サッカースタジアムのアクセスの悪さは客足に影響するのか検証してみる。人生初のサッカー(J2)観戦はクソ微妙だった【長文】
先日、人生初のサッカー現地観戦に行ってきた。
とあるJ2の試合を観たのだが、率直に申し上げてクッソ微妙だった。
まず、スタジアムのアクセスが鬼のように悪く、往復するだけでもかなりの重労働。その上係員の対応が軒並みゴミで、試合前にかなりのマイナススタートとなったことをお伝えしておく。
その上、
・客席とグランドの間に陸上トラックがあるせいで選手が豆粒
・1-0という動きの少ない試合内容
・ハーフタイム中は観客放置
・スタジアム飯は総じてゴミ
という状況で、申し訳ないことにほとんど楽しめる要素がなく。
正直、これを観るなら屋内でフットサルを観戦した方がはるかにいい。残念ながら僕にはサッカーの現地観戦は合わない。絶対とは言わないが、もう行くことはないかなぁと思った次第である。
「フットサル「Fリーグ」を初観戦した結果、かなり楽しかったのでその感想を」
そして、表題の件。
「スタジアムのアクセスの悪さは客足に影響するのか」
僕は普段、スポーツを現地観戦する際、アクセスの良し悪しはめちゃくちゃ大きなポイントだと思っている。
当たり前だが最寄駅から近ければ近いほどいい。
その駅も賑やかで便利な方がよりgood。
逆に、駅から徒歩15分以上かかるような場所は総じてアカン。
何度かバスケ観戦で足を運んでいるとどろきアリーナも、僕の大っ嫌いな場所の一つである。
「川崎ブレイブサンダース現地観戦のパワーアップがエグい。ブームが起きたら絶対逃したらアカン」
しかも、今回のスタジアムのアクセスの悪さはとどろきアリーナの比じゃない。
最寄駅から徒歩で行くのはほぼ不可能で、はっきりと「ゴミアクセス」と断言できるレベルの僻地に存在する。
いや、どうなんだろうか。
僕と同じように感じている方はいるのだろうか。実際、スタジアムのアクセスによって客足に差は出るのか。
これは僕が前々から疑問に思っていたことなのだが、いい機会なのでちょっと調べてみようと。
スタジアムの立地が観客動員や収益などにどう影響するのか。試しに検証してみたいと思う。
ちなみにだが、対象は2017年シーズン。
本当は2018年シーズンがよかったのだが、残念ながらまだ各チームの決算が発表されておらず。
- 1. J2チームの平均観客数他、2017年の数値を並べてみる
- 2. 最寄駅からのアクセスは客足に影響するのか。平均観客数との相関関係を検証
- 3. アクセスの悪さは営業収益に大きな影響を与える。その原因は?
- 4. 山口はシーズンチケットの値段を上げて入場料収入を確保する
- 5. 東京Vは本拠地が無駄にデカい。収益はそこそこだが、営業費用で吐き出している
- 6. 町田は極力チームの人件費を抑え、営業収益の悪さ、集客力の低さをカバーする
- 7. 集客に有利なのは「広く人口も多い地域」と「狭く人口が少ない地域」(という傾向がありそう)
- 8. 愛媛は観客も少なく営業収益も低い。それを運営費の低さで補うチーム
- 9. J1の集客力は段違い。J2から昇格したチームの平均観客数が大幅にアップした
- 10. アクセスの悪さの影響は確実に「ある」。だが、それ以外の工夫でカバーできる。現地観戦が楽しいことが大前提だけど
J2チームの平均観客数他、2017年の数値を並べてみる
まず、下記がJ2(2017年)チームの平均観客数順に並べたもの。
左から平均観客数(人)、ホームスタジアムのキャパ(人)、集客率(%)、スタジアムの所在地の人口(万人)、スタジアムの所在地面積(km2)、スタジアムの所在地人口密度(人/km2)……と続く。
そして、2つ目はチームごとの決算。
営業収益、広告料収入、入場料収入……と続く。単位は(百万円)となる。
これを各項目ごとにソートしつつ、スタジアムの立地条件による観客動員数や収益の影響を見ていきたいと思う。
なお、本データは「Soccer D.B.」様のサイトとJリーグのHPから引用、加工させていただいた。
最寄駅からのアクセスは客足に影響するのか。平均観客数との相関関係を検証
最初は最寄駅からスタジアムまでの距離(km)と平均観客数(人)の比較。
