ヤンキース田中将大復の復活したのか? 不調は続くのか? フォームの比較で検証する【6回3失点で3試合ぶりのQS】

ヤンキース田中将大復の復活したのか? 不調は続くのか? フォームの比較で検証する【6回3失点で3試合ぶりのQS】

夕焼けイメージ
3試合ぶりのQSを記録したヤンキース田中将大。今回の登板で復活といっていいのか? それとも依然として不調は続くのか? フォームに違いはあるのか?

ヤンキース田中将大投手が現地時間7月3日(日本時間4日)に、本拠地ヤンキースタジアムで行われたレイズ戦に先発。6回96球を投げて3失点被安打6、5奪三振1四球の内容で3試合ぶりのQSをマークした(防御率3.94)。5試合ぶりに被本塁打なしだったものの0-3とリードを許して降板。8回にテシェイラの同点3ランによって黒星が消えた。

今日の登板を受けて、地元メディアは「とてもよかった」と一定の評価はしたものの、「目を見張るようなエースの投球ではなかった」とし、圧倒的なエースとしての投球にはほど遠い内容であったと指摘している。

「田中将大6失点の炎上。2試合続けて3被弾!! 自己ワーストの自責点6」

ここ数試合、厳しい投球が続く田中だが、この試合だけで雑音を払拭するまでには至らなかった。今後も試合ごとに乱高下する評価に晒されると思われる。

全体的に球の威力はあった。復活と呼んでいいかは……?

今回の登板は、前回までの2試合と比べればかなりいい出来だったと思う。
初回からツーシーム、フォーシームを中心の組み立てで、どちらもなかなか威力があった。相手打者が押し込まれたり、振り遅れるなど、圧倒的ではないもののベース板の上で十分な力強さが感じられた。
また、スライダーもキレていたと思う。制球力がいまいちでボール一個分のずれが生じていた印象だが、キレという意味ではかなりよかったのではないか。

ただ、これは毎回言っているのだが、80マイル後半のスピードを重視したスプリットが相変わらずあまり効果的ではない。
初回の先頭バッターサイズモアにいきなり打たれたツーベース。あれも89マイルのスプリットだったし、3番ロンゴリアのタイムリーも87マイルのスプリット。これはちょっと考えた方がいいのではないかと思う。

ただ、速球系の威力はここ最近の登板の中ではかなり威力があったことは間違いない。
初回の4番ロニーには外角の94マイルのツーシームからフロントドアの93マイルでのゴリ押し。勝負球のフロントドアはコース自体は甘かったが、球威がある分ロニーが押し込まれてライトフライになった。
5番フォーサイスには右打者の内側へ93マイルのツーシームを投げ込み、バットを折りながらのファーストゴロ。こういう力感のあるピッチングは、ここ最近の田中には見られなかったものだ。

組み立てとしては、普段はスプリットを投げるカウントでスライダーやツーシームを投げることで裏をかいていた印象だ。「田中といえばスプリット」というイメージを逆に利用して、同じコースに別の球種を投げ込む組み立てだ。
そして右打者の内角ボールゾーンからストライクになるスライダー、左バッターの外側からストライクになるスライダーどちらも完全に自分のものにしている。この辺はさすがの器用な田中である。
ただ、カーブを投げると若干肘が下がるのが気になる部分ではある。相手に見抜かれて狙われなければいいが。

試合後、「田中の生命線はコントロール。その制球が甘いから打たれる」というコメントが多く見られたが、正直な話、球さえ走っていればある程度甘いコースにいっても打ちとれるものである。逆に球の走りが悪ければ、どれだけいいコースに投げてもバッターは打つのだ。いくら外角低めギリギリにコントロールしても、ストレートの球速が85マイル程度ではプロの打者は打つ。そして田中のような変化球投手は、なおさら見せ球のしてのまっすぐの走りが大事になるのだ。

個人的に今日のハイライトは5回のピッチングだ。
キアマイヤーにツーベースを打たれてからのリベラの打席。ここでの全力のフォーシームは痺れた。自己最速の96マイルを記録した球だが、キレ、スピード、威力すべてが素晴らしかった。結果的に犠牲フライを打たれて失点は許したものの、これぞギアチェンジという一球だったと思う。

ただその後、80球を超えたあたりで今日も球が抜け始めていた。この80球近辺の出来が、現在の田中の関門なのだろう。マキャンが盗塁を2度刺したのは本当に大きかった。

味方のファインプレーにも助けられながらの6回96球。
首を振ってフォーシームを投げたりと、カットボールに依存して痛打された過去2試合に比べれば断然よかったと思う。これも毎度言っているのだが、この球威なら高めまっすぐを見せ球にしてもいいのではないか。そう感じさせるピッチングだった。

【徹底検証】好調時と不調時のフォームに違いはあるのか?

