ピーター・クイリンvsダニエル・ジェイコブス予想!! 注目の強打者、ブルックリンの友人対決!! 2015年最後のビッグマッチの行方は?
2015年12月5日(日本時間6日)にアメリカ・ニューヨーク州ブルックリンにあるバークレイズセンターでWBA世界ミドル級タイトルマッチが行われる。
王者ダニエル・ジェイコブスvs挑戦者ピーター・クイリン。
「現在、ニューヨークで開催できる最高のカードの1つ」と言われるように、どちらもミドル級屈指の強打者、しかもブルックリン出身の友人同士の激突とあって話題性抜群の試合である。
ウェイトオーバーを犯してタイトルを失ったクイリンが王者の座に返り咲けるか。癌から見事に生還してリングに復帰した奇跡の男・ジェイコブスが不屈の闘志で強敵を退けるか。
「ジェイコブス、クイリンを瞬殺!! 初回の壮絶ラッシュでTKOに下し、見事防衛成功」
両雄の今後のキャリアを占う上でも、どちらも負けられない一戦である。
万能型の強打者ジェイコブス。クイリンの強打にどう対応する?
ブルックリン出身で友人同士の対決ということで注目度の高い試合だが、残念ながら両者のネームバリューほどにはハイレベルな攻防にはならないだろう。
ジェイコブスはKO率の高い強打者ではありながらボクシングの幅も広く、どちらかというと万能型のボクサーファイターだ。
パワーで圧倒できる相手ならグイグイ前に出て強打を振り回すが、基本的にはスムーズなコンビネーションと身体の柔軟性を活かしたフットワークとディフェンスが持ち味である。
サウスポーへのスイッチも頻繁に見せるが、こちらはそこまでうまいというわけではない。
足を使い、リングを踊るように動く姿は派手で華があるのだが、実はそこまでフットワークがいいわけではない。動きの中で正面に立たれることが多く、ロープを背負って打ち合いうシーンが散見されるのである。
チャンスでのたたみかけは迫力満点ではあるが、往々にして大振りになり隙ができやすい。
ディミトリー・ピログに敗戦を喫した試合も強烈なカウンターによるものだし、直近のセルヒオ・モラ戦で喫したダウンも攻めている中でのカウンター被弾である。
怒濤のラッシュで一気に潰しにかかる攻撃は迫力十分ではあるのだが、一発一発のモーションが大きくカウンターを合わせられやすくなるのだ。外旋回のフックを振り回すので、どうしても起死回生の一撃をもらいやすいのである。
KO率も高く華のあるボクシングをする選手ではあるが、実は圧倒的に強いボクサーというわけではない。
ゴリ押しファイターのクイリンはジェイコブスを叩き潰せるか?
一方のピーター・クイリン。
こちらは文句なしの猪突猛進型の強打者だ。自分の身体の強さを活かして前進し、力強いワンツーを打ち込む直線的なスタイルが持ち味のファイターである。
「“カネロ”・アルバレス、コットに大差判定勝ち!! 最高峰の技術戦に完勝し、王座獲得!!」
試合開始直後からどんどん前に出るスタイルで、一発当たれば倒せる強打には十分な迫力がある。とにかく一発一発を強振するので、いつ終わってもおかしくない緊張感の中で試合が進む。
リーチが長く、踏み込みも鋭いので相手と対峙した際の距離は遠い。
細かく左を出して距離を測り、そこから鋭く踏み込んでの右ストレートはスピード、威力ともに抜群だ。過去、幾度も対戦相手をリングに這わせてきたパンチである。
さらに右ストレートから返しの左ショートフックも強烈で、コンパクトながらも腰の入ったパンチは殺傷力十分である。
だが、ジェイコブスに比べればボクシングの幅は狭く、対応力もやや低いと言わざるを得ない。
試合序盤は自慢の強打と強靭な体幹を活かしたゴリ押しで相手を圧倒するものの、そこで倒しきることができなかった場合は後半にかけてやや手こずることが多い。
基本的には直線的に前進しての連打というパターンなので、どうしても相手にタイミングを覚えられやすいのだ。試合後半になると飛び込み際にカウンターを狙われ、なかなか自分から手が出せなくなるパターンに陥るのである。
しかも対戦相手もクイリンの強打を警戒するので、両者ともに手数が少なくなり試合はこう着する。
試合序盤はクイリンがド迫力の攻めで圧倒し、ラウンドが進むに連れて流れが変わる。ジリジリとした一進一退の攻防が続き、最後は前半の貯金のおかげでクイリンがギリギリ逃げきるというパターンが多い。
相手のレベルが上がるにつれて、徐々に強打で圧倒できなくなっているクイリン。ジェイコブス同様、こちらもそこまで強いボクサーというわけではない。
しかも、ここ最近は守勢に回るなどの消極的な姿を見せることもあり、いまいちインパクトに欠ける試合が増えている。
恐らく無敗を守りたい一心なのだと思うが、できもしないテクニックを駆使して技巧で勝とうとするシーンが目立つのだ。
一時期打倒ゴロフキンの最右翼に挙げられていた選手ではあるが、正直言ってこの選手がゴロフキンの相手になるとは思えない。実際に試合をすれば恐らく高確率で10RまでにKO負けだろう。
テレビやプロモーターの関係でゴロフキンやアルバレスとはまったく別の動きをしているが、その方向性は正しいと思う。無敗を守りたいのであればゴロフキンとは絡まない方が賢明だ。
足を使って距離をとる作戦のジェイコブス。意外と危険?
