サンキューコバレフ、お前はサイコーだった。アルバレスに7RKO負けで王座陥落。クラッシャーの終焉か?【結果・感想】

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ニュージャージーイメージ
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2018年8月4日(日本時間5日)、米・ニュージャージー州で行われたWBO世界L・ヘビー級タイトルマッチ。同級王者セルゲイ・コバレフとランキング8位エレイデル・アルバレスが対戦し、7R2分45秒KOでアルバレスが勝利。初の戴冠を果たした試合である。
 
2017年11月にビャチェスラフ・シャブランスキーとの決定戦を制し、WBO王者に返り咲いたコバレフ。
対するエレイデル・アルバレスは、WBCの指名挑戦権を持ちながら、王者スティーブンソンに何年間もタイトルマッチを引き伸ばされてきた不遇の選手。
 
そして、満を持してコバレフへの挑戦となった今回。
試合は一進一退の接戦となる。
序盤からコバレフがパワフルな右を振るって前に出るが、アルバレスも鋭い左で応戦。要所でコバレフの出足を止め、得意のラッシュを打たせない。
 
迎えた中盤7R。
やや動きの落ちたコバレフに対し、アルバレスはローブローの注意も気にせず思い切りボディを打ち込む。
 
ラウンド後半、ボディを意識させられ顔面が空いたところにアルバレスの右がヒット。コバレフが崩れ落ちるようにダウンする。
 
すぐさま立ち上がったものの、うつろな表情のコバレフ。
アルバレスのラッシュに耐えることができず、あっさりと2度目のダウンを喫してしまう。
 
都合3度のダウンを奪って勝利を挙げ、リング上で喜びを爆発させるアルバレス。
 
両者には再戦のオプションがあるとのことだが、ダメージの深いコバレフが再びリングに上がるかは微妙と言われている。
 
「スティーブンソンvsグヴォジク!! ま〜たおもしろそうな試合を組みやがってw キャリア終盤に勝負に出たかスティーブンソン」
 

コバレフ陥落……。マジか。アルバレスはめちゃくちゃいい選手だけど、ちょっと予想外だったな

コバレフが負けてしまった……。
 
相手はエレイデル・アルバレス。
 
WBC王者のアドニス・スティーブンソンにずっとソデにされ続けた選手で、こちらもどこかで報われればとは思っていたが……。
 
まさかコバレフに勝ってしまうとは。
 
いや、アルバレスがクソほどいい選手なのはもちろんだが、コバレフのファンとしては複雑というか……。
 
しかも3度倒されてのKO負け。
2017年のアンドレ・ウォード戦も豪快なKO負けだったが、ダメージは今回の方が明らかに甚大。35歳のコバレフがここから再起できるかはマジで微妙な気がする。
 
まあ、これもオール・オア・ナッシングの掟ってヤツか。
それも舞台は化け物だらけで階級自体がバグってるL・ヘビー級。
 
仕方ないといえば仕方ないのだが、本当に残念だなと。
 
「俺のコバレフが勝ったどー!! アルバレスの圧力を抑え込んで王座返り咲き。慎重な破壊神ってのもいいじゃないですか」
 

すべてがアルバレス陣営のプラン通りに進んだ試合だった。前半を耐え、ボディを効かせて後半勝負

実際の試合についてだが、今回はアルバレスの作戦通りに進んだなという印象が強い。
 
恐らくアルバレス陣営の作戦は後半勝負。
アンドレ・ウォードとの2戦やアイザック・チレンバ戦でのコバレフの失速を見て、前半は極力体力を使わずに耐えると決めたのではないか。
 
「ウォードが再戦に完勝!! コバレフがキャリア初のKO負けでリベンジ失敗。仕方ないね。ちょっと差があり過ぎたよな」
 
鋭いリードでコバレフの突進を寸断し、破壊的なラッシュを発動させない。
コバレフを危険地帯に立ち入らせず、射程のギリギリ一歩外をキープする。
 
さらに、顔面だけでなくボディにもローブロー気味の左を打ち込み、コバレフのトラウマを刺激することも忘れない。
 
なるべく少ない力でコバレフの体力を奪い、勝負どころの後半に備える。
4Rにテンプルにフックを被弾してグラつくものの、丁寧な左ですぐさま立て直したのはさすがだった。
 
ガードを上げてダメージ回復を図りつつ、コバレフに追撃を許さない周到さ。
ピンチに陥るケースも想定した上でのアルバレスの振る舞いだったように思える。
 
そして勝負の7R。
ラウンド開始直後から渾身の力でボディを打ち込み、顔面へのワンツーにつなぐ。これでコバレフを後退させ、さらに追撃のボディで下を意識させる。
 
ローブローの注意を受けても気にせず、コバレフと同時に前に出て思い切り腕を振る。
 
ラウンド中盤。
たっぷりとボディを意識させたところで、フェイントから顔面へフルスイングの右。
 
ウォード戦のトラウマでがんじがらめのコバレフはこれをモロに被弾し、盛大にダウンを喫する。
 
深いダメージでペースを崩され、まったく立て直しがきかないコバレフ。
リング中央で亀になったところにラッシュを浴び、再びダウン。
これでほぼ勝負ありである。
 
鋭いジャブでコバレフの突進を寸断し、サイドへの動きで安全な間合いをキープ。
ローブロー気味のボディとワンツー、さらにロープ際では全体重を浴びせてのしかかり、コバレフの失速を誘う。
 
