敗因は実力? 采配? 侍ジャパン敗退。アメリカに準決勝で2-1で敗れて世界一奪還ならず。小久保監督は退任の意向【WBC結果・感想】

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ヤンキースタジアムイメージ
開催意中の2017 WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)。
2017年3月21日(日本時間22日)に米・ロサンゼルスにあるドジャースタジアムで準決勝が行われ、日本代表がアメリカと対戦。1-2で敗れた。
 
エース菅野を先発に立てて必勝を期した侍ジャパン。
菅野は6回3安打1失点、6奪三振と期待に応えたものの、肝心の打線がアメリカ投手陣の前に沈黙する。
1-1の同点で迎えた8回。守備の乱れから勝ち越し点を許し、結果的にこれが決勝点となり2大会ぶりの世界一奪還を逃す。
 
なお試合後、小久保監督は退任の意向を示している。
 
「もっと騒がれていい田中マー君のすごさ。今シーズンはマジでサイヤング賞推しメンです」
 

日本ナイスゲーム。感動的な試合だった。小久保監督もマジでお疲れ

まず申し上げたいのが、
「日本ナイスゲーム。小久保監督お疲れ。ホントにがんばってくれた」
といったところだろうか。
 
「「リスペクト」を便利使いするお前らに言いたいことがある。「マスコミ対応もプロフェッショナルの仕事だ」ってのはお前らマスコミ側が言うことじゃないから」
 
いや、誇張抜きで侍ジャパンは本当によくやったと思う。
試合ごとに小久保監督の成長も感じられ、まさしく見応え十分のすばらしいチームだった。
 
ベスト4という結果は悔しいが、それでも前回のプエルトリコ戦と違い、清々しい気持ちでこの結果を受け入れることができる。
 
小久保監督はこの試合で退任とのことで、まあそれも仕方がない。損な役回りを引き受け、ここまで有能な監督に成長したのに若干惜しい気はするが。
 
「小久保が侍ジャパン史上最高の有能監督な件について。WBCで世界一を目指す日本野球にふさわしい采配」
 
とにかく胸を張って日本に帰ってきてもらいたい。
それくらい今回の小久保監督と侍ジャパンは感動的だった。
 

小久保采配に疑問点は特になし。戦犯探しなど無粋じゃないか?

とりあえず、今回の試合は小久保監督の采配面に大きな間違いはなかったと思う。
 
不調の青木を3番で起用したのは、ターナー・ロアーク対策として左打者が有効だから。
守備に不安のある松田をサードに起用したのは、松田以上に打てて守れるサードなど今の日本にいないから。
リリーフエースの牧田を温存したのは、ランナーのいる場面やタイブレーク要員として残しておきたかったから。
 
あえてミスを挙げるのであれば、9回に絶好調の平野を1人で降ろし、宮西を送ってピンチを招いたところくらいか。
 
「2017年阪神優勝の可能性は? 阪神ってどんなチーム? どの部分を改善すればいいの」
 
万全を期すための左対左だったとは思うが、宮西くらいの変則左腕はMLBにはザラにいる。目先を変えるより、平野の剛速球でねじ伏せる方が正解だった気はする。あそこはあの回を抑えたい気持ちが強過ぎて、若干前のめりになってしまったか。
 
