本を無料で出版できる『∞books-ムゲンブックス』登場!! もしかしていまだに出版が特別だとか思ってない?
無料で本を出版できるサービス『∞books(ムゲンブックス)』が開始されている。
著者はブログや日記感覚で文章を書き、好きな画像を配置するだけで紙の本が完成するというお手軽さが嬉しいサービスです。マージンや文字の組み方などはすべてシステム上で処理されるため、印刷や製本に関する知識は必要ありません。
しかもAmazonや全国の書店に流通することができ、著者は10%の印税を受け取れるという画期的なサービスです。
もう一度言いますが無料です。
すべて受注生産で在庫をいっさい持たないため、初期費用を完全にカットできるとのことです。なおかつ取次を通さずに全国の書店と直接取り引きしているので、従来の大量発注・大量生産前提の中抜きシステムとはまったく違う流通形態を実現できているようです。
よくよく見ると、このサービスを開始したのは例の4980円で紙の本が出版できる「MyISBN」を発表した方でした。
「ムゲンブックス」はAmazonや書店で買える紙の本を無料で出版できる
4980円のサービスだけでは飽き足らず、さらに攻めてきたといったところでしょうか。
こういった一つの場所にとどまらない姿勢は、素直にすごいなと思います。
個人出版の理想形に近いんじゃないか?
無料で印刷本が作れて、なおかつ流通にのせられる。しかも印刷や製本に関する知識もいらないし、専用ソフトを使いこなす必要もない。
このサービス、個人出版の理想形に近いんじゃないでしょうか。
大げさかもしれないですが、記事を読んで単純にそう思いました。
ほんの10年前までは、本を出すことそれ自体が特別で高尚なものと考えられていました。
もし一般人が自分の名前で本を出そうと思ったら、途方もない金額を積んで自費出版するか、人生をかけてコンクールで新人賞を狙うかくらいしか方法はない状況でした。
ところがここ数年、電子書籍の登場など出版へのハードルが低くなり、自費出版・個人出版がそこまで特別なものではない環境が整ってきました。
ですが、物理的に本を出版することがどこか特別なものとして捉えられている状況は依然として強く残っています。インターネットやSNSの発達により、Web上で文章を書くことに対する抵抗はほぼないといってもいいのに対し、紙の本を出すことにたいする妙な神格化は根強いものなのではないでしょうか。
ところが、ついに無料で紙の本を流通にのせられるサービスが登場しました。これによって、ブログを書く感覚と同じ手軽さで一般人が本を出版する時代が到来したのかもしれません。
素晴らしいです。
ちょっと感動しました。
我ながら大げさですが。
以前、「実は期待してます。電子書籍市場拡大」の記事で「編集者のみなさんにはプロフェッショナルとして、簡易な無料サービスとの格の違いを見せつけてほしい」と申し上げましたが、僕は別に無料サービスが滅びればいいとはまったく思っていません。こちらはこちらでどんどん進化していってもらいたいですし、一つの完成形がこの『∞books(ムゲンブックス)』なのではないかと思います。
出すのが特別なんじゃなくて、売れるのが特別なんだぞ?
もはや本を出すことはまったく特別なことじゃなく、数ある中から選んでもらうことが特別であると。そう感じました。
出版自体は完全にお手軽にできる環境が整いました。
出版を知的な創造活動だと、一部の人間が上からものを言う時代は完全に過ぎました。
編集者に拾い上げてもらうために命を削って作家デビューを目指す必要もなく、法外な金額を出す必要もなく、「今日の晩飯どうしようかな」と同じテンションで「本出そうかな」と言える環境が整いました。
こういうサービスが登場すると、自分の領域が侵される心配をしないのかと聞かれるかもしれませんが、まったく思わないですね。もともと僕自身が出版業界が少しでも盛り上がればいいと思って始めた人間なので、こういう画期的なサービスが登場するのはむしろ大歓迎だなと感じます。
というよりも、このサービス自体が僕がやりたいと思っていたものと非常に酷似していて「おお!!」と思ったというのもあります。
やりたいと思ったけど、実力的にも経済的にも「とてもじゃないけど無理だ」とあきらめていたサービスで、それを世の中のすごい人が実現してくれたことにちょっと感動した部分が大きいです。
使い方はめちゃくちゃ簡単。誰でもできますね
サービス自体を少し使ってみたところ、めちゃくちゃ簡単で、誰でもできそうというのが率直な感想です。
ここの記事「誰でも無料で本が出版できるWEBサービスが登場」にもありますが、とにかく知識も何もいらずに利用者はひたすら文字を打ち、タイトルを決め、写真を配置するだけです。その他のことはシステムがすべて自動で処理してくれるので、完成までに迷うことはほぼないのではないでしょうか。
複雑なデザインは難しそうですが、単純な文字組みの小説や論文であれば大きな問題もなく、そこそこのものが完成しそうです。
フォーマットも紙の書籍と電子書籍を選択でき、また表紙に関してはかなりの自由度が望めそうです。
印刷や製本の知識のない方やPCの扱い自体が得意でない方にも優しい設計であると感じました。
サービスの選び方としては、ある程度知識があって自分で自由に作ったものを出版したい場合は「MyISBN」、そういった知識はなく、レイアウトや文字組みはそこそこでいいからとにかく手軽に出版したい方は『∞books(ムゲンブックス)』を利用するといった住みわけでしょうか。
デメリットはあるの? ないの?
