井上尚弥が拳を痛めないために? 井岡スタイルに変更すればいいんじゃない? それでロマゴンに勝てるかは知らん

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拳イメージ
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「井上尚弥、両拳を痛めるもカルモナに大差判定勝ち」
多くのスポーツニュースにこの見出しが躍った。

「怪物」井上尚弥が2016年5月8日に行われた2度目の防衛戦に大差判定で勝利し、試合後に両拳を痛めていたことが判明した上での報道である。

「井上がカルモナに大差判定で勝利!! 意外と苦戦? 拳を痛めて攻撃力が半減」

これを受けて「拳を痛めてあれだけコントロールできる井上はやっぱりすごい」という称賛の声から「試合のたびに拳をケガして、それが癖にならなければいいが」といった心配の声まで、さまざまな意見が飛び交っている。

中には「井上尚弥の拳のケガを防ぐにはどうすればいいか」について真剣に考える方もいるなど、日本屈指のホープである井上に対する期待の大きさがうかがえる。

そこで今回は僕もこの流れにガッツリ乗って、「井上尚弥が拳を痛めずにキャリアを積むにはどうすればいいか」を考えてみたいと思う。

もちろん実現するかしないかではない。あくまで「こうなったらいいな」という個人的な考えである。
そもそも僕が何を言ったところで、それが井上尚弥に影響を与えるなどとはこれっぽっちも思っていない。そのことを大前提としておつき合いいただければ幸いである。

「亀海惜しくもソト・カラスとドロー!! 勝ったと思ったけどな。でもいい試合だった」

井上尚弥は接近戦が苦手。ラフなファイターなら勝てる可能性がある?

まず最初に申し上げておくと、僕は井上尚弥のファンでも何でもない。
この選手に対して多くの方が抱くような思い入れはまったくない。
別にボクサーとしての井上尚弥を好きでもないし、万が一井上が誰かに負けたとしても何かを感じることもないと思う。

ちなみにS・フェザー級の内山高志に対しては別である。何カ月も動向を追っていた手前、だいぶ思い入れも強くなっていた。そのため先日の敗戦ではかなりの衝撃を受けてしまった。

「内山vsコラレスの敗因? 経験知不足、国内専門王者の弊害が一番大きいんじゃないかな?」

だが、今のところ自分の中で井上尚弥にそれと同じような感情が芽生える気配はない。

それを踏まえた上で、「どうすれば井上尚弥が拳を痛めずにキャリアを積み重ねられるか」について考えていくことにする。

普通に考えて一番いいのはスタイルを変えることだと思う。

今回のカルモナ戦である程度わかったのだが、恐らく井上尚弥は接近戦が苦手だ。
6Rに決死の覚悟で前に出てきたカルモナをかなり持て余すシーンが見られたが、たぶん至近距離での打ち合いが得意ではないのだ。
ご存知のとおりカルモナは決して突進型の選手ではなく、相手の打ち終わりを狙うカウンタータイプである。そのカルモナの突進でバタつく姿を見せるのだから、頭を下げて突っ込んでくるような選手にはかなり手を焼くのではないだろうか。

「サーマン←才能だけでやってる人がポーターに辛勝!! ノンストップのハイスピードバトル!!」

たとえばオルランド・サリドvsロマチェンコ戦のサリド、ショーン・ポーターvsデボン・アレクサンダー戦のポーターのような強引な前進に対してである。
至近距離での被弾は覚悟の上の左右フック+頭というラフファイト。反則スレスレの打ち合いに持ち込まれた場合、かなり慌てる井上を目撃できるのではないかと思う。
もしくは、中間距離よりやや近めの位置から一か八かのカウンターと、それを打ち込めるだけの勇気を持った選手と対峙した場合である。

アムナットのようなずる賢い選手への対応にも興味があるが、ゴリゴリのインファイタータイプであれば今の井上に勝てる可能性はあるように思える。

「村田諒太は日本を捨てちゃえよ? ペドロソをまったく問題にせず4RTKO勝ち」

日本人で井上に勝てるのはまさかの河野公平?

