オールタイム・ベストの幕引き。元PFPロイ・ジョーンズ引退。スコット・シグモンに3-0の判定で有終の美を飾る【結果・感想】

オールタイム・ベストの幕引き。元PFPロイ・ジョーンズ引退。スコット・シグモンに3-0の判定で有終の美を飾る【結果・感想】

スーパーマンイメージ
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2018年2月8日(日本時間9日)、米・フロリダ州で行われたWBUクルーザー級王座決定10回戦。元4階級王者ロイ・ジョーンズJr.とスコット・シグモンが対戦し、3-0(98-92、98-92、98-92)の判定で勝利。王座を獲得とともに、試合前に宣言した通りこの試合を最後に現役生活にピリオドを打った。
 
 
開始直後から前に出てパンチを打ち込むシグモンに対し、ジョーンズは持ち前のハンドスピードで対抗。
ロープ際でダメージを逃がしながら、ガードの間からカウンターをヒットしていく。
 
また、時おり全盛期を思わせるパワフルな連打でシグモンの出足を止め、19歳年下の相手に反撃を許さない。
 
そして、そのまま試合はジョーンズのワンサイドゲームで終了。
数々の伝説を作った名王者が見事に有終の美を飾った。
 
「伝説のロイ・ジョーンズvsバーナード・ホプキンス感想。初めてちゃんと観たけどクソつまんねえなこの試合w」
 

ロイ・ジョーンズが勝利し、引退しました。僕の中でのオールタイム・ベストがリングを去ります

ロイ・ジョーンズ勝利!!
そして引退!!

 
 
最強王者ロイ・ジョーンズが引退した。
 
ロイ・ジョーンズと言えば、持ち前の身体能力と天性の防御勘で強敵を圧倒し、2003年にはヘビー級王座にまでついた名王者。
また一時期バスケットの独立リーグにも所属しており、昼間にバスケの試合、夜にボクシングのタイトルマッチという凄まじいダブルヘッダーをこなしたという伝説もある。
 
そして、僕の中でのオールタイム・ベストは間違いなくこの選手。
ここ最近、その座がロマチェンコに取って代わられつつあるが、衝撃度の大きさではダントツでロイ・ジョーンズに軍配が上がる。
 
まあ、僕が過去を美化している部分もあると思うが、とにかく全盛期のロイ・ジョーンズの凄さは筆舌に尽くしがたい。
 
マイク・タイソンやモハメド・アリ、マニー・パッキャオ。日本人選手でいえば辰吉丈一郎や長谷川穂積など。
それぞれアイドル的な選手はいると思うが、僕にとってのロイ・ジョーンズがまさにそれにあたる。
 

最近の試合を観てなかったんですよね。でも、最後だから観ないとと思いました

正直に申し上げると、僕はここ数年ロイ・ジョーンズの試合をほとんど観ていない。
理由は明白で、全盛期とのギャップがあまりに大き過ぎて耐えられないから。
 
身体はたるみ、足は動かない。
閃光のような連打は見る影もなく、身のこなしも鈍重。
 
あれだけ華麗だったロイが、こんな状態になっているのを観るのが単純にキツかった。
 
ただ、そのロイ・ジョーンズもついに引退ということで、さすがに最後くらいは観ておこうと思ったのがこの試合。どれだけ酷くても、僕のアイドルのラストマッチを見届けようと決めていた。
 

あれ? 普通にいい試合だったじゃねえか。老獪なテクニシャンのロイ・ジョーンズがスコット・シグモンを圧倒

とまあ、そんな感じで珍しく感傷的なテンションで観戦したのだが、何のこっちゃない。普通にいい試合だった
 
もちろん、申し上げたように動き自体は全盛期と比べれば見る影もない。
全体的にスローモーで、なおかつクルーザー級としては明らかにフィジカル不足。
キレッキレだった全盛期と比較して1/4程度の力しか残っていないのでは? と思うくらい。
 
ガードを上げて間合いを詰めるシグモンに対し、ハンドスピードを活かした連打をヒット。
それほど力を込めず、命中率を優先した軽いパンチである。
 
どんどん前に出るシグモンを懐に誘い込み、ロープの反動を使ってダメージを逃す。
脇を締めてシグモンの頭を押さえ込み、身体を左右に振りながら芯をずらす。
さらに肩でシグモンを押し込んでスペースを作り、至近距離でカウンター気味に連打をヒット。
 
脇を締めて相手の動きを抑え、身体の中心を守る。
左右ボディはある程度食ってもOKで、オーバーハンドのフックはロープの反動や横への動きで直撃を避ける。
ジョーンズが得意とするロープ際のディフェンスである。
 