試合展開としては、クイリンはいつも通り前に出るスタイル。ジェイコブスは距離をとって左右に動きながらパンチを返す展開になるのではないかと予想する。
一発いいパンチを当ててダメージを与えた方が一気に前に出てラッシュをかけるのだろうが、果たしてどちらがそのシーンを作ることができるか。
ジェイコブスは恐らくクイリンの強打を警戒して、左右に動きながら距離をとって戦う。
だが、ジェイコブスのフットワークで果たしてクイリンの踏み込みから逃げきることができるだろうか。僕は難しいのではないかと思う。
相手のパンチをスウェーで避けることが多いジェイコブスだが、あのスウェーではクイリンの右ストレートに間に合わないのではないか。ジェイコブスのスウェーよりも速く、クイリンのストレートはジェイコブスの顔面を捉えるように思えるのだ。
1発当たれば、俄然クイリンは調子づく。
ジェイコブスはクイリンのあの圧力とラッシュに持ち堪えることができるのか。下がりながらカウンターが打てるタイプでもないし、あのフットワークでクイリンの突進から逃げきれるとは思えない。
そう考えると、クイリン相手にジェイコブスが足を使うのは意外と危険が多いかもしれない。むしろ、ある程度距離を詰めてクイリンにリーチの長さを活かすスペースを与えない方が安全なのではないだろうか。
「ロマゴン強し!! ビロリアに何もさせずに9回TKO勝ち!!」
フックを振り回す激しいラッシュが印象的なジェイコブスだが、実は近づいてのボディやショートフックも得意だ。至近距離で打ち合えとは言わないが、クイリンが踏み込んだ瞬間に自分も一歩前に出て距離を潰す作戦はある程度有効なのではないだろうか。
クイリンの前進に合わせて一歩踏み込み、右をダッキングでかわしながら右のクロスをカウンターで叩き込む。
ジェイコブスの右がまともに入ればクイリンは必ずグラつく。そうなれば得意のラッシュで一気にたたみかけることができるのだ。
足を使って距離をとるのであれば、ジェイコブスはとにかく左右の動きを意識したい。直線的に前に出てくるクイリンの正面に立つのはジェイコブスといえどもあまりに危険だ。ロープを背負わされた状態からガードの間を打ち抜かれて尻餅をつく。そんなシーンが目に浮かぶ。くれぐれもクイリンと正対したまままっすぐ後退することだけは避けなくてはならない。
そして、序盤のクイリンの攻撃をしのげば流れは必ずくる。なるべく早いラウンドでクイリンのタイミングをインプットし、ハンドスピードを活かして得意のフックから右ストレートをヒットさせていくのだ。サイドへ回り、アングルを変えながらクイリンを翻弄するのである。
ちなみにたびたびサウスポースタイルへのスイッチを見せるジェイコブスだが、あれは止めた方がいいのではないだろうか。あまり効果的には見えないのだが。
たとえば試合後半、目先を変える意味で軽くスイッチするくらいであればアリだが、多用し過ぎると手痛いしっぺ返しを食いそうにしか思えない。
前半勝負必須のクイリンはジェイコブスをストップできるか?
