再戦だろうなパスカルvsブラウン。引退撤回のジャン・パスカルが8年ぶり王座戴冠。前に出る勇気と腕を振る思いきりのよさ【結果・感想】
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2019年8月3日(日本時間4日)、米・ニューヨーク州で行われたWBA世界L・ヘビー級タイトルマッチ。同級暫定王者マーカス・ブラウンとランキング15位ジャン・パスカルの一戦は、パスカルの8R負傷判定勝利。僅差の3-0(75-74、75-74、75-74)で逃げ切ったパスカルが8年ぶりの王座復帰に成功した一戦である。
無敗の暫定王者マーカス・ブラウンに元WBC王者ジャン・パスカルが挑んだ今回。
いつも通りリラックスした構えから右リードを繰り出すブラウンに対し、パスカルは序盤からガードを上げて距離を詰める。ガードの上を叩かせながらじわじわ前進し、中間距離からやや近い位置での打ち合いを挑んでいく。
これまでのスタイルを捨て、積極的に圧力をかけるパスカル。対する王者ブラウンは細かい右で迎撃。ただヒット数こそ多いものの、パワフルなプレスと出入りに後退させられるシーンが目立つ。
そして4R。
ブラウンの右にパスカルがカウンターで右を合わせ、ブラウンが尻餅をつくようにダウン。この試合最初のダウンに会場が大きく盛り上がる。
ブラウンはすぐに立ち上がったものの、ダメージが深く足元がおぼつかない。その後もパスカルのプレスに苦しめられ、なかなかペースを掴むことができない展開が続く。
7Rにも立て続けに2度のダウンを奪われたブラウン。絶体絶命のピンチを迎えるが、何とかこのラウンドをしのぐ。
ところが8R中盤、両者の頭が激しくぶつかりブラウンの左まぶたが大きく割れる。これによって続行が不可能と判断され試合終了。僅差判定勝利でパスカルが8年ぶりの王座戴冠を果たした。
なお敗れたマーカス・ブラウンは再戦条項を行使するとのことで、今後の両者の動向に注目が集まる。
「これが僕のコバレフ! ヤードに苦戦しつつも11RKO勝利で初防衛に成功。もうカッチョいい。最高にカッチョいいww」
ジャン・パスカルがマーカス・ブラウンに勝つとはオドレエタ。完全に終わった選手だと思ってました…
ジャン・パスカル勝利!!
無敗のマーカス・ブラウンから3度のダウンを奪い、8年ぶりの王座戴冠に成功!!
まず何よりも、ジャン・パスカルはナイスファイト。今回は本当にお見事だった。
勝敗以前に「今さらマーカス・ブラウン戦なんて大丈夫かオイ?」などと考えていたことを全力で謝罪させていただきたい。
そもそも論として、僕はジャン・パスカルは完全に終わった選手だと思っていた。2017年6月のエレイデル・アルバレス戦を観て、あまりの足の動かなさに寂しい気持ちになった記憶がある。
その後引退を撤回したことも知っていたが、いや止めておけと。あの状態で無敗のマーカス・ブラウンに歯が立つとは思えないし、はっきり言って無謀。暫定とはいえ、タイトルマッチなど危険過ぎるだろと。
それがまさか。
ガチで勝ってしまうとは。
なお、マーカス・ブラウンについては2019年1月のバドゥ・ジャック戦以降、僕の中で評価が上がった選手。
「嗚呼、俺のバドゥ・ジャックが…。マーカス・ブラウンは相性最悪の相手だったな。額がパックリ割れる流血戦恐ろしやw」
現在のL・ヘビー級で主要4団体の王者に肉薄できるとすればこの選手なのではないか。
いや、決して飛び抜けた実力者だとは思わないのだが、相性的に。
長身+リーチを活かしたサウスポースタイルはディミトリー・ビボルやアルツール・ベテルビエフ相手にぼちぼち機能しそう。またバドゥ・ジャックと同様、サイドに動き回る連打型のアレクサンドル・グヴォジクを捕まえる可能性もあるんちゃうか?
