木村悠防衛失敗!! ガニガン・ロペスの接近戦をさばけずに判定負け。商社マンボクサーは納期を守ったが、納品物に問題あり? クレーム処理能力が足りず【結果】

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金閣寺
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2016年3月4日に京都・島津アリーナで行われたWBC世界L・フライ級タイトルマッチ。
王者の木村悠が同級5位の挑戦者ガニガン・ロペスに2-0(118-110、114-114、119-109)の判定で敗れ、初防衛に失敗した。

2015年11月にペドロ・ゲバラから大逆転の勝利で初タイトル奪還に成功した商社マンボクサー木村悠だったが、満を持して望んだ初防衛戦を勝利で飾ることはできなかった。

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これで戦績を22戦18勝3敗1分3KOとした木村悠は、今後については明言を避けている。

試合は予想どおりに進み、予想に反して木村が負けた

まずこの試合の感想を申し上げると、
「すげえ微妙」

どちらが勝ったとか木村が残念だったというのはともかく、単純に試合がつまらなかった。
1Rから12Rまでほぼ同じようなペースで進み、さしたる起伏もなくロペスが判定勝ちでタイトルを獲得した試合。
がんばった両者には非常に申し訳ないのだが、まったく心が震えることがない平坦な36分間というのが僕の偽らざる感想である。

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挑戦者のロペスは悪い選手ではないが、そこまで突出したものを持っているわけではない。特別突進力があるわけでもないし当て勘がいいわけでもない。手数が出るわけでもないし防御がそこまでいいわけでもない。

思ったよりも踏み込みが鋭かったのと、左に回ろうとする木村の左側に右足を差し入れて逃げ道を塞ぐ工夫が見られたことくらい。後は左のストレートが予想よりも伸びたことか。

まあ、そんなものだ。
他は大体予想のとおり。

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そして木村の立ち上がりも概ね予想どおり。
距離をとってのタッチボクシングでポイントアウトを狙う、木村本来のスタイルである。

木村の右はある程度当たっていたし、ロペスの突進に左のフックを引っ掛けようという意志も感じられた。

挑戦者のロペスの戦術もほぼ思っていたとおり。
距離を詰めて連打を打たれることが苦手な木村に対して、試合開始直後から積極的に前に出る作戦である。

立ち上がりからほぼ予想どおりの展開で進み、予想に反して木村が負けた

局面ごとにロペスにやや上をいかれ、フワッとしたまま試合が終わった

挑戦者のロペスは「プランどおり木村のアウトボクシングを封じた」と言っていたが、正直そこまで明確に封じていたわけでもない。距離を潰す作戦を実行してはいたが、脅威的な突進というわけではまったくない。
それよりも、木村がロペスの突進に飲まれた部分の方が大きい。

原因は明白だ。
至近距離での打ち合いでことごとく打ち負けた。
それも完全に負けたわけじゃなく、やや上をいかれた

今さらだが、ボクシングは殴り合いの競技である。足を使ってアウトボクシングをすると言っても手の届く範囲に身体を置くことは絶対に必要になる。自分のパンチが届く位置というのはすなわち相手のパンチも届く位置である。つまり、そこでは必ず打ち合いが生じるわけである。

この試合の木村は、局面局面での打ち合いでことごとくロペスに打ち負けていた。それも完全に上をいかれたわけではなく、若干打ち負けた。

結果的に明確な差のないラウンドが続き、モヤモヤしたままラウンド終了のゴングを聞く。どちらが優勢かと聞かれれば「ロペス」と答えざるを得ない。

フワフワとした試合展開の末、最後にロペスの手が上がる結末が待っていたというわけである。

ゲバラ戦で過大評価し過ぎたか? 根本的にパワーがなさすぎる

この試合を通して感じたことはただ一つ。
木村はパワーがなさすぎる。

さすがにあれだけ身体にパワーがないと、どうってことのないロペスの踏み込みですら受け止めることができない。
遠い位置で釘付けにしようという努力はわかるのだが、一歩目で簡単に距離を詰められてしまうので足を使う暇がない。パンチを出して前進を寸断しようという意図もわかるのだが、接点でことごとく打ち負けるのでロペスが止まらない。結果的に木村の被弾がほんの少し多くなる。ひたすらこれの繰り返しである。

前回のペドロ・ゲバラ戦を観た限りだと、体幹が相当強くなっている印象を受けたのだが、実際はそんなことはなかった。やはりこの選手は世界タイトルマッチの舞台に上がるには致命的にパワーが足りない。

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なでるようなジャブから迫力ゼロの右フック。軽くタッチするだけのボディ。頼りない足取りにペラペラの身体。

まさしく僕がペドロ・ゲバラ戦前の木村に抱いていた印象そのものである。世界の猛者を相手に防衛戦を勝ち抜くには基礎的なフィジカルの不足は明らかである。

ペドロ・ゲバラ戦の前までは「この選手に世界タイトルがとれるわけがない」と言いきり、ゲバラに勝利した後は「あんな試合ができる木村が、ロペスごときに負けるわけがない」と壮絶に手のひらを返す。そして防衛失敗後は「やっぱりこの選手に世界タイトルは荷が重かった」と再び手首を回転させるという。

我ながら恥ずかしいのだが、過小評価し過ぎた反動で過大評価したせいでもう一度評価を下げるという厚顔無恥っぷりである。

僕の見る目などそんなものといえばそれまでだが、前の試合が感動的だっただけにこの試合の木村には本当にがっかりさせられた。

あの試合の木村には「決意を固めた人間の強さ」を見せてもらったのだが。

玉砕覚悟で試合を動かす思いきりのよさが欲しかった

この日の木村はもしかして「カッコよく華麗に防衛してやろう」などと考えていたのか?