大人が普通に歩く速度が1kmあたり13〜15分と考えて、ここでは最寄駅から3km以上のスタジアムを「アクセスが悪い」と判断する。
下記では該当のチームに色をつけている。
これを見ると、平均観客数に関してアクセスの良し悪しは実はそこまで影響がない。
全22チーム中、17〜21位までをアクセスの悪いチームが占めているが、逆に上位に入っているチームもある。名古屋に次ぐ2位の松本を筆頭に、本拠地のアクセスが悪いチームもそれなりに健闘していることがわかる。
もちろん駐車場の台数や交通事情等に違いがあるので一概には言えないが、アクセスの悪さが即客足に影響するとまでは言えなそうである。
次は集客率(%)でソートしてみる。
集客率とはつまり、スタジアムが平均して何割埋まったか。10000人収容のスタジアムに5000人入れば集客率は50%となる。
ここでもアクセスの悪さが客足に直結するとまでは言い難い。
相変わらず下位にはアクセスの悪いチームが固まっているが、キャパの小さいスタジアムを本拠地とする町田が9位に入り、キャパが大きな熊本が19位に落ちるなど、条件次第で順位に大きな変動が見られる。
全体を通して見れば「アクセスの悪さは客足に影響しないわけではないが、その他の条件や努力で十分カバーできる」と言えるのではないか。
アクセスの悪さは営業収益に大きな影響を与える。その原因は?
ところが、営業収益に関してはアクセスの悪さが如実に影響していることがわかる。
平均観客数が多い松本や元J1の湘南はがんばっているが、それ以外はことごとく下位に低迷する状況。
果たして何がダメなのかと思ったのだが、恐らく最大の原因はこれ。
チームにとっての一番の収入源である広告料収入。この項目がスタジアム立地条件の悪さとモロにリンクしている感が強い。
つまりアレか。
アクセスの悪さが観客動員にそこまで影響しないことが、主要スポンサーに伝わっていない。
基本、スポンサー候補となるのは地元企業が中心。支援をお願いしても「あんな場所に誰が行くねんw」と突っぱねられるケースが多いのかもしれない。
山口はシーズンチケットの値段を上げて入場料収入を確保する
では、ここからは僕が個人的に気づいた部分について。
まずは下記。
入場料収入でソートしたもので、平均観客数が6000人未満のチームに色をつけている。すると、山口が全体の7位に食い込んでいることが判明した。
試しに平均観客数でソートし直してみると、山口は15位。入場料収入に関しては14位の長崎、16位の徳島と比べて大きな差をつけている。
ご存知の通り、入場料収入は観客数×チケット代で算出される。
上記3チームのチケット代を調べてみたが、それぞれで大きな差があるようには見えなかった。
→「チケット2019 | レノファ山口FC」
→「V・ファーレン長崎 | Jリーグチケット」
→「チケット情報|徳島ヴォルティス オフィシャルサイト」
じゃあ、何が違うの? という話なのだが、どうやら要因はこれ。
↓レノファ山口FCシーズンチケット価格(HPから引用)
↓V・ファーレン長崎シーズンチケット価格(HPから引用)
↓徳島ヴォルティスハーフシーズンチケット価格(HPから引用)
山口は他2チームと比べてシーズンチケット価格が若干高額に設定されている。
長崎は一般価格は山口より高いものの、早期割が効く分安価で済む。
徳島に関しては、2019年の販売期間が終了していたためハーフシーズンしか見つけられなかったのだが、単純に倍と考えても山口よりはだいぶ安い。
つまり、この部分で山口は他チームに対してアドバンテージを確保していることがわかる(他に具体的な要因を見つけられなかったので、間違っていたらすみません)。
熱狂的なファンは気にせず購入するのか、それとも不満が出ているのかは不明だが、チケット代一つでもチームごとに違いがあっておもしろい。
「僕がサッカーを嫌いな理由。「悩みがある人間はスポーツをやれば解決する」とかいうスポーツ万能クソ理論が反吐が出るほど嫌いです」
東京Vは本拠地が無駄にデカい。収益はそこそこだが、営業費用で吐き出している
次は東京Vについて。
下記は集客率順にソートしたものだが、J2の中でダントツに集客率が低いのが東京V。