まあ、それでも宮西をすぐにあきらめ、秋吉に切り替えた判断はよかった。結果的にゼロに抑えたのだから、そこまで責められるようなことでもない。
 
というより、しっかりと根拠の見える采配をした小久保監督は、この試合に関して非があったとは思えない。
 
「目指せNPB! WBCで就活中の外国人選手たち。「日本でできれば最高」? でも、そんな甘いもんじゃないのだよ」
 
むしろどんな起用をしても、結果論で叩く人間は必ずいる。
ここまでの好試合に戦犯探しなど無粋以外の何物でもない。
なので、誰が何を言おうが気にする必要はない。
 
ただただナイスゲーム。
それでいいのではないだろうか。
 
「中日が松坂大輔さんを獲得しなくてはならない理由。日本球界の功労者に対する敬意が足らんよ敬意が」
 

高次元でバランスのとれたチーム同士のハイレベルな勝負。このレベルになると、一芸に秀でたチームが勝てるほど甘くない

申し上げたように、少なくともこの試合に関しては采配面に問題があったとは思わない。
小久保監督はすべての局面でベストではないまでも、ベターな選択をしていた。
 
一応申し上げておくと、日本は強い
以前の記事でも言ったことだが、今回の侍ジャパンは過去最強レベルとも呼べるメンバーが集まっていた。メジャー組が全員辞退した投手陣は若干馬力不足感は否めないが、少なくとも野手陣は優勝した2006、2009年に勝るとも劣らない戦力が揃っていたと断言できる。
 
そして、今回の試合もまさしく紙一重。
菊池か松田、どちらかがミスをしなければ。
8回のチャンスで筒香の打球が抜けていれば。
 
タラレバを言っても仕方ないが、とにかく高次元で拮抗した試合だったことは間違いない。その拮抗したギリギリの勝負の中で、わずかなスキを見せた日本が負けた。そういう試合だったのである。
 
先日のオランダvsプエルトリコ戦もそうだが、このレベルになると各チームに実力的な差はほとんどない。どのチームも短期決戦に特化したバランス型の戦力を揃え、その中で各々の特色を活かした戦術を選択するのである。
 
たとえばプエルトリコ。
このチームの持ち味はとにかく試合運びのうまさ。
若干弱い先発陣を強力なリリーフと鉄壁の内野陣でバックアップする。しかも後ろにいけばいくほど、どんどん馬力のある投手が出てくる仕様。同じタイプの投手でも、さらにパワーアップした投手を出せば打たれにくいという法則をうまく利用した選手起用である。
そして、それをキャッチャーのモリーナが強烈なリーダーシップで支える。
常にリードした状態をキープして接戦を拾いまくる試合巧者ぶり。勝てそうだけど勝てないチームの典型である。
 
それに対し、オランダはどちらかと言えば打のチーム。
メジャーリーガーをズラッと並べた強力打線で相手投手を粉砕し、先発投手の失点をカバーする。そしてプエルトリコほどではないが、そこそこのメンバーを揃えたリリーフ陣でしのぎまくり、最後のファンミルにつなぐ。
ただ、外野陣が弱いのと送りバントや進塁打が苦手な部分を突かれ日本、プエルトリコの後塵を拝している。
 
そして我が日本はどのようなチームかと言えば、完全に打のチームである。
投手力を全面に出した「守りの野球」を旗印にスタートした小久保ジャパンではあるが、実際の試合内容はスピード&パワー。史上最強の打線が相手を打ち崩し、やや馬力の足りない投手陣を補うパワフルな野球である。
 
そこに鉄壁の内野守備と、日本のお家芸である送りバントや進塁打といった野球IQの高さを加えたトータルベースボール。これこそが今回の侍ジャパンのチームカラーである。
 
プレミア12の日本や、優勝候補と言われながら2次ラウンドで敗退したドミニカのように、右上投げの投手ばかりを集めると、勝負どころでの細かいシチュエーションに対応しきれないという事態が起きる。
実績重視で投手部門のトップ10を上から集めるだけでは、どうしても乗り切れない修羅場に直面するのである。
 
また、プエルトリコのように打力は文句なしのNo.1でも、投手力が弱くてはどうにもならない。
 
「小久保を無能呼ばわりしておけばいいだけの2017年WBC。侍ジャパンの進む道は? 4番中田? スモールベースボール? ロースコア?」
 
つまり、何か一芸に秀でていれば勝ち進めるほど、WBCは甘い大会ではなくなっているのである。
 

高速で動くボールへの対応と、日本でばかり試合をしていたツケが決勝Rで表面化した

ところが今回の試合では、自慢の強打が鳴りを潜めてしまった。
というより、正確にはアメリカ入りしてから日本の打線は湿りがちだった。
 
アメリカ入りしてからの強化試合、カブス戦で4-6、ドジャース戦で2-3と2連敗を喫したわけだが、どちらの試合も打線が機能したとは言い難い。
 
特に「動くボール」と呼ばれ、手元で小さく変化するスピードボールには手を焼いた。バットの芯を外されて内野ゴロを量産する姿はもはや日本の打者の定番である。本番のアメリカ戦でもロアークの術中に見事にはまっていたし、すでに日本の打者を打ち取るテンプレと化しているのだろう。
 
