井岡のボディでスタンプ嘔吐。2016年大みそかも悶絶ボディで安定のKO勝利。唯一無二の伝説()を目指して井岡一翔が突き進む【結果・感想】
2016年12月31日。京都市にある島津アリーナ京都で、井岡一翔とスタンプ・キャットニワットによるWBA世界フライ級タイトルマッチが行われた。
「小國vsグスマン感想。怒らないで聞いて。実は小國が勝てるんじゃないかと思ってた。でもビビって口に出せなかった」
同級正規王者井岡一翔が迎え撃つのは、暫定王者で15戦無敗の18歳スタンプ・キャットニワット。
タイ出身の若者に「ボクシングを教える」と意気込んで挑んだ井岡だったが、2Rに強烈な右フックを被弾し、まさかのダウンを喫する。
場内が騒然とする中、すぐに立ち上がった井岡は冷静にスタンプの猛攻に対処しこのラウンドをしのぐ。そして、ジャブとボディを中心にスタンプの前進を寸断、徐々にペースを掴んでいく。
最後はボディの連打でスタンプをマットに這わせ、レフェリーストップを呼び込み見事に勝利。7R2分51秒TKOで4度目の防衛に成功した試合である。
「井岡vsスタンプ・キャットニワット予想。18歳の暫定王者は強いぞ? 井岡伝説の幕開けか、それとも統一王座交代か? 」
井岡はやっぱり井岡だった。老かいな試合巧者ぶりを発揮して若い芽を刈り取る
今回の試合をひと言で言うと、
「やっぱり井岡だった」
といったところだろうか。
2Rのダウンにはびっくりしたが、それ以外はまったく問題なし。
前回のキービン・ララ戦同様、いつもの井岡が淡々と若い芽を摘み取った試合である。
「井岡がララを11RKOに下して快勝!! エストラーダとの対戦指令に従う…ないかなぁ」
マッチメーク面などいろいろと批判が多い井岡ではあるが、試合内容的には「さすが」としか言いようがない。
スタンプ・キャットニワットは間違いなくいい選手だったが、それでも井岡とは経験も技術面も比較にならない。
もう一度出直して、ぜひともモンスター化して戻ってきていただければと思う。
スタンプ・キャットニワットは豪腕ファイターではない。実はフルスイングが持ち味のカウンター使いだ
まず今回のスタンプ・キャットニワットだが、太い腕を振り回すスタイルから豪腕ファイターのイメージが強い。
「どうせ井岡が勝つんだろ」とダラけきっていたところ、あの2Rのダウンで目が覚めた方も多いと思う。そして、あのマン振りのスイングを観る限り、ゴリゴリのファイターという印象が残ったのではないだろうか。
「井岡vsノクノイを予想する。てか、井岡圧勝を予想する。今回ばかりはやりやすい相手を厳選した感が」
だが、実はそうではない。
この選手の本当の姿はカウンター使いである。
2Rのダウンを観直してみるとわかるのだが、あれも井岡の打ち終わりにタイミングを合わせたカウンターである。
しかも合わせているのは右のボディ。
抜群の距離感を持つ井岡が、あの至近距離であんな大振りのカウンターを被弾するのだから、それだけでもこの選手の非凡さが伝わるはずである。
解説者は「今日のスタンプの作戦は打ち終わりですね」と言っていたが、そうじゃない。
「今日」ではなく「いつも」だ。
「爆腕!! 村田がブルーノ・サンドバルにド迫力KO!! 世界前哨戦で格の違いを見せつけ3RKO」
自分の得意な中間距離で先に相手に手を出させ、スイングに合わせて丸太のような腕を振り回す。
ガードの外側からワンテンポ遅れたタイミングでフックを叩き込む。
それがこのスタンプ・キャットニワットの得意なパターンである。
しかし毎度思うのだが、タイという国は本当に奥が深い。
「観光ボクサー」と揶揄されるかませ犬もいれば、18歳でこんな才能を持った選手もいる。
何が飛び出すかわからないワクワク感というか、とにかくいい意味でわけがわからない。
そもそも、ピンチを迎えた6、7Rでも右の大振りに依存することなく、左からの組み立てを意識している時点でかませ犬とはひと味もふた味も違うのだが。
「八重樫がサマートレックをパワーで圧倒!! あれ? 肉体改造でもしたか? ここまでパワフルにねじ伏せるとは」
ダウンを奪われてもまったく動揺せず。すぐに相手の戦力を見極め、ペースを取り戻す
太い腕を目一杯使ったカウンターが持ち味のスタンプ・キャットニワット。
当初「塩挑戦者」などと言われていたが、それが間違いだということはすぐに証明されたはずである。
ただ、そこはさすがの井岡。
ダウンを奪われたあとも冷静に立て直し、あっさりとペースを握ってしまう。
相手の戦力を掌握する洞察力と試合巧者ぶりはマジで日本屈指のものがある。
「無敗対決レイ・バルガスvsギャビン・マクドネル予想。かなり興味深い試合です。長谷川穂積の後がまに座るのはどっちだ?」
スタンプのカウンターが危険だと感じたあとは、近づき過ぎないように意識しながら徹底して左ジャブ。外旋回のフックを得意とするスタンプが、絶対にカウンターを合わせられないパンチで削り取る作戦である。
「田中イキり過ぎたな。パランポンを9RTKOに下すも、試合後に病院に直行。田口良一との統一戦は白紙?」
この左で安全な距離をキープし、スタンプが強引に出てくればその分だけバックステップ。
解説者も言っていたように、スタンプの踏み込みよりも井岡のバックステップの方が速いために絶対に追いつかれることはない。
そして、大振りのスタンプが打ち終わりに身体が流れた瞬間を狙ってのカウンターである。