一方のクイリン。
こちらは当然いつも通りのゴリ押しスタイルで攻め込むことになる。鋭く踏み込み、長いリーチを活かした右ストレートでジェイコブスを追い詰めるのだ。
さらに、今回はいつも以上に前半に勝負をかけたい。
ジェイコブスがクイリンの踏み込み、タイミングに慣れる前に強打で叩き潰すのである。
手数の少なさが欠点のクイリンではあるが、何度も言うように一発の破壊力は申し分ない。そして、クイリンの突進力があれば強打でジェイコブスを圧倒することは可能だと思うのだ。
広いスタンスでじわじわと近づき、鋭い踏み込みからのワンツー、もしくは近距離でガードの外から被せる右。そして返しの左。相手の打ち終わりを狙っての右。
抜群の破壊力を秘めるパンチを前半4Rまでに振り抜くのである。
理想は勢いのままKO勝ち。KOできなかった場合でも最低限ダウンは2回奪いたい。序盤のうちにジェイコブスに甚大なダメージを与えた上で、ポイントでも大きくリードしておくのだ。
クイリンは恐らくジェイコブスの左を避けることはできない。クイリンが踏み込んだ瞬間を狙って左のカウンターで狙ってくるだろう。
だが、そこでひるんではいけない。ジェイコブスの踏み込みよりもさらに強い踏み込みで、ジェイコブスの左を吹き飛ばすくらいの勢いでワンツーを打ち込むのだ。そして、距離が詰まったところで思いきり左右のフックを振り回すのである。
身体の強さでは間違いなくクイリンに分がある。強引に圧力をかけてジェイコブスをまっすぐ下がらせ、スペースができたところでさらに左右のフックを浴びせるのだ。
開き直ってジェイコブスが打ち返してくれば逆にこちらのものだ。ダメージを負った状態のジェイコブスであれば、クイリンの強打が1発でも当たればたちまちダウンを奪える。首から上が吹き飛ぶようなフックを食らわせてやるのである。
さらに、クイリンは意外と近距離でのカウンターが得意だということを忘れてはいけない。カウンターが得意というより、打たれても気にせずに打ち返すフィジカルの強さがあるという方が正確か。近距離での打ち合いではややクイリンに分があると思うのだ。
試合が長引けば、間違いなくジェイコブスはクイリンの動きに対応してくる。
カウンターを狙われ、いつもの通り弱気の虫が顔を出して手数が極端に減る。後はお互い手数の少ないこう着状態に突入し、ブーイングを受けながら12Rが経過するというお決まりのパターンである。
しかも、ポイント的にはジェイコブスに振られるラウンドが多くなるのではないだろうか。
つまり、クイリンが勝利するには前半にどれだけジェイコブスを追いつめられるかにかかっている。
試合後半は間違いなく弱気の虫が「こんにちは」をする。できれば6、7Rまでにジェイコブスを仕留めきるか、もしくは逆転不可能なほどのリードを奪っておくかである。
だが試合後半、リズムを掴んだジェイコブスが積極的に前に出ててくるようであれば、クイリンの逆転KOもあり得る。ジェイコブスのラッシュをクイリンが強打で受けて立つ。ハッサン・ナダム・ヌジカム戦のような激闘の12Rになる可能性も考えられる。
だが、クイリンの動きを見切ったジェイコブスがクレバーにカウンター作戦を選択した場合、クイリンの勝利は一気に遠のいてしまうだろう。
何が何でもクイリンは試合序盤で主導権を握り、ジェイコブスに「このままポイント勝負になると負ける」と思わせなくてはならないのだ。
今年最後のビッグマッチ。予想はジェイコブスの判定勝ち
ハイレベルな試合にはならないと申し上げたが、それがイコールつまらない試合かと言われればそうではない。試合のおもしろさとレベルはまったく別の話である。
ましてや強打者同士の激突である。むしろ白熱したスリリングな試合になる可能性の方が高いのではないだろうか。
予想は非常に難しいのだが、今回はジェイコブスの判定勝ちでいきたいと思う。ピーター・クイリンに初めて黒星がつく試合になることを予想する。
もちろんクイリンのKO勝ちも十分あり得る試合だと思うが、とりあえず2015年最後のビッグマッチであるブルックリン・ダービーに大いに期待したい。
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