亀田興毅のベストバウトは内藤大助? ウーゴ・ルイス? 案外OPBFのワンミーチョーク戦かな。日本で試合ができないままの引退はキツいよな
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「亀田興毅」
通算戦績33勝2敗18KOのボクサーファイター。
2003年12月のデビュー以来、12戦目でファン・ランダエタとの王座決定戦を制してWBA世界L・フライ級王者を獲得。ところがその試合での判定が物議を醸し、約4ヶ月後にランダエタと再戦。3-0の判定で文句なしの勝利を挙げる。
また試合前の過激なパフォーマンスや歯に衣着せぬ発言は賛否両論を巻き起こし、2007年10月に弟の亀田大毅がWBC世界フライ級王者内藤大助に敗れて以降、世間から激しいバッシングを浴びることに。
その後、2009年11月には亀田大毅を下した内藤大助のWBC世界フライ級タイトルに挑戦。得意の左ストレートが内藤の顔面を再三捉えるなど3-0の判定で快勝し、見事2階級制覇に成功。世間に亀田家復活を印象付ける。
また、この試合はボクシングでは異例のさいたまスーパーアリーナで開催され、プロボクシング中継歴代2位の視聴率43.1%(関東地区)を記録。2009年に放送された全番組の中でも1位となった。
初防衛戦で元王者のポンサクレック・ウォンジョンカムにキャリア初黒星を喫するものの、2010年12月にはアレクサンデル・ムニョスとの王座決定戦を制してWBA世界バンタム級王座を戴冠。日本人初(当時)の3階級制覇を達成する。
同王座を8度防衛後、2013年12月にS・フライ級転向を表明して王座を返上。
ところが、2013年12月の亀田大毅vsリボリオ・ソリス戦での対応等、諸々の問題でJBCとの関係が悪化。JBCルール11条3項の「特別の事情」により、JBCは2014年8月に亀田3兄弟のボクサーライセンスの更新を認めないことを決定する。
これにより国内で試合ができなくなった3兄弟は海外へ活躍の場を求めて大物プロモーター、アル・ヘイモンと契約。
2014年11月に米・シカゴで約1年ぶりの復帰戦に勝利した興毅は翌2015年10月、4階級制覇をかけてWBA世界S・フライ級王者河野公平に挑戦する。
試合は終始河野の積極的な攻勢に苦しめられ、0-3の(109-115、111-113、108-116)判定負け。この試合を最後に現役引退を表明した。
亀田興毅のことは嫌いではない。好きでもないけど。でも、知名度に関しては文句のつけようがない
まず最初に。
僕は亀田興毅のことが嫌いではない。特別好きでもない。
過激な物言いを含めてあーだこーだと言われた選手ではあるが、決して弱いとは思わない。また一部のアンチが言うような八百長やレフェリー買収等についてはコメントする気にすらならない。
だが、肝心の試合はあまりおもしろいとは思えず。特にバンタム級進出以降は安全運転に拍車がかかり、正直眠たくなる試合も多かった。
中でも2013年11月の孫正五戦は最悪だった。格下相手にまさかのダウンを喫するなど、完全に下降線に入ったと思わせる試合内容にがっかりしたことを覚えている。
とは言え、この選手の知名度に関しては文句のつけようがない。
数々のパフォーマンスや言動について今さら議論する気はないが、一時代を築いた選手であることは間違いない。
先日申し上げたように僕は2000年〜2010年前後のボクシングをよく知らない。単純に観戦熱が下がっていたのが一番の理由だが、長谷川穂積等、その時期に活躍していた選手をちっとも思い出せないでいる。
長谷川穂積のことは好きじゃないけど“世界”を見せてくれた選手だった。興味がなくてあまり観てなかったけど
ただ亀田興毅だけは別格で、それこそ普通に生きているだけでも情報が入ってくるくらいの知名度、露出度だった記憶がある。
2007年10月の亀田大毅vs内藤大助戦後のバッシングなどは最たるもので、夕方のニュースで安藤優子が亀田家にマジギレする様子に「やりすぎじゃねえの?」と思う反面、スポーツ選手がここまで世間に(ネガティブな方向で)浸透している事実にめちゃくちゃ驚かされた。
申し上げたように僕は亀田興毅のことが好きでも嫌いでもないが、“誰でも知っている”という部分だけを見ればオリンピックのメダリスト以上と言っても過言ではない。
2009年11月の内藤大助戦なんて、今観てもとんでもない盛り上がりですからね。誇張でもなく“2万人の会場が揺れている”。
亀田興毅のベストバウトは2005年8月のワンミーチョーク・シンワンチャー戦。グイグイ前に出て倒しにいく姿勢が印象的だった
表題の通りなのだが、僕が亀田興毅のベストバウトだと思う試合は2005年8月のOPBF東洋太平洋フライ級タイトルマッチ。タイのワンミーチョーク・シンワンチャーから複数回のダウンを奪った末に3RTKOに下した一戦である。
あの試合を観直して驚くのが、亀田がめちゃくちゃ積極的であること。キャリア中盤〜後半にかけてのアウトボクシングではなく、自ら前に出てぐいぐい倒しにいくラフさがこの試合の興毅にはある。
動きは直線的で粗さも目立つ。1Rにはワンミンチョークの左フックをテンプルに被弾してガクッと腰を落とすなど、成熟度という意味ではまだまだだったのだと思う。
だが、怖いもの知らずな積極性は文句なしにすばらしい。若さゆえの勢い、強引さもあったとは思うが、体格と階級のバランスを含めて純粋な戦闘力はこの時期がもっとも高かったのではないか。
