井上がカルモナに大差判定で勝利!! 意外と苦戦? 拳を痛めて攻撃力が半減。圧勝ながら被弾も許してKO防衛ストップ
2016年5月8日に東京・有明コロシアムで行われたWBO世界S・フライ級タイトルマッチ。王者井上尚弥が同級1位のダビド・カルモナと対戦し、3-0(118-109、118-109、116-111)の判定勝利で2度目の防衛に成功した。
2015年末に衝撃のKO勝ちで初防衛を果たした井上にとって、2度目となった防衛戦。スパーリングでパートナーの腕をガードの上から骨折させるなど、自他ともに認めるほど絶好調を維持したまま臨んだ試合である。
当然前回以上のインパクトある試合を期待する声は大きく、12R判定勝ちついてはやや物足りなさも残る内容といえるだろう。
「井上尚弥の強さ、すごさを考える。カルモナ戦の予想? KO勝ちでいいんじゃないの?」
だが、2Rに右拳を痛めた状態で強敵のカルモナを一方的に完封してみせた強さに疑いの余地はなく、今後の成長に期待を持たせる内容であったことも確かである。
日本が誇る「怪物」井上尚弥のさらなる躍進、ビッグマッチへの機運は高まるばかりである。
「八重樫の試合にイラつく…。テクアペトラ程度に激闘王って、ただの泥試合だろ」
カルモナを攻めあぐねて「怪物」の今後に不安?
井上尚弥またしても衝撃のKO勝利!!
とはいかず、視聴者や会場に詰めかけたファンにとってはややフラストレーションの溜まる試合だったのではないだろうか。
当然、試合後には「カルモナがタフだった。強かった」という声が多く聞かれたが、中には「対応力が足りない」「このままではロマゴンに勝つのは難しい」といった指摘もちらほら見られた。
確かに前回のパレナスと引き分けたカルモナにあれだけ攻めあぐねる姿を見せられれば不安に思う気持ちはわかる。
「井上尚弥強し!! パレナスをまったく寄せ付けずに2RでのKO勝利!!」
期待されるローマン・ゴンサレスとの一騎打ちに際して、カルモナ程度に手を焼いていては話にならない。拳を痛めたとか、そんなことは関係ない。井上尚弥にはもっと早いラウンドで、もっと衝撃的なKO勝利を飾ってもらう必要がある。そう考える人も多いのだろう。
「ロマゴン、アローヨを大差判定で退ける!! 半病人のゴンサレスにアローヨは歯が立たず」
判定決着になったことで井上尚弥についていろいろわかってきた。個人的には満足の試合だった
ただ、個人的にはこの試合の井上尚弥にはそこそこ満足している。
恐らくだが、拳を痛めなければ今回も普通に試合序盤でKO勝利を飾っていたように思う。
試合開始直後の剛腕ぶりはため息が出るほどすごかったし、5Rや最終12Rに見せたラッシュなども驚愕のひと言である。あれほど連打を重ねても全弾フルスイングできる選手を僕は見たことがないし、打ち終わりにすぐさま防御の姿勢をとれるバランスのよさも驚異的である。
先日の記事でも申し上げた通り、この選手の足腰の強さとそれを上半身に伝えるバランス感覚は天性のものだと思う。
「井上尚弥が拳を痛めないために? 井岡スタイルに変更すればいいんじゃない?」
それでも、まったく付け入る隙がないかと聞かれれば、そういうわけではない。
攻撃力はケタ違いなのは間違いないが、カウンターのチャンスはある。
ロマゴンやロマチェンコと違い、攻撃にメーターを振りきったスタイルなのでパンチを打つまでに溜めがあるのだ。この瞬間に勇気を持って前に出ればカウンターをとることは可能ではないかと思う。
さらに、今回の試合ではやや攻防分離な面も見られたのではないだろうか。確かに強烈な連打を打ち続けることができるのだが、それでもロマゴンやロマチェンコほどの継続性はない。カルモナに打ち終わりを狙われて被弾するシーンも目立っていた。
これは恐らく経験のなさによるところではないかと思う。これまでは井上のラッシュを受けて打ち返してくるような相手はいなかったのだろう。打ち終わりを狙われるという経験が皆無であるため、攻防が分離しようが問題なかったのだ。持ち前のスピードで防いではいたものの、打ち返してくる相手に戸惑ったことも確かだと思う。
「キービン・ララってそんなにダメか? 井岡が勝つと思うけど、普通にいい選手じゃないの?」
何度も言うように、井上の攻撃力は歴代屈指のものがある。ロマゴンやロマチェンコほど連打の継続性がないといっても、井上にはそれを補うだけのケタはずれのスピードがある。ガードごと相手を吹き飛ばすパワーもある。このスピードで相手を圧倒できているうちは劣勢に立たされることはまずない。問題なく勝利を積み重ねられるだろう。
「井上尚弥がペッチバンボーンに10RKO勝ち!! 井上が何者なのかがいまだに謎…」
懸念材料としては接近戦で出せるパンチが少ないこと、ややパンチの強弱が足りないことくらいだろうか。
防御についても何となく理解できたような気がする。
距離感がどうこう、防御勘がすばらしいと常々耳にしていたが、実際はそこまででもないと思う。この選手にはメイウェザーのような卓越した予測やロマゴンのような細かいシフトウェイトといった、目を見張るほどの防御技術はない。圧倒的なスピードで補っている部分が大きい。
「名前で損してるぞペッチバンボーン。そんなに悪い選手じゃないような…。勝つのは井上尚弥だけど」
