ウォーレンがパヤノに雪辱!! マジいい試合!! 階級屈指のテクニシャンがバンタム級最強ファイターとのダイレクトリマッチを制して王座奪還【結果】

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シカゴのスカイライン
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2016年6月18日(日本時間19日)に米・イリノイ州シカゴで行われたWBA世界バンタム級タイトルマッチ。
同級スーパー王者のファン・カルロス・パヤノとランキング12位の挑戦者ラウシー・ウォーレンの一戦が行われ、2-0(114-114、115-113、115-113)の判定でウォーレンが勝利を飾り、王座を獲得した。

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日本の山中の標的にも挙げられていたファン・カルロス・パヤノにオリンピックに3度出場した実力者ラウシー・ウォーレンが挑んだ一戦。
物議をかもした初戦同様、ジャッジ泣かせの大接戦となったが、テクニカルなウォーレンが好戦的なパヤノをわずかに上回って雪辱を果たした試合である。

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なお、今回の結果を受けて両者の間では早くも三戦目の機運が高まっているとのこと。バンタム級注目のライバル対決は決着戦へと持ち込まれるのか。日本の山中、英国のリー・ハスキンスを含めたバンタム級の動向に注目である。

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ラウシー・ウォーレン初観戦。結論は「非常によかった」

オリンピックに3度出場した実績のある身体能力系技巧派サウスポー。
ラウシー・ウォーレンという選手がすばらしいという話は常々耳にしていたが、実を言うと僕は今までこの選手の試合を観たことがなかった。「観なきゃ観なきゃ」と思いつつ何となく延び延びになり、結局今回のパヤノ戦が初観戦である。

特に避けていたわけでもないのだが、強いて言うなら「めんどくさかった」というのが本音だろうか。
好試合が期待されたパヤノとの第一戦がグダグダだったと聞いたことも影響してか、どうも時間を割いてまでこの選手を観る気が起きなかったのである。

そんないきさつもありつつ今回のウォーレンvsパヤノ戦Vol.2を観たのだが、率直な感想を申し上げると「とてもよかった」
 
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いや、本当によかった。
ウォーレンがどうこうというより、試合として普通におもしろかった。

前半から中盤まではウォーレン。途中パヤノが無理やりペースを引っ張り返してさらにそれをウォーレンが引き戻す。最後は疲労困憊のウォーレンがパヤノの猛攻にどうにか耐えきった。
流れとしてはだいたいこんな感じだが、一進一退の攻防の末にわずかにウォーレンが上回ったという試合である。

さらに言うと、何となく前回の試合が大荒れだったのもわかる気がした。
念のために2015年の第一戦も観てみたのだが、結果的には「ああ、やっぱり。これは荒れるわ」と思った次第である。

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両者ともに本当にいい選手。フィジカルの強さを兼ね備えたハイレベルなサウスポー

今回、そして前回の試合を観て思ったのが、両者ともに本当にいい選手だということ。同じサウスポーながらタイプはまったく異なり、それぞれがそれぞれのよさを出した好試合だったと思う(初戦は好試合と呼ぶにはちとアレだが)。

まずラウシー・ウォーレンだが、この選手は見ての通り運動神経に優れた身体能力系のスタイル。スピードがあり避け勘もよく、リングを前後左右自在に動き回って相手を翻弄する選手である。
だが、必ずしもディフェンシブなアウトボクサーというわけではなく、試合の流れによっては自分から前に出てラッシュを仕掛ける勝負勘も持ちあわせている。
一発の威力があるわけではないが、あのパヤノの連打にも億さず前に出る勇気とカウンターのセンスは特筆ものではないかと思う。

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何となくだが、全盛期のユリオルキス・ガンボアを左構えにしたような印象だろうか。