「亀田とKOはセットや!」の言葉通りのボクシングというか、何より観ていて楽しいのがいい。解説の畑山隆則や竹原慎二も絶賛していたが、腕を高く掲げた亀ガードから打ち出すノーモーションの左はスローでもわからないくらいの鋭さがあった。
あの左ストレートはのちの内藤戦やウーゴ・ルイス戦でも大いに機能したが、近場での右フックと並ぶ亀田興毅の生命線だった(気がする)。
山中慎介はトマス・ロハス戦までが好き。岩佐亮佑戦はいまだに忘れられない。「神の左」を連呼され出してから「ん?」となった
器用で強メンタルの亀田興毅。スペック自体は高くないが、陣営の立てた作戦を忠実に実行する能力に長けていた
恐らくこの選手は器用なタイプなのだと思う。
ワンミーチョーク戦を踏まえて上述の内藤戦やウーゴ・ルイス戦を観ると、ファイトスタイルの違いに改めて驚かされる。
体格や勢いで優位性を発揮できるワンミーチョークには真正面からのパワー勝負を仕掛け、絶対に負けられなかった内藤戦では序盤はカウンター重視のアウトボクシング。中盤からは足を止めて打ち合い、終盤は再び足を使うといった組み立てで王者を翻弄してみせた。
また、ふた回りほど身体の大きなウーゴ・ルイスとの一戦ではひたすら距離をとり、リングを広く使ってポイントアウトに徹する作戦。
状況や相手によって戦術を大きく変え、それを最後までやり通すメンタルの強さ、割り切りがこの選手にはある。
亀田家の最大の強みは相手を分析するスカウティング能力だと思っているのだが、陣営の立てた作戦を忠実に遂行する器用さも亀田興毅の持ち味と言えるのではないか。
個人的な3兄弟のイメージとしては、
・亀田興毅→何でも器用にこなすタイプで、勝ちに徹するメンタルもある
・亀田大毅→不器用でできることも少ないが、コツを掴めば一番ハネるタイプ
・亀田和毅→動きは派手だが実は不器用。最終兵器ではない
井上尚弥のような圧倒的なスペックがあるわけではないし、山中慎介や三浦隆司のような突出した武器もない。
だが、自分の持ちネタを最大限活かす器用さと勝ちに徹する冷静さ、集中力の高さが興毅にはあった。
試合前の威勢のよさとは正反対の試合運びや安全志向のマッチメークに対する批判は絶えなかったものの、3階級制覇や8度の防衛は普通にすごい。“記憶よりも記録を重視”したと言えば聞こえは悪いが、それも立派なスタンスなのだろうと。
内山高志は僕が心底カッチョいいと思った選手。中間距離でかなうヤツは誰もいないんじゃない? ウォータース戦は実現してほしかったよね
まあでも、アレだ。
できることならもう少しだけ一か八かの勝負を観たかったとは思うかな。
僕の中での亀田興毅の大勝負と言えば、
・2006年8月のファン・ランダエタ戦
・2009年11月の内藤大助戦
・2010年3月のポンサクレック・ウォンジョンカム戦
・2012年12月のウーゴ・ルイス戦
・2015年10月の河野公平戦
くらいか。
って、結構あるじゃねえかww
一番はバンタム級時代にアンセルモ・モレノとの統一戦を回避したことだと思うが、今振り返るとそれも仕方なかったのかな? と思う。
バンタム級での亀田興毅は明らかにフィジカル不足で、衰えが顕著だった2010年当時のアレクサンデル・ムニョスすらもKOできず。亀田家のスタンスを考えれば、連続防衛を続ける全盛期のモレノよりも4階級制覇を優先したのも理解できる。
ファン・ランダエタVol.1の1Rにダウンを喫したことで自分の打たれ弱さに気づいた感じもあるんだよな。あのダウン以降、攻めの姿勢から器用さに頼ったボクシングに傾倒していったような気が……。
裁判に勝訴してよかったな。日本で試合ができないまま引退した興毅、大毅の辛さは想像を絶する
ちなみにだが、現在日本のボクシングは新型コロナウイルス感染拡大の影響で完全にストップ状態が続く。中でも現役選手はしんどい時期を過ごしていると思うが、日本で試合ができないまま引退した亀田興毅、亀田大毅の辛さは想像を絶するものがある。
特に当時24、5歳だった亀田大毅はあそこから2、3年がまさに全盛期。選手寿命の短いボクシングにおいて今回のコロナ騒動は気の毒以外の何物でもないが、不当な理由でキャリアの停滞を強いられた亀田3兄弟は本当にキツかっただろうなと。
そう考えると、改めて先日の勝訴はよかった。
亀田3兄弟訴訟、JBCに4550万円賠償命令 東京地裁https://t.co/rYujOxQnjG
兄弟の次男大毅さんの世界戦を巡るトラブルで、JBCは2014年2月、亀田ジムの会長とマネジャーの資格更新を認めない決定をした。3兄弟は国内で試合ができなくなった。
— 産経ニュース (@Sankei_news) January 31, 2020
“亀田裁判”敗訴でJBCの機能不全が露呈…日本のボクシング界が崩壊する恐れも https://t.co/eB04y10iFN pic.twitter.com/Qy7I96jYmD
— biz-journal (@biz_journal) February 6, 2020
失われた時間、選手としての未来が戻るわけではないが、少なくとも当時のJBCの対応がおかしかったという判断は下されたわけで。
まあ、素人の僕が見てもJBCに勝ち目はないだろというのは明白でしたからね。仮にアレでJBCが勝訴したら、それこそ「日本の司法、終了のお知らせ」としか言いようがないレベル。
どちらかと言えば「そりゃそうだよな」という印象の方が強かったかな。
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