスに可能性を感じたかというとそんなことはなく。
確かに健闘したとは思うが、アフマダリエフを押し切れる感じはいっさいなかった。
前に出る馬力、畳みかける連打が持ち味のアフマダリエフだが、実は前手の右ジャブがかなり多彩。
上述の岩佐亮佑戦でも中間距離でのジャブの差し合いで岩佐を圧倒している。
今回もゴンサレスも動き出し、飛び込み際、離れ際にこの右をバシバシ当てていく。
お互いに激しく打ち合う中、ゴンサレスの顔面だけが崩壊していく地獄絵図である。
ダウンを奪ったアッパーばかりに目が行くが、そもそも前手の差し合いであそこまでやられてしまうとゴンサレスは相当厳しい。
踏み込みのタイミングが徐々に合っていく感じを含め、どこかでアフマダリエフが決めそうだなぁと思いながら観ていた次第である。
ついでに言うと、今回のアフマダリエフはバックステップも機能していた。
前回のタパレス戦ではびっくりするくらい足が動いていなかったが、あの動きができるのならこの選手はまだまだ大丈夫ではないか。
スティーブン・フルトンがカルロス・カストロにダウンを奪われて辛勝。戦略をミスったか? 相手が井上尚弥だったら倒されてた気が
実は前回はタパレスがよかったんじゃないの? 井上がフルトン以上に警戒するのもちょっと理解できた気が…
今回の試合を踏まえてアフマダリエフvsタパレス戦を再視聴(ハイライト)してみたのだが、
これはアフマダリエフがよくないとういよりタパレスがよかったという方が正解かもしれない。
下記の通り僕は前回、タパレスの好調っぷりとアフマダリエフの出来の悪さが重なった結果だと思っていた。
タパレスがアフマダリエフに勝っただと…!? 前で勝負するタパレスをアフマダリエフは攻めきれず。これで亀田和毅vs井上尚弥戦の可能性が?
常にリング中央で勝負、最後まで手を出し続けたタパレスは確かにすごい。
だが、アフマダリエフの足の動かなさ、反応の悪さもかなり目につく。
中でもバックステップで距離を取るいつもの動きがほとんど見られず、その場に留まったままタパレスの左を芯でもらうシーンはかなり悪印象だった。
ところが改めて眺めてみると……。
あれ?
これはタパレスがいいのか?
アフマダリエフがダメなのではなく?
この試合のアフマダリエフは前手の右が少なく(特に序盤)、いきなりの左で何度も顔を揺らされている。
サウスポー同士のジャブの差し合いは得意なはずなのになぜだろうと思っていたが、出さないのではなく出せなかったのかもしれない。
タパレスが射程の半歩外にいるせいで迂闊に手を出せない。
一方のタパレスは一瞬で自分の懐まで踏み込むことが可能。その上1発で試合を終わらせる左を兼ね備える。
しかもタパレスの構えは急所が見えにくくボディが打ちづらい。
遠い間合いでは顔面以外に狙う場所がなく、なおかつ左を警戒しながら対峙しているうちに主導権を握られたとか、そんな感じだろうか。
確か井上尚弥がタパレスをフルトン以上の脅威と言っていた覚えがあるが、それもわからんでもない。
「今回の試合も頭脳戦になる」というコメントにも「なるほど」と思わされている。
井上尚弥vsマーロン・タパレス雑感。先人の残した情報を総動員して大健闘したタパレスがすげえ。井上の相変らずのヤンキーマインドにも安心した笑
恐らく1Rはお互いの手が届くか届かないかの位置で“どちらが先に仕掛けるか”の駆け引きが展開されるのだろうと。
まあ、だからといって井上がタパレスに負けるとは思えないのだが。
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