ロンダ・ラウジー失神KO負け!! ホーリー・ホルムが秒殺女王を完膚なきまでに叩きのめし、女子MMAの歴史を動かす【UFC193】
2015年11月15日(日)、オーストラリアのメルボルンで総合格闘技イベントUFC193が開催され、秒殺女王の異名を持つロンダ・ラウジーが挑戦者のホーリー・ホルムに2R59秒でKO負けを喫するまさかの番狂わせが起きた。
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絶対的安定女王の失神KO負けという結末がファンに与えた衝撃は大きく、ダイレクトリマッチを望む声やロンダ・ラウジーの復活を願う声などさまざまな反応が見られた。
また、ホーリー・ホルムへの賞賛の声も多数聞かれるなど、UFC女子の勢力図に大きな変化をもたらす一戦となった。
「UFCが終わる? ロンダ・ラウジーの敗北はUFC終焉の序章」
ホーリー・ホルム強し!! 秒殺女王に何もさせず
すごい試合だった。
というより、ホーリー・ホルムがすごかった。
ホーリー・ホルムだけがすごかった。
マジで興奮が止まらない試合だった。
ここ数年、UFCに対する興味が薄れていた僕だが、この試合は本当にすごかった。久しぶりに追いかけたいと思う選手が現れた。
いや、現れたというのはおかしいか。追いかけたい選手を見つけたと言った方が正解か。
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完勝だった。
完璧な勝利。そのひと言しか見つからないほど、問答無用でホーリー・ホルムの圧勝だった。
まさかロンダ・ラウジーがあそこまで何もできないとは。
ロンダ・ラウジーが正面に立ち過ぎだとか、油断したとか、焦り過ぎたとか、準備が足りなかったとか、試合後にはさまざまなご意見があったようだが、はっきり言って全部違う。まったく違う。
ただホーリー・ホルムが強かった。
ロンダ・ラウジーよりも圧倒的に強かった。
それだけの話だ。
「ロンダ・ラウジーがわかりやすくボブ・サップだった件。ヌネスに48秒TKOか。ちょっとマズい負け方かも」
恐らくリマッチしても結果は同じだ。10回やれば9回はホーリー・ホルムが勝つ。それくらい両者には実力差があったのではないかと思う。
「アンドレ・ベルトがロンダ・ラウジーのコーチに名乗り? 何か勘違いしてねえか?」
打撃もすごい。体幹も強い。でも、ホルムが本当にすごいのは……
この試合を観た後に大慌てでホーリー・ホルムの過去の試合を観たのだが、やはり戦慄の強さである。
こんな化け物に誰が勝てるんだというほどの戦力差で対戦相手を屠る姿が次から次へと出てきた。
ボクシングの元世界チャンピオンらしいのだが、とりあえず僕はMMAの選手であれだけ自分の打撃を活かす構えで戦える選手を見たことがない。
MMAの選手というのは、たいてい相手のタックルやハイキックに備えて後ろ足に重心を置いた構えで相手と対峙する。その後傾姿勢のままパンチを出すので、どうしても体重の乗らない手打ちの打撃が多くなるのだ。
その点、ホーリー・ホルムは違う。
やや前傾に構え、最も自分のパンチに体重が乗る姿勢を維持したまま相手と対峙するのである。ノーモーションで出す左は驚くほどの伸びがあり、対戦相手は避けたと思ってももらってしまう。しかもカウンターで当たれば一発で相手の鼻を折るほどの威力を持つ。時折繰り出すハイキックは相手との距離をとるのに有効であり、フィニッシュを決める一発にもなる。
すべての打撃がシャープで強力。果たしてこれだけバランスよく自分の打撃を出せる女子選手が今のMMAにいるのだろうか。
「相手いるのか? クリス・サイボーグ姐さんがUFCデビュー戦で圧勝!!」
さらに、組み付かれたとしても簡単には倒されない体幹の強さも持ち合わせている。
倒されることがないので、グランドに持ち込まれた途端に何もできなくなるという打撃系出身の選手にありがちな弱点もない。あのロンダ・ラウジーが倒すごとができず、逆に倒し返されたのだからその強さは本物である。
ただ、ホーリー・ホルムが本当にすごいのは実はそこではない。
サウスポースタイルのボクシングテクニックやハイキック。これらは確かに派手で見栄えのするものではあるが、最もホーリー・ホルムがすごいのはあのフットワークである。
キャンバスの上を滑るようなステップワーク。どれだけ動いても自分の打撃を出せる態勢を失わないバランスのよさ。まるでロマチェンコやリゴンドーを思わせる。
ロンダ・ラウジーの飛び込みをかわし、脇の下をするりと抜けて後ろに回り込むあの身のこなしである。
ボクサー時代のホルムはそこまで足を使うタイプではなかったようだが、あの広いオクタゴンにおいて、ホルムのフットワークはまさしくレベルが違う。
「さっそく陥落ミーシャ!! 女子MMAおもしろすぎ?! ヌネスが1R一本勝ちで新女王誕生!!」
