フューリーを苦戦させたワリンがクッソいい選手だった件。ヘビー級3強時代が崩れる日も近い?【結果・感想】

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ネバダ州ラスベガスイメージ
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2019年9月14日(日本時間15日)、米・ネバダ州ラスベガスで行われたヘビー級12回戦。元同級統一王者タイソン・フューリーとWBA同級4位オット・ワリンの一戦は、3-0(118-110、117-111、116-112)の判定でフューリーが勝利。苦戦をしいられながらも全勝を守り、2020年に予定されているデオンティ・ワイルダーとの再戦に一歩前進した。
 
 
試合開始から軽快なステップとスナップの効いたジャブでリングを縦横に動くフューリー。
対するワリンはガードを高く上げ、細かい右リードを出しながらじわじわと近づく。
 
頭を振りながら鋭く踏み込み、左右ボディから顔面へのフックを浴びせるワリン。
ワイルダーはこの攻めに対処しきれず、あっさりロープを背負い防戦を強いられる。途中、苦し紛れのスイッチを見せるなど、ワリンの連打を捌ききれない。
 
そして3Rには強烈な右フックを被弾して激しく出血。試合の流れはさらにワリンに傾く。
 
後半から頭を下げて前に出たフューリーが強引に流れを引き戻して大差判定勝利を挙げたものの、ワリンのがんばりが光った一戦となった。
 
「京太郎vsデュボア! 角海老は夜王の力で京太郎をプッシュしろとは思ったけど、いきなりこんなヤツとは…」
 

どうせフューリー神が圧勝するんだろ? だってオット・ワリンなんて聞いたことねえもん

元統一ヘビー級王者で無敗の戦績を誇るタイソン・フューリーの米国進出2戦目となった今回。
 
と言っても、僕は当初、この試合にあまり興味がなく。
 
相手のオット・ワリンという選手は20戦全勝と戦績もよく、身長197cm、リーチ198cmとサイズ的にもフューリーに劣らない。その上サウスポー。「もしかしたら何かがあるかも?」と思わせるスペックの持ち主である。
 
ただ、そこまで踏まえた上でちっともテンションが上がらず。
 
なぜなら僕が知らないから
「僕が知らない=大したことない」というクソ理論により、今回もタイソン・フューリーの圧勝だろうと。
 
僕は普段「神の所業」「デカさこそがすべて」と喚き散らす程度にはタイソン・フューリーのことが好きなのだが、残念ながら大したことない(僕が知らない)ヤツとの試合まで観ている暇はない。
 
そんな感じで、リアルタイムでの視聴をパスした次第である。
 
「フューリーがピアネタを寄せ付けず。陽気なクズが蝶のように舞い、蜂のように刺した10R。睡魔との戦いこそが神の御心」
 
ところが「タイソン・フューリーまさかの苦戦」「出血も影響して今ひとつの試合内容」というニュースを目にしたので一応観てみたところ……。
 
おおう……!!
何じゃこりゃ!?
オット・ワリン、めちゃくちゃいい選手じゃねえか!!
 

オット・ワリンいい選手!! これだけのスペックの選手がしっかりと対策を練ってリングに上がったことにびっくり

高いガードと小刻みな右でフューリーの左を叩き落とし、パンチの戻り際に一歩前へ。
頭の位置を変えてフューリーの右の芯を外し、そのまま大振りの右ボディから左のフックへ。
もたれるように体重を前に預け、強引に左右フックを振り回す。
 
頭を下げて懐に飛び込み、ボディストレートを浴びせてまっすぐ下がらせる。
右ボディとサイドへのステップで逃げ場を塞ぎ、フューリーにコーナーを背負わせて左フック。
 
いや〜、オット・ワリンいい選手だわ
 
「ジョシュアがルイスJr.を再戦で塩漬け。ジョシュアの安全策とルイスの動きの悪さが…。そっくりさん同士の試合か?」
 
タイソン・フューリーに足を使わせず、囲い込むようにコーナーに追い詰めて左右ボディ。
そして、下を意識させたところで顔面にストレート。
 
大柄なフューリーに当たり負けしないフィジカル。
ハンドスピードにも反応できる身体のキレの持ち主。
しかもサウスポー。
 
「フューリーの動きが悪い」と聞いていたが、いやそうじゃない。これはオット・ワリンがフューリーの動きを封じたと言った方が正解だと思う。
 
アルツール・スピルカを一回り大きくしたイメージというか、これだけのスペックを持ち合わせた選手がしっかりとフューリー対策を実行し、大健闘を見せた事実に僕はクソほど驚いている。
 

ヘビー級3強時代が崩れる日も近い? ヘビー級のレベルアップが著しい?

