電子書籍のあまりに暗い未来に打ち震える【国際ブックフェア2015】

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富士山イメージ
先日、ビッグサイトで行われた東京国際ブックフェア2015に行ってきた。そこで、電子書籍のあまりに暗い未来に打ち震えたので、その件をご報告する。

まず大前提として、イベントとしては非常に楽しかったし、有意義な時間であったことを申し上げておく。その上で、本イベントで僕が感じたことを好き勝手に書いていきたいと思う。

会場では出版各社の書籍が割引価格で売られていたり、各国の書籍が展示してあったりと、非常にバラエティに富んだイベントであった。とても一日で見きれる規模ではないため、ある程度焦点を絞って回ることにしたわけである。

「電子書籍は儲からないわww【出版社編】←あと5年はかかるでしょ」

中でも僕が特に楽しみにしていたのが、各ベンダーによる電子書籍の流通や制作についてのセミナーで、予想通り時間を問わず大小さまざまなセミナーが会場のそこかしこで行われていた。

当初から目を付けていたセミナーに加え、歩いているうちに見つけたセミナーなど、とにかく電子書籍の現状を知るにはいい機会だと思い、時間の許す限り片っぱしから足を止めていったわけである。

どこも似たようなことやってるんだね。ていうか、まだそれをやってんの?

ああ、まだ流通経路の開拓とかやってるんだね……。

多くのセミナーを回ってわかったのは、現状各ベンダーさんが電子書籍の流通に力を入れているということ。オンラインで電子書籍を販売するサイトを作り、それを流通させるためのシステム定着に躍起になっているということである。
つまり、流通経路を提供することで著者と読者双方から中間マージンを吸い上げるシステム。現在の出版業界で言うところの取次の立場に座ろうという目論見である。日販やトーハンのような位置づけを目指しているというわけだ。

率直な感想を申し上げると、もう手遅れだろとしか思えない。
申し訳ないのだが、そんなのはすでにAmazon、Apple、Googleがやっている。
海外の大手に食い散らかされた電子書籍流通市場。ここに今から新しく経路を作ろうとしても、彼らに勝てるわけがないのである。

確かに右から左に流通させるだけの中間マージンシステムは魅力的だ。それくらいは僕でもわかる。コンテンツを生み出すよりもはるかに手間がかからず、お手軽にマージンをとることができるのだから。

「暴論キター!! おすすめ本は自力で探せ、名作に出会うにはクソほどハズレを引く必要がある。って、そんなわけねーだろww」

だが、さかのぼること2010年。まさに業界が一致団結して流通システム構築に力を注がなくてはならないときに、彼らは意味不明な内輪バトルに情熱を傾けていたのである。

電子書籍元年と呼ばれた2010年。本来はこの年に日本の出版社、開発会社各社が一致団結して、Amazon、Apple、Googleの参入する隙がないような流通システムを作らなくてはいけなかったのだ。あの2010年こそが、唯一最大のチャンスだったのである。

その大事な時期に、こともあろうに各社で好き勝手に独自の規格を乱立し、独自の規格に特化したリーダーを発売する体たらく。そして、多くがほどなく消えていく始末。愚の骨頂以外の言葉が見つからない。結局残ったのは楽天くらいではないだろうか?

みんな言っていたはずだ。
「統一した規格を作ってほしい」と。
ストアが潰れたら今まで購入した電子書籍が読めなくなるなら、初めから買わない方がいい。読者のみなさんはそうおっしゃっていたはずなのだ。

まずは業界全体が一致団結して統一規格を作り、そこから各社独自の色に発展させるべきだったのだ。尖ったアイディアがあろうとなかろうと、すべては地面を耕してからだったのだ。

さら地にいきなり街を作ろうとしてもそれは無理な話である。何せ土台がないのだから。ぐにゃぐにゃの地面にいきなり高層ビルなど建つわけがない。

そうやって不毛なゴタゴタを繰り返しているうちに、日本の電子書籍流通市場は海外仕様にあっさりと耕されてしまったわけである。

残された道は、外様が作ったシステムにすり寄ることだけ

すでに手遅れなのに、いまだに取次の立場を確立しようと無駄にあがいているベンダー各社。もうあきらめるべきです。

今やるべきは、おとなしくAmazon、Apple、Googleの枠組みの中で、いかに収益を出すかを考えることである。日販やトーハンがふんぞり返っていた椅子にはAmazon、Apple、Googleがすでに座っている。電子書籍の取次システムは完全に外様に乗っ取られているのだ。そのことを即刻自覚するべきである。

もしも、いまだに取次ビジネスに可能性を見出そうとしているのであれば、それこそ「2番じゃダメなんですか?」というクソみたいな理論で王さまの食べカスを漁るしか道はない。そして、もはやそれは2番ですらないことを強く肝に銘じる必要がある。

そもそもの話、2番の位置にはすでに楽天が座っていることを忘れてはならない。残されたその他の有象無象が進むべき道は、楽天にすり寄って少しでも気に入られることなのだ。OK?

