映画「ラブ・アクチュアリー」感想。走って伝えるクリスマスイブ。「好き」と言うためにダッシュする人たちの群像劇
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映画「ラブ・アクチュアリー」を観た。
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「ラブ・アクチュアリー」(2003年)
独身の若き首相デイヴィッドは就任初日に首相公邸のスタッフのナタリーに一目ぼれ。彼女が部屋に入ってくるたびに気になり仕事が手につかない。だが、自分の立場や周りの目を気にして自らを律している。
妻を亡くしたばかりのダニエルはいまだ悲しみから立ち直れず、連れ子であるサムの悩みにまで気が回らない。時おり息子が部屋で涙を流していることにも気づいていたが、本音で息子と向き合う勇気を持てずにいた。
小説家のジェイミーはある日、ガールフレンドと自分の弟との浮気現場を目撃してしまう。
大きなショックを受けたジェイミーは急きょ、フランスのコテージに詰めて執筆活動をすることに。大家から家事手伝いとしてオーレリアを紹介されるのだが、ポルトガル語ができないジェイミーは彼女とまともなコミュニケーションがとれず、2人の間に気まずい時間が流れてしまう。
ピーターと結婚式を挙げたジュリエットは、ピーターの親友であるマークが自分に心を開いてくれないことをずっと気にしていた。そこで彼女は新婚旅行から戻るとマークを訪ね、結婚式のビデオを見せてほしいと迫る。
ところがマークの態度は相変わらずそっけない。
その様子を見たジュリエットは、マークがピーターのことを好きなのだと思い込み、悩みを打ち明けてほしいと迫るのだった。
ふとテレビを観ると、そこには落ちぶれたロック歌手ビリー・マックの姿が。
彼は往年のヒット曲を歌詞を変えてリリースし、クリスマスに合わせての再起を狙っている。
ところが肝心のビリーは「もしランキング1位を獲得したら全裸で踊ってやる」と豪語するなど、困り果てるスタッフを横目にやりたい放題。
長年ビリーと仕事をしてきたマネージャーのジョーは、彼の傍若無人な振る舞いに思わず頭を抱えてしまう。
クリスマスまで残り5週間。
男も女も大人も子どもも関係なく、「愛は実はどこにでもある」。
「好き」を伝えるために奮闘する男女が織りなす9つの小さな物語。
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クリスマスまでの5週間。9つの物語からなる群像劇。「ニューイヤーズ・イブ」と同じノリで観てみた
クリスマスまでの5週間を題材とした、9つの物語からなる群像劇。
以前、2011年公開の「ニューイヤーズ・イブ」がよかったことをお伝えしたが、基本的にはそれと同じノリで。
「映画「ニューイヤーズ・イブ」感想。自分の心に素直になれば、ほんの少しの奇跡が起きる」
なお、実を言うと「ニューイヤーズ・イブ」の前に製作された2010年公開の「バレンタインデー」も観たのだが、こちらは残念ながらいまいち刺さらず。「ニューイヤーズ・イブ」があまりにもよかったので過度な期待をかけていたのもあると思うが、僕にとってはそこまでの衝撃はなかった。
で、その流れでたまたま見つけたのが今回の「ラブ・アクチュアリー」。
というか、よく見たら2003年公開の映画で、「ニューイヤーズ・イブ」や「バレンタインデー」よりもずっと古いんですね。
確かにヒュー・グラントやエマ・トンプソンがゴリゴリの現役だし、アラン・リックマンは2016年に亡くなってるし。結婚式の録画はガッツリVHSだし、いろいろと時代を感じる部分は多かったりもする。
全員がハッピーエンドを迎えるわけじゃないのね。喜びの数だけ悲しみもある
率直な感想としては「めちゃくちゃよかった」。
まず僕はこの映画をキャスト全員が笑顔で終わるものだと思っていた。
どうしても「ニューイヤーズ・イブ」と比較してしまうのだが、あの映画はすべての登場人物がハッピーエンドンに向かって歩みを進めていく。
あれこれと予想外のことも起きたりもするが、最後はみんなが幸せになる。ほんの少しの奇跡が積み重なり、驚きとともに新年のカウントダウンを迎える流れ。この安心感こそが最大の見どころだった(と思う)。
だが、今作「ラブ・アクチュアリー」はそうではない。
ハッピーな結末を迎える人も入れば、そうでない人もいる。
どうにもならない相手に恋心を抱いてしまったり、少しのすれ違いで心が離れてしまったり。
また、中には結末がはっきりと描かれず、視聴者の判断にゆだねられるエピソードもある。
クリスマスの奇跡は誰にでも起きるわけじゃないし、喜びの数だけ悲しみもある。
ヒュー・グラント「love actually is all around(愛は実はどこにでもある)」。
