ニュージーランドがオーストラリアを下し、ワールドカップ史上初の連覇を達成【ラグビー結果】息づまる熱戦を制して34-17で勝利!!
イングランドで開催中のラグビーワールドカップ。10月31日に決勝戦が行われ、ニュージーランド(オールブラックス)がオーストラリア(ワラビーズ)を34-17で下し、最多の3回目の優勝を飾るとともに、ワールドカップ史上初の連覇を達成した。
「ラグビーワールドカップ決勝戦予想!! オーストラリア(ワラビーズ)vsニュージーランド(オールブラックス)」
ニュージーランドがオーストラリアをよく研究していた
試合全体の印象としては、ニュージーランドがオーストラリアのディフェンスをよく研究していた試合だったと思う。
具体的には、細かいパス回しによってオーストラリアの激しいタックルにヒットを許さない、芯をずらすことを意識していたのだ。
オーストラリアの選手がタックルに入る瞬間、近くの選手にパスを出してタックルの芯をずらす。ボールを受けた選手はそのままゲインラインを超えて、タックラーを引きづりながらのオフロードパス。この流れで相手ディフェンスの裏に出て、あっという間に前進するのである。特に突破力のあるノヌーにボールを持たせることで、相手へのインパクトをより強力なものにしていたのだ。
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この作戦はなるほどだった。
あの激しいディフェンスに対してどういうオフェンスで対抗するのだろうと思っていたが、まるでお手本のようなニュージーランドの攻撃だった。もちろん走力のある選手がズラッと並ぶニュージーランドだからこそではあるのだが。
さらに、試合開始直後にこのオフェンスを見せたことも効果的だった。
得意のディフェンスをいきなりやぶられたワラビーズは完全に出鼻を挫かれた格好である。持ち味を封じられ、自分たちのリズムで試合をすることができなくなったのだ。
必死のバッキングでどうにかトライを許さないオーストラリアだが、後ろからのタックルではどうしても相手の勢いを完全に止めるのは難しい。結果的に反則を犯す場面が増え、ニュージーランドにペナルティゴールを献上してしまったのだ。
ただ、ニュージーランドも完全に試合をコントロールしていたわけではない。
リズムよく攻め続けてはいたものの、前半10分過ぎのマイボールラインアウトからのハイパントが本当にいらなかった。あのキックがダイレクトタッチになってしまったことで、いい流れを自ら止めてしまったのである。
何度も言うが、ラグビーの試合でキックを多用するのは絶対によくない。特にああいう一か八かのハイパントは極力やるべきではないのだ。ワールドカップのような大舞台ではなおさらである。
そのまま一気にオーストラリアを突き放すチャンスだったのに、あのキックによって完全に流れが止まってしまったのだ。
前半13分に反則からペナルティゴールで同点に追いつかれてしまうのだが、自ら流れを止めるとこういうことが起きるのである。
やっぱりキックで流れを止めてしまう。これは本当にいいのか?
オールブラックスはディフェンス面でも、本当によくワラビーズを研究していたと思う。
前回も言ったとおり、ワラビーズのスタイルは最初に1本、2本縦に突進してからの外展開である。縦突進によってディフェンスの意識を中央に集め、思い切り外に回してウィングやフルバックにボールを渡して走力勝負に持ちこむのだ。フォワードの縦突進で密集にバックスを何人か巻き込み、相手のディフェンスが受けに回ったところで大きく外に展開。走力のあるバックスリーがトライを奪いにいくというスタイルである。グラウンドを広く使ったラン攻撃が得意なのだ。
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このオーストラリアのオフェンスに対して、ニュージーランドがとった作戦は1本目の縦突進を潰すというものだった。1本目の縦突進を早めに潰し、外への展開ラグビーに持ちこませないディフェンスである。
ディフェンス面では細かいパス回しでタックルの芯をずらされ、オフェンス面では最初の突進を潰される。おかげでオーストラリアは完全に自分たちの流れを失っていた。ニュージーランドのプラン通りに試合は展開していたのである。
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とはいえ、オーストラリアチームにもさすがと思わせるディフェンスが随所に見られたことも確かだ。
前半18分前後の5m付近での攻防は見応えがあったし、あのめまぐるしい流れの中でも1人に対して2人で止めにいくディフェンスが徹底されていた。リズムを崩されていたとはいえ、あのディフェンスはやはり膨大な反復練習の賜物といえるだろう。
ただ、ニュージーランド同様、オーストラリアも無駄なキック攻撃で流れを手放してしまっていたのが残念だった。
激しい攻防の末にせっかくターンオーバーを成功させたと思ったら、すぐにハイパントである。あれだけ苦労して手にしたボールをなぜあっさりとに手放してしまうのか。
案の定ボールはニュージーランドに渡り、チャンスは費えてしまうのだ。
自分たちのプレーができていない中でのマイボール。なおさら大事にいくべきだったのではないだろうか。
キックに関してはニュージーランドも同様である。
前半31分。せっかくラインアウトをターンオーバーで奪ったのに、大外のウイングがキックをしてしまうのだ。内側からサポートプレイヤーもきていたし、普通にラックを作っておけばチャンスは続いたはずなのに、である。
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33分にも同じようなシーンがあり、そこではしっかりと当たりにいってラックを作ったが、あれこそ確実なプレーである。
その後相手のオフサイドを誘い、ペナルティゴールを決めて3点追加。そういうことなのだ。
何度も言うが、ラグビーの基本はディフェンスから。そして、試合の流れを相手に渡さないこと。勝利を掴むためにはこの2つが特に重要なのだ。