自社サイトで独自規格を販売することが許されるのは、誰もが知るような有名出版社のみである。

ALL無料にして一発逆転の可能性に賭けるか? 何のために?

外様に浸食された電子書籍流通システム。今のところ国内で逆転する可能性があるとしたら何だろうか。個人的には、すべてを無料にするくらいしか思いつかない。

電子書籍販売無料は当たり前。販売手数料もなし。売上がそのまま著者にそっくり入るシステム。完全に読者と著者を橋渡しするためだけに存在するサイト。

なおかつそのサイトの知名度も、最低でも楽天並みであることが必須。販売ページに広告表示は当然なし。提供者の下心がまったくない純粋なボランティアサイト。
そこまでのインパクトがあって、初めて王さまの目にとまる「かもしれない」。本当にその程度の話だろう。
同時に、実現するには石油王なみの経済的、精神的余裕と、はちきれんばかりのボランティア精神が必要になりそうなお話である。

多少形態は違うが、そういう意味では出版の完全無料化を実現した「∞books – ムゲンブックス」は本当にすごいと思う。

「本を無料で出版できる『∞books-ムゲンブックス』登場!!」

電子書籍に期待していた分、落胆も大きかったので辛口になっちゃいました

僕がなぜここまで好き勝手なことを言うか。その理由は一つ。電子書籍にかなり期待していたからに他ならない。

正直に言うと、海外のメーカーに電子書籍流通システムを席巻されることはある程度予想がついていた。同じような予想をしていた人も多いのではないかと思う。

だが、ここ数年の電子書籍の台頭によって、もしかしたら著者と読者双方にとって自由度の高い流通システムが日本独自の規格で確立されるかもしれないという期待間があったのも確かである。
その「もしかしたら」も、可能性としてはごく小さなものだったのだが、これまでの出版業界の堅牢さにうんざりしていた人間としては、そのわずかな可能性すら相対的に大きな期待値に感じられたのだ。

これまでの出版業界は一般の人が本を出そうと思ったら、人生をかけてコンクール入賞を目指すか、アホみたいな金額を払って自費出版するくらいしか方法がなかった。それくらい長年培ってきた風習は閉鎖的で堅牢なものだったのだ。
そして、僕はこの堅牢で閉鎖的なシステムが大嫌いだった。もっと言うと、中にいる「編集者」と呼ばれる人間も嫌いだった。

なぜ彼らの中にはあんなに偉そうな人間が存在するのか。一般の人が必死に書いた文章を高圧的にゴミ呼ばわりできるのか。
編集者なぞ、はっきり言って大したものではない。もともと書き手になりたいと思っていた人間が、何かのタイミングでその道をあきらめ選ぶ職業が編集である。そんな人間が、どの面下げて自分たちの仕事を「崇高なる経済活動」と称し、他人を見下すのか。勘違いも甚だしい。

「Amazonのカスタマーレビューが大っ嫌いだけど、それが何か?」

今までは既存のシステムが堅牢過ぎて、僕のような雑魚がいくら大声をあげても「知らねえよボケがww」で終わっていた出版業界。

だが、ようやくここ数年で一般人にも発言権が与えられたというか、普通の人間が普通に発言できる環境が整ってきたと感じていたところである。

この流れをうまく利用して、僕の嫌いな人間たちを駆逐して適正価格で優良なサービスを提供する編集者や会社が残ってほしいと願っていたのだ。
ぼったくりのような金額で自費出版を勧めるのではなく、適正な価格で満足のいく本を作ってくれる編集者や会社が増えてほしいと、心から願っていたのである。

出版業界にはびこる前近代的な人間、前近代的なシステムを、日本独自のシステムでぶち壊して欲しかったのだ。

それを、一番大事な時期に内輪でごちゃごちゃ不毛な争いを繰り広げて、知らぬまに流通経路を外様に食い荒らされる愚行。その事実を認めようともせずに同じ土俵に上がろうとする愚行。本当に哀しくて泣けてくる。

そんなことを感じた国際ブックフェア2015だった。

念のためにもう一度言います。イベント自体は楽しかったです。いやホントに。

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