最寄駅からの距離が0.65kmと立地条件は抜群なのに対し、キャパが50000人弱と無駄にスタジアムが大きいせいで平均集客率は12.67%にとどまっている。1位の名古屋が75.98%を叩き出しているのとは大違いである。
ところが営業収益でソートすると、東京Vは7位とそれなりに順位が高い。
恐らく広告料収入がぼちぼちなのと、平均観客数では12位と中位に位置するためだと思われる。
そして営業費用でソートしたのが下記。
こちらも7位と高い順位につけており、収益と費用が相殺された結果、当期純利益があまり出ていないことが判明した。
この辺はチーム人件費やトップチーム運営費、明らかにオーバースペックなスタジアムなど、コスト面を再考する余地がありそう。
まあ、集客力アップが先決なのは間違いないとは思うが。
町田は極力チームの人件費を抑え、営業収益の悪さ、集客力の低さをカバーする
続いては、先ほども少し取り上げた町田について。
このチームはホームスタジアムが最寄駅から5.30kmとすこぶるアクセスが悪いこともあり、人口密度6020.89人/km2の地域を拠点にしている割に平均観客数は全体の19位と低い。人口の多さ、人口密度の高さを立地条件の悪さが上回ってしまっている状況である。
ところが、スタジアムのキャパが10000人強と小さいため、集客率では全体の9位。そこまで悪くない数字が出ている。
だが営業収益は18位と、平均観客数同様低迷している。
ところが下記を見ると、営業費用を抑えることで営業収益の悪さをカバーしていることがわかる。
中でもチーム人件費はJ2全体でもっとも低く、そのおかげで東京Vよりもはるかに大きな当期純利益が出ている。
つまり、町田は極力人件費(選手の年俸)を抑えることでキャパの小ささ、アクセスの悪さによる収益面の苦戦を補っているチームということになる。
選手の年俸を低く抑えることが必ずしも正解だとは思えないが、身の丈に合った経営方針と言えるのかもしれない。
集客に有利なのは「広く人口も多い地域」と「狭く人口が少ない地域」(という傾向がありそう)
そして、スタジアム所在地の人口に対し、観客がどれくらい入っているか(平均観客数/人口(%))について。
所在地人口(万人)が多い順にソートし、50万人以上が住む地域に色をつけたのが下記。
基本、人口が多い地域は面積も広大で、その分平均観客数/人口(%)も低い傾向が見られる。
中には松本や山口のように、面積の割に所在地人口が少ない地域もあるので一概には言えない。だが、広大な土地に多くの人口が住んでいるほど、平均観客数/人口(%)が低い傾向にあるのは間違いなさそう。
ただ、営業収益(1500百万円以上のチームに着色)の項目を見ると、平均観客数/人口(%)が低いからといって、必ずしも収益が上がらないわけではない。
特に名古屋は平均観客数/人口が0.67%にもかかわらず営業収益は断トツの1位。20000人強の本拠地を毎試合75%以上埋めるチームの真骨頂と言えそうである。
逆に所在地人口が少ない地域のチームは営業収益が多い傾向も見られる。これは交通の便がいい分、周辺地域からの集客がうまくいっているのだと想像する。
何となくだが、「広大で人口の多い地域」or「人口は少ないが面積も小さい地域」が集客に有利なのかな? という気がする。
「アイスホッケーは集客に苦戦してるってホント? 霧降アリーナを初めて訪れて感じたことを列挙してみる」
愛媛は観客も少なく営業収益も低い。それを運営費の低さで補うチーム
なお、所在地人口が多く平均観客数/人口(%)が低いチームの中で、営業収益で苦戦しているのが熊本と愛媛。
この2チームの共通点はいずれも最寄駅からのアクセスが悪いこと。
特に愛媛は7.30kmと絶望的。数ある条件の一つに過ぎないとはいえ、やはりアクセスの悪さは客足に影響している感じか。
ところが、愛媛は当期純利益では全体の5位。
年間ではしっかりと利益を出していて、必ずしも低迷しているとは言い難い。
ちなみに上記で取り上げた3チーム、山口は20位、東京Vは14位、町田は8位となっている。
・平均観客数21位
・集客率20位
・営業収益17位
・広告料収入18位
・入場料収入20位
ことごとく低い順位が並ぶ愛媛だが、これでなぜ利益を出せるのか。
恐らく一番の要因は下記。
