個人事業主で一人出版社

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会社設立の野望が早々に頓挫した結果、僕の「自分で執筆した本を自力で売ってみよう」計画はあっさりと振り出しに戻ったわけである。 出版社設立の敷居が予想以上に高いことを思い知らされた僕は、なえそうな心にむち打ち次なる作戦へ向けて少ない脳みそをフル回転させていた。 といっても実際問題、もう選択肢はいくつも残っていないことも確かである。 まず「自分で執筆した本を売る」こと。これ自体はそんなに難しくなさそうである。 インターネットが一般に普及するより昔。確かに出版は相当難易度の高い知的活動であった。 そう、出版社が業界を席巻して肩で風切って歩いていたころは、個人が本を出版するのは相当な覚悟とリスクを伴う一大イベントであった。何せ自分の名前で本を出そうと思ったら、コンクールなどで入賞して出版社の人間の目に留まるか、吐きそうなレベルの身銭を切って大量の在庫を抱えるかの2択といっても過言ではなかったのである。 コンクール入賞を目指すのならば、すべてを犠牲にする覚悟で人生を賭けて挑むべきものだし、自費出版となるとそれこそ今までの人生を切り刻むような出費を強いられるものであった。およそ生半可な気持ちで決断できるようなことではなかったということである。たかだか本一冊で。 ところが今は違う。 インターネットが普及し、個人が簡単に情報を発信することのできる時代。少ないリスクで始められる自費出版サイトなどもさがせばいくらでも出てくる。 オリジナルのコンテンツさえあれば、本を出して売るだけならばすぐにでもできそうである。 「自分で書いた本を売る」 その目的を達成するだけならば、何も考え込む必要もない。ごくごく簡単な話である。 ただ、それだとおもしろくない。 ちっともおもしろくない。 知り合いにでまかせ言った手前もあるが、やっぱりこう、せっかくやるならちょっとワクワクしたい。何というか「自分、やってまっせ!」感が欲しい。 だからそこはやっぱり「開業」だ。 で、会社設立が厳しいなら「個人事業主」だ。 「個人事業主登録で開業する」 「自分で執筆した本を屋号名義で売る」 これで決まりだ。 「ワクワクしたいから開業するでぇ〜、執筆業でワンチャン狙うでぇ〜」 たぶん他の人からしたら「コイツふざけんな」って思われるんだろうなぁ。 メンタル弱い僕はふとそんなことを思ったが、あえてそこは気づかないフリをする。