バージル・オルティスvsカバロウスカスのThis is boxingな一戦。オルティスの若さとカバロウスカスの失速癖で大盛り上がり【結果・感想】
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2021年8月14日(日本時間15日)、米・テキサス州で行われたウェルター級12回戦。WBO同級インターナショナル王者バージル・オルティスJr.がWBO5位のエギディウス・カバロウスカスと対戦し8RTKO勝利。戦績を18戦全勝18KOとした一戦である。
序盤からガードを高く上げた覗き見スタイルで前進するオルティスに対し、カバロウスカスは鋭い左リードとカウンターで対抗。
オルティスの左に同時打ちのタイミングで右を被せてパワフルな突進を寸断していく。
2Rにはリング中央でアッパーをヒットし、オルティスが盛大にグラつくシーンも。
だが、オルティスも持ち前の馬力とコンビネーションを駆使して簡単にはペースを渡さない。3Rに左フックでこの日最初のダウンを奪うと、そこから徐々にカバロウスカスを疲弊させていく。
そして迎えた8R。
再三の被弾で疲れが見えるカバロウスカスの様子を確認したオルティスは接近戦でボディを連発。コーナーで2度目のダウンを奪うと、さらに連打を浴びせて直後にダウンを追加する。
最後はロープを背負わせた状態で得意のコンビネーションを浴びせてレフェリーストップを呼び込む。激しいペース争い、打撃戦を制したバージル・オルティスJr.が見事に18連勝を飾った。
カシメロvsリゴンドーとかいう放送事故。ハリー「こんな競技好きな人がいるんだね」←これは完全に正しいw 別にどっちの勝ちでもいいよ
オルティスJr.vsカバロウスカス最高でした。カシメロvsリゴンドー戦がクソだったせいでなおさら
GBP期待のプロスペクト、バージル・オルティスJr.のプロ18戦目。
相手のエギディウス・カバロウスカスは2019年6月にWBO王者テレンス・クロフォードに挑戦した経験を持つ強豪で、この試合で勝利すれば再びトップ戦線に進出する可能性が生まれる。
しかも、両者ともに打ち合い上等のファイタータイプ。
僕もこの組み合わせは絶対に噛み合うだろうと思っていて、結構前から楽しみにしていた次第である。
バージル・オルティスvsカバロウスカスはおもしろそうだよな。オルティスを勝たせるための試合だと思うけどカバロウスカスもがんがれ
で、実際の試合だが、はっきり言ってめちゃくちゃおもしろかった。
お互いの射程がピッタリと合い、中間距離で両者の強打が飛び交う激しい打撃戦。
緊迫感のある打ち合いの末に8RTKOでオルティスが押し切ったわけだが、とにかく満足度の高い試合だった。
同日、WOWOWエキサイトマッチで中継されたWBO世界バンタム級タイトルマッチ、ジョン・リエル・カシメロvsギジェルモ・リゴンドー戦が殺意を覚えるほどのクソ試合だったことも手伝い、この試合のエキサイティングさが際立つ結果となっている。
前半型のカウンター使い、カバロウスカス。ディフェンス面のヌルさによってどうしても後半失速する
まず前回申し上げたように、エギディウス・カバロウスカスは基本的にはカウンター使いなのだと思う。
鋭い左リードでスペースを作り、相手の初弾に同時打ちのタイミングで右を被せる。
さらに相手が怯めば間髪入れずに距離を詰めて連打につなげる。
この試合でもオルティスの左に再三カウンターを被せていたし、ナチュラルに強打を打てるパワフルさは目を見張るものがある。
PFP上位の常連テレンス・クロフォード相手にも序盤は優位に立つなど、実力の高さは疑いようがない。
クロフォードさすが。カバロウスカスを9RTKO。もっと無双してほしかったけど。マジでミドル級に上げるの?
