酒と見栄と、そして開業と

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勢い余って友人に啖呵を切った翌日。 割れるような頭痛を伴って目を覚まし、昨晩の醜態を思い返す男が一人。 (やっちまった……)。 「おお、やってやんよ。自分で事業立ち上げて、タップリ儲けてやんよ。自費出版? 上等だよ。目にもの見せてやんよ。お?」 後悔と反省と後悔と後悔と、そして後悔と……。 情けないやら申し訳ないやら、せっかくの金曜日がもったいないやら。 いろいろな負の感情が入り混じった最悪の気分で迎えた、最低の朝であった。 ただまあ正直な話、それ以上のことに関しては僕自身かなり気楽に考えていた。 あれだけ盛大に啖呵を切ったとはいえ、しょせんは酒の席での話である。友人も一晩たてば忘れてるだろうし、もし覚えていたとしてもそのことをネチネチと追求してくるようなヤツでないこともわかっている。 昨日は昨日で終わったこと。深く考えてもしょうがない。 「悪のりが生んだ酒の席での失敗」 まことに勝手極まりない話だが、僕の中ではそう結論づけることにしたのである。 一応念のためと思い、「自費出版」やら「開業」やら、「自分で本を売る方法」やらのキーワードでGoogle先生にご意見をおうかがいをたててみたものの、とにかく煩雑そうな手続きがてんこ盛りで、そっとブラウザを閉じた次第である。 それから約二週間。 酔った勢いで切った啖呵など忘却の彼方へ消え去り、時は平和に経過していた。 そして再び例の友人と飲みに行くことになった。 当日、出会い頭の彼の口から出た最初のひと言。 「あ、そういや開業の話って進んでる?」 お〜ぼ〜え〜て〜た〜!!