田中将大、怪我の心配はなしか? 7回1失点で4勝目!! サイ・ヤング賞シャーザーに投げ勝つ!!【ニューヨーク・ヤンキース。田中将大、今日の結果】
アメリカ大リーグ、ニューヨーク・ヤンキースに所属するマー君こと田中将大投手が現地時間の6月9日(日本時間6月10日)、本拠地ニューヨークのヤンキースタジアムで行われたナショナルズ戦に先発。7回を投げて87球、被安打5、無四球6奪三振1失点の好投で今季4勝目(1敗)を挙げた。
試合はヤンキースが6-1で快勝。連勝を7に延ばした。
故障者リスト(DL)からの復帰第2戦となった田中。7回1失点9奪三振と好投を見せた前回の登板から中5日で迎えた今日の登板。
依然として聞かれる肘への不安の声。回復に懐疑的なメディア、ニューヨークのファン。これらの雑音をかき消すためにも大事な登板だったが、見事に満点の答えを出したといえるのではないだろうか。
個人的には「やっぱり田中将大はさすがだな」というのが率直な感想だろうか。
調子自体はなかなかよかったが、それにも増して引き出しの多さが際立った登板だったのではないだろうか。
前回の内容を伏線にして打者の目先を変える配球や打者の虚をつく配球。軸にする球の選択肢の多さ。安定感。そのすべてを高いレベルで融合させた結果が今日の投球ではないかと思う。
毎度言っているが、この器用なクレバーさこそ田中の真骨頂である。
まあ投球に派手さはないので、ダルビッシュのように観るのが楽しいといった部分においては物足りないのだが。
初球がフォーシーム!! 今日の田中は球に威力がある
1回。
先頭打者は右打者のエスコバー。
初球は93マイルのフォーシームが内側に抜けてボール。
お、フォーシームから入るなんて珍しい。しかも、割と威力がありそうだ。ベース上での力強さを感じる。
2球目。真ん中のスライダー。甘い!! ファール。これは危なかった。
3球目。真ん中高めのカットボール。おや、これも珍しい。カットボールは今年あまり投げていなかった球だ。
4球目。内側のスライダー。いわゆる右打者へのフロントドア。ファール。完全にこの球をものにしている田中。本当に器用である。
5球目。スプリットが低めに外れてボール。
6球目。スライダーが外側に外れてボール。フルカウント。
7球目。ど真ん中のフォーシーム。甘い球だったが、打球はボテボテのセカンドゴロ。1アウト。
一人目への投球を観る限り、今日の田中は球に威力がありそうだ。
ピッチャーの調子を計る際にいつも注目しているのがベース上での球の力強さ。打者の手元で「グイッ」とくる最後の一押し。今日の田中には、それがあるように思える。
また、一人目の打者にツーシームを1球も投げなかったところも、今日の自分の球にある程度自信があることの証明ではないだろうか。
うん、今日は結構やってくれるかもしれない。
続くアンソニー・レンドンをセンターフライに打ち取り、迎えるは3番の強打者のブライス・ハーパー。ここまで19本のホームランを放っている左のスラッガーである。
初球は外側のスライダー。ボール。
2球目。内側のカットボール。空振り。
3球目。同じコースにもう一球カットボール。わずかに外れてボール。
素晴らしい。
左打者の膝元へのカットボール。このコントロールこそ、田中にあってダルビッシュにないものだ。ダルビッシュも左打者にこの球が投げられれば、かなりピッチングが楽になるのではないかとずっと思っている。
まあ、田中の場合は外側のスプリットもあるので、土台ダルビッシュとは引き出しの多さが違うのだが。
4球目。外角へのスプリット。空振り。
5球目。今度は内側へのスプリット。ファール。
6球目。再び外側へのスプリット。ファール。
粘るハーパー。しかし田中の投球が安定している。今日の田中には、コントロールを乱してフォアボールという展開にはならないだろうという安心感がある。
7球目。内側へのカットボール。ファール。ハーパーのスイング軌道的に、このコースはファールになりやすいのかもしれない。
8球目。外側高めへフォーシーム。ファール。明らかな振り遅れ。やはり今日の田中の球には力がある。
9球目。外側低めへのスプリット。ハーパーのバットが出かかるがハーフスイングで止まる。フルカウント。
10球目。もう一度外側へのスプリット。ハーパーがスイングするが、打球はボテボテのセカンドゴロで3アウト。
OK!! 田中の粘り勝ち。
火の出るような弾道のホームランを許す田中。それでもまったく問題なし
続く2回も無難に抑えた田中。
ここまでの印象だが、今日の田中はなかなかいい。
配球的には今年あまり投げていなかったカットボールを軸にしている。前回登板までのツーシームの多さを逆手に取った配球だろうか。この辺り、引き出しの多さはさすがとしか言いようがない。
時折投げるツーシームの調子もよさそうである。
右斜め下に加速するように落ちる軌道のツーシーム。スプリットと見間違いそうになるツーシームの軌道だ。この軌道でツーシームを投げているときの田中は調子がいい。
また、いつも思うのだが、初回から安定して力を出せるのも地味に田中の強みではないだろうか。
立ち上がりが悪い、好不調の波が激しい投手は多い。だが田中に関してはそういった調子のブレがほとんどないといっていい。あったとしても非常に小さい。いわゆる優れた再現性。安定感というヤツだ。
あえて悪い点を挙げるなら、若干肘が下がり気味に観える部分だろうか。まあそれでも今日の調子なら大した問題にはならないのではないかと思う。
ちなみにだが、今日のシャーザーはあまりよくない。
3回。
この回の先頭はデズモンド。
フロントドアのスライダーを見せた後に外角へのフォーシーム。さらに同じコースから外に滑るスライダー。空振り三振!!
内へ外へ自由自在に投げ分ける田中。まだ序盤だが、ここまでは付け入る隙をまったく与えていないといってもいいだろう。
ドルーのソロホームランでヤンキースが1点を先制して迎えた4回表。
先頭のエスコバーに初球のカットボールをセンター前に運ばれた田中。この日初ヒットを許す。
続くレンドンにも初球カットボール。
バットを振り抜くレンドン。
鋭い打球が転がる。しかしショート正面。ゲッツーで2アウト。
続く打席には強打者ブライス・ハーパー。先ほどは10球粘られた末に内野ゴロに打ち取っている。
初球ツーシームが低めに外れて1ボール。
2球目。外角を狙ったフォーシームがやや真ん中に入る。ハーパーのバットが激しく回転する。
ピシッ!!
小気味よい打球音を残してボールはあっという間に左中間スタンドへ突き刺さる。
ブライス・ハーパー20号!!
ソロホームランで1-1の同点。
いや〜、甘く入ったとはいえすごい打球だった。
まあ、今日の田中はストライクをどんどんとっていくスタイルだからこういう一発は十分あり得る話ではある。ある程度仕方ないとはいえ、度肝を抜かれる弾道だ。
続くジマーマンを内野ゴロでしとめ、ソロホームランのみの1点で3回を終える田中。一発は打たれたが、球の質やメンタルはまったく問題なさそうだ。
95マイルのフォーシームで見逃し三振!! 文句なしだろこの球なら!!
5回。
先頭のロビンソン。
2ストライクからファウルで2球粘られてからの5球目。
田中が鋭く右腕を振り下ろす!!
95マイルのフォーシームが糸を引くようにキャッチャーミットに吸い込まれる!!
パチーン!!
余韻を残して審判の手が上がる。
「ストライーク!!」
見逃し三振キタ!!
コース、スピード、威力。すべて言うことなし!!
いや、この球は打てないですよ。
続くラモス、そしてデズモンドをともにキレのいいツーシームで打ち取り3アウト。
ここまで65球。
リズムよく打者を料理していく田中。このいいリズムを攻撃につなげたい。
球の威力が落ちてきた田中。何とか変化球で粘りたい
6回。
簡単に2アウトを取った後、エスコバーにツーベースを許す田中。だが、続くレンドンをカットボールでピッチャーゴロに打ち取り無失点で切り抜ける。
ただ、この回あたりから若干スピードが落ちてきているように感じる。
球数的にはまだまだ大丈夫なはずだが、初回から飛ばしてきた分バテてきたか。少し危険信号に思える。
7回。
先頭打者はホームランを打たれているブライス・ハーバー。
スプリットの連投で1-2と追い込む。
4球目。またしてもスプリット。
この球を何とハーパーがセーフティバント!!
しかしファール。3バント失敗で1アウト。
このバントにはちょっと驚いた。リプレイが何度も流される。
ただ、こういうところもさすがの田中ではある。
個人の勝負にまったくこだわらず、とにかく打ち取ることを最優先に考えた配球を選択する。「打たれたフォーシームで打ち取ってやろう」とか、そういう非効率的な発想はいっさい持たないのだ。
負けたくない。
勝ちたい。
そこにすべてのベクトルが向いている。
それに対するハーパーの苦し紛れのバントを見るに、もしかしたらスプリットばかりの投球に対する抗議の意味もあったのかもしれない。
ハーパーを打ち取ったとはいえ、球の威力は明らかに落ちている田中。
最後の回というのもあるのだろうが、明らかにスプリットの連投でごまかしにかかっている。
その後シングルヒット2本を打たれて、2アウト1、2塁。
スピードが落ちているので、外側のカットボールにも思い切り踏み込まれてしまう。これはかなりの危険信号。
後一人。
がんばれ。
結局、最後はデズモンドがスプリットをセンターフライに打ち上げて3アウト。助かった。
その裏に相手のエラーも絡んで4点を奪い、勝負を決めたヤンキース。7回でお役御免となった田中に今シーズン4勝目がもたらされた。
最後に
今日は本当にナイスピッチングだった。
もう間違いなくナイスピッチング。
復帰第2戦でシャーザーに投げ勝ったのも大きいだろう。
前回の登板で「体力をある程度温存しながらメジャーの強打者を打ちとれるギリギリのライン」を見つけたのではないかと言ったが、今日の登板はまさしくそれを実践した形になったと思う。
吸収の早さや適応力の高さにはいつもながら驚かされるばかりである。
「田中将大(ヤンキース)、復帰戦で7回1失点! 堂々の投球」
ただ、今日の好投で故障の懸念が完全に消えたとは言えないことも確かだろう。
今後、球数制限が解除されて100球以上投げた際にどうなるか。また、登板を重ねて疲労が溜まる夏場を乗り切れるか。
その前に今日の登板を終えて何事もなく次を迎えることができるか。
まだまだ予断を許さない日々は続いていく。
そして、僕の楽しみも続いていく。
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