今さらメイウェザーとパッキャオを語る。アルバレスvsカーン戦を観て、この2人が唯一無二の存在だったことに改めて気づいた

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ラスベガスイメージ
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2016年5月7日(日本時間8日)に行われたWBC世界ミドル級タイトルマッチ。
王者サウル・アルバレスが挑戦者のアミール・カーンを6RでKOに下した試合である。

1発失神KOのインパクトもさることながら挑戦者カーンの健闘もすばらしく、階級アップによるハンディを感じさせないスピーディなボクシングを展開したことに対する称賛の声も多かった。

「カーン仰向けにバッタリ。“カネロ”・アルバレスが壮絶カウンター一発でカーンを失神KO!!」

と、同時にこのアルバレスを赤子同然に完封してみせたフロイド・メイウェザーのすごさが改めて浮き彫りになった試合とも言えるのではないだろうか。

アルバレスの対応力の高さを目の当たりにして、改めてメイウェザーのすごさを知る

アルバレスvsカーン戦。
この試合は予想以上におもしろく、あのKOシーンは2016年のベストKOの1つとなることは間違いない。個人的にはそれほど豪快な幕切れだったと思っている。
また、スピード勝負で6Rまでアルバレスを翻弄したアミール・カーンは本当によくがんばったと感心することしきりである。

先日この試合をもう一度観直してみたのだが、やっぱりいい試合だった
両者が自分の持ち味を存分に発揮し、その上でアルバレスが地力の差を見せつけたナイスファイト。まさしく実力者同士の名試合と言っていいのではないだろうか。

そして、同時に「この試合を観てカーンvsメイウェザー戦を観たくなった」という声が聞こえてきたので、試しに2013年のメイウェザーvsアルバレス戦を観直してみた次第である。

「アミール・カーンはメイウェザーの相手にふさわしいのか?」

率直な感想から申し上げると、
「メイウェザーすげえww」
ただ、それだけだった。

2013年当時、「近年最大のビッグファイト」と称されたメイウェザーvsアルバレス戦だが、ふたを開けてみれば何のことはない。ただひたすらメイウェザーのすごさだけが際立った一戦である。

開始直後からアルバレスは蛇に睨まれた蛙のように身体を硬直させ、自分から手を出すことができない。
当時のアルバレスは今よりもさらに攻撃的で、どんどん前進して自ら打ち込んでいくスタイルだったにもかかわらず、である。

「俺的PFPのNo.1コバレフ登場!! イサック・チレンベに勝ってウォード戦へ進めるか?」

身体が一回り以上大きく、前に出てコンビネーション勝負に持ち込むのが持ち味のアルバレスがまったく手を出せない。それどころか、手を出していないメイウェザーに対し、リターンのプレッシャーのみで下がらされているのだ。

恐らくアルバレスにはメイウェザーがすべてのパンチにリターンを返してくるように思えたのだろう。
カウンターを恐れるあまりパンチはすべて単発。ラウンドが進むにつれてイライラを募らせ、肩でプッシュするというらしくない行動も見せてしまうのである。

アミール・カーンの持久走に6Rで追いつき、ミゲール・コットとのコンビネーション勝負も制したアルバレスが、メイウェザーには何一つ自分のボクシングをさせてもらえないのである。

「“カネロ”・アルバレス、コットに大差判定勝ち!! 最高峰の技術戦に完勝し、王座獲得!!」

リターンを恐れるどころか、自分のパンチがまったく当たる気がしない。
自分のパンチが当たらないということは、一発でももらうとそのラウンドを失ってしまう。つまり、被弾覚悟で前に出ることができなくなるのである。

一発ももらいたくないからオーバーなアクションでパンチを避ける。
そのため、相手のパンチをよけた後に反撃の姿勢をとることができない。
態勢が崩れた瞬間をメイウェザーに狙われ、ポイントをごっそり持っていかれる。

リターンのプレッシャー、被弾の恐怖のみでアルバレスを後退させ、嘲笑うかのようにロープ際に磔にするメイウェザー。
何から何まで寒気がする

7Rの残り1分弱。
メイウェザーがアルバレスをコーナーに磔にしてガードの隙間からパンチを通しまくるシーンがあったと思うが、あの試合のすべてがあそこに凝縮されていたのではないだろうか。

「ロマチェンコがゴロフキン化? マルティネスに手も足も出させず完勝!! アカンわこりゃww」

カーンとメイウェザーの試合? 結果だけ教えてやるよ。3-0でメイウェザーだ

僕は常日頃から「フィジカル至上主義」を標榜していて、身体の強さがあれば技術差を埋めるのは難しくないと思っている。ある程度の技術差は身体の強さ、パワー差で押しきれると考えている。
逆に、フィジカル差のある相手を技術だけで上回るには相当の差がなければ難しいとも申し上げている。