以前から僕は、
「ヘビー級はトップの3強が磐石過ぎて微妙」
「動ける2mが打ち下ろしのジャブを出しているだけで終わる世界になっている」
などと申し上げてきた。
 
現在のヘビー級はタイソン・フューリー、アンソニー・ジョシュア、デオンティ・ワイルダーの3人が突出し過ぎていて、それ以外の選手の出る幕がない。
 
2m近い上背があっても、彼らほど動ける選手は皆無。
逆に機動力がある選手はサイズが足りず、3強に対抗するのは難しい。
 
つまり「デカくて動ける選手が勝つ」だけの、ある意味わかりやすい世界を体現しているのが現在のヘビー級である。
また、彼らの勝ち方を見ていると、この3強時代は恐らくしばらく続くと思われる。ところがプロモーターの関係で、3強同士の潰し合いはなかなか実現しそうにない。
 
うん。
やっぱりヘビー級は微妙だな。
ちょっと前に「ヘビー級の上にスーパーヘビー級を新設する」という話が浮上していたようだが、それも致し方なしか。
 
などと思っていたのだが……。
 
2019年6月にアンソニー・ジョシュアがアンディ・ルイスにKO負けを喫し、タイソン・フューリーがオット・ワリンに大苦戦するまさかの事態に。
 
「ルイスがジョシュアに勝利! 動けるデブが動ける2mに勝利! 19年ぶりの何してくれてんねん案件やな」
 
しかも、今回のタイソン・フューリーvsオット・ワリン戦に関しては、しっかりと勝負論が存在した上での苦戦。3強に対抗できるだけの「デカくて動ける選手」の登場というヤツである。
 
アンディ・ルイスやオット・ワリンが突出しているのか、ヘビー級全体がレベルアップしているのか。何とも言えないところだが、どちらにしても3強時代の終わりはそう遠くないのかもしれない。


ついでに言うと、ラウンド終了間際にフューリーの傷口をグリグリやるダーティさも個人的には嫌いじゃないww
 
「スペンスvsポーター予想。ポーターはどう対抗すればいい? 僕にはスペンスが大差で勝ちそうに思えるんだが」
 

フューリーの見せた二番底。後半のフィジカル勝負への切り替えはさすがだった


ただ、あれだけのピンチを迎えてもきっちり勝ち残ったフューリーはやはりさすがである。
 
流れ落ちる血を拭いながらワリンの執拗なプレスに耐え、後半からフィジカル勝負に切り替える。この判断と二番底は普通にお見事だったのではないか。
 
身長197cmのオット・ワリンはサイズ的に見劣りしないとは言ったが、206cmのフューリーと正面衝突すればやはり苦しい。しかも6R以降、フューリーが頭を下げて前に出てきたためにどうしても押し込まれるシーンが目立ってしまった。
 
前半はディフェンシブなフューリーの逃げ道を塞ぎながらうまく戦っていたが、後半からは諸々の組み立てを真正面からひっくり返されたイメージ。
 
「ワイルダーvsフューリードローww ワイルダーのパンチって何で当たんの? フューリーは2度のダウンから立ち上がる」
 
恐らくアレはフューリーにとってはポリシーに反するスタイルで、本人としても納得のいかない勝利だったと想像する。
僕自身、あれだけ足を踏ん張って腕を振るフューリーの姿を観たのは初めて。出血の影響もあったとは思うが、それ以上にワリンにうまく攻略されていたと言える(気がする)。
 
だが、その中でもパワー勝負に切り替えて勝利した意味は大きい。
ピンチを迎えてもそこから二番底があることが証明できたし、得意の足さばきを止められた場合のBプランも試せた。
 
フューリーにとってもワリンにとっても意味のある、色々な意味でおもしろい試合だった。
 
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