「名将小久保覚醒ww WBC史上最高の監督小久保が藤浪を使わない理由? 絶妙継投と総力戦で打倒イスラエルを果たせ」
 
さらに、環境がガラッと変わったことも影響したように思う。
2次ラウンドまでは慣れ親しんだ東京ドーム。それ以外の強化試合も福岡ドームや京セラドームなど。レギュラーシーズンで常に試合をしている球場で、しかも天候に左右されないドーム球場での試合。これは実際、かなり恵まれていると思う。
 
その慣れ親しんだドーム球場から、温暖な西海岸の屋外球場に場所が変わったこと。グランドが人工芝から天然芝に変わったこと。
時差を含めて、日本でばかり試合をやっていた内弁慶の日本選手が、いきなり数日で体調をピークに持っていくことは至難の業だったと言わざるを得ない。
 
同じように日本から移動したオランダチームが何の苦もなく試合に入っていたことを見るに、基本的に日本を出ない侍ジャパンとの差がこの部分にもあったのかもしれない。
 

クソルールを目いっぱい利用したアメリカチームの術中に見事にハマった

ツーシームをはじめとする「高速で動くボール」への対応。
急な環境の変化への対応。
球場全体が味方してくれる場から、完全アウェーの場に放り出される状況への対応。
 
それに加え、アメリカチームの作戦も巧妙だったように思う。
試合序盤から、盛んに繰り返されたビデオ判定によるチャレンジ。日本の攻撃時にとにかくチャレンジを使いまくり、リズムを分断する作戦である。
 
あれで実際にゲッツーをセーフにされた菊池はかなり動揺したのだろう。そのあと、失点に直接つながるエラーを犯してしまう。
 
仕返しとばかりに小久保監督がチャレンジを要請したことも、もしかしたら日本をリズムに乗せないために仕向けられたことだったのかもしれない(さすがにそれはないか)。
 
無制限OKのチャレンジというクソルールを目いっぱい利用したアメリカの陽動作戦。しかも雨天による足場の悪さも加味されており、日本はそれにまんまと引っかかった感が強い。
 
「2019年の原巨人が優勝せざるを得ない理由。でも、優勝するのは広島だと思う件」
 
菊池のエラーで余裕をなくした菅野がマカッチェンにタイムリーを打たれるわけだが、そこに至るまでの蓄積は間違いなくあったはず。日本の打者とは段違いの圧力を含め、先発菅野が徐々に消耗させられる姿は本当に珍しい光景だった。
 
それでも5、6回としっかり立ち直り、2番手の千賀につないだのはさすがのひと言である。
千賀の3連続三振で流れがくるかとも思ったが、その裏のダイソンの高速のブレ球に対応できずに沈黙させられたのは痛かった。
まあひと言でブレ球と言っても、このランクになると当たり前のように93マイルを超えてくるので、一打席目でいきなり何とかしろというのも厳しいのだが。慣れどうこうの次元ではなく。
 
「阪神香田がヤバい。香田勲男容疑者52歳。職業:2017年阪神投手コーチ兼投手陣崩壊担当」
 
となると、やはり敗因は単純な力負けと考えるべきなのだろう。
今回の日本は持てる力をすべて出し切り、そして負けた。
環境や作戦面に改善点はあるものの、それを差し引いても今回のアメリカの投手陣を何とかできたとは思えない。
 
「プレミア12開催に先立ち、日本野球の国際化と国内リーグの強化を同時に実現する方法」
 
誰がいいとか悪いとかではなく、ある意味スッキリした結果である。
めちゃくちゃ悔しいが。
特に菅野と千賀というNPBの誇る最強投手陣が、パワフルなアメリカ打線を力技でねじ伏せたのが感動的ですらあっただけに。
 
 

 

 
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