6Rを使ってコバレフの体力低下を確認し、7Rから一気に圧力を強める。ローブローで十分トラウマを植え付け、最後はガラ空きの顔面に右をドカン。
 
繰り返しになるが、すべてがアルバレス陣営の作戦通りに進んだ一戦だった。
 
「これが僕のコバレフ! ヤードに苦戦しつつも11RKO勝利で初防衛に成功。もうカッチョいい。最高にカッチョいいww」
 

コバレフのコンディションもいまいちだったかな。これまではもっと獰猛なラッシュでねじ伏せてたと思うけど

と同時に、今回はコバレフのコンディションもあまりよくなかったように思える。
 
この選手は基本的に動き出しに間があり、そこを狙われるケースは多い。
去年のシャブランスキー戦でも、ジャブで顔を跳ね上げられるシーンはたびたび見られた。
 
「コバレフがシャブランスキーを倒しまくり再起戦に勝利。かっこええわ~コバレフ。やっぱり破壊神が王座にいないとね」
 
だが、絶好調時のコバレフはその程度ではビクともしない。
ジャブをもらおうがお構いなしで踏み込み、外側から得意の右クロスをねじ込んでいく。
 
左右のフェイントで煽りながら前進し、相手が怯んだところに追撃の連打を浴びせる。そのままロープを背負わせて叩き潰すというのが、この選手の王道の勝ちパターンである。
 
特にクロス気味の右カウンターは殺人的で、アンドレ・ウォードですら避けられないほどのキレと威力を誇る。
 
ただ、この試合のコバレフにはそこまでのパワフルさは感じられない。
 
アルバレスの左でそのつど動きを止められ、必殺のラッシュまでの流れができない。
4Rのチャンスでもこれまでのコバレフなら確実にKOしていたと思うのだが、まさかあの局面から後退させられるとは。
 
もちろんアルバレスの左が強烈だったのもあるが、それ以上にコバレフの圧力のなさが……。
 
無理やりアクセルを踏み込むも回転数が上がらず、フルパワーでの稼働時間も短い。
案の定、6Rからガクッと失速を見せ、最後は豪快に右を被弾してジ・エンド。
 
これが年齢的な衰えなのか、単純なコンディション不良なのかは定かではないが、どちらにしても今回のコバレフの姿はちょっと切ないものがあった。
 
何となくだが、こういうパワーとアジリティの両立があってこそ実力を発揮するタイプは、どちらか一方が低下すると一気に衰えがくるのかもしれない。
 

コバレフは僕がカッチョいいと思った数少ない選手。でも、やっぱり引退かな

なお、やはりコバレフはこの敗戦で引退なのだろうか。
再戦のオプションはあるらしいが、ダメージと年齢を考えると厳しいのでは? という話だが。
 
 
最初に申し上げたように、僕はセルゲイ・コバレフのファンである。
 
殺気を帯びた佇まい。
他者を寄せ付けない雰囲気。
 
ガウンの内側から覗く鋭い眼光。
高圧的でぶっきらぼうな物言い。
 
圧倒的なファイトスタイルと相まって、単純に「カッチョいい」と思わせる選手。
 
僕が過去、カッチョいいと思ったのはロイ・ジョーンズJr.内山高志なのだが、コバレフという選手はそれに匹敵する。
 
「オールタイム・ベストの幕引き。元PFPロイ・ジョーンズ引退。スコット・シグモンに3-0の判定で有終の美を飾る」
 

圧倒的な強さゆえに弱点を放置したまま頂点を極め、難敵アンドレ・ウォードと遭遇してしまった

個人的なイメージだが、コバレフの全盛期は2014〜2015年前後。
セドリック・アグニューやバーナード・ホプキンス、ジャン・パスカルをなぎ倒していた頃。
 
当時のコバレフの強さは他の追随を許さず、破壊的で獰猛。同じ全盛期でも、ゲンナジー・ゴロフキンとは別種の雄度。まさにコンプリートファイターそのものという様相だった(気がする)。
 
ところが圧倒的な強さゆえに苦戦を知らず、そのまま頂点を極めたために弱点を修正する努力を怠ってしまった。
 
具体的にコバレフのほころびが見えたのは、2016年のアイザック・チレンバ戦。
試合巧者のチレンバに動き出しを狙われ、後半の失速という欠点も露呈した。
 
そして、それらを放置したままボクシング史上屈指の曲者アンドレ・ウォードと遭遇したことで、インファイトでの弱さ、致命的なボディの弱さ、ピンチでの脆さを白日のもとにさらけ出してしまう。
 
中間距離では破壊的な強度を見せる反面、そこを突破された際のBプランがない。
ダメージを負ってからの対処法も知らず、あっさりと致命打を許す。
 
前半4Rまでなら惑星最強
失速した後半は地域王者クラス。
 
今回のアルバレスにもその弱点を突かれた結果、壮絶なKO負けを喫してしまった。
 
また、ピンチを迎えると露骨に苦しそうな表情を見せたり、判定結果に不満をぶちまけたり。
“クラッシャー”という異名とは裏腹に人間臭さが尋常じゃない。
 
 
まあ、そいういう不安定な部分もコバレフの魅力ではあるのだが(僕の中では)。
 
なので、このままコバレフが引退してしまうのはマジで切ない。
「これまでサンキュー」とは思いつつも、もう一度がんばってもらいたいという思いがあったりなかったり。
 
「タイソン・フューリーが神である理由。セファー・セフェリを4Rノーマス。2年半のブランク明けでロマチェンコ超え」
 
てか、ロイ・ジョーンズ、内山に続いてコバレフまで引退したら、僕はこれから誰を応援したらええの?
 
まさかのタイソン・フューリーしか残ってねえという緊急事態なのだがww
 
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