対するファン・カルロス・パヤノは見た目通りのファイタータイプ。
絶えず上体と前手の右を小刻みに振りながら踏み込みのタイミングを測り、一瞬のスキをついて身体ごと連打を浴びせにいく。
こちらも一発の威力で倒すというより連打で自分のペースに巻き込むタイプで、強引に力技で主導権を握るという印象が強い。
リトル・パッキャオ? ベイビー・パッキャオ? と呼ばれているとのことだが、どちらかと言えば西岡利晃に近い感じではないだろうか。表現が難しいのだが、攻撃にメーターを振り切った西岡利晃とでも言えばいいか。ちなみに僕がずっと山中慎介に求めていながら諦めた姿でもある。

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そして両者に共通しているのがフィジカルの強さである。
パヤノは見ての通り全身からみなぎるパワーが最大の持ち味だし、アウトボクサーのウォーレンもパヤノの突進に当たり負けしない体幹の強さを持っている。

先ほども言ったように、パヤノの持ち味は一瞬のスキを突いての踏み込み。小刻みに身体を揺らし、鋭い踏み込みから身体全体を浴びせるように放つ連打を最大の武器としている選手である。

そして、この踏み込みにこそパヤノのフィジカルは凝縮されていて、身体がほとんど流れることなくワンツースリーまでの強打を打ち込むことができる点が非常にすばらしい。

あれだけ猛ダッシュで相手に突進しながらほとんどバランスを崩さずに腰の入った三連打を放つ。左右どちらから打ち始めても突進力に陰りはなく、左ストレートから返しのフック、さらに下から突き上げるような左などパンチの種類も多彩。たとえ身体を入れ替えられても無防備にたたらを踏む時間がほとんどなく、すぐさま方向転換して相手を追う態勢を作ることができる。

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一見ただの突進に見えるかもしれないが、これはすごいことではないかと思う。
普通ならあのスピードで突進したら腰の入った連打は打てないし、たとえ打てたとしても身体のバランスを保つことは非常に難しい。それを苦もなくやってみせるのも、パヤノのフィジカルがあってのものである。

対するウォーレンのよさは、絶対に相手と正対しないこと。
パヤノの鋭い踏み込みを半身で受け止め、絶対に身体を開いて正面を見せない徹底ぶり。あのパヤノの突進に負けないのだから下半身の強靭さはかなりのものなのだろう。これも相当のフィジカルの強さがなければできないことである。
 
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両者のフィジカルの強さが初戦の荒れた試合を生み出した

だが、結果的にはこの両者のフィジカルが初戦の大荒れクソ試合を招いてしまった。

パヤノの作戦は非常に明白で、ラフな連打で距離を詰めてウォーレンのスペースを潰すこと。ウォーレンにロープを背負わせ、持ち味のスピードとカウンターボクシングを発揮させない作戦である。

これに対し、ウォーレンが選択した作戦はパヤノの突進を真正面から受け止めることだった。パヤノの一発目に合わせて自分も一歩踏み出し、半身のまま正面衝突して逆にスペースを潰す。
そこから一瞬の力比べの後、わずかにバックステップしてスペースを作り、得意のカウンターを打ち込む。パヤノのワンツースリーの「ツー」にカウンターを合わせるという作戦である。

つまり、パヤノがパンチを打ちながら突進するたびに、ウォーレンの右肩とパヤノの胸がぶつかることになるのである。

パヤノが一発目を打ち終わると同時にウォーレンの右肩がパヤノの胸に接触する。すでに二発目のモーションに入っているパヤノはそのままの勢いでパンチを放つ。だが、ウォーレンはパヤノの突進に負けないフィジカル加え、半身の態勢を保っている。そのためパヤノの突進に押し返されることはない。
たとえばパヤノが一発目に右を放った場合、必然的に返しの左はウォーレンの背中や後頭部に当たるのである。

ウォーレンの作戦では、そこから一歩下がってカウンターを打つ予定だったのだが、パヤノの突進が思ったより強かったのだろう。力を抜くと一気に持っていかれると感じたのか、想定よりも至近距離でパンチを打たざるを得なくなった。