ここまで『∞books(ムゲンブックス)』をさんざん絶賛してきましたが、逆にデメリットはあるのでしょうか。
まず思いつくのは、この会社が潰れたら本が自動的に絶版になるということかと思います。付帯されているISBNは∞books(ムゲンブックス)さんのものですので、当然この会社がポシャればその本は絶版になります。
知らないうちに自分の本が絶版になっているという状況は十分考えられますし、先週出版をスタートして「さて、がんばって売るぞ」と思っていたら、実はもう絶版でしたという可能性もゼロではありません。さすがにそこまで誠意のない対応をするとは思えませんが。
もう一つ考えられるのはやはり著作権や名誉棄損などの法律関係ではないでしょうか。以下に代表の方のインタビューがありましたのでリンクをはっておきます。
ITを活用した次世代のオンデマンド出版『∞books(ムゲンブックス)』
この記事の中盤あたりに「著作権は誰のもの?」といった件があり、「著作権は著者のものであって、権利を囲い込むようなことはしない」と明言されています。
「権利の譲渡を要求するようなことはいっさいしません」とは、逆に言うと「何があっても自己責任でよろしくね」という意味にもとれる気がします。
そこで『∞books(ムゲンブックス)』の利用規約を読んでみました。
「第9条:禁止事項」で第三者の著作権や肖像権の侵害、第三者への誹謗中傷、名誉棄損を禁止する旨が定められています。
そして、「第12条:画像等の情報などの使用許諾」を読むと、「画像等の著作権や一切の権利は創作した個人に帰属する」旨の記述があります。
さらに「第13条:弊社の免責」には、「投稿される画像等の情報の適法性や正確性等に関して一切責任を負わない」旨の記述があります。
これは「著作権や肖像権などはすべて自分で解決しておいてください。こちらは一切関知しませんので自己責任でお願いします」という意味ととってOKでしょうか。
ただ、続く「第14条:作品配信における管理者権限」を読むと、「画像等の正確性や違法性にかかわらず、第三者から権利主張があった場合や著作権を侵害すると判断された場合などは変更や削除などの処置を行うことができる」旨の内容が定められています。
これはどういう解釈が正しいのでしょうか。「基本的には自己責任でお願いします」でいいのでしょうか。
法律に詳しくないので下手なことは言えないのですが、自分の会社が取得したISBNを付帯した書籍で著作権侵害や名誉棄損の裁判が起こったとしても、利用規約で定めておけば「弊社は責任を負いません」と言いきることが可能なのでしょうか。
いや、そのこと自体がいい悪いではなく、これがもし従来の自費出版であれば出版社が矢面に立ってくれるだろうし、そもそも著作権や名誉棄損にあたる表現に関しても神経質にチェックしてもらえるだろうと思った次第です。
最後に
万一、トラブルが起きた際のことを考えると多少疑問が残る部分はありますが、それはAmazonの電子書籍やその他のサービスに関しても同様で、この『∞books(ムゲンブックス)』が画期的なサービスであることには変わりありません。
個人的にも類似したサービスはいくつか知っていますが、どれも一長一短で、正直そこまでのインパクトはありませんでした。
それに比べると、この『∞books(ムゲンブックス)』のここまで突き抜けた思い切りのよさには感服したといいますか、非常に好感度が高かったです。
ぜひともみなさんが、著作権などの権利関係、名誉棄損などの表現に気をつけながら気軽に出版を実現できる流れになってもらいたいと感じました。
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