そして、この試合でやっていたのはほぼこれだけ。
 
パンチは軽くキレもないため、ダメージを与えるほどではない。
また、ロープ際でのオーバーハンドも再三危ないタイミングで顔面をかすめる。
 
時おりリング中央でパワフルな連打を見せるのだが、それがちっとも続かない。
恐らくだが、今のロイ・ジョーンズが全力で動けるのは最大でも5秒程度ではないか。
 
何度も言うが、動きは全盛期からはほど遠い。
 

これだけ衰えた中でも自分にできることを忠実にやり通す。さすがは天才ロイ・ジョーンズ

だが、それでも残された力と経験で相手を翻弄してしまう老獪さ。
それを最後まで忠実にやり続けるメンタル。
 
これだけ衰えた状態でも、スコット・シグモン程度なら問題なく勝ててしまう。
49歳になった今も、マイナータイトルや地域王座に手が届くくらいの力はある。
これは普通に考えてとんでもない。
 
最強PFPロイ・ジョーンズのベストバウト。悶絶ボディKOのヴァージル・ヒル戦は候補の一つ。衰えてから14年も現役にしがみついた姿も人間味があっていい
 
シェーン・モズリーやバーナード・ホプキンスもそうだが、彼らの経験値の膨大さは文句なしに凄まじい。
そして、その貯金残高が大きければ大きいほど、それを切り崩しながらそこそこのレベルをキープできてしまうのだと思う。
 
ロイ・ジョーンズに関しては、まさに「貯金だけ」
今回の試合でも、これまでの経験値のみでやっていることがありありとわかる。
 
しかも、それがいい方向に作用しているのがいい。
 
「今の自分にできるのはこれだけ」
「この部分で勝負して、それが通用しなかったらあとは知らん」
 
いい意味での開き直りというか、かつての「スマートに勝ってやろう」「全局面で圧倒してやろう」というプライドを捨てたことが功を奏しているというか。
もしかしたら、失ったものを取り戻そうと迷走していた2000年代後半よりもいいのでは? と感じるほどに。
 
スポーツ選手はだいたい20代後半〜30代半ばで全盛期を過ぎ、身体の衰えを感じることが多い。
そして、全盛期のイメージと身体の衰えが合致せず、悩んだ末に引退していく。
 
だが、その衰えを受け入れ、新たに生き残る術を見つけた選手がそこから数年間現役を続けることができるという。
 
ロイ・ジョーンズについては全盛期は2004年まで。
そこから2009年頃まで迷走を続け、だいたい2010年以降に自分の第二のスタイルにたどり着いた感じである。
 
てか、すげえなww
2004年から2009年の5年間、心が折れずに持ちこたえ、さらに自分のスタイルにたどり着いてから8年間も現役にしがみついた。
こんなもん、完全に化け物でしょww
 

ロイ・ジョーンズは僕の中でのオールタイム・ベストであるとともに、強い思い入れのある数少ない選手。マジでお疲れさまでした

前から申し上げているように、僕は普段スポーツ選手やスポーツチームにあまり思い入れを抱く方ではない。
応援している選手はいるが、基本的には勝っても負けても他人事。誰かの勝敗によって次の日の目覚めが悪くなるなどあり得ない。
 
だがその中でも例外はいて、このロイ・ジョーンズは僕がのめり込んだ数少ない選手の1人である。
 
というより、ここまで純粋に「カッチョいい!!」と思った選手は初めてだった。
 
わかりやすく「強さ」というものを見せつけたのがマイク・タイソン。
アイドル像をそのまま体現したのがオスカー・デラホーヤ。
貧困からの成り上がりの爽快感をもたらしてくれたマニー・パッキャオ。
「嫌いだけど強い」「勝ちゃいいんだろ?」という絵に描いたようなヒールのフロイド・メイウェザー。
魂が震えるような闘いで、勝敗を超えた存在となった辰吉丈一郎。
 
そして、そのすべてを凌駕したのがロイ・ジョーンズの「カッチョよさ」
 
「オスカー・デラホーヤvsアイク・クォーティ。観ないと人生損する名試合。スーパースターのベストバウト」
 
太々しい態度に相手を食ったような動き、スマートな所作。
多彩なフェイントから、すべてを見透かしたような1発。
 
エンターテイメントとファイティングスピリッツの融合というか、「やっぱりプロはカッチョよく魅せてナンボだろ」と僕に思わせてくれた原点というヤツ。
 
そして、ピークアウトしてから引退までの14年間。
もはや余生などという生易しいものではない。
 
滞納した税金のため?
知らん。
 
かつてスーパーマンと呼ばれた男が、なぜこんな状態になるまで?
知らん。
 
天才はスマートに去るものじゃないの?
知らん。
 
「晩節を汚している」
「パンチドランカーになる前にやめた方がいい」
誰に何を言われようが関係ない。
健康な身体と戦う意思があれば、あとは膨大な経験値で何とかなる。
 
人間離れしたド派手なエンターテイナーもロイ・ジョーンズ。
身体が緩んで衰えまくった今の姿もロイ・ジョーンズ。
 
強いて言うなら「ロイ・ジョーンズがロイ・ジョーンズのまま引退したぞ」。
そんな感じ。
 
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