だが、1発で切って落とす鋭いカウンターを駆使する反面、ディフェンスのヌルさがやや目に付く。
低いガード+目で避けるディフェンスが中心なので、オルティスのようにジャブを得意とする相手との相性はいいとは言えない。
また、頭の位置があまり動かないせいで攻撃を芯でもらいやすく、後半になるとどうしてもダメージが蓄積する。
今回も7Rにガクッとペースが落ちたし、同じくKO負けを喫したクロフォード戦でも後半になるにつれてどんどん勢いが失われていった。
もともと前半型なのもあるとは思うが、あれだけ顔面でバシバシもらい続ければ最後まで耐えきるのは難しい。相打ち覚悟というか、“肉を切らせて骨を断つ”カウンター使いの宿命と言えるのかもしれない。
カウンター使いにやや弱いオルティスJr.。打たれるとムキになる一面も。両者の長所と短所がモロに合致したよね
対するバージル・オルティスJr.だが、こちらは上述の通り覗き見スタイルのファイタータイプ。
鋭いジャブと近場でのコンビネーション、前に出る馬力が持ち味の連打型の選手である。
ただ、ブロックとガード中心のファイトスタイルはカウンター使いを苦手とする傾向があり、それはオルティスも例外ではない。
実際に2Rにはカバロウスカスのアッパーで盛大にグラつかされているし、1発もらうとムキになって大振りファイトを始めてしまうといった若さも垣間見えた。
バージル・オルティスはウェルター級王者クラス? モーリス・フッカーの限界値が示された。それでもオルティスがデラホーヤになれない理由
左リードとカウンターは強烈だが、ディフェンス面のヌルさと後半の失速が目立つカバロウスカス。
同じく鋭い左リードと近場でのコンビネーション、前に出る馬力を持ち味とするが、カウンター対策とピンチでの対応に脆さが見られるオルティスJr.。
お互いに中間距離での差し合いが得意+長所と短所がモロに合致した結果、大盛り上がりの打撃戦が展開された。
冗談でも何でもなく、この上なくスタイルが噛み合う両者だった。
7Rの失速で実質勝負あり。根気よく左をヒットし、徐々にペースを掴んだオルティスの勝利
今回の試合、どちらの左リードの精度が高いか、どちらが先に相手を怯ませるかが勝敗を分けるのでは? と思っていたわけだが、この部分で上回ったのはオルティスの方。
手数自体はカバロウスカスの方が多かったが、正確性や1発の威力に関してはオルティスが圧倒していたように思う。
序盤こそカバロウスカスのカウンターに手間取ったものの、根気よく左を出しつつ意表をついた右で徐々にペースを取り戻していくオルティス。
そして、7Rにカバロウスカスが明確な失速を見せた瞬間、一気にペースアップ。続く8Rに執拗なボディ攻撃によってついに2度目のダウンを奪ってみせた。
表情は「まだまだできる」と言わんばかりのカバロウスカスだったが、噴き出したダメージは隠しきれない。続けざまにダウンを喫し、無抵抗になったところでレフェリーストップが入ってジ・エンド。
7Rの失速で実質勝負ありだったと言えそうである。
オルティスにとってはいい経験になったか? もしかしたら? を期待させる選手だよね。カバロウスカスはアイツとの対戦が観たい
マジな話、今回はバージル・オルティスJr.にとってはめちゃくちゃいい経験になったのではないか。
2019年8月のアントニオ・オロスコ戦を超える打ち合いを制したのはもちろん、後半になっても落ちないスタミナやチャンスでの爆発力はやはり別格のものがある。3Rに奪ったダウンを含め、キワキワでのタイミングのよさも随所に発揮した。
その反面、ピンチの局面でムキになってしまう未熟さが露呈したことも確か。
いずれWBO王者のテレンス・クロフォードを標的にするのだと思うが、その前にこの試合をクリアできたのは本当に大きい(と思う)。
正直、今の段階ではクロフォードの対抗馬としては若干物足りない気もするが、それでも「もしかしたら?」というスケールを感じさせる。
落ちたなパッキャオ…。ウガスに3-0の判定負け。仮に現役続行するなら王座を狙うよりも“生き様を見せる”方向にシフトしていけば
また、敗れたカバロウスカスもできることならもうひと踏ん張りしてほしい。
実力の高さは今回も十分示したし、リトアニア出身のスポーツ選手には個人的に謎の思い入れもある。
実現の有無を気にせず言うなら、エギディウス・カバロウスカスvsケル・ブルックとかどうよ? などと思ったり。
でもまあ、ケル・ブルックはもう戻ってこない感じもするんですけどね。
SNSを見るとすげえ人生楽しんでそうだし。
?BEWARE THE CARRAGHER LEFT HOOK?
⏪A rewind to when @SpecialKBrook was surprised by @Carra23's skills on the pads? pic.twitter.com/iVRqXwVGgb
— Sky Sports Boxing (@SkySportsBoxing) July 15, 2021