「アンドレ・ウォード降臨!! サリバン・バレラを下してL・ヘビー級のテストマッチをクリア!!」

それを踏まえた上でアミール・カーンvsアルバレス戦、そしてメイウェザーvsアルバレス戦を観ると、メイウェザーのすごさがますます際立つのである。

アルバレスはキャッチウェイトとはいえミドル級を制するほどの体格を持ち、しかも20代半ばにしてミゲール・コットを上回るテクニックを持った選手である。
そのアルバレスを何の苦もなく赤子扱いしてみせる。アルバレスの持ち味をすべて消し去った上で、テンプレのような塩試合を演出してみせる。このメイウェザーの桁違いっぷりである。

自信満々でコーナーから飛び出したアルバレスの顔が次第に紅潮し、最終的にはフラストレーションたっぷりの表情で縮こまる。その過程こそが両者の決定的な実力差である。

「サーマン←才能だけでやってる人がポーターに辛勝!! ノンストップのハイスピードバトル!!」

もちろんあのメイウェザー戦からアルバレスが成長していることは間違いない。メイウェザー寄りのキャッチウェイトで行われた試合だったことも承知している。
だがそのハンディを加味した上で、なおかつメイウェザーのすごさが色あせるものではないことも確かである。

カーンvsメイウェザー戦を観たいという気持ちはわかる。現に僕もカーンならメイウェザーを慌てさせる可能性があると思っていた人間である。
だが、冷静になればおのずと答えは出る。3-0でメイウェザーだ

「ウィリー・モンロー・ジュニアやっぱりいい選手!! トンプソンに判定勝利で健在ぶりをアピール」

メイウェザーもすごいけど、パッキャオもすごかった。あの試合はやっぱり「世紀の一戦」だ

持久走作戦で判定勝ちを狙ったカーンを6Rで仕留め、ミゲール・コットとのコンビネーション勝負に勝利したアルバレスに持ち味を出させず赤子扱いしてみせたメイウェザー。

その衝撃的事実を踏まえた上で(踏まえてばかりですが)、メイウェザーを相手に最後まで自分のスタイルを貫き通した選手が1人いる。

その人物こそメイウェザーと共に長年ボクシング界を支えた英雄、マニー・パッキャオである。

「エリスランディ・ララvsフォアマン感想。ムカつくけどすげえ。ララがダーティ、正当両面でフォアマンを圧倒。長谷川穂積の理想型だな」

「世紀の一戦」と銘打たれたメイウェザーvsパッキャオ戦。
300億という馬鹿げた札束が飛び交い、セレブのプライベートジェットが渋滞を起こすというアホな現象まで巻き起こした空前絶後の巨大イベントである。

そして、結果的には「世紀の凡戦」と揶揄され、タッチボクシングに終始したメイウェザーに興ざめしたファンを大量に生み出した試合だ。

距離をとり、出鼻をくじき、全局面でフィリピンの英雄を上回ってみせたメイウェザーの完勝であり、同時にパッキャオが最後までパッキャオであり続けた試合でもある。

一足飛びで距離をゼロにする出入り。
鋭い踏み込みからの連打。
誰が相手でも、どんな状況からでもKOを狙いにいく姿勢。

マニー・パッキャオはメイウェザーのディフェンスにひるむことなく、最後の最後まで手を出し続け、そして散ったのである。

「コバレフvsウォード感想。コバレフ敗れる!! ウォードが3-0の判定で王座奪還!! 神の子がクラッシャーに鼻差で勝利」

お互いがお互いの後の先を狙う緊張感。稲妻のような一瞬の交錯。
静から動への移行。
瞬間瞬間の呼吸の読み合い、居合い抜きのような高密度の攻防。
僕は今でもたまにこの試合を観直すのだが、何度観てもやっぱりおもしろい

別にあの試合をつまらないと言う人を否定する気はまったくない。
「歴史が動く」だの「世紀の一戦」だのと煽りまくった試合としては派手さがまったくなかった。それは僕もそう思う。

だが、メイウェザーがどれだけ人間離れしているか、そしてそのメイウェザーを相手に自分のスタイルを貫き通したパッキャオがいかにすごかったか。その事実だけは伝わってほしいという気持ちが強い。

「最強のクソ試合製造機アンドレ・ウォードさんが本日も安定の完封。ブランドを寄せつけず」

見栄えはともかく、あそこで行われたのは偉大なボクサー2人による文句なしの頂上決戦だった。それを僕は声を大にして言いたい。
あの試合はそのくらいの名試合だったと個人的には思っている。

「パッキャオがブラッドリーに完全勝利!! ラバーマッチを制し有終の美を飾る」

確かこの試合を観た著名な格闘家の方が「こんな試合をしてたら格闘技が終わる」「これで100億ももらえるのか」などとおっしゃっていた記憶がある。
さらに「自分は世界レベルで戦ってきたし、ボクサーとのスパーリングも何度もやってきたからボクシングの大変さは十分わかっている」「経験したことがない人間が語るべきじゃない」旨の発言もしていた。