一部報道によると、井上尚弥は他団体王者との統一戦を希望しているらしい。
どこまで本当なのかは定かではないが、これはちょっとおもしろい。

ネタでも何でもなく、個人的にWBA王者の河野公平なら井上に勝つ可能性があるのではないかと思っている。
あの猛攻にひるまず捨て身のカウンターを打ち込むことさえできれば、マジで井上が大の字になるシーンもあるのではないだろうか。

「俺のアムナットさんが負けただと……?! カシメロに4RKO負けを喫して王座陥落!!」

以前にも言ったように、河野公平はボクサーとしてあまり突出したものがあるとは思わない。接近戦に持ち込まなければ何もできないわりに接近し過ぎると出せるパンチがなくなるという不思議な選手である。
正直、亀田興毅からダウンを奪った右のカウンター以外に特筆すべき点は見当たらない。

「亀田興毅、河野に判定負け!! ダウンも奪われ完敗、試合後に引退を表明する」

先日の防衛戦でも、謎のランキング入りを果たしたタイ人を最後まで攻めあぐねるという凡戦をご披露している。
中間距離からのカウンターでロープ際に追い込むのだが、至近距離でのラッシュの命中率が悪くKOすることができないのである。この試合は会場で観ていたのだが、あまりにもいつも通りで思わず笑ってしまった。

だがvs井上を想定した場合、あの右のカウンターとひるまない勇気に関しては可能性を感じずにはいられないのである。

Twitterのフォロワーさんが八重樫vs河野公平戦を観たいとおっしゃっていて、僕もその試合はかなりおもしろいと思った。八重樫のラストマッチの相手として河野公平はマジでありだ。

「八重樫の試合にイラつく…。テクアペトラ程度に激闘王って、ただの泥試合だろ」

ただ、個人的には井上尚弥vs河野公平の統一戦もひそかに期待している。少なくともロマゴンにS・フライ級の試運転として使われるよりははるかにいい。
まあ仮に井上vs河野戦が実現したとして、河野のカウンターが不発に終わった場合は見るも無惨なワンサイドゲームが待っているとは思うが。

井岡一翔のスタイルを踏襲すれば拳のケガも減るんじゃないの?

話を元に戻そう。
井上尚弥が拳を痛めずにキャリアを続行する方法である。
要は、今の超攻撃型スタイルを捨てるのが一番手っ取り早いという話だ。

井上の今のスタイルはどう見てもリスクが高い。触れる者みな傷つけるだけでなく、自分自身も傷つける諸刃の剣だ。一瞬の爆発力は目を見張るものがあるが、選手寿命とトレードオフの強さと言っても過言ではない。

「名前で損してるぞペッチバンボーン。そんなに悪い選手じゃないような…。勝つのは井上尚弥だけど」

なので、このスタイルはいったんお蔵入りにして、新たな井上を構築するのである。
といっても、まったくの別人になれと言っているわけではない。今のよさは残しつつ、ケガを負う可能性が低くなるようにモデルチェンジすればいい。

新しいスタイルとしてどういったタイプを参考にすればいいかだが、僕はWBAフライ級王者の井岡一翔が一番いいのではないかと思う。

ことあるごとにマッチメイクについて難癖をつけられる井岡だが、実際ボクシングのレベルはかなり高い。周辺階級の王者と比べてもひけはとらないと思うし、クオリティだけなら井上尚弥よりも井岡の方が上ではないだろうか。

「キービン・ララってそんなにダメか? 井岡が勝つと思うけど、普通にいい選手じゃないの?」

井岡一翔の最大の持ち味はやはり絶対的な距離感である。
相手の射程の半歩外から自分のパンチだけを当て、相手が踏み込んできたらそれに合わせて自分も踏み込み距離を潰す。
リラックスしたコンビネーションが打てるのも井岡のいいところなので、身体を密着させての打ち合いでも優位に立つことができる。
2012年の八重樫戦や2013年のフェリックス・アルバラード戦などはその持ち味を最大限に活かしたといっていい試合である。遠い位置から自分のパンチだけをヒットして相手を削り、踏み込みに合わせて身体を密着させる。射程よりもさらに至近距離で対峙することで相手にフルスイングをさせないのだ。