「フランプトンvsサンタクルス再戦感想。ハイレベル? なの? よくわからなかったな。2-1の判定でフランプトンがキャリア初黒星」
左のダブルでスペースを作り、スタンプがカウンターのモーションに入ると同時に左ボディ。
スタンプのパンチは1発1発に力を込めて打つため、どうしても動き出しに間ができる。それに対し、井岡は相手に正対したままノーモーションで打ち込むので予備動作にほとんど時間がかからない。
正対している分腰が入らず、パンチの威力ではスタンプに劣る。だが、それを正確性とスピードで補い、スタンプの攻め手をどんどん奪っていくのである。
「騙された! 田口がカニサレスを持て余して引き分け防衛。薄氷を踏む展開でギリギリ5度目防衛に成功」
スタンプが出てくることも想定通り。きっちり距離を潰してボディの連打で嘔吐KO
カウンターを完全に封じられ、中間距離では井岡にまったく歯が立たないスタンプ。
つまり接近戦に希望を見出すしかなくなるわけだが、試合巧者の井岡はそんなことはとっくに織り込み済みである。
至近距離での打ち合いといっても、大振りのフックが中心のスタンプはある程度のスペースがなければ力の入ったパンチを打つことができない。
逆に、井岡は相手と正対した状態からでも最小限の動きで多彩なパンチを出すことができる。
その差が顕著に出たのが6、7R。勝負を賭けて前に出たスタンプを井岡が真正面から受け止め、ボディへの集中打で逆に押し返して見せるのである。
ラウンド前半は至近距離での攻防で的確にボディをヒットし、小さくサイドステップして芯を外す。
ダメージの蓄積でスタンプが失速したところで、スペースを目一杯使って顔面とボディにコンビネーションを叩き込む。
とどめはこれまでと同様、右、左ボディの連打で悶絶KO。まさかのリング上での嘔吐というおまけつきである。
恐らく相手がエストラーダやロマゴンであれば、あれだけ至近距離で打ち合えばフィジカルとコンビネーション地獄に巻き込まれてあっという間に窮地に追い込まれる。
「エストラーダがタブゴンを一蹴!! S・フライで準備万端か。井上尚弥、ロマゴンをパワフルに蹴散らす?」
だが、スタンプ・キャットニワットや前回のキービン・ララ程度の相手ならまったく問題なし。至近距離での打ち合い上等。どうぞ、かかってきなさい。
まあ、そういうことである。
井岡が謙虚だったら逆に嫌だろ? 安定感抜群の試合運びと香ばしい発言があってこその井岡ですよ
しかし毎度思うのだが、井岡一翔という選手はやることなすこと批判されて本当に気の毒である。
とりあえず、今回のマッチメークに関してはそこまで落ち度はなかったと思う。
TBSは明らかにエストラーダ戦を実現したがっていたし、実際陣営もエストラーダ戦実現に向けて交渉していたと聞く。
結局エストラーダがロマゴンを追いかけて階級アップしたために流れてしまっただけで、「井岡が逃げた」だのと言うのはちょっと違うのではないだろうか。
「エリスランディ・ララvsフォアマン感想。ムカつくけどすげえ。ララがダーティ、正当両面でフォアマンを圧倒。長谷川穂積の理想型だな」
しかも「塩挑戦者」と見下していたスタンプ・キャットニワットも実際は強敵だったわけで、「テレビ局側の意向でヌルいマッチメークに終始している」というのも的外れな言いがかりとしか思えない。
「大森がハスキンスに挑戦!! エストラーダ埋蔵金出ました。やりたい放題のくそったれ英国紳士をぶっとばせ」
試合自体も、ダウンを奪われたあとに倒し返しての逆転KO。それも相手を嘔吐させての圧勝である。
この世界戦ラッシュの2016年末の中でもダントツにエキサイティングだったはずなのだが。
まあ井岡に関しては、マッチメークや試合内容よりも本人の言動が癇に障る人が多いのだろう。
唯一無二()やら伝説()やら。おまけに今後は最強の証明()をするためにゾウ・シミン戦を目指すとか。
「多くの有力選手が階級を上げてスカスカのフライ級で今さら最強の証明()? 笑わせんじゃねえよ」
ロマゴン戦を避けたことを根に持っているファンにとって、試合後の発言がいちいち香ばしい井岡にはどうしてもイライラしてしまうのだ。
「怪物ロマゴンも人間だった? クアドラスを判定で下して4階級制覇達成!! キャリア最大の苦戦」
だが、僕自身はいつも言っているようにスポーツ選手の人間性にはあまり興味がない。
試合以外でどれだけクズだろうが、犯罪さえ犯さなければ何を言おうが知ったこっちゃない。
というより、実を言うと井岡の香ばしい言動については毎回かなり楽しませていただいている。
・有名ボクサーの甥
・その叔父にも劣らない才能
・3階級制覇王者
これだけの実績とプロフィールを持ち、なおかつ歌手としては微妙だがGカップという何物にも代え難いステータスを持った婚約者がいて、その婚約者に叶姉妹がつけるようなバカでかい指輪をプレゼントする。
しかも愛車はポルシェにランボルギーニだっけか?
で、ランボルギーニにチャンピオンベルトを引っ掛けるのが夢だったとか?
普通に考えて、こんなホリエモンの全盛期みたいな成金野郎が謙虚であっていいはずがない。これでもし、井岡が優等生発言に終始するするようなヤツだったら僕は逆に困ってしまう。
適度に小物臭を発しながら香ばしい発言を繰り返す方が、はるかにしっくりくるというものである。
なので、僕は井岡にはぜひともこの路線を今後も突き進んでいただきたいと思っている。
マカオでゾウ・シミンに見事判定勝ちして最強宣言()。2017年の井岡にはそこまでのシナリオを期待する。