「“カネロ”アルバレスがリアム・スミス挑戦にファン失望?」

いつも言っているのだが、僕はこの「やったことがないヤツが言うな」理論が反吐が出るほど嫌いである。
もしその理論が正しいのであれば、この格闘家の方はボクシングで5階級制覇を成し遂げ、49連勝という記録を作り、一試合で100億のファイトマネーを稼がない限りメイウェザーvsパッキャオ戦を批判する資格はないということになる。

僕はこの方の試合を何度か観たことがあるが、とてもじゃないが100億のファイトマネーが出るような興行には見えなかった。仮にあの試合で100億もらえるのだとしたらそれこそ格闘技の終焉は近い。というか、なぜこの試合にそれだけの価値があると判断したのかを主催者に小一時間問いただしたいくらいである。

そういう自己矛盾にも気づかない短絡的な思考にも辟易するし、毎度のことながら「やったことがないヤツが言うな」理論にはつくづくうんざりさせられる。

「ベルデホダメか? マルティネスにはKO勝利したけど課題山積」

メイウェザーに勝てるのはゴロフキンで、ゴロフキンに勝てるのはメイウェザー

いろいろと述べてきたが、やはり最後にたどりつくのは「誰がメイウェザーに勝てるか」である。

これは恐らく多くの方と同意見で、周辺階級の現役選手を見渡す限りゴロフキン以外にいないのではないかと思う。

「ゴロフキンがウェイドを子ども扱い!! もう相手おらんなこりゃ」

突進力のあるアルバレスをあれだけ亀にしたメイウェザーだが、果たしてゴロフキンに対しても同じことができるだろうか。リターンのプレッシャーで下がらせ、距離を完全に掌握してやりたい放題というパターンに持ち込むことが可能だろうか。
僕はゴロフキンなら、もしかしたらメイウェザーを捕まえられるのではないかと思っている。メイウェザーのリターンに怯えることなく前に出続けることができるのではないかと思っている。

過去に突進力でメイウェザーを捕まえた選手を挙げるとすればマルコス・マイダナの一戦目だろう。だが、あの選手は動きがやや直線的だったためにポイントをひっくり返すまでには至らなかった。
ただ、ゴロフキンの理詰めのプレスであれば、メイウェザーのリターンの恐怖も乗り越えて距離を詰められるのではないだろうか。そんな期待を持たせてくれる選手である。
 
「シーサケット勝利!! PFP No.1 ロマゴンに判定で大金星を挙げる!! すっばらしいねシーサケット。僕は感動しちゃいました」
 
メイウェザーをロープに詰め、得意のコンビネーションで退路を塞ぎ圧力と連打で削っていく。いわゆる正攻法でメイウェザーに勝てる可能性のある唯一最大のボクサーではないかと思う。

逆に、ゴロフキンに勝てる可能性のあるのもメイウェザー。これもまた事実ではないだろうか。
いかにゴロフキンと言えどもトップスピードのメイウェザーを捕まえることは難しい。あの肩関節の柔軟性を活かしたフックもメイウェザーは得意のL字ガードとスウェーで見切るだろう。そしていつものように右クロスをヒットして身体を入れ替えるパターンに持ち込むのである。

メイウェザーであれば、ゴロフキンが相手でもタッチボクシングでポイントアウトする可能性があると思うのだ。

そして、もし本当にメイウェザーvsゴロフキン戦が実現したら、僕は断然メイウェザーを応援する
ゴロフキンがどれだけ紳士だろうが、どんな強敵とでも戦う姿勢を崩さない理想的な王者だろうが知ったこっちゃない。
テクニシャンがフィジカルモンスターをテクニックで凌駕する。僕は世界最高峰の舞台でそれを目撃したいのである。
フィジカルで上回るゴロフキンをメイウェザーが超絶技巧で無効化する。ワクワクしないだろうか。僕はメイウェザーならそれができると信じたい。

まあ、メイウェザーには何のメリットもない試合だし、本人が「ミドルでやるわけない」と言っているようなので実現することはないだろうが。

やりたいようにやらせてやれよ。メイウェザーにはそれだけの権利がある

たびたび復帰が取りざたされ、最近ではUFC戦士のコナー・マクレガーとの一騎打ちも噂されるメイウェザー。このマクレガー戦が茶番なのかは判断がつかないが、僕は全然アリだと思っている。
ボクシングルールでやるならメイウェザーの勝利は間違いないと思うが、それでもメイウェザーにはそういう茶番をやるだけの権利があるのではないだろうか。

メイウェザーの偉大さは上述してきた通りで、その功績を考えれば法律を犯さない限り多少の好き勝手は許されるはずである。
別にマクレガーとボクシングをやろうが、大金をちらつかせてドヤ顔しようが全然OK。それが許されるだけのことを成し遂げてきたご褒美として受け止めればいいのである。
少なくともブローナー戦よりはよっぽど興味が湧くでしょ。
めっちゃイラつくけどねww

おかしい……。
なぜ僕はこんな長文でメイウェザーを語っているんだ……?
別にメイウェザーのファンでもないのに。

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