試合関連経費とトップチーム運営費、チーム人件費の低さ。
中でも試合関連経費はJ2全体でもっとも低く、1試合にかかる費用が軒並み少なく済んでいることがわかる。
考えられる理由としては、スタジアム使用料の安さだろうか。
最寄駅から7.30kmとアクセスが悪い分、使用料も安く(交渉の成果?)、それが年間を通して大きな差になっているのかもしれない。
J1の集客力は段違い。J2から昇格したチームの平均観客数が大幅にアップした
そして、ラストの検証。
J2のチームがJ1に昇格した場合、どの程度集客面に影響するのかについて。
2018年シーズンにJ1に昇格したのが湘南と長崎。この2チームの集客力がどこまでアップしたかを見て、その他のJ1チームとも比較していく。
下記が2018年シーズンの湘南と長崎+J1の3チームの主な数値一覧。
最初に申し上げたように各チームの決算についてはまだ発表されておらず、今のところ収益面の情報はない。
湘南:平均観客数8454→12120人、集客率55.62→79.74%
長崎:平均観客数5941→11225人、集客率29.33→55.41%
見ての通り、J1昇格後は両チームともに平均観客数が大きく増加し、集客率は+20%以上。軒並み集客力が上がっていることがわかる。
ただ、それでもJ1チームの中では下位で、平均観客数19000人前後にすら遠く及ばない。
その反面、1位の浦和に関しては桁違い。
60000人以上収容できるスタジアムが毎試合60%近く埋まる状況。最寄駅からの距離が2.70kmと決してアクセスがいいとは言えないながら、化け物的な数値を叩き出している。
そう考えると、やはりJ1のブランドは大きい。
J2→J1に昇格するとチーム人件費(年俸)や試合関連経費も膨らむと想像するが、それ以上に広告料収入や入場料収入の大幅な上乗せが期待できるのではないか。
まあ、長崎に関してはわずか1年でJ2に降格しており、膨らんだ(と思われる)チーム人件費をどうするの? という懸念もあるのだが。
そして、J1進出以降の長崎(落ちたけど)が目指す指標として、もっとも適切に思えるのが清水。
スタジアムのキャパはほぼ同じ、所在地人口に対する面積の比率もかなり近い。人口密度も似通っているので、とりあえずの目標として平均観客数15000人を目指すにはちょうどよさそうなモデルケースである。
まあ、静岡県はサッカーが強い地域な分、地元の人気も大きいのかもしれないが。
アクセスの悪さの影響は確実に「ある」。だが、それ以外の工夫でカバーできる。現地観戦が楽しいことが大前提だけど
だいぶ長くなったが、だいたいこんな感じ。
自分なりの結論としては、
・アクセスの悪さは確実に影響する
・客足はもちろん、地元のスポンサーを獲得するのが難しそう
・チームごとに利益を出すための方針は大きく違う
・「広大で人口の多い地域」or「人口は少ないが面積も小さい地域」が集客に有利?
・J1の集客力は段違い
基本的にはチームによって地域差が大きいため、集客、収益拡大の正解は見当たらない。
ただ、スタジアムのキャパの目安はJ2が10000~15000人、J1が15000人~25000人前後が最適なイメージ。一部のビッグクラブを除き、あまりに巨大なスタジアムは持て余す可能性が高くなる。
また、大き過ぎるスタジアムはオーバースペックなだけでなく、単純に見た目がよくない。
実はそこそこ収益が上がっているのに毎試合ガラガラ。これだとスポンサー集めにも苦労するのではないか。
その他、駐車場の拡大や直通バスなど。インフラ整備によってアクセスの悪さをカバーできる要素は多いように思える。
「野球観戦やっぱり楽しい。東京ドームで巨人vsDeNA戦を観てきた。ボールパークには夢がなきゃいけねえんだよ()」
それもこれも「現地観戦が楽しい」ことがすべての大前提だけどね。僕にとって、初のJ2現地観戦は決して楽しいものではなかったので。
一応申し上げておくと、今回の検証がすべて正しいなどと言うつもりはまったくない。
データも1年分のみで、手作業の部分も多く正確性にも疑問符がつく。あくまで個人の数字遊びとしてとらえていただければ幸いである。
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