井上尚弥vsアフマダリエフ。超一流は全盛期が2回ある。フィジカルのピークを過ぎて狂いが生じたところから脱却できるかが一流と超一流の違い。身体の変化を受け入れ、工夫と考え方を変えることでもう一度盛り返す【結果・感想】

井上尚弥vsアフマダリエフ。超一流は全盛期が2回ある。フィジカルのピークを過ぎて狂いが生じたところから脱却できるかが一流と超一流の違い。身体の変化を受け入れ、工夫と考え方を変えることでもう一度盛り返す【結果・感想】

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2025年9月14日に愛知県・IGアリーナで開催された「NTTドコモ Presents Lemino BOXING 〜トリプル世界タイトルマッチ」。メインイベントで世界S・バンタム級4団体統一王者井上尚弥とムロジョン・アフマダリエフが対戦し、3-0(118-110、117-111、118-110)の判定で井上が勝利している。


井上尚弥の試合は僕もいつも注目しているのだが、今回はいまいち乗り切れず。
何度も申し上げている通り立て続けに起きたリング禍の影響で国内ボクシングに気持ちが向かずにいる。
 
ニック・ボールvsサム・グッドマン。マイク・タイソンみたいな小柄な突貫ファイター相手の立ち回りがうまかったよねグッドマン。もっとクリンチに振り切ってたら勝てたんじゃない? それをやるとクソおもんないけど
 
チケットも抽選には申し込んだ(リング禍が連続で起きる前)が落選。
一般販売当日はスルー、次の日(次の次だったかな?)にチケットぴあを覗いてみたらすでに完売という。
どうやら発売開始10分ちょいで売り切れるほどの入れ食い状態だったとか。
 
いや、すげえな。
「リング禍をなくすには」
「この事故を無駄にしてはいけない」
 
「井上尚弥!! モンスター!!」
「今回は絶対にやってくれる!!」
「うおーーーーー!!」

これが同時進行する世界線に僕はどうしても馴染めない。
 
当日は久しぶりにリアルタイム視聴して楽しめたものの、何割かは「何ごともなく終わってよかった」があったことをお伝えする。
 

今回の井上尚弥はよかった。ここ数戦でNo.1の出来。中谷潤人にもまず負けないんじゃない?

まず今回の井上尚弥はめちゃくちゃよかった
 
連続KOこそ途切れたものの、ここ数戦の中ではNo.1の出来。
フィジカル面がやや下り坂に入った(と思われる)中でよくここまで持ち直したと思う。
 
試合前に「今回は井上の出来次第」「KOにこだわらないとは言ってたけど、この人にホントにそれができるの?」と喚き散らしたが、素直に感服しました。
 
井上尚弥vsアフマダリエフ戦まで1週間を切った。井上の出来次第だと思うけど、あの程度のコメントに言い返しちゃうマインドのヤツが“KOにこだわらず勝ちに徹する”なんてできんの?
 
このコンディション、メンタルを維持できるなら(できるなら)中谷潤人だろうとまず負けることはない。
前回のラモン・カルデナス戦までは「ちょっとわからんぞ」と思っていたが、今は断然井上有利に傾いている。


 

アフマダリエフは右リードが多彩なサウスポー。やりようによっては期待できると思ったけど…

対するムロジョン・アフマダリエフだが、正直こちらはいまいちだった。
 
この選手はダニエル・ローマンや日本の岩佐亮佑にも勝利している選手で、マーロン・タパレス同様前手の右が多彩なサウスポー。この右を駆使して中間距離が得意な岩佐亮佑を差し合いで上回ってみせた。
 
井上が若干サウスポーに苦労していることを考えても作戦次第では期待できるのでは? と思っていた。
 
 
欲を言えばリングが狭ければよりアフマダリエフが有利になる
狭いリングでは井上の持ち味である横の動きが制限される。その上最近の井上は足を止めてガードでパンチを受けるシーンが多い(たぶん体格差を埋めるため)。
 