今回の試合後に「これくらいならもらっても大丈夫だと思って、避けるのを怠ってしまった」旨のコメントを残していたようだが、絶対嘘だ。あれはわざとではなく、カルモナのパンチを普通に被弾していただけだ。
繰り返しになるが、拳さえ痛めなければ早いラウンドでKO勝ちを収めていた可能性は高いと思う。
逆にそれができなかったことで、この選手の全体像がある程度見えてきたとも言えるのではないだろうか。
「ウーゴ・ルイスに挑戦! 長谷川穂積最終章開幕。ラストファイトか? 大阪で引退をかけて3階級制覇へ」
攻撃力は尋常じゃない。
防御力はそこまででもない。
つまり、攻撃こそ最大の防御。攻め続けてなんぼ、桁はずれの攻撃力で相手を圧倒してなんぼの選手。それが井上尚弥という選手の全体像である。
こういうことを言うと、もしかしたら「そんなわけないだろう。どこを見てるんだ」と言われるかもしれない。「今回の試合でも後半のアウトボクシングはすばらしかったではないか」とおっしゃる方もいるのではないだろうか。
「井上vs河野予想!! ペッチバンボーン最強説を覆せ。モンスター井上の実力を証明する試合」
これについては、開き直りでも何でもなくその通りだと思う。
井上尚弥がすべての面で高次元にあることは間違いない。
ただ、今回はそういった類の話とはちょっと違う。
あくまでロマゴンやロマチェンコと比べたときにどうなのか。あのレベルの選手との比較で考えたときに、井上尚弥という選手がどのような特徴を持ったボクサーなのか。そういうことを自分なりに考えているだけの話である。
長身でディフェンシブな選手に井上がどう対応するか。そこに興味があります
前回のパレナス、そして今回のカルモナ。
正直に申し上げて、僕は「このパターンの防衛戦はもういいかな」と思い始めている。
もちろんランキング1位の選手を呼んでのマッチメークに文句はない。常にその時点での最強の相手と防衛戦を行う姿勢にどうこう言う気はまったくない。
ただこの手のタイプといくら試合をしても、プラス要素が多いとは思えないのもまた確かである。
ランキング1位の最強挑戦者来日!!
「井上は恐くない。十分チャンスはある」と強気の姿勢を貫く挑戦者!!
そして試合当日。
井上の一方的な勝利!!
最強の挑戦者が何もできずに撃沈!!
「やっぱり井上すげえぇぇ!!! 次はアメリカだああぁぁ!! ロマゴンにも勝てるうぅぅウゥゥ!!!」
これ、もうよくないか?
パレナスもカルモナもスタイルこそ違うが、基本的には身体の厚みのあるオーソドックスタイプである。当然試合自体もわかりやすく、純粋にどちらの戦闘力が上かで勝敗が決まる。
ディフェンスがうまい、アウトボックスに定評があるというカルモナだったが、リングに上がればあの通りである。スタイル的に井上とはかみ合う。単純な戦力差、両者の力通りの結果が出ただけの話だ。
井上尚弥の攻撃力が異次元であることは伝わった。個体能力だけなら飛び抜けたものを持っていることは十分わかった。
それを踏まえた上で、次はもっと癖の強い選手にぶつけてもらいたいと思う。
長身であったり、クネクネと掴みどころのないディフェンスが得意なタイプであったり。ひと癖ふた癖ある選手にどう対応するのかを見てみたいのである。
パッと思いつくのがアムナット・ルエンロエンとゾラニ・テテなのだが、何とかこのあたりの選手と絡むことができないだろうか。
井上の持ち前の破壊力はあの手の選手のディフェンスを吹き飛ばすことができるのか。それともよさを消されて意外と苦戦を強いられるのか。アムナットのようにのらりくらりとペースを握らせない変化球的な相手とどう戦うのか。困難な防衛戦をどうクリアするのかをぜひとも見てみたいのである。
ロマゴンを想定したマッチメークはわかるのだが、もう少し癖のある相手との試合が観たい
次回防衛戦はナルバエスとの再戦が最も有力という話だが、それもまた微妙な話だ。
もちろん悪いとは言わないが、できれば井上よりも身長が高い選手の方がいい。
井上の右は打ち下ろし気味のフォームなので、身長の低いナルバエスのテンプルがちょうどフルスイングできる位置にある。もしかしたら、ガードごと吹き飛ばしての速攻KO劇の再現という結末にもなりかねない。
それより、アムナットのようにいい意味でズル賢い選手への対応。僕はそちらの方がよっぽど興味をそそられるのだが、どうだろうか。
アムナットなら当然井上が接近戦が苦手なことにも気づいているだろう。距離を詰めてくるアムナットを持ち前のパワーで押し返すのか、それともうまく腕を絡めて動きを封じられてしまうのか。試合自体はかなり退屈なものになるだろうが、井上の実力の底を計る意味では非常にいい相手ではないかと思うのだ。
とりあえず、今回のようにわかりやすいタフなオーソドックスというタイプはもういいかな?
対ロマゴン戦を想定しているというのはわかるのだが、これを繰り返しているといずれ内山の二の舞になりかねない。
「内山vsコラレスの敗因? 経験知不足、国内専門王者の弊害が一番大きいんじゃないかな?」
興行面はもちろん大事なのだろうが、井上を1年後、2年後にガチのドル箱スターにするためにもいったん膝を曲げてみるのも手ではないだろうか。
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