さらに手打ち気味だが力みのないコンビネーションに加え、上下動の少ないフットワーク。これは若干ロマチェンコに近いものがある。

「ロマチェンコにウォータースは勝てるか? 無理だろうなぁ。勝って欲しいけどなぁ」

だが、井岡一翔のボクシングはリーチと上背が相手よりも上回っていることが前提のスタイルである。なので、アムナットのようなタイプとは非常に相性が悪い。
上下動の少ないフットワークといっても、踏み込みにロマチェンコほどのレンジがあるわけではない。基本的にはガードを上げてじりじりと近寄るので、リーチのある相手に突き放されると何もできなくなるのである。

さらに言うと、この選手には絶対的に身体の強さが足りない
距離感と防御技術が優れているといっても、あくまで自分のリーチが上回っていることが前提である。
繰り返しになるが、アムナットのようなタイプに長い左で突き放されると何もできなくなってしまうのが井岡の弱点だ。あの手のタイプを押し切るだけの身体の強さがないのである。
そして、2015年に2度対戦したファン・カルロス・レベコ。あの選手程度の踏み込みでも楽々懐に入られ、クロスゲームを許してしまう。それほど井岡のフィジカルは脆弱である。2015年4月の第1戦では、レベコのパンチをスウェーで避ける井岡の姿が見られたと思う。あれこそ井岡のフィジカルのなさによるところではないだろうか。

「井岡vsレベコ決着!! やればできるじゃねえか井岡おいww」

井上のフィジカルで井岡のスタイル←この組み合わせが最強?

だがその点、井上尚弥は別だ。
先日も申し上げたように、井上尚弥の攻撃力やフィジカルの強さは歴代でも屈指のものがある。
今はそのフィジカルメーターを攻撃に振り切ったスタイルだが、これを井岡のような距離感重視の防御スタイルに変えてみるのである。

「井上尚弥の強さ、すごさを考える。カルモナ戦の予想? KO勝ちでいいんじゃないの?」

何度も言うが、井上尚弥の攻撃力は尋常ではない。あれだけの強打をあのスピードで打ち続けられる選手を僕は見たことがない。
そして、今回の試合でもしきりに実況が「今までまともにパンチをもらったことがない」と言っていたように、防御勘にもかなりのものがあるのだろう。僕にはそこまでには見えなかったが。

ただ、現在の井上は有り余るポテンシャルを本能のままに振り回している部分が大きい。言ってみれば強化版辰吉丈一郎である。
そして、絶対的な個体能力をそのまま相手にぶつけているので、その破壊力に自分の身体がついてきていない状況だ。

「井岡がララを11RKOに下して快勝!! エストラーダ戦は…ないかなぁ。案外正規王者vs暫定王者の統一戦になるかもね」

このフィジカルの強さを防御面に活かしてみてはどうかと思うのである。
井岡一翔のようにガードを高く上げ、相手とある程度のスペースをとる。相手が踏み込んできた分だけステップバックし、射程の外側の位置をキープする。
たとえ頭からラフに突っ込んでこられても、井上のフィジカルとスピードがあれば距離をキープすることは可能だろう。

「井上尚弥がペッチバンボーンに10RKO勝ち!! 井上が何者なのかがいまだに謎…」

攻撃面でいうと、井上には井岡ほどのリーチはない。だが、それは踏み込みの鋭さでカバーできるはずである。
持ち前の攻撃力を発揮するのはチャンスのときだけでいい。試合の流れを見ながら、相手が失速してきたところで一気に攻め落とすのだ。
そうすれば全力でパンチを叩き込むシーンも少なくなり、拳を痛める可能性も減らせる。なおかつ試合が長引いたとしても、省エネで効率よくポイントアウトすることも可能になる。

身体能力に頼った本能のスタイルから脱却できれば、自然と選手寿命も伸びるだろう。年を重ねるごとにここぞのラッシュが錆ついていった辰吉と同じ道をたどることもないのではないか。

というわけで、井上尚弥の理想型は井岡スタイル。そんな感じでどうだろうか。

そのスタイルでロマゴンに勝てるかは知らん。
かといって、今のままでロマゴンに勝てるかどうかも知らん。
そもそも井上に井岡ほどの距離感があるのかも知らん。

「ロマゴン、アローヨを大差判定で退ける!! 半病人のゴンサレスにアローヨは歯が立たず」

ちなみにですが、以前にも申し上げたように僕は辰吉丈一郎の全盛期をリアルタイムで観ていません。

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