早過ぎたボクシングのエンターテイメント BIG KNOCKOUT BOXING(BKB)。ロープなし、すり鉢状の“ピット”で戦うKO必至の格闘技

早過ぎたボクシングのエンターテイメント BIG KNOCKOUT BOXING(BKB)。ロープなし、すり鉢状の“ピット”で戦うKO必至の格闘技

ネバダ州イメージ
「ボクシング記事一覧リンク集」へ戻る
 
その昔(といっても、2014-2015年)、米・ネバダ州を拠点に開催されていた「BIG KNOCKOUT BOXING」(通称BKB)という競技がある。
 
旗揚げイベントの「BKB 1」が2014年8月16日開催。
第2回の「BKB 2」が2015年4月4日開催。
そして、結果的に最終回となった「BKB 3」が2015年6月27日開催。
わずか10か月の短命イベントとして、疾風のように駆け抜けていったものである。
 
主なルールは、
・舞台は「ピット」と呼ばれる直径17フィート(約5.2m)の円形の闘技場
・ロープやケージはなく、周囲はすり鉢状の傾斜
・1R2分、ラウンド数はタイトルマッチが7R、それ以外が5R
・選手はBKB専用のグローブを着用し、パンチのみで戦う
・闘技エリア外に出た場合、1ポイント減点
 
従来のボクシングよりも範囲を狭く時間も短くし、極力ドローを避けるために奇数ラウンドを採用。要は、エキサイティングとわかりやすさを高め、ライト層への浸透を目的とした競技だったのだと思う。
 
「CAN BIG KNOCKOUT BOXING BE THE NEXT BIG COMBAT SPORT?」
 
ボクシング界からはガブリエル・ロサドやカーティス・スティーブンス、アドリアン・グラナドス、ヘスス・ソトカラスがBKBの舞台に上がり、シェーン・モズリーJr.も参加。旗揚げ当初からそこそこ話題になっていた。
 
「Big Knockout Boxing offers new chances, new style to boxers in limbo」
「Shane Mosley Jr. needs just 51 seconds to win Big Knockout Boxing debut」
 
なお、モズリーJr.は後日、禁止薬物の検査で陽性反応が出たとか(なーにやってんだww)。
 

「BKB」にはクッソ期待してたんだよね。ボクシングの新しいエンターテイメントを切り開くんじゃねえかと思って

僕自身、この「BKB」にはボクシングの新しいエンターテイメントとして大いに期待していた次第である。
 
だって、なかなかカッチョよくないっすか?

フォルムもオサレですげえテンションが上がる。
舞台がすり鉢状に凹んでるのも観やすくていい。
 
で、実際試合もおもしろかったし。
1Rの時間とラウンド数が少ないので試合が間延びせず、動ける範囲が狭いためにスピーディでエキサイティング。
そりゃアナタ、嫌でも期待するでしょと。
 
客席の前をグルっと旋回して入場するのも雰囲気が出てていいよね。
 
「KODトーナメントをBOXING RAISEで視聴したので感想を。洗練されてない雑多な手探り感が最高におもしろかった」
 

BKBの敗因? 早過ぎたことかなぁ。リアルタイムでスタッツを表示するシステムを開発したり、ワクワクしたんだけど

ところが、申し上げた通りBKBは第3回を最後に立ち消えとなってしまった。
旗揚げ当初は多少話題になったものの、結局は生まれては消えていくローカル団体の一つとして、あっという間に埋もれるという結末。
 
「ボクシングジムのプロ加盟の参入障壁をさらに高くしてもいいと思う理由。ここからさらに部外者のクソ勝手な戯言が加速するぞ」
 
いまだに僕は「BKB」の失敗の理由がわかっていないのだが、マジで敗因は何だったんだろうか。別にボクシングを侵食するとかではなく、普通に選手が行き来して共存できるくらいにはおもしろいと思っていたのだが。
 