アフマダリエフが前手の差し合いで互角に渡り合えればあの槍のような左ストレートにつなげるのではないか。近い位置でカウンターのフックが当たるのではないか、と。


さすがに日本開催で極端に狭いリングというのはあり得ないが、それでもタパレスのように右リードを器用に使ってペースを引き寄せることができれば。
今の井上ならチャンスはあるのでは? と期待していた。
 
井上尚弥vsムロジョン・アフマダリエフ正式発表。井上の出来次第かな。アフマダリエフにとっては相性がよくなさそうだけど、下降線に入った今の井上なら…。無料配信のLeminoさん、売り上げが伸びてねえんだろなw
 

もう少しやれることがあった気がするけど。本当に総合力で勝負してどうする笑

だが、実際には作戦らしい作戦は見られず。
右リードもそこまで機能せず、最初から最後まで井上のスピードに置いてきぼりを食ってしまった。
 
いや、どうなんだこれは?
さすがにもう少しやりようがあったんじゃないのか?
 
確かに井上のパフォーマンスは凄まじかった。
ほとんど深追いしてこない上に終始後ろ体重で的が遠い。広いスタンス+1歩1歩の歩幅? 機動力がケタ違いで射程内で正対することすら難しい。
 
近場のフックを当てようにも1発打つとサッと離れてしまう、自分から手を出しても直後にカウンターが飛んでくる。
それこそ後半は借りてきた猫状態というか。アフマダリエフの全身から手詰まり感が漂っていたほど。
 
だが、それでも何かやれることがあったんじゃないの? と。
試合前に「総合的な力では井上を上回っている」とコメントしていたが、まさか本当に総合力で勝負するとは思わないだろ笑


井上相手に何かを起こそうと思えばもっと極端な戦術に振り切らなくてはならない。
井上のアウトボクシングが想定外すぎてプランが狂ったのもあると思うが、戦術的にはマーロン・タパレスやTJ・ドヘニー、ポール・バトラーの方が全然よかった。
 
井上尚弥vsTJ・ドヘニー再視聴。ドヘニーががんばったとしか思えないんだが、僕だけ別の試合を観てんのか?笑 すべてを“ゼロか1”で分けるなんて無茶だから
 

超一流には全盛期が2回ある。フィジカルのピークを過ぎたところから持ち直せるかどうか

僕は超一流には全盛期が2回あると思っている。
 
若いうちはイケイケの脳筋ファイトで相手をなぎ倒す。
そこから経験を積んで技術面が成熟するといよいよ手がつけられなくなる。ここが1回目の全盛期で、井上で言えばバンタム級時代にあたる。
 
だがフィジカルのピークを超えるとやや様子が変わる。
動き自体は全盛期に比べて落ちているのだが、脳みそは一番いいイメージのままなので微妙に狂いが生じる。
どんな選手でもだいたい32、33歳前後でこれがくる(と思う)のだが、ここで心身のバランスが崩れてチグハグになりやすい(最近の井上がこれだった)。
 
で、そこを超えられるかどうかが一流と超一流の違い。
身体の使い方や心の持ちよう、トレーニングの工夫等でズレを修正していくわけだが、大前提となるのが「自分の身体の変化を受け入れること」
 
若いときと同じスタイルでずっとやれるのが理想だが、なかなかそうはいかない。
いつまでも同じやり方では身体の方がもたないし、耐久力が落ちて怪我もしやすくなる。
 
たとえばプロ野球選手もある程度年齢を重ねると速い球についていけなくなる。
それを補うためにオープン気味に構えたりトップを顔に近づけて始動を早めたりと工夫を重ねてもう一度盛り返す選手が超一流、モデルチェンジがうまくいかずに落ちるままになる選手が一流である。
 
ボクシングで言えば階級を上げるごとにアウトボクサー化していったフロイド・メイウェザー、年齢を重ねるたびに狡猾な省エネファイトに傾倒したバーナード・ホプキンスが思いつく。
 
逆に八重樫東などは最後までファイトスタイルが変わらなかったタイプ。
年齢を重ねて身体能力は落ちているのだが、若い頃と同じファイトを繰り返すせいで試合ごとのムラが大きい。
調子のいい日は「すげえ、まだ全然いける!!」となる反面、調子が悪い日は「もうダメかもしれん」というパフォーマンスしか出せない。
 