大会を通して言い続けているのだが、インプレー中のキック攻撃は極力避けるべきである。番狂わせが少ない競技なのだから、舞台が大きくなればなるほど確実なプレーを選択しなくてはいけないのだ。
作戦がうまく機能したニュージーランド。リズムにのれないオーストラリア
前半までの印象だが、先述したとおりオーストラリアはニュージーランドの作戦に面食らってリズムがまったく掴めなかった。
対するニュージーランドだが、うまく作戦がハマっていい流れで試合を進めてはいるものの、若干入れこみ過ぎて浮き足立っている状態である。
試合の流れはニュージーランドだが、まだどちらも決め手に欠けるといったところだろうか。
そして試合展開として意外だったのが、密集でのボールの奪い合いでニュージーランドが優位に立っていたところだ。
これまでの試合を見る限り、ラックやモールでのボールの奪い合いはオーストラリアに分があると思っていたのだが、むしろニュージーランドの方が押していたことに驚いた。
さらに、オーストラリア有利だと思っていたスクラムもニュージーランドが押し気味だったことも意外だった。ニュージーランドが攻める時間帯が続くだろうとは思っていたが、密集やセットプレーでもオーストラリアの上をいくとは思わなかった。
ボールの支配率の分だけ、ニュージーランドのペナルティゴールが増えたということだろう。
ニュージーランドの特徴の一つとして、キックオフのボールをバックスのプレイヤーがキャッチするシーンが多いことが挙げられる。
走力のあるバックスがキックオフのボールをキャッチすることで、相手フォワードとのミスマッチを誘って大きく前進することができるのだ。もちろんフォワードに負けないだけのフィジカルを持ったバックスだからこそ可能なのであって、どのチームにもできるプレーというわけではない。1対1のコンタクトで確実に出せるだけのパワーとスピードを持っているチームだからこそ選択できるプレーである。
この辺りがニュージーランドのボール支配率の高さにつながっていると思うのだ。
ただ、オーストラリアもさすがだった。
試合序盤は面食らったニュージーランドのオフェンスにも徐々に対応し、後半は一発で裏に出られるようなシーンはほとんど見られなくなっていた。細かいパス回しに対して、より近い位置で止めるディフェンスが徹底されていたのだ。
オーストラリアに傾いた流れをダン・カーターが救う。連覇を決めるドロップゴール
後半13分。オーストラリアがモールを押し込んでトライを奪うのだが、あれはすごいとしか言いようがないトライだった。
得点は21-3。このまま試合の大勢が決まりそうな局面。オーストラリアは絶対にとらなくてはならないトライを、絶対にとらなくてはならない場面でとったのだ。技術云々はもちろんだが、試合の流れを力技で自分たちの方に引き戻したトライ。それをあの局面で奪える精神力である。
そして後半23分。オーストラリアが右サイドに走り込んでトライを奪い、4点差まで詰め寄るのだが、あそこはこの試合のハイライトの一つと言っても過言ではない。あのジリジリした攻防の中で、本当によくとったトライだったと思う。
ニュージーランドとしては、あそこはいったんタッチキックでプレーを切りたい場面だった。シンビンの選手が復帰するタイミングだったし、15人対15人の状況を作って体勢を立て直したかった。
だが、オーストラリアの猛攻に相当なプレッシャーを感じていたのだろう。冷静にタッチキックを選択するほどの精神的な余裕がなかったのだと思われる。
流れは完全にオーストラリア。
オールブラックスはボールを持っても横に流れるだけ。ワラビーズの気迫に圧倒され、苦し紛れのキックでプレーを止めるしか策がない状態である。
まさしく大ピンチ。
これはオーストラリアが押し切るぞ。
そう思っていた矢先だった。
ダン・カーターがすべてを救った。
69分のドロップゴールである。
いや、あれはマジですごかった。
あれで連覇を決めた。そう断言できるほどのビッグプレーだった。
誰かが言っていたが、あのドロップゴールはラグビーのワールドカップ史に残るプレーになる。それくらいすごい一本だったと思う。
観ていた方はわかったと思うが、あのドロップゴールを境にオーストラリアは一気に浮き足立った。
ボールをもらう位置が近すぎるためにスピードにのれずに思ったように前進できない。ボールが手につかず、うまくパスをつなげない。
そして最後はノックオンからインターセプト、トライを奪われてジ・エンドである。
解説者が言うには「ニュージーランドのディフェンスがよかった」とのことだが、あれはどう見てもオーストラリアの焦り以外の何物でもない。
ゴールも決まって得点34-17。
ノーサイドのホイッスルが鳴り響いて試合終了。
ニュージーランドの連覇達成である。
残り5分。1トライ1ゴールでは追いつけない点差。
リードされている側の必死のオフェンス。焦りと気合いが入り混じったパス回し。僕は今まで、この攻撃がうまくいったのを見たことがない。あんな大慌てのプレーで、気合十分の相手ディフェンスを突き破れるわけがないのだ。
時間がなくて焦る気持ちは痛いほどわかる。だがそういう局面でこそ、じっくり攻めた方が可能性があるのではないだろうか。
とはいえ、もう一本とらなくては勝てない状況で「じっくりいけ」とも言いづらいのも確かである。
この時間帯、この状況での最適解というのが果たしてラグビーに存在するのだろうか。どなたか詳しい方がいれば教えてもらいたい。
とはいえ、最高峰の技術とバランス。それを支える精神力。すばらしい2チームが死力を尽くしたすばらしい決勝戦だった。
そして、ラグビーというスポーツに対する疑問がさらに深くなった大会でもあった。
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ワラビーズお疲れ。
そしてオールブラックス優勝おめでとうである。
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