江藤光喜vsクアドラス予想!! 無敗王者のカルロス・クアドラスに挑戦する長身の江藤光喜。人生を賭けて挑む一戦を予想する!!
2015年11月28日、WBC世界S・フライ級タイトルマッチが宮城・ゼビオアリーナ仙台で行われる。
5度目の防衛を狙うチャンピオンのカルロス・クアドラスに同級2位の江藤光喜が挑戦する一戦である。
33勝無敗26KOのメキシカンに、長身の江藤がどのような作戦で挑むかに注目が集まる。
勝敗予想は5、6RでクアドラスのKO勝ち
恥ずかしながら、僕はこの江藤光喜というボクサーの試合を今まで一度も見たことがなかった。
さらに本音を言ってしまうと、試合の組み合わせを聞いたときもあまり興味がそそられなかった。
江藤のことを知らなかったというのもあるが、もともとクアドラスにいまいち魅力を感じていなかったのが一番の理由である。
だが今回、やたらとWOWOWがこの試合をゴリ押ししてくるので、どんなものかと思って見てみた次第である。
「“カネロ”・アルバレス、コットに大差判定勝ち!! 最高峰の技術戦に完勝し、王座獲得!!」
結論から申し上げると、江藤がクアドラスに勝つのは相当厳しいのではないかと思う。
かなりの確率でクアドラスが防衛に成功する。それも圧勝で。そんな気がするのだ。
と、思っていろいろと情報を仕入れてみると、多くの方が江藤光喜が勝つのは難しいと予想しているようである。やはり誰が見てもそう思うだろうなという感じである。
「木村悠vsペドロ・ゲバラ予想!! 商社マンボクサーが弁護士チャンピオンに挑む!!」
まず両者のスピードが違い過ぎる。
江藤光喜は、果たしてクアドラスの激しい出入りとパンチスピードについていけるのか。あの動きでクアドラスのスピーディな攻撃を防ぎきることができるのか。そして、自分のリーチを活かせる距離で打ち合うことができるのか。得意のボディフックはクアドラスに当たるのだろうか。
そもそも、あのガバガバのガードでクアドラスの猛攻に耐えることができるのか。
「木村悠が1ヶ月休職の覚悟で挑んだ世界戦で逆転勝利!! ゲバラに判定勝ちで世界王座奪取!!」
正直なところ、僕は無理ではないかと思っている。
特に試合序盤、クアドラスのスピードに慣れないうちに懐に入られるようなことがあれば、ペースを一気に持っていかれてしまう恐れがある。押し込まれてフックを浴び、そのままKOまで持っていかれる危険性すらあるように思える。
左フックを外されたところに右のカウンターをもらい、身体がよろけた瞬間を狙われてクアドラスのラッシュ。ロープ際に追い込まれて左右フックの連打を受けて尻餅をつく。
そんな展開を予想するのだが、いかがだろうか。
試合の予想は難しいが、今回は5、6RでクアドラスのKO勝ちでいきたいと思う。
相打ち覚悟のカウンターで起死回生を狙え!!
ただ「無理だ」「勝てない」と言っているだけではつまらないので、江藤がクアドラスに勝つ方法を好き勝手に考えてみようと思う。
江藤光喜が試合を有利に進めるにはいったいどうすればいいか。勝ち目の薄い相手にどのような作戦で挑めば勝利への扉をこじ開けることができるだろうか。
「三浦vsバルガス壮絶決着!! 最強挑戦者フランシスコ・バルガスに三浦隆司がTKOで敗れて王座陥落!!」
僕は相打ち覚悟の右のカウンターを狙うのがいいのではないかと思う。
クアドラスは確かにスピードとパンチの回転があるボクサーだ。しかもここ数試合は慎重な試合運びも身につけて、ますますボクサーとしての円熟味を増してきている。自分でも調子のよさを実感しているのだろう。自信に満ち溢れた太陽のようなボクシングを見せているのだ。
だが、クアドラスは先日のビクトル・ポストルのように相手が出てくる瞬間を狙うような天性のタイミングを持っているわけではない。特筆すべきフットワークがあるわけでもない。
クアドラスの持ち味はあくまで勢いと手数、そして激しい出入りである。
相手と同じタイミングで前に出てパンチを交換し、回転力と勢いで相手を上回るのだ。
ここ最近は相手の打ち終わりに連打を集めるコンビネーションも見せてはいるが、それでもスピードのある相手には相打ちでの被弾を許すシーンも目立つ。
身体を振りながら踏み込んでの左、間髪入れず飛んでくる右。これをいかに防ぎ、いかにして右のカウンターにつなげるかが江藤が勝利するカギになるのではないだろうか。
だが江藤のガードとクアドラスの踏み込みのスピードを考えると、江藤がクアドラスの攻撃を被弾なしで防ぎきるのは難しい。
そこで相打ち覚悟の右のカウンターである。
クアドラスが飛び込んできた瞬間頭を下げて身体を沈め、オーバーハンドの右で迎撃するのである。クアドラスの大振りの左フックに右を被せるのだ。