よくはわからないが、根本的なフィジカルが足りないのは間違いない。しかも自分から前に出ているのに押し返されてしまうのだから、ちょっと希望が見当たらない。

客席から「細かく細かく」という声援が飛んでいたが、ただでさえフィジカルが足りていないのにさらに細かくなど打っている場合ではない。木村がいくら手を出しても気にせず前に出てくるロペスを見れば、木村のパンチに脅威を感じていないのは明白である。

「八重樫vsハビエル・メンドサ!! 赤っ恥予想の言い訳をしていくぞww」

むしろこの日の木村に残された手段は足を踏ん張って思いきり腕を振ることくらいだ。もちろんカウンターを被弾する確率は上がるが、ロペスのカウンターなど大したことはない。パワーで押し切られてズルズルいくか、一発逆転に賭けて大振りするか。確率的には十分勝機があったと思うのだが。何もせずにじり貧のまま終わってしまうよりはマシだと思うのだが。

基本的なスペック不足で追い込まれていたのだから、状況を打破するには自分の能力を超えた何かを仕掛けるしかなかったのである。

まあ、現実は何もせずにじり貧のまま終わったのだが。

人格者木村の敗北。世界で戦うにはやっぱりフィジカルが足りない

9R。
勝利するにはもはや倒すしかなくなった木村がラウンド開始直後から前に出る。
だが、逆にガードの間からロペスのワンツーをまともにもらってしまう。
ロペスのパンチを被弾するたびに木村の顔が紅潮していく。
左のストレートをモロに受けて木村の顔が跳ね上がる。

ボディを返す木村。
これが効いたか、ロペスが背中を丸めて後退する。

しかし、ここで畳み掛けるだけの体力が木村にはない。いや、体力があってもパワーがない。
根本的なフィジカルの不足が終盤の勝負どころでも響く。

「田口がデラローサを9Rでストップ!! 採点でリードを許すも中盤以降に流れを変えて勝利」

10R中盤、木村のカウンターがまともにロペスの顔面を捉える!!
まったく効いたそぶりを見せずに前に出るロペス。

ああ、これはキツい。
あのカウンターでビクともしないのはキツい。

リング中央で足を止めて激しく打ち合う両者。
一発打つごとにロペスの身体が大きく流れる。
もたれるように木村に身体を預ける。
それを愚直に受け止める木村。

いや、ホントに素直でいいヤツなんだろうな。
あんなことをされて受け止めてやる必要などないのに。

11、12Rと、死力を尽くして打ち合う両者。
明らかに疲れきっているロペス。それをごまかすために要所要所で木村に寄りかかる。そのたびにロペスの身体をまともに受け止めてしまう木村。

いや、いいヤツ木村ww
素直でいいヤツww

終盤まで動きの落ちない木村の体力はさすがだ。普段から苦戦を想定した練習を重ねているのだろう。
だが、元々の排気量が小さいために優位に立つことはできない。疲れきったロペスとパワーレスの木村による死力を尽くした迫力ゼロの打ち合い。

場内からわき起こる「木村」コールの中、最後のラッシュをかけようと前に出る木村。ロペスが木村の両腕を抱え込んで動きを封じる。振りほどこうともがく木村。離さないロペス。
両者がロープ際でもみ合ったところで試合終了のゴングが鳴る。

場内から拍手が起こる。
両者お疲れ。

118-110、114-114、119-109の2-0でガニガン・ロペスの勝利!!
ロペスは初の世界タイトル獲得である。

ダメージも少ないし再起して欲しいけど、退屈な試合を見せられるのは辛い……

自分の土俵で戦い、本領を十分に発揮した上で木村は負けた。
繰り返しになるが、挑戦者のロペスはいい選手ではあるが決してスペシャルな選手ではない。その選手を相手に言い訳のしようもないくらいに負けた。

技術差ではない。根本的なフィジカル不足。
敗因はそれに尽きる。

完敗を喫した商社マンボクサー木村悠だが、今後はどうするのだろうか。採点を聞いた後のすがすがしい表情を見ると、もしかしたら引退してしまうのかもしれない。
何とか踏みとどまって再起して欲しいとは思うが、今回の試合を見る限り再び世界タイトルを獲得するのは厳しいようにも感じる。スタイル的にも大きなダメージを抱える心配は少ないし、まだまだできるとは思うのだが。

まあ、世界タイトルマッチで毎回こんな微妙な試合を見せられるのもちょっと厳しいが。

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