でも、すべてがハッピーなわけじゃない。
だいたいこんな感じで、勝手に解釈している次第である。
結ばれない男女の存在がフィナーレを際立たせる。人は「好き」を伝えるためになりふり構わず突っ走れる
申し上げたように、僕としては 「ニューイヤーズ・イブ」のようにハッピーエンドに向かって全員がひた走る内容を期待していたのだが、ちょっと違った。
とは言え、恐らくこの映画でそれをやるとチープなものになってしまう。
秘書のミアに誘惑されて心が揺れたハリーがカレンとの夫婦仲をすんなり修復するのはあまりに現実感がないし、ローワン・アトキンソン演じる宝飾店員ルーファスの存在感も薄れてしまう。
仮にジュリエットがマークになびいていたら、玄関先でスケッチブックで告白するシーンが映画史に残る名シーンとなることはなかったはず。
いやまあ……。
確かにストーカーだけどさww
『ラブ・アクチュアリー』A・リンカーン演じたマークは「ストーカー」 本人が認める #映画 #ラブ・アクチュアリー https://t.co/Oz2DxDzNlg pic.twitter.com/O4jGc9GdY9
— クランクイン! (@crank_in_net) February 12, 2016
そして、結ばれない彼らの存在があったからこそハッピーエンドが際立つ。デイヴィッドとナタリー、サムとジョアンナたちの笑顔が視聴者に鮮烈な印象を残すのである。
ジョアンナが歌う「恋人たちのクリスマス」(マライア・キャリー)が切ない心に沁みわたり、デイヴィッドとナタリーのキスシーンでとどめを刺される。
ラストのジェイミーがオーレリアに結婚を申し込むシーンもそう。結果がわかりきっているのにドキドキさせられ、最高のフィナーレに涙と笑顔が止まらないww
「「ファイティング・ファミリー」感想。クソ名作出ました。ロック様「プロレスは脚色された世界だ。だが、観客は嘘を見抜く」」
それもこれも、“結ばれない人たちのエピソード”があったおかげ。悲しい結末との対比がストーリーに深みを生み出し、感動をより大きなものにする。全員が笑顔で盛り上がった「ニューイヤーズ・イブ」とは一味違う、ちょっとオサレな群像劇というヤツ。
人は「好き」を伝えるために目いっぱい走れる。
立場や時間、場所……。
なりふり構わず突き進んだ結果、クリスマスイブにあっと驚く奇跡に出会える。
国民性の違いもあるのかもしれないが、僕的にはどちらもアリだなと。
登場人物がちょっと多過ぎたかな。もう少しエピソードを絞ってそれぞれを掘り下げればもっとよかった
あえてイマイチな点を挙げるとすれば、登場人物が若干多過ぎたところか。
「ニューイヤーズ・イブ」の主要キャストが13人だったのに対し「ラブ・アクチュアリー」は19人。エピソードは同じ9つなのだが、初見で人間関係を把握しきるのはほぼ不可能と言える。
また今作はクリスマスまでの5週間を描いているため、必然的に各エピソードのボリュームが嵩張る。大みそかの1日のみを追った「ニューイヤーズ・イブ」は比較的サラッと結末にたどりついたが、さすがに5週間もあればそうはいかない。
ナタリーへの恋心に悩むデイヴィッドの件は回りくどくてイライラするし、ジョンとジュディが出会ってから結ばれる流れはもっと勢いがあっていい。
さらに言うと、コリンのエピソードは完全にいらなかった。
モテるためにアメリカに渡って、その一軒目のバーでいきなり3人の美女とウハウハって……。
さすがにこれはオチがあるんだろ? と思っていたら、サクセスのまま終わるというまさかの結末。おこぼれにあずかるトニーといい、尺を稼ぐために付け足した感が尋常じゃない。
アレをやるなら、ジェイミーとオーレリアの日常やダニエルとサムの絆をもっと掘り下げてほしかったなと。せっかくの大事な感動パートなのだから、より深く切り込んでもよかった気がする。
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あとはアレだ。
マックとジョーのラストはあっさりし過ぎ。
あれこれとやりたい放題のマックが最後の最後にジョーとの友情を思い出して戻ってくるわけだが、いや別に……。
そもそもあの2人は仲違いをしていたわけじゃないし、端々にお互いの信頼関係も感じられた。
「普段はド派手で豪快だが、素顔のマックは素朴で義理堅い」というのを表現したかったのだと思うが、正直そのまんま過ぎてピンとこない。個人的にはもうひと捻りあってもよかった。
などなど。
いくつか不満な点はありつつ、概ね満足度の高い「ラブ・アクチュアリー」。
頭をからっぽにして楽しむには最適な1本である。
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