ニュースソースを漁っても問題があったという情報もなく。まあ、単純に僕が見つけられていないだけかもしれないけど。
 
 
となると、一番の要因は「早過ぎた」ことかも。
 
記事によると、BKBは衛星放送チャンネルの「DirecTV」と組んでリアルタイムでスタッツを提供するリアリティ・チェック・システム(RCS)を開発したとのこと。
 
「DirecTV Partners With Reality Check Systems To Bring Real-Time Data to Bareknuckle Boxing Series」
 
パンチの重さとパンチスピードをそのつど数値化し、ラウンドごとに集計して画面に表示する。当時としては画期的な試みと言えるのではないか。
 
こんなの、めちゃくちゃワクワクするっちゅーねんww

 

 
だが、こちらもいまいち浸透せぬまま立ち消えに。
もしかしたら、2014年当時(今も?)は「格闘技=生身の人間同士の闘い」という側面が強く、ゲーム感覚? でダメージやパンチスピードを数値化することにピンとこなかったのかも。
 
 
ちなみにだが、DirecTVは有料の衛星放送が一般的ではなかった1997年に日本進出を果たしたが、スカパー!との競争に敗れて2000年に撤退を決めたとのこと。
 
「ディレクTV 日本での展開と撤退」
 

VRによる疑似体験を取り入れたのもよかった。ただ、キットを揃えるのが高いのがネック……

またBKBが画期的だったのは、VRによる疑似体験をいち早く取り入れたこと。
 
VRのヘッドセットを購入して専用のアプリをダウンロードすると、実際に会場で観ているような体験ができる。

 
今でこそキックボクシングの「KNOCK OUT」や「大日本プロレス」が採用するなど、スポーツ+VRによる疑似体験はある程度浸透し始めている。だが、2014年当時にこれを実現したのはなかなかだったのではないか。
 
「VRキックボクシング KNOCK OUT vol.4」
「2018/11/27 後楽園ホール大会」
 
 
ただまあ、単純に高いよな。

VRキットを一式揃えるのに25,000円弱。
 
最近は10,000円ちょっとのものも出ているようだが、どちらにしてもそこそこの気合いを要する金額である。

 

 
また、VRの分野はここ数年で一気に進化し、値段もどんどんこなれてきている。
 
話題の「Nintendo Labo VR KIT」は一式8,000円弱。

 

 
徐々にコンテンツも充実しつつある模様。

 
「RIZINは那須川天心で回ってるからな。イベント後の場内にゴミが散乱。関西の格闘技ファンは民度が低い?」
 

やっぱり世に出るタイミングを誤ったかな? 日本の「BOXFIGHT」から2年後、アップデートさせ過ぎたのが裏目に?


そう考えると、やはりBKBは世に出るタイミングが2、3年早かったのかもしれない。
 
円形の闘技場に加え、リアルタイムのスタッツ表示やVRでの疑似体験といった演出にファンの側がピンとこない。イベントが浸透する前に運営の方が行き詰ってしまった。
何となくだが、そういうことなのかなと。
 
「スタッツをほじくり返してボクシングの都市伝説を検証する。12Rはみんながんばるから11Rにがんばるべき? 初回は身体が硬い?」
 
以前、日本には「BOXFIGHT」という3分3Rでパンチのみで戦う短期決戦型の競技が存在した。こちらは2010年8月の旗揚げ戦~2012年5月のVol.8までの2年弱で終了。
とはいえ、少なくともBKBよりははるかに長持ちしている。
 
「格闘新イベント「BOXFIGHT」旗揚げ、天田がバンナに挑戦状」
 
そして、BOXFIGHTの終了から「BKB 1」の開催までがちょうど2年。
あまりに大急ぎで内容をアップデートさせ過ぎたせいで、逆に興味を引くことが難しくなってしまったのかも。
 
 
あとは単純に「ボクシングの伝統と権威」とやらに潰されたとか、そういう要因もあったりするんだろうか。
 
「ボクシング記事一覧リンク集」へ戻る
 

Advertisement
 
 
 
 

 

 

 

 
 

 
 
【個人出版支援のFrentopia オンライン書店】送料無料で絶賛営業中!!