3階級制覇王者を超一流ではないと言っていいかはともかく。
 
偉大な1人の選手の影響で競技のレベルが上がる、トレンドがガラッと変わるのはあるあるだよね。ゴロフキン、パッキャオ、井上尚弥。現れては消えていった“メイウェザー2世”たち。ロマチェンコの登場でボクシングが一気に高速化した
 

今回の井上は2回目の全盛期を感じさせた。プライドを捨ててもっと大事なものを掴みにいく

そして、今回の井上はまさにその2回目の全盛期を感じさせた。
 
正直、フィジカルのピークを過ぎたのは間違いないと思う。
今回も反応が遅れるシーンがちょくちょくあったし、最終ラウンド以外にもカクッとくる瞬間が何度かあった。
足運びも以前はもっとスムーズだったし1歩1歩も大きかった。
 
また中盤に若干グダってから後半に盛り返すのがいつものパターンだが、その上げ幅がこれまでよりも小さい。思ったほどペースが上がらず最終ラウンドに1発もらって膝が落ちかけるなど、全力で動ける時間も短くなった印象である。
 
井上尚弥がダウンを喫しながら8RTKO勝ち。危ねえ! カルデナスと同じ時代に生まれたことを感謝しそうになったよw 「井上はパンチをわざと受けてる」とかいう識者(笑)の謎理論
 
バンタム級時代の「これ、オールタイムベストじゃねえか?」と思わせるような絶望感は今の井上にはない。
 
だが「プロは倒してこそ」のこだわりを捨て、身体の変化と向き合いモデルチェンジを成功させたのはお見事としか言いようがない。
 
「KOを狙わない」コメントやフェザー級からの撤退等、試合前のムーブからはプライドを捨てて“もっと大事なもの”を掴みにいく覚悟がうかがえた。


5、6Rあたりにアフマダリエフの反撃を受けて「あ?(怒)」となりそうになったところもちゃんと堪えたしね笑
「その場の倍返し」よりも最後に「どうだ見たか」を言うための自重。
 
試合直後の「誰が衰えたって?」なんて絶対に言うって決めてたヤツでしょ笑
 

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S・バンタム級での井上が完成した。何となく河野公平戦を思い出したよね

何となくだが、この日は2016年12月の河野公平戦を彷彿とさせた
S・フライ級初期の井上はフルスイングしまくる喧嘩ファイトで相手をねじ伏せてきた。
だが拳の怪我やダビド・カルモナのようなディフェンスのうまい相手にモタモタしたりと若干の伸び悩みも感じた。
 
その中で徐々にコツを掴み、河野公平戦で“S・フライ級の”井上尚弥が完成した印象。


それと同じノリで今回のアフマダリエフ戦で“S・バンタム級の”井上尚弥が完成した。この階級での最適解に辿り着いたと言えるのではないか。
 

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過去のコメントとの整合性のなさは突っ込まれても仕方ないよね

なおこれは余談だが、井上本人や陣営の筋の通らなさは突っ込まれても仕方ない部分だと思っている。
 
以前から井上は「倒さなければつまらない」「判定狙いはしない」と強気の発言を繰り返している。極論、アウトボクシングで勝負する選手を否定的に見るフシも。
 
またカイチョー大橋は自分の選手を上げるために他所を下げるコメントを平気でする。
先約があって試合を断ったサム・グッドマンを悪く言ったり、そのグッドマンに勝ったニック・ボールを「井上の相手ではない」と切り捨てたり。
 
相手が反論できない場所で言いたい放題言ってきた側がアフマダリエフの「井上は俺を避けた」発言を否定する資格などないし、井上本人の判定狙いはしない宣言はこの先もなくならない。
 
サム・グッドマンvsチャイノイ・ウォラウト。グッドマンは井上尚弥戦を目指すなら打ち合いで勝たなきゃダメかな。例の“グッドマンは逃げた”祭りは心底クソだった
 
確かに今回の井上はすごかった。
その反面、これまでイケイケでやってきたツケはそれなりにありますよと。
当たり前だが、全面支持する人間だけではないよねという話。


 
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