得意の突進からの連打を封じられたパヤノと、思ったようにカウンターが打てない上に何度も後頭部や背中を打たれるウォーレン。
基本的にはウォーレンの作戦通りではあるものの、双方にフラストレーションの溜まる展開になってしまったというわけである。

要するに、意図せずラフファイトに持ち込んだパヤノにかろうじて軍配が上がった。端的に言うとこれがこの両者の初戦の結果である。

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よりディフェンシブなウォーレンと前回の試合が影響して踏み込みが鈍ったパヤノの差

そして迎えた今回のリマッチ。
前回の試合もあるのでパヤノの出足はどうしても鈍る。
加えて、ウォーレンは前回以上にディフェンシブに距離をとることを意識していた。
パヤノの突進に対してL字に構え、後ろ足重心でさらに上体を反らして顔面を遠ざける。そのままバックステップしてカウンターを放つ。
打った後はバネのような復元力でバランスを崩すことなく元の構えに戻る。まさしくウォーレンの柔軟性とフィジカルのなせる業である。

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踏み込みに対する躊躇があるパヤノ。
ウォーレンのディフェンシブな姿勢。
この2つが相まって、前回以上に序盤からウォーレンが主導権を握る展開でスタートしたのである。

最初に言った通り、中盤以降パワフルさを活かして強引に流れを引き戻したパヤノはさすがだった。あの劣勢の局面でもあきらめずに接戦に持ち込んだパヤノのファイティングスピリッツは称賛に値する。
特にラスト2Rのウォーレンはフラフラで、一発でもいいタイミングのパンチが当たればダウンを奪える状況だったと思う。だが、それでも要所でラッシュを仕掛けてパヤノの前進を寸断し、序盤の貯金を守りきったウォーレンが見事に僅差で逃げ切ったという試合である。

どちらもお見事。
どちらもナイスファイト。
あれだけの突進でバランスを失わずに強打を連発できるパヤノもすごいし、そのパヤノの連打にカウンターをねじ込むウォーレンもすごかった。

さらに、前回からの流れを色濃く汲んださまざまな駆け引き。
ハイレベルな試合であったのはもちろん、双方の思惑や精神状態が見え隠れした人間臭い一戦だったように思う。

さっそくラバーマッチがあるとかないとか。いいね!! この両者の試合なら大歓迎だわ

激闘の二戦を終えた両者だが、さっそく決着戦となるラバーマッチの話があるとのこと。特にパヤノはウォーレンの希望をかなえてのダイレクトリマッチだったこともあり、三戦目を望む気持ちは非常に強い。しかも試合中にろっ骨を痛めたとのことで、まだまだ力を出し切っていないと考えているようである。

これについては、僕もぜひ実現してほしいと思っている。
どちらが勝つにせよ、こういうおもしろい試合が観られるのであれば大歓迎である。

ただ、開催地はできれば今度はパヤノ寄りにしてもらいたい気がする。
第一戦目が米・フロリダ州、そして二戦目がイリノイ州。特に二戦目はオハイオ州出身のウォーレンにとって地元にほど近い場所での開催ということで、多少ホームタウンの有利性があったのではないだろうか。

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さすがにパヤノの地元ドミニカで開催するのは難しいと思うので、たとえばボクシング新興国の中国など第三国での開催をお願いしたいところである。

とりあえずウォーレンのあのガラの悪い縦ノリギャラリーと「天使にラブソングを」みたいなママンが来づらい場所。非常に自分勝手な話だが、そんなことを考えてしまった。

まあ、とにかくこういうライバル対決が盛り上がるのは非常にいいことである。
正規王者のマクドネルとの統一戦や対抗王者であるIBFのリー・ハスキンス、WBCの山中慎介との絡みも見てみたい(山中は無理か……)し、パヤノの動向も気になる。

バンタム級戦線もなかなか目が離せない状況になってきた……のかな?

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