あれほどのフットワークを持っている相手に、あんなだだっ広いオクタゴンで普通の選手がタックルなどできるわけがない。
ホーリー・ホルムが自分の打撃力を最大限活かせる前傾姿勢の構えがとれるのも、あのステップがあってこそなのだ。他のMMA選手と違い、フットワークで相手との距離をとれるために後傾で構える必要がない。
「サイボーグvsホルム決まっちゃったよ…。楽しみなようなそうでもないような…。敵なしフェザー級チャンプにホルムは対抗できる?」
ホーリー・ホルムの前にそびえ立つ4つの高い山
今のところ、ホーリー・ホルムのグランドの技術は定かではない。もしかしたらかなり難があるのかもしれないが、相手に組敷かれるシーンが皆無なので確認するすべがないのである。
ただ、ホルムをグランドに持ち込むには、超えなくてはならない壁がいくつも立ちふさがることも確かである。
ホルムと対戦する選手は、まずホルムの鋭いハイキックをかいくぐって距離を縮めなくてはならない。
たとえハイキックを防いでも、次はオクタゴンを縦横無尽に動き回るフットワークに追いつく必要がある。
仮にフットワークに追いつくことができたら、次はホルムの打撃との勝負である。ロンダ・ラウジーが削られまくったサウスポースタイルからのカウンターをかいくぐって組み付かなくてはならないのだ。
そして、最後はホルムの体幹の強さを上回るほどの強力なタックルでグランドに持ち込む技術とフィジカル。
つまり、ホーリー・ホルムをグランド勝負に引きずり込むには、ハイキック、フットワーク、打撃、体幹という4つの高い山を超えなくてはならないのである。
スピード、打撃力、テクニック、思い切りのよさ。そしてそれらを支える強烈なフィジカル。これらすべてを兼ね備えた選手だけがホーリー・ホルムとグランド勝負をする資格を得られるのだ。
グランド勝負で勝つ資格ではない。グランド勝負をする資格だ。あくまでスタートラインに立つ資格があるというだけの話である。
ほとんどの選手はホーリー・ホルムのハイキックとフットワークに翻弄され、まともに近づくこともできないだろう。
ハイキックで突き放され、長い距離からホルムのパンチをもらい続け、ポイントを奪われ続ける。そして下に意識が集中したところでハイキック一閃でKO。このパターンの餌食になるのだ。
今回のロンダ・ラウジーに関しては、ホルムの打撃をかいくぐるテクニックは皆無だったが、カウンターを受けても前進するだけのフィジカルと思い切りのよさは持っていた。
ただ、組み付くまでに力を使い果たし、ホルムをグランド勝負に持ち込めるだけの体力が残っていなかった。
「ミーシャ・テイトがホーリー・ホルムに失神KO勝利で初タイトル奪還!!」
つまり秒殺女王ロンダ・ラウジーがホーリー・ホルム相手に超えることができた山はわずかに2つだけ。それが精一杯だったのだ。
「みんな範馬勇次郎になりたいんだよ。護身? 礼に始まり、礼に終わる? んなわきゃねーだろ」
どうやって倒すのよ? このすごい人
難攻不落のホーリー・ホルム。
いったいこの選手を倒すにはどうすればいいのだろうか。
ロンダ・ラウジーほどのフィジカルを持ってしてもホルムの打撃に削られまくり、組み付くまではいいが、グランドに持ち込むだけの力が残っていなかった。そして、散々効かされたところで最後にハイキック一閃である。
この選手相手にフィジカル勝負を挑むのはどう考えても無謀だろう。
パッと思いつくのは、やはり低空かつ高速のタックルで一気にグランドに持ち込む作戦だが、あの広いオクタゴンで果たしてホルムのフットワークを上回るだけのタックルを持った選手が今の女子MMAにいるのだろうか。言うは易し行うは難しである。
たとえばだが、2005年のミルコvsヒョードル戦。
2R開始早々にヒョードルが見せた右ハイキックから間髪入れずに左ボディにつなげるコンビネーション。あれで一気に距離を詰めて組み付くというのはどうだろうか。ハイキックをキャッチさせて、がら空きのボディにパンチを打ち込みながら強引に組み付くのである。
四角いリングよりも遥かに広いオクタゴンで、そんなことができる女子選手がいるのかは知らないが。
いや、わからない。
どうやって倒していいのかまったくわからない。
単純に打撃、スピード、フィジカルすべてで上回るしか方法がないのだろうか。
いや、ホントにすげえっすホルム姉さん。
この僕をUFC観戦に引き戻すだけの引力があるのだから、本物中の本物だ(何様?)
「モデルボクサー高野人母美KO負け!! 今後のボクシング界のために高野人母美の後継者を大至急探すんだ!!」
まあ、これだけ褒めまくっておいて次戦でコロッと負けたりしたら笑ってしまうのだが。
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