そんな感じで、この選手には王者の牙城を崩すことを期待していたのだが……。繰り返しになるが、まさかジャン・パスカルに負けるとは思わなかった。
実はマーカス・ブラウンが主要4団体の王者を脅かすと期待していたが、パスカルの復活がすべてを吹っ飛ばした
申し上げたように、マーカス・ブラウンという選手は長身+リーチを活かしたサウスポー。右リードで距離とタイミングを測り、間合いの外から踏み込んでの左ストレートを得意とする。
なので、バドゥ・ジャックのように動きながら連打を出すタイプにはめっぽう強く、前回の試合でもジャックがサイドに回り込むより先に得意の左で顔面を何度も跳ね上げてみせた。
その反面カウンター使いを苦手とし、2016年にはラディボェ・カライジッチの柔軟性を活かしたカウンター作戦にあわや判定負けのピンチに陥っている。
またスムーズな右リードが打てるのもこの選手の特徴で、左ジャブを起点とするディミトリー・ビボルとの相性はそこそこよさそうに思える。
「ホ、ホントにやるんかカネロvsコバレフ。さすがにこれはコバレフが勝たなきゃダメなヤツじゃない?」
恐らくだが、この選手を攻略するにはカライジッチのようなカウンター勝負に持ち込むか、もしくはミドル級のゲンナジー・ゴロフキンのようなフィジカル強者のフットワーカーが重厚なプレスでねじ伏せるか。特にゴロフキンのプレスを踏襲できれば、足の運びが不安定なブラウンなら割と容易に崩せる気がする。
ただ、現L・ヘビー級にはゴロフキンのようなプレスの使い手は見当たらない。そう考えると、やはり主要4団体の王者を脅かすとすればマーカス・ブラウンが第一候補なんじゃない?
などなど。
あれこれとL・ヘビー級の今後を妄想していたのだが、ジャン・パスカルの返り咲きによってそれが一気に崩れてしまった。
ジャン・パスカルがプレスとブロック&リターンでブラウンをねじ伏せたことに一番驚き、そして感動している
そしてもっとも驚いたのが、ジャン・パスカルがプレスでマーカス・ブラウンを下したこと。
もともとパスカルは足がよく動くタイプで、個人的なイメージとしては重量級のユリオルキス・ガンボア。縦横無尽に動き回りながら単発のパンチを当てる野性的なスタイルである。
ところがキャリア後半、足の衰えに伴って持ち味のバネが失われ、中間距離で捕まるシーンが目立っていた。その流れでエレイデル・アルバレスに挑んだ結果、大差判定負け。
僕自身、あの試合を観て「これ以上はキツいかなぁ」と思っていたところである。
「ゴロフキンがロールズに圧勝!! 膝がキテるなぁ。やっぱり下半身にくるよな。2016年の試合との違いが歴然過ぎて」
それが今回、見事モデルチェンジに成功して復活を遂げたという。
ブラウンの右が届かない位置で対峙し、踏み込みのタイミングを測る。
ガードの上を叩かせながらじわじわと間合いを詰め、腕の届く位置まで前進。
そして一気に出力を上げ、至近距離でのフルスイングを浴びせる流れ。
極力自分からは手を出さず、バックステップとガードでブラウンの右リードの威力を殺しつつ、パンチの届く位置まで近づく。
遠い間合いを得意とするブラウンに糞詰まりを起こさせ、強引に近場での打ち合いを演出。
被弾覚悟で前進を繰り返し、ブロック&リターンの打ち合いに巻き込む。
正直、3度のダウンがなければヒット数の差でブラウン勝利は堅かったと思う。
ただ、一か八かでこの作戦を選択したジャン・パスカルの勇気は文句なしにすばらしかったし、心動かされるものがあった。
相手がベテルビエフだったらどうとか、グヴォジクには通用しないという仮定の話は無意味。対マーカス・ブラウン仕様のベストを実行し、それがモロにハマった事実に僕は大変感動しているww
「ベテルビエフvsグヴォジクとかいう地球が割れるかもしれない統一戦。退路を断った爆腕と重量級の拳四朗楽しみやね」
まあでも、再戦はするべきでしょうね。
この結末はブラウンにとってはあまりに消化不良だし、パスカルも納得いかない表情で勝ち名乗りを受けていた。主要4団体の王者とは別リーグ化する可能性もあるが、どちらにとっても避けて通れない道かなと。
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