完全復活とは呼べないまでも、ここ最近の中ではかなりいいピッチングを見せた田中将大。では不調時と好調時ではどのような違いがあるのか。フォームを見比べながら好き勝手に検証してみたいと思う。

まずは下記の動画を観ていただきたい。
これは現地時間6/3のマリナーズ戦。DLから復帰して7回1失点で勝利投手になったときのものだ。復帰登板としては上出来で、数字的にも3安打9奪三振と文句のつけようのない内容といえるだろう。

続いてはこれである。現地時間6/27のアストロズ戦。5回を投げて7安打6失点。勝敗こそつかなかったものの2試合連続で3ホームランを許した試合である。田中の株を下げる試合として印象の強いものになってしまった試合だ。

最後に現地時間7月3日の試合。今回の試合だ。前述したように6回6安打3失点。3試合ぶりのQSを記録し、5試合ぶりにホームランを打たれなかった試合である。

どうだろうか。
好調だったマリナーズ戦。
不調だったアストロズ戦。
ぼちぼちだったレイズ戦。
3つの試合を見比べてみて、それぞれ田中のフォームに違いを感じるだろうか。

「田中将大(ヤンキース)、復帰戦で7回1失点! 堂々の投球で敵地を震撼させる!!」

僕はアストロズ戦の投球フォームが若干手投げになっているように感じた。
実際イラストで見比べてみよう。例によってイラストの出来に言及するのはやめていただく方向で……。
田中ピッチングフォーム
左がマリナーズ戦、真ん中がアストロズ戦。そして右がレイズ戦だ。
最も顕著なのがボールを離す瞬間の右ひざの沈み込み具合だ。マリナーズ戦、レイズ戦に比べて真ん中のアストロズ戦のフォームは、若干ではあるがマウンドと右ひざのスペースが広くなっている。

そしてもう一つ。
マリナーズ戦、レイズ戦では身体のひねりを使えているのに対して、アストロズ戦では投げる瞬間、背中がのラインがまっすぐになっている。あまりひねりを使えずに手だけで投げている状態といえるだろう。

田中のフォームは、よく言われるように下半身を大きく使って沈み込むのが特徴である。
大きく沈み込んで広いストライドでまっすぐに投げ込む。いいか悪いかは別にして、これが日本時代から田中将大が続けてきたフォームだ。

ところがアストロズ戦ではこの下半身を大きく使った沈み込みがわずかに足りずに、若干手投げになっている。動画でよく観察しないとわからないくらい本当にわずかな差なのだが、この差が打者の手元での球威に違いを生んでしまうのだろう。そして、メジャーの打者はそのわずかな球威の不足を見逃してくれなかった。そういうことなのだ。今回のレイズ戦ではその沈み込むフォームが戻っていたので、球威で押すことが可能になったのだ。

ではなぜ手投げのフォームになってしまったのか。
この原因は明白で、要するに疲れで足腰にきているという話である。疲れが溜まって下半身の踏ん張りが効かず、上体が立ったまま投球動作に入ってしまった。結果的に手投げになって球威が落ちたところを狙われたというわけだ。周囲が言うように肘とか腕がどうこうという話とはまったく無関係である。

開幕してから数試合、どの投手も疲れが出始めて調子が下降する時期が来ると思うが、田中にとってはそれが今なのだろう。1ヶ月離脱していたので、マリナーズ戦が実質開幕と考えると、ちょうど今くらいがその疲れのピークと考えれば辻褄が合うのではないか。

ここから田中の巻き返しが始まるからよく見とけよ?

今後も田中は投げるたびに周囲の雑音に晒されることだろう。

だが、僕は無謀と知りつつあえて断言したいと思う。
「次回以降、田中マー君の逆襲が始まります!!」

今回の登板で、疲れのピークを脱したことを証明した田中マー君。ここから先は獅子奮迅の活躍を見せてくれるだろう。
そして、最終的には12勝7敗 防御率2.87くらいにまとめてくれるはずである。

「ヤンキース田中将大、完璧な投球で5勝目!! 今季初めて100球を超える」

この断言で大恥をかくのか、それとも「どや!!」と叫べるのか。これからもますます楽しみ。

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