先に当たるのは恐らくクアドラスのパンチ。そのパンチに耐えて、クアドラスのガードの外側から右のオーバーハンドを叩き込むのである。
耐えて耐えて、勝負の一瞬がきた瞬間にすべてを賭ける
江藤がクアドラスに勝つには一発逆転の右カウンター。
このパンチにつなげるために、江藤は試合中盤まではなるべく右フックの軌道を見せずに戦いたい。ストレート系のパンチを中心で戦い、クアドラスの猛攻に耐えるのである。
恐らく江藤に巡ってくるチャンスは多くない。多くて2、3回。わずかに1回という可能性すら考えられる。
だが、チャンスは必ずある。試合中盤以降、どこかで必ずチャンスはくる。
江藤はその一瞬がくるまで、とにかくクアドラスのタイミングを覚えることに全神経を使うのだ。クアドラスの攻撃を防ぎながら、じっくりとチャンスを待つのである。
そしてクアドラスがKO狙いにくるだろう6〜8R。この瞬間を狙って全力の右を叩き付けるのだ。
「エイドリアン・ブローナー完勝!! アーラフベルディエフをスピードとテクニックで圧倒して12回TKO勝ち!!」
先ほども言ったように、江藤のガードとフットワークではクアドラスの鋭い踏み込みからのラッシュを避けきることは難しい。一方的に打たれっぱなしになるわけにはいかないので、当然打ち合わなくてはならない局面もくるだろう。
といっても、できることなら江藤から前に出るのは避けた方がいい。
クアドラスがアウトボクシングをするのか距離を詰めて打ち合いを挑んでくるかはわからないが、恐らく江藤のスピードではクアドラスの激しい出入りを捕まえることはできない。打ち終わりを狙われて一気にパンチを集められる可能性が高い。
クアドラスを下がらせるだけの圧力をかけられればいいのだが、残念ながらそこまでのパワーもないように思える。
ひとたび回転の速い左右フックに巻き込まれてしまうと、そのまま手が出せずに防戦一方の展開に持ち込まれる可能性が高い。
しかもクアドラスはスタミナも抜群だ。防戦一方のまま打ち疲れを待つわけにもいかない。
ガードを固めて1、2発目を防ぎ、身体を密着させたり覆いかぶさるようなクリンチを駆使しながらクアドラスの動きを封じるのだ。打ち終わりのラッシュに注意しながら、のらりくらりといなし続けるのである。
左ボディから右にステップしてからの右フック。得意のコンビネーションを出すタイミングがあればいいが、あのパンチを出すと高確率で顔面に被弾する恐れがある。追撃の左をカウンターでもらって尻餅ダウン。そんな展開が待っているのではないだろうか。
やはり消極的でも何でもいいので、江藤は守りを固めて粘るべきだろう。
もちろんそんな試合運びをしていれば、ポイントはフルマークに近い状態で奪われることになる。つまり、江藤が勝つにはクアドラスをKOするしかないのだ。
防戦一方ではダメだが、クアドラスの突進を止めるのにパワーを使い過ぎるのもNGだ。たとえ江藤が全力のラッシュを仕掛けても、そのままクアドラスを押しきるのは困難だろう。恐らくダッキングとガード、フットワークを使われておしまいである。ポイントと引き換えに、貴重な体力をすべて失って終わり。待っているのはそんな展開だ。
前に出てクアドラスの攻撃を受け止めなくてはならない局面は必ずくる。だが、そこで出し切ってはいけない。耐えて耐えて、勝負の一瞬を待つのである。
繰り返しになるが、チャンスは必ずくる。そして、絶好のタイミングで右カウンターがヒットすればクアドラスの動きは必ず止まる。そのチャンスを逃さないために、序盤は耐えて体力を温存しておくのだ。
格好悪かろうが、ブーイングを浴びようが、どうにか試合中盤6〜8Rまで耐えてクアドラスのタイミングを覚える。
そしてクアドラスのタイミングを完全にインプットしたところで、フィニッシュに持ってくるであろう大振りの左フックに右のオーバーハンドを被せるのである。
得意の左ボディをフェイントにしてもいい。あのパンチを出せば、恐らくクアドラスは左のフックを合わせてくる。その瞬間にダッキングして、クアドラスの顔面が空いたところで右のオーバーハンドを叩き込んでやるのだ。
江藤にはがんばってほしいが、奇跡待ちのような作戦しか思いつかない……
う〜ん。どうなんだろうか。
こんな分の悪いギャンブルでしか勝てる方法がないのだろうか。
ただ、普通にやっても勝てる可能性はほとんどないように思える。
距離をとってリーチ差を活かす作戦も恐らく通じない。クアドラスにフットワークを使われて終わりだろう。
やはり、ある程度のリスクを覚悟で賭けに出るしかないか。
厳しいな……。
何とかがんばってもらいたいが。