赤穂亮王座獲得失敗、プンルアンに2回KO負け。タイでの日本人世界戦19連敗に
赤穂亮vsプンルアン・ソーシンユー。日本の赤穂、衝撃の2回KO負けで王座獲得ならず。
2015年8月7日、WBO世界バンタム級王座決定戦がタイのラチャブリで行われた。同級1位の赤穂亮と2位のプンルアン・ソーシンユーが対戦、赤穂が2回1分8秒でKO負けし、王座獲得に失敗した。
「ボクシング岩佐亮佑、敵地でハスキンスに6R TKO負け!!」
これで日本人ボクサーのタイでの世界戦の戦績は19連敗となり、またしても鬼門を突破することはできなかった。
赤穂亮(29戦26勝18KO1敗2分け)
vs
プンルアン・ソーシンユー(53戦50勝34KO3敗)
赤穂を研究してきていたプンルアン。工夫がなかった赤穂
1R。
グローブを合わせてリング中央で対峙する両者。
ガードを高く構えるプンルアンに対し、やや前傾姿勢でガードを下げて構える赤穂。
いきなりプンルアンのジャブが2発、赤穂の顔面を捉える。まっすぐ伸びるジャブだ。被弾しながら左を返す赤穂。しかし軽くかわされる。
赤穂がノーモーションでコンパクトな右を出す。これがプンルアンの顔面を軽く捉える。やや体勢を崩すプンルアンだが、ダメージはなさそうである。
赤穂が手を出しながら前進。プンルアンに身体を預けて押し込む。プンルアンが密着状態から体勢を半身に入れ替えて右を振るう。これが赤穂の側頭部の後ろに当たってしまう。頭を押さえてレフェリーにアピールする赤穂。
いやいや、そんなことをやってる場合じゃない。打ち続けないと。
赤穂が踏み込んで大きな右を振る。それに合わせてプンルアンが前に出る。距離を潰して赤穂のパンチの芯をずらす。そして再び密着してのもみ合い。レフェリーが2人を分ける。
プンルアンがジャブを出す。赤穂の顔面が弾ける。赤穂もパンチを返すが当たらない。
今度は先に赤穂が手を出す。同時にプンルアンも前に出て右。カウンターで赤穂の顔が跳ね上がる。客席が盛り上がる!!
赤穂が遠い距離から右ストレート、左ボディへとつなげるが、やはり当たらない。さらにワンツーを続けるが、わずかにプンルアンを下がらせただけでダメージを負わせることはできない。
逆に近距離での右をもらってしまう。客席がさらに盛り上がる。悲鳴のような歓声も聞こえる。
赤穂が手を出すと同時に、プンルアンは必ず一歩前に出て距離を潰す。
これをやられると、腕を思い切り振り回したい赤穂は厳しい。今のところ、身体を密着させてロープに押し込むくらいしか抵抗する術がない。
レフェリーが2人を分け、再びリング中央で対峙する両者。
プンルアンが赤穂の左をパーリング、そこから左、右のストレートへとつなげる。ところが、これがまたしても赤穂の側頭部に当たってしまう。頭の後ろを押さえて飛び退る赤穂。反則打のアピール。だから!! そんなことをしてる場合じゃないんだよ。
案の定、プンルアンが追い足を強める。左のフックが赤穂の顔面を捉える。大歓声の会場。ほら見ろ、言わんこっちゃない。
「亀田和毅日本復帰!! また亀田の試合が観られるぞ。協栄ジム所属でライセンス申請」
リング中央で構える赤穂。
考えなしに飛び込んでも距離を潰されるだけ。さらにそこからカウンターを狙われているることに気づいたか、早くも手が出なくなる。
左へステップしてのアッパー。しかし、これも当たらない。再び密着。そう、赤穂にはここで出せるパンチがないのだ。そして相手もそのことに気づいている。これが厳しい。本当に厳しい。
もみ合いからプンルアンの右がまたしても赤穂の後頭部へ。頭を抑えてレフェリーにアピールする赤穂。違う違う。そんなことより打ち返さないと状況が変わらないんだよ。
レフェリーに分けられ、リング中央に戻る2人。
間髪入れずに赤穂が左のダブルで飛び込む。しかし当たり前のようにプンルアンが一歩前に出て距離を潰す。そして密着。もみ合いからプンルアンの右が赤穂の後頭部へ。反則打アピールの赤穂。もはや様式美だ。
が、そこからプンルアンが左腕を赤穂の首に巻き付けて腰を回転させる。赤穂がもんどりうってリングに転がる。払い腰一本!!
いやいや、これはいけない。さすがにやり過ぎだ。
憮然とした表情で立ち上がる赤穂。だがレフェリーは注意もなし。さすが敵地である。
ここでゴング。1R終了。
プンルアンはラフなところも見受けられるが、よく赤穂を研究してきたようだ。逆に赤穂にはあまり工夫が見られない。ただ腕を振り回しながら飛び込むだけ。完全にプンルアンの術中にハマっている。このままだと厳しそうだ。
赤穂KO負け。完敗中の完敗としか言いようがない
2R。
開始早々、プンルアンが左を大きく振り回して前に出る。
赤穂にロープを背負わせての右のフック!! これが赤穂を捉える!!
動きが止まる赤穂。ガードを上げて後退する。コーナーに追いつめられた状態から右フックを出すが、スウェーでかわされる。逆にプンルアンの放った右ストレートが再び赤穂を捉える!!
効いた!! 効いた!!
ガードを上げたまま身体を預けるように前に出る赤穂。振り払うように腕を振り回すプンルアン。
レフェリーが2人を分ける。顔を紅潮させ、苦しそうな表情の赤穂。
「亀田和毅は日本ランカーと試合しなさい。協栄ジムで練習しなさい。いやいや、なぜそんなことが言えるの?」
赤穂の左ボディ2発。1発目がプンルアンを捉える。すぐにプンルアンが身体を寄せる。
全体重を預けるようにプンルアンをロープに押し込む赤穂。強引に振りほどくプンルアン。赤穂は密着していられない。身体に力が入らない。
ロープを背にしたまま左のショートアッパーをトリプルで放つプンルアン。赤穂の顔が揺れる。
プンルアンが身体を入れ替える。2人の間に少し距離ができたところでプンルアンの大きな左フック!! これが赤穂の側頭部を捉える!!
赤穂がたたらを踏んでコーナーポストに頭をめりこませるようによろける。そこにプンルアンの返しの右のダブル!!
首が折れるように被弾する赤穂。地面に這うように倒れ込む。
マットに頭をつけて土下座スタイルのまま動けない。
レフェリーが腕を交差する。
試合終了!!
2回1分8秒、プンルアンのKO勝利!!
前回の世界挑戦から成長の見られなかった赤穂に次はあるのか?
完敗だった。完全なる敗戦だった。
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強烈なパンチ力と思い切りのいいボクシングが人気の赤穂だが、僕は元々このボクサーをあまり評価していなかった。
直線的に飛び込んで大きなフックとストレートを振り回して離れるだけのスタイル。自身のポテンシャルに頼りきった猪突猛進型のボクシング。2013年の佐藤洋太戦でこのスタイルを完全に封じられて敗戦を喫したのだが、そこからの成長があまり感じられないのだ。長身の佐藤に何もできずに負けた試合の課題をいまだに克服できていないのである。
赤穂の持ち味は出入りのスピード、両腕を振り回す思い切りのよさにあるのだが、逆に言うとそれだけ。他に何の特徴もないボクサーといっても過言ではない。壊滅的にボクシングの幅が狭いのである。
自分よりも個体能力が劣る相手なら圧倒することができるが、自分と同等のスピードや自分以上のテクニックがある相手だと、途端に何もできなくなる。ポテンシャルで相手を上回れないと、あっという間に射程距離の短い塩ボクサーに成り下がるのだ。
顎を突き出した構え、ガードの低さ。
飛び込み際に左ジャブをもらう。
自分のジャブはバックステップでかわされる。
ガードの戻りが遅く、頭の位置を変えないから打ち終わりを打たれる。
喧嘩ボクシングとはよく言ったものだと、本当にそう思う。
このスタイルを貫くのであれば、井上尚弥やドネア並みの勝負の嗅覚や威圧感が欲しいのだが、当然赤穂にはそんなものは備わっていない。
今回のプンルアンは完全に赤穂のスタイルを研究してきていた。あのラフファイトも、自国開催ということを踏まえた上でのものだったのかもしれない。
プンルアンはとにかく前進して手を出し続けるスタイル、頭を突き合わせてのショートの打ち合いが得意なファイターだ。至近距離で出せるパンチがない赤穂は身体を密着させた後はもみ合いでロープに押し込むしかできなくなる。
ラビットパンチのアピールも多かったが、正直アレはどうなんだろうと思う。あれだけ身体を預けるように密着していれば、こめかみの後ろにパンチが飛んでくるのはしょうがないし、振り払うために腕を振り回すのもわかる。払い腰など多少ラフな部分はあったが、タイでの開催ということも考えればある程度は仕方ないともいえる。
もう一度言うが、赤穂が試合をしたのは敵地タイだ。しかも日本人ボクサーが18連敗中の鬼門の国である。
ラビットパンチのアピールなどしていないで、さっさと打ち合うべきだったのだ。あんなアピールをする前に強引にでも自分の持ち味である思い切りのよいフックを振り回すべきだったのである。余計なことをしているから、プンルアンのペースに巻き込まれてしまうのだ。
アウェイの地としてのタイは、ボクサーにとって劣悪な環境だと聞く。もしかしたら赤穂自身の体調も万全ではなかったのかもしれない。この試合も30度を超す暑さの中、屋外で行われたようである。
ただ、タイという国がそういうざっくりした風土であることも承知の上で乗り込んだはずで、そこに敗戦の原因を求めるのは違う。というよりも、例え日本で開催されたとしても今日の赤穂がプンルアンに勝つのは難しいだろう。
同階級の亀田和毅と比較されることが多い赤穂だが、正直あまり興味の沸かないカードである。高確率で亀田和毅の判定勝ちだろう。
今後、赤穂がどうするのかはわからないが、今のままだと世界王者